この小説をハーメルンで書いて一年以上が経ちましたが、とうとう最終章に入ります。
今まで読んでくれた方、応援してくれた方に感謝します。
これからこの冬休みの間にある程度書き溜めた分の物語を投稿します。
どうぞお読み下さい。
※誤字脱字があった際、報告お願いします。
第七十五話 不穏
-2013年6月15日午後3時/IS学園-
九ヶ月ぶりに五十嵐はIS学園に戻ってきた。
V-22J“オスプレイ”から降りたった彼が目にしたIS学園は様変わりしていた。
IS学園は日本国政府の管理下に置かれた後、ここはIS整備工場兼操縦者・整備士養成校として使われた。
名古屋が核攻撃を受けISの整備工場が破壊されると国内で整備できる設備を持つのはIS学園のみとなり整備工場という役割と大量のISを整備できる人員と操縦者の交代要員が不足した為、短時間で養成できる訓練校としての役割を与えられた。
そのためここは重要な軍事施設と敵味方で認識され、学園島には多数の地対空誘導弾と機関砲が据えらている。
さらに島外からの侵入を防ぐ為に監視施設と鉄条網・地雷原が設置され、地下施設も緊急時には要塞化できるように改装されていた。
「五十嵐少佐ですか?」
送ってくれたV-22J“オスプレイ”を見送ると駆け寄ってきた中尉に声を掛けられた。
「そうだ、私が五十嵐裕也少佐だ。」
頷いて答えると中尉は敬礼して自己紹介する。
見た目からするとふたつほど年の離れた少年だった。
「IS学園警備総隊所属内田健治陸軍中尉です。この警備総隊を臨時に指揮していました。」
この少年、内田中尉が今までこのIS学園警備総隊二千人の指揮官であった。
彼らはまだ専門課程の学生だったが大戦勃発による兵力不足から後方の警備任務を現役兵に代わって就く為に高射隊を除いて専門課程を切り上げて配属された徴用兵達だった。
「ご苦労、さっそく指揮所に案内してくれ。」
内田中尉の案内で様変わりしたIS学園を歩く。
要所には機関銃座が備えられ、完全武装した兵士が歩哨に立つ。
彼らは緊張した表情で立ち、ここには緊迫した空気が満ちていた。
五十嵐はこの状況に違和感を覚え、内田中尉に質問する。
「中尉、なぜ兵士に完全武装させている?戦闘は終わっている、何を恐れている?」
「それについては指揮所ですべて説明します。」
そして地下に設置された指揮所の奥にある会議室に入るとそこには各大隊指揮官が待っていた。
「早速説明を。」
五十嵐は会議室に入るなり説明を求めた。
「ではまず現状について説明します。」
中尉は用意されたクシャクシャなメモ用紙を片手に殴り書きされた文字を読み上げる。
「現在、学園島には武装解除した国家親衛隊二個連隊四千人を駐屯地に収容。また避難民はここにいた関係者を含めて三千人がここに避難しています。今のところはここの地下施設最下層に収容しています。」
読み上げられる数に五十嵐は驚く。
「では我々を含めて九千人以上いるというのか。なぜそんなにいるんだ?」
「少佐は都内がどうなっているのか本当に知らないんですか?」
中尉が疑うような目をしてこちらを見る。
五十嵐は少し黙って答える。
「...すまない、ここに移動するまでの間の何も情報に触れていなくて何が起きているのか分からない。」
「そうですか、ではこちらを。」
すると会議室の照明が落とされ、プロジェクタのスクリーンが下ろされる。
そしてプロジェクタが起動し、スクリーンに投影されたのは惨たらしい映像だった。
一番最初に映し出されたのは数人の女性が建物から引きずり出されリンチされる映像を見せられる。
続いて国家親衛隊の少年の死体が次々と電柱に吊り下げられる映像、次には女性至上主義団体の施設や村瀬政権に肯定的だった新聞社などが市民に焼き討ちされる映像などを見せられた。
それらの映像が終わると中尉は照明をつける。
「これらは警備総隊の隊員から選抜した者に都内を偵察させた時の映像です。都内各所では村瀬首相の死を聞いた市民の多くが暴徒化、女性主義者とされた者を次々と襲っています。避難民はこれらから逃げてきたのです。」
「さらに」と付け加える。
「現在、様々な
「だから警戒に当たっているのか。」
五十嵐は納得した。
ここIS学園は市民から見れば女性至上主義の象徴たる場所だ。
ここを襲うことは必然なのかもしれない。
「現在も避難民が次々とやってきます。どうされますか?」
「避難民は受け入れよう。この混乱も臨時政府軍が来れば収まる、それまでの辛抱だ。」
すると兵士が会議室に飛び込む。
「中尉!“第一学園連絡橋”に武装した集団が渡っています!」
五十嵐と内田中尉は立ち上がり、急ぎ指揮所に行く。
多数の監視カメラの映像が写る画面から“第一学園連絡橋”を写す画面を見る。
そこには多数の市民が鉄パイプや角材などを持って学園に向かっていた。
五十嵐は即断する。
「中尉、確か暴徒鎮圧用の装備があるはずだ。すぐに一個小隊に装備させて向かわせろ。」
「了解しました。」
命令を出そうと傍を離れた中尉に五十嵐は付け加える。
「いいか、絶対に発砲しないように小隊には伝えろ。」
「...わかりました。」
そうして中尉は命令を発した。
すぐに橋の中央にバリケードが置かれ、暴徒鎮圧用の装備をした兵士が盾を持って暴徒と対峙する。
“第二学園連絡橋”も同様だった。
最初は数十人だった規模が時間が経つと増え数百人になり、怒声と物が兵士に投げられる。
そうして橋の中央は熱を帯びていった。