学園の守護者   作:新稲結城

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第七十七話 反故

-2013年6月16日午前10時/第一学園連絡橋学園側入口-

 

 

 

 

 

 

 

「大尉、頼むぞ。」

 

「了解しました。」

 

高機動車に乗り込んだ副官の大尉と一個小隊は白旗を立って連絡橋に向けて走り出す。

昨日、内田中尉の勧めで先遣隊に出向くのを辞め副官にすべてを任せることにした。

大尉達を乗せた高機動車を見送ると学園に戻り、校舎の上から双眼鏡を覗いて見守った。

 

 

 

 

 

 

 

-20分後/お台場・テレコムセンター前-

 

 

 

 

 

 

 

先遣隊は連絡橋の出口の先にあるテレコムセンターの前に陣取っていた。

そこに大尉の乗る高機動車が到着し、先遣隊の大佐が出迎える。

 

「五十嵐少佐はいないのかね?」

 

「はい、少佐は体調が優れないので私が代わりに来ました。」

 

「そうか、ご苦労。」

 

大佐は大尉にそう言うと9mm拳銃を引き抜いて大尉に向けた。

 

「大佐、何を」

 

「女性至上主義者に死を」

 

そう言って大佐は引き金を引いて大尉の頭を撃ち抜いた。

そして部下たちは護衛の一個小隊の隊員を銃殺した。

 

 

 

 

 

 

 

-同時刻/IS学園校舎屋上-

 

 

 

 

 

 

 

「私が言った通りです。やはり彼らは信用できません。」

 

内田少尉がそう言うと五十嵐少佐は頷く。

 

「そうだな。私が間違っていた、もう我々には居場所がないことを今日知る事が出来た。」

 

五十嵐少佐は踵を返すと屋内に戻りながら内田中尉に命る。

 

「すぐに各大隊長を指揮所に召集、ならびに収容している国家親衛隊の中で階級が高い者を連れて来い。」

 

「了解しました。」

 

指揮所の会議室で五十嵐少佐は全大隊長に陣地構築・武器弾薬並びに糧秣の確認を命じた。

さらに国家親衛隊で階級の高い足立大尉を呼びつける。

今までの顛末を説明した上で彼に聞く。

 

「足立大尉、今から国家親衛隊二個連隊は我々がおこなおうとしている戦闘に参加できるか?」

 

足立大尉は鋭い目つきで五十嵐少佐の目を見て答える。

 

「我々は国家の為に死ぬことを決意した。けれどその国家は失い我々が戦う意味はなくなった。」

 

「参加しないという事か?」

 

「最後まで言わせろ...我々は戦いで死ぬことを臨んでいる。座して死ぬよりは戦って死ぬことを望んでいる。」

 

五十嵐少佐は少し考えて言う。

 

「足立大尉、我々は今から避難している無実の市民達を守るために戦う。君達の死生観はどうでもいい、市民を守れればいい。それでも私の指揮下で戦ってくれるか?」

 

「ああ、これで我々は死ぬ場所を得られる。」

 

五十嵐少佐はすぐに武装解除時に回収した武器弾薬を国家親衛隊に再配布する事を命じた。

すぐさま二個連隊四千名に武器弾薬が配られ、戦闘配置可能となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

-2013年6月16日午後1時/指揮所会議室-

 

 

 

 

 

 

 

大森大将から連絡が入る。

 

「こちらIS学園警備総隊指揮官五十嵐少佐。」

 

《大森だ。このような状況になってしまったことを謝る。》

 

そして大森大将は臨時政府の事情を話した。

臨時政府内には様々な思想を持った人間が村瀬政権打倒をスローガンに団結して戦っていた。

しかし、村瀬政権がいなくなると臨時政府では新たな政治体制を巡って様々な勢力が覇権を争っている。

その中の一勢力がこの事件を起こし、徴用兵への国民からの憎悪を自らの勢力の支持にしようとしているものがいる。

 

《残念ながらこの動きは大きく拡大して我々軍部ではもう抑えることは出来ない。なにせ国民の大部分が君達への弾圧を支持している。国民だけではない、末端の将兵もだ。もしこの動くを無理矢理抑えようとすれば新たな内戦が起きる、軍部と国民というな。》

 

「そうですか。ならば大森大将、お願いがあります。」

 

《なんだ。》

 

「我々と戦ってください。容赦無く、存分に叩いてください。」

 

大森大将は黙って聞く。

 

「この国が再びふたつに割れて内戦をおこなえば多大な損失になるのは誰だって分かることです。ならば我々が国民の憎悪と共に死にます。それによって国がひとつになるならば九千人の犠牲は安いものです。」

 

無線越しに嗚咽が聞こえる。

 

《すまない...君達若者にこのような仕打ちを...与えることになってしまうことに...》

 

「大将、もうひとつお願いがあります。」

 

《なんだ?》

 

「避難民三千人の逃げ場を作ってください。我々兵士は無実な市民を守るために戦うのです、避難民諸共死んでしまっては元も子もありません。彼らだけは助けてください。」

 

《善処する。》

 

「では通信を終わります。」

 

無線機を切ると指揮所に戻り、内田中尉から報告を聞く。

 

「少佐、現状では武器弾薬並びに糧秣は数日以内...いや二日三日が限界だと報告します。特に糧秣は深刻であり、元々三千人以上の避難民を受け入れることは想定外ですのですぐに底をつきます。さらに我々は地対空誘導弾・対空機関砲を除けば機関銃と小銃・手榴弾しかありません。榴弾砲や迫撃砲はありません。一方、兵員の方は足立大尉の呼びかけで各地で抵抗している国家親衛隊の部隊が駆けつけますが...兵員だけ多くてもどうにもなりません。」

 

五十嵐少佐は頭を抱える。

 

「避難民の逃げ場もなく、戦う術もなく何の為に戦うのか分からなくなるじゃないか...」

 

そして考えながらトボトボと歩く。

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