二〇九高地の戦いは奇跡的にも第四海兵師団第二連隊は二週間を越えることができた。
幾度もの砲撃と突撃を繰り返されたが、韓国空軍が制空権を完全に掌握出来ず日本国防空軍の戦闘機部隊に近接航空支援を阻止されたお陰で強力な空爆に晒されず五十嵐達は今日まで生き残れたのであった。
しかし第四海兵師団第二連隊の二〇〇〇人の兵士は八〇〇名を切り、機関砲や迫撃砲の弾薬は底をついて食料も僅かな乾パンを皆で分け与えている状況だった。
五十嵐は死臭が漂う塹壕の中で腐った死体を前に一日二個配給される乾パンを食べていた。
弾薬が切れた為に度々塹壕に韓国兵が突入して乱戦になって周りは何時の間にか死体の山が出来上がった中で食べる“最後”の乾パンはなぜかおいしいように感じた。
初日の戦闘で頭に落ちてきた腕は日に経つにつれネズミに食べられ骨だけなっている。
ネズミにとって人間の死体は好物らしく、死体に数匹のネズミが必死に人間の顔を食っていたのを見かけたこともある、何時自分が食べられる出番なのかを考えるようにもなった。
だがここに来て二週間、この状態に慣れていた、いや慣れなければならない。
戦場でのありふれた悲劇にいちいち心を動かしていては、気がおかしくなる。
周りの兵士は皆生きる希望を失い、ただただ死ぬ順番を待っている状態だ。
荒井は指揮所に呼ばれて打ち合わせに行ったが、彼は「これで最後の作戦会議だ」と五十嵐に冗談らしく笑顔で言ったが、実際は本当のことであるのだろう。
「皆聞いてくれ!」
戻って来た荒井亮太中尉は部下達に最後の命令を伝え、準備を指揮した。
内容は残ったC4爆薬を最前線の塹壕に仕掛けて、敵兵が雪崩込んだところで起爆。
次に手榴弾を投げ込んだ後に銃剣突撃、敵を足止めしている間に後方で生き残った砲撃陣地から陣地後と吹き飛ばし韓国軍に打撃を与えるというものであった。
それは即ち自らの命を引き換えに韓国兵を道ずれにする作戦、本来なら作戦と呼べないが彼等に残された反撃手段は他になく、五十嵐を含めたすべての兵士は覚悟を決めて爆薬を敷設した。
「準備完了しました!」
工兵と協力して敷設を終えると後方の塹壕に移り、一発ずつ手榴弾が手渡される。
「これで最後か荒井。」
「そのようだな、お前と昇進競争は出来なさそうだな。」
加畑中佐は最前線に出向いて訓示する。
「私と共にここまで戦ってくれた事を本当に感謝する。そして包囲された無能な指揮官を憎んでくれ!私は包囲される事を分かっていながら、他の部隊の撤退を優先していた間に退路を塞がれてしまった。君達のことは考えずにだ!本当に済まない!だが今日君達と共に戦って死ねることを本当に感謝している!」
加畑中佐は涙ながらに訓示して、自らを卑下して語った。
敵が突撃するまでの間、五十嵐と荒井は昔を懐かしみながら語った。
「教育兵団時代はさ皆で教官に悪戯を仕掛けたりしたよな、五十嵐。」
「ああ、特にお前が泳ぐのが苦手でプールの設備を一人で半年使用不能にしたのは面白かった。」
「お前だって嫌いだった教官の水筒に5.56mm普通弾の火薬を混入させて病院送りにしたのは面白かったぜ。しかし二人ともにばれていないのが不思議だが。」
「当然だろう、俺達は優秀だからさ。」
韓国兵の雄叫びが聞こえ、大量の兵士が走ってくる振動が地面を伝って響く。
「総員着剣!」
加畑中佐の号令で一斉に八九式多用途銃剣を銃口に取り付ける。
「だが、その遊びも今となってはもう出来ないな。」
「いや、ここを体験した者はもう昔の自分には戻れないさ。俺達を含めて。」
韓国兵の先頭を走る敵兵達が最前線の塹壕に雪崩込む。
それと同時に工兵が起爆装置を起動して、敷設したC4爆薬を一斉に起爆する。
土砂が降って来ると手榴弾の安全ピンを引き抜いて、塹壕の外にいる韓国兵に向けて投げ込む。
五十嵐と荒井に続いて次々と投げ込み、韓国兵達に破片が降り掛かる。
「予定通り三分後に砲撃をしろ。」
中佐は砲兵部隊と通信を終えると立ち上がって、今までの号令の中で大きな声で発した。
「総員突撃!」
「「「「日本国万歳!」」」」
中佐を先頭に銃剣を突き立てて韓国兵に突撃を行う。
