-2013年6月15日午後6時/IS学園-
「裕也!」
兵士達と学園の警備状況を視察していると背後から聞き覚えのある声が聞こえた。
振り返ると織斑、篠ノ之、ボーデヴィッヒ、オルコットの四人が駆け寄ってくる。
五十嵐は兵士達を先に行かせると彼らと再会した。
「久しぶりだな、織斑。」
「お前が死んだと思って悲しんだ涙を返せ!裕也!」
久々に彼にあってみたが昔の頃と変わらず元気なようで五十嵐は安心する。
あの戦争の傷を織斑の後ろにいる彼女達が癒してくれたのだろうと考えた。
「しかしなんでまたここにいる?」
そう聞くと織斑は目を背けて行った。
「俺と篠ノ之は佐々木大佐のお陰でここまで逃げれたんだ。けれど佐々木大佐とIS戦略航空隊の皆はISを奪われない為に戦って皆死んだ。」
それを聞いて自分を一流のISパイロットに育てた佐々木大佐と共に戦った隊員達の最後を聞き悲しくなる。
次にボーデヴィッヒが欧州IS派遣部隊について話した。
「私達は内戦が起きた時にどのように行動するか皆で話し合ってここに来たんだ。」
「全部で何人?」
「十人だ。」
「ということはここには十二機のISが?」
「いや半数は交代要員で、機体は五機。」
「そうか...」
すると突然パンッ!と乾いた音が響いた。
この音を聞いた五人はすぐに何の音かわかった、銃声だ。
銃声は次々と聞こえてきた、最悪な事態に発展した事が分かった。
そして兵士が走って来て言った。
「“第一学園連絡橋”で銃撃戦が起きました!」
-同時刻/第一学園連絡橋-
“第一学園連絡橋”の中央に設置された向こう側には多くの民衆が集まっていた。
その規模は数百人に膨れ上がり、熱気に満ちていた。
「圧政者に死を!」
「罪なき者を殺した罪を償え!」
「逃げれると思うな!いくら時間が経とうが殺してやる!」
人々は口々に恨み辛みを言いつける。
民衆の先頭ではバリケードを挟んで鉄パイプを持った市民と盾を持った隊員が押し問答をしていた。
市民達はバリケードを越えようと登り、隊員に盾で追い返させられる。
数時間これを繰り返していたある隊員は再度盾であるライオットシールドを立て備えた時、透明なポリカーボネート越しに人々の間から銃口が覗いているのが見えた。
それを見つけた時既に遅く、一発の銃弾が発射されライオットシールドを貫いて隊員の身体を撃ち抜く。
盾の壁を成していた隊員の一人が倒れ、市民と隊員の双方が動きを止めた。
そして次の瞬間、隊員達は八九式小銃を構え小隊長が号令を掛けた。
「撃て!」
四車線の道に広がった民衆の列が銃撃と共に将棋倒しのように倒れていった。
道には銃撃で飛び散った肉片と流れ出て鮮血で染められる。
一本道の連絡橋では出口まで走って逃げるしかなく真っ直ぐに飛んでくる銃弾で次々と市民が撃たれていく。
そして隊員達は連絡橋から動くものがいなくなるまで銃撃をやめなかった。
この光景は“第二学園連絡橋”でも同じように繰り返された。
-同時刻/IS学園地下指揮所-
「なにをやってるんだ!」
五十嵐は指揮所で怒り叫んだ。
「復讐に燃え上がっている市民を撃ち殺してどうする!油に火を注ぐだけだ!これで我々は完全に村瀬政権の軍隊だと見られたぞ!」
「しかし市民の発砲で隊員が一名死にました、これに対して反撃するのは正当な」
内田中尉は反論しようとしたが五十嵐に遮られる。
「なにが正当な手段だ、その結果どうなった!我々は完全に国民の敵だ!」
五十嵐は叫び疲れ、用意されたコップに入った水を一気に飲み干す。
すると五十嵐と共に来た副官の大尉に呼ばれた。
「少佐、前線司令部から無線連絡が入っています。」
「わかった。」
一人で会議室に入ると置かれた無線機のハンドマイクを手に取る。
「こちらIS学園警備総隊指揮官五十嵐少佐です。」
向こうの声はもちろん大森大将だった。
《なにをやってくれているんだ君達は、ただでさえ怒っている市民を銃撃するなんて。君に任せたのが間違いだったかね。》
「申し訳ございません。民衆から銃撃され隊員の一人が死んだことに反撃してしまったそうです。」
この言葉に大森大将は唸った。
《ん、私のところに来た報告では君たちが先に発砲したと聞いているが?》
「それはありません、我々からは先に発砲しておりません。」
《そうか、とにかく我々がすぐにそちらに行かないといけないな。》
「はい。早く本隊の庇護がなければ暴徒化している民衆が避難している三千名以上の避難民と無抵抗の国家親衛隊四千名、そして我々二千名は虐殺され『小田原虐殺』以上の事態に発展するでしょう。」
《そうだな、先に先遣隊を送る。そこで彼らに武装解除しなさい。》
「了解しました。」
通信を終わると会議室を出て大森大将の命令を伝えた。
「明日、先遣隊が到着する。それをもって我々は武装解除し、彼らの指揮に入ることになる。私と内田中尉が先遣隊のところに出向く、以上。」
そう言って五十嵐は指揮所を出ようとした時、内田中尉に呼び止められる。
「少佐、先ほどの件についてお話があります。」
「なんだ?」
二人は人気の無い通路に入って話をする。
「少佐、先遣隊に出向くのはやめていただけませんか?」
「なぜだ?」
「我々徴用兵は臨時政府軍のこと、指導者達は信頼しますが、一般の兵士が信頼できません。『小田原虐殺』のような事態に陥るかもしれません。もしかしたら貴方が殺されるかもしれません。」
彼が投降しているのに怯えているのだろうと考え、落ち着かせる為に言った。
「大丈夫だ、我々は」
だが言葉を言おうとした時、派遣される前に見た兵士の行動と言動を思い出して言葉を止めた。
そして少しの沈黙の後、中尉に言った。
「留意しよう。」
そして中尉と別れた。