-2013年6月17日午後8時/会議室-
「来るのが遅かったんじゃないか?」
会議室に入るなり五十嵐少佐は椅子に座る白人男性に文句を言った。
白人男性は笑いながら大袈裟に身振りを加えて言い返した。
「フェニックス、ここまで来るのに苦労したんだぜ。臨時政府軍の監視下にある大使館を抜け出して砲撃の中を渡河して次は君の部下に捕まって牢獄に八時間も入れやがって。」
フォッグは五十嵐少佐のところまで来ると指で彼の胸を小突いた。
後から入って来た内田中尉は二人の親密さに驚き、どのように割って入るか悩む。
五十嵐少佐はすぐにフォッグを紹介する。
「彼はアメリカ合衆国の中央情報局、所謂CIAの人間だ。フェニックスは俺のコードネームだ。」
「...副官の内田中尉です。」
内田中尉がフォッグに挨拶すると本題に入る。
「それでフォッグ、何か案があって来たんだろう?」
フォッグは頷いて答える。
「そうだ、君たちが抱える避難民を我々が引き受ける。」
「アメリカが?」
「イエス!我が国はIS学園に在籍した外国籍の学生と難民保護の為、IS学園に学生を派遣していた各国と共にここへ向かっている。主体は我が国の合衆国海軍と海兵隊だ。昨日、艦隊はパールハーバーを出航し北太平洋上を航行中だ。」
「当然ながら何か見返りを求めているんだな?」
「まあな、IS学園の生徒を我が国へ受け入れるのとここにあるIS設備の回収のついでに難民保護だ。」
確かにここにいるIS学園教師・学生並びに研究者達と引き換えに三千人の避難民の保護は安い。
これらを受け入れることによってアメリカ合衆国の技術発展に役立つのは確かであり、こんなチャンスはない。
これに提案に乗るしか避難民を救う道はないと五十嵐は考えた。
「ついででも救われるならば幸いだ。で、その艦隊はいつここに到着する。」
「早くても五日から一週間は掛かる。」
五日、たった五日だが現状では五日も持つか怪しいところであった。
明日には空軍の近接航空支援と共に上陸作戦を臨時政府軍は始めるだろう。
「わかった最低でも五日間はここを陥落させない。」
五十嵐少佐はフォッグに約束した。
「それでどうする?すぐにここを脱出するのか。」
そう聞くとフォッグは首を振った。
「いや、ここに残るよ。俺がここに残れば助けに来る確率は少しは上がる。」
五十嵐少佐は頷くと安全な避難所にフォッグを案内するように内田中尉に命じた。
-2013年6月18日午前七時/指揮所―
今日は戦闘機による空爆が始まる。
五十嵐少佐は対岸に上陸用舟艇の群れを発見した報を聞き、直接視認する為に指揮所を出て歩き始めた。
通路を歩く中、空爆で足元は揺れ埃が舞い落ちる。
だが一際大きな爆発が地下施設で発生し、天井が崩れ壁などが剥がれ落ちる。
五十嵐少佐は頭を地面に打ち付けて血を流し、意識が朦朧とする。
「少佐!五十嵐少佐!」
内田中尉に叩き起こされ周囲を見渡す。
自分の歩いていた後ろの天井が崩れ、数人が生き埋めになったらしい。
「指揮所が爆発したようです。」
「チッ!バンカーバスターを用意したか、あいつらめ。」
ここを増築した時の設計図は臨時政府軍にも渡っているのだろう。
ピンポイントに重要施設を破壊しようと躍起になっているのだろう。
「内田中尉!肩を貸してくれ!」
「はい。」
内田中尉に肩を貸してもらい東監視台に到着した。
監視台で双眼鏡を覗くと数十隻の上陸用舟艇が終結しているのが見える。
空爆が終わり、次に砲撃が一時間以上続けられる。
「いいか、攻撃は俺の合図で始めるように徹底しろ!」
五十嵐少佐の命令は守られ、臨時政府軍からは島が沈黙しているように見えた。
そして砲撃が収まると上陸用舟艇の群れが一斉に島へ接近する。
近くの人工島から散発的に残存国家親衛隊の迫撃砲による砲撃が始まる。
だが迫撃砲は数隻の上陸用舟艇を転覆させるだけで臨時政府軍の対砲兵射撃で次々と沈黙させられた。
そして上陸用舟艇の第一列目が海岸線に上陸し、歩兵を吐き出した時に号令を発した。
「攻撃開始!」
島を囲むように設置させられた砲台、全部で三十門の155mm榴弾砲FH70による砲撃といくつもの機関銃座からの銃撃が始まる。
上陸した歩兵は次々と機関銃座と後方に設置させられた迫撃砲陣地からの砲撃で次々と撃ち殺され吹き飛ばされ、155mm榴弾砲FH70の砲撃で上陸用舟艇が次々と撃破されるか転覆する。
だがこの状況に臨時政府軍が黙っているはずもなく砲撃と近接航空支援をおこなう。
さらに奇跡的に上陸した勇敢な兵士が火炎放射器と手榴弾を持ってトーチカに肉薄する。
そしてトーチカに火炎放射器で徴用兵を炙り出し、焼けて悶え苦しむ彼等を銃殺する。
または手榴弾を投げ込み、爆破させ中にいた徴用兵をバラバラにする。
次々と砲撃するがいくつかの上陸用舟艇が上陸することに成功する。
けれど被害が甚大になり、第二波の上陸はなかった。
それ以後は夜まで砲撃と空爆を繰り返しおこなわれ、生き残った臨時政府軍兵士による夜襲を撃退して終わった。