-2013年6月21日午後16時/IS学園島地下施設-
五十嵐裕也は9mm拳銃の整備を終え、弾倉を挿入してスライドを引いて銃弾を装填する。
戦艦『信濃』や駆逐艦の艦砲射撃とミサイル攻撃、それに砲兵隊の砲撃と航空攻撃でトーチカや砲台がすべて破壊され、海岸には臨時政府軍の橋頭堡が築かれた。
学園警備隊にはもう橋頭堡を破壊する力は残ってなく臨時政府軍がいつ地下施設内部に侵入して来るか分からない状況だった。
五十嵐少佐も無事な片手で使える9mm拳銃を構え、迷彩服姿で立つ。
学園警備隊は着任直後は二千人いたが連日の戦闘で千人が戦死し、残りの千人の内動けるのは八百人ぐらい。
生き残った者は侵入に備えて各所に罠を仕掛け、残った弾薬を出来るだけ装備する。
避難民の為に最後まで戦うと覚悟を決め、自分の配置を死守するつもりだ。
ホルスターに拳銃を入れると傍に来た内田中尉が報告する。
「砲台並びに橋頭堡近くの進入路の電力供給を停止、防御扉の展開、対人地雷の設置が完了しました。」
「御苦労、国家親衛隊の状況は?」
「激しい戦闘で四千名から五百名まで兵員を損耗し、大井埠頭の一角で抵抗を続けています。」
「そうか。」
内田中尉を下がらせると背後で椅子を逆に座るフォッグに言った。
「君達の艦隊はいつ到着するんだ?」
フォッグは困った顔で言った。
「五日から一週間は掛かると言っただろ。まだあと二日は掛かるかもしれない?」
五十嵐少佐は苛立っていた。
「もうそこまで臨時政府軍が迫っている。あと一日持つかも分からない、残った隊員でこれから夜襲を仕掛けるがたった数時間稼ぐだけだ。」
「そう言われても俺には艦隊を急かす手段はないぜ。」
「そうだったな。だが明日にはここは虐殺の場に変わっているかもしれない、その時は覚悟しろ。」
五十嵐はそう言い放つと内田中尉と共に前線に向かう。
陽が沈み、夜襲を担当する部隊が坑道内で待機する。
「攻撃開始。」
五十嵐少佐が号令を掛けると隊員達が雄叫びを上げて坑道から飛び出す。
暗闇の中で照らす月明かりが彼らが構える小銃の先に装着した銃剣を白く光らせる。
夜襲に気づいた臨時政府軍は照明弾を空中に打ち上げ、照らし出された隊員達を機関銃の弾幕を浴びせる。
次々と倒れていく戦友を気にかけず隊員達は橋頭堡に向け走り込み、流れ込む。
急造の塹壕に飛び込み近くにいた臨時政府軍兵士に銃剣を突き刺す。
さらに撃たれた隊員が最後の力を振り絞り、物資集積所にピンを抜いた手榴弾を抱えて突撃。
そして自爆し、誘爆した弾薬が大爆発して夜を照らした。
だが態勢を立て直した臨時政府軍は反撃に移り、次々と隊員達は死んでいった。
一時間に及ぶ戦闘は夜襲部隊の全滅という結果を出したが、一方で臨時政府軍の総攻撃の時間を遅らせることに成功した。
一時間後に次話を投稿します