近距離での突撃で韓国兵は混乱に陥り、その間に敵兵に飛び込んで乱戦に持ち込んだ。
五十嵐は塹壕の中にいた韓国兵に飛び掛り、喉仏の下に銃剣を突き刺して一気に引き抜く。
血が流れると共に空気が抜けると音が聞こえるが、右から飛び掛ってきた兵士を銃床で殴りつけて地面に倒して顔面を何回も銃床で殴り続ける。
頭が潰れると血が噴出して顔に付着して、ピンク色の脳漿が垂れ出るのを見た。
しかし背後から近づいていた韓国兵に銃剣で脇腹辺りの背中を突き刺される。
一気に引き抜かれ肉を削られる痛みを堪え振り返って、刺した韓国兵を襲い掛かる。
だが相手の方が力が強く地面に倒されて馬乗りになり幾度も顔を殴り続けた。
五十嵐は護身用もとい自決用の9mm拳銃をホルスターから引き抜いて、防弾チョッキの隙間である敵兵の脇腹に向けて一発撃ち込んだ。
力尽きた敵兵を退かして近くに落ちていたスコップを手に取ると目の前にいる韓国兵を片っ端から殴りつけて殺していく。
だが五人目を殺した時、幾つもの風を切る音が聞こえると思った次の瞬間、そして後ろから倒され、誰かが覆いかぶさったが分かった。
周りに砲弾が着弾し、吹き飛ばされる敵味方の悲鳴が聞こえあたりは真っ白になる。
それから数分間砲撃が止むのを伏せたまま耐えた続けた。
砲撃が止み周りが静かになり、五十嵐は覆いかぶさった人をどけて顔を見るとそれは荒井だった。
「荒井!何やっているんだ馬鹿野郎!」
体を抱き上げて大声で叫ぶと、目を開いて擦れる声で言った。
「五十嵐...お前には...生きてて欲しいんだ...」
荒井が何を言っているのか、五十嵐は分からなかった。
戦闘服の背中には破片で切り裂かれ大量の血が体内から流れ、大きな破片が内臓に達しているほど深く突き刺さっているのが五十嵐が見て分かり長く無いと悟った。
「俺達が...ここで死んだこと..が..無駄では...なかったことを...お前が生きて見てくれ!俺達の存在は日本国のためになったのか...を..」
そこまで荒井は言うと首をうな垂れて、手首に指を当てて脈を診て死んだことが分かった。
五十嵐は地面に彼の体を横たわらせて手を掴んで言った。
「わかった、俺がお前達が犬死した訳ではないことを見届けてやる!」
上空を味方の戦闘機が飛び越え、展開する韓国軍を空爆する。
その後、韓国軍が二〇九高地に戦力を割いている間に国防軍は反撃を開始。
沿岸から航空戦艦『信濃』による艦砲射撃と空母から発艦した戦闘攻撃機『流星』とB-52戦略爆撃機による航空攻撃で韓国軍の主力地上部隊は壊滅、並びに航空戦力も飛行場への攻撃と航空戦により大きな損失を出して敗走した。
韓国軍は日本軍に対しての反撃する戦力を失い、政府は平壌を放棄して吉林に移動した。
中国・ロシア国境に配備していた戦力を日本軍との戦闘に回す為であったが、これにより国境線の警備は手薄になった。
これを見越して、中華共産主義共和国とロシア共和国は『IS協定違反』として大韓帝国政府を強く批判すると共に宣戦布告、制裁として国境に配備していた軍を大韓帝国領内の満州地域に侵攻を始めた。
一方、日本国政府に両国から共同戦線の構築を持ち掛けられ、戦争を早期に終わらせたいと考える日本政府は承諾することに決めた。
五十嵐中尉はソウルの軍病院に運ばれ、数週間の入院を命じられると共に同じように入院していた五反田中尉と再会することが出来た。
だが徴用兵の運用規則により、徴用兵の死体はその場に埋葬されるか又は放置される事になっている。
荒井中尉の遺体はあの二〇九高地に埋められ、五十嵐は入院している部屋からその方角に向けて体を向けた。
「お前との約束通り最後まで見届けてやろう、この戦争を。」
その日から五十嵐中尉は毎朝決まった時間に二〇九高地がある方角に向けて敬礼するようになった。
第八話目です。
アニメの第二期ISの終わり方はいろいろと怒りを感じましたね。
ありきたりな展開...というより第一期の臨海学校と同じでは?
しかも軍のISは的のように撃墜されたうえに、死傷者ゼロ。
まだまだ不満がありますが、眠たいのでここで終わりにします。
ではまた今度。