学園の守護者   作:新稲結城

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第八十五話 別れと玉砕と降伏

-2013年6月22日午後14時/学園島地上-

 

 

 

 

 

 

 

臨時政府軍と学園警備隊との間で停戦が発効されてすぐ避難民の収容が始まった。

まず織斑一夏達を始めとするIS学園生徒・教員・研究者が優先的に収容された。

V-22“オスプレイ”が往復して次々と東京湾外に停泊する強襲揚陸艦に避難民を運ぶ。

 

「裕也、お前は乗らないのか?」

 

順番が回ってきた織斑一夏は傍で収容作業を見守っている五十嵐裕也に言った。

共にいたセシリア・オルコット、篠ノ之箒に囲まれる。

 

「俺は最後に乗る。指揮官としてここにいる全避難民と全隊員が収容されたら必ず行く。」

 

「本当か?お前はいつも誰かを庇おうとするからここに残ろうと思っているのと思ったのだが。」

 

篠ノ之箒も同じように思っていたらしく問い詰める。

五十嵐は微笑んで言った。

 

「ここに残ったところで何も出来ないさ。心配するな、後で行く。」

 

「か、必ずですわよ!もう友人を失うのは嫌ですわ!」

 

「おう、約束だからな。」

 

オルコットは涙目になって言った。

そして織斑は五十嵐の肩を軽く叩くと三人は待機している“オスプレイ”に向かう。

だがラウラ・ボーデヴィッヒは共に行かず黙って五十嵐の傍に来た。

 

「お前も早く行け。」

 

五十嵐少佐はボーデヴィッヒに急かすと彼女は言った。

 

「お前はここに残る気なんだろ。」

 

ボーデヴィッヒに嘘を見抜かれた五十嵐はおとなしく認めた。

 

「そうだ、我々がここに残るのが停戦条件だからな。」

 

臨時政府軍と学園警備隊の停戦において提示された条件には『IS学園警備隊並びに徴用兵の島外への脱出禁止』の条件があった。

 

「アメリカとの衝突を避け、復讐に燃えた国民を抑えなければならない臨時政府が停戦を認める条件を考えれば当然の停戦条件だ。」

 

ボーデヴィッヒは悲しく思いながら自分の考えを言った。

 

「それに、ここの指揮官である以上ここで起きたことは指揮官である俺が責任を取らないといけない。部下を守るためにだ、さすがに軍人のお前には分かるか。」

 

「ああ、私も部隊を任された指揮官だ。指揮官が責任をとならなければならないという事も分かるが、それが“戦友”の一人というのは悲しいことだ。」

 

そして一夏達が“オスプレイ”の機内に入ると五十嵐はボーデヴィッヒに行くように言った。

するとボーデヴィッヒは五十嵐に手を差し出した。

 

「別れに何かくれ。責任を取るという事はお前は...」

 

言葉をそこで止めたがその先は五十嵐も分かっている。

“死刑”

臨時政府はどんなことをしてでもこの結果を国民に示さなければならない。

ボーデヴィッヒはそれを分かっているのだろう、その上で“戦友”の形見が欲しいのだろう。

 

「俺はもう何も持っていないのだが...わかった。」

 

五十嵐は唯一自分だけのものである二枚の認識票の内一枚を彼女に与えた。

 

「デュノアを救出する時も、お前は認識票を渡したな。今度はそっちの意味か。」

 

ボーデヴィッヒは笑みを浮かべて認識票をポケットに仕舞うと五十嵐と向き合う。

五十嵐は敬礼するのだろうと思い向くと突然ボーデヴィッヒは背伸びして五十嵐にキスした。

 

「これで別れだ...最愛なる“戦友”。」

 

ボーデヴィッヒは涙を見せぬよう振り返り、織斑たちの乗る“オスプレイ”に乗り込む。

そして彼等を乗せた“オスプレイ”は飛び上がり、強襲揚陸艦へ飛んで行った。

 

「フェニックス、お前一人ぐらいなら俺達CIAで今すぐにでも誤魔化せるぞ。」

 

一部始終を見ていたフォッグが五十嵐に耳打ちする。

 

「そんな汚い真似は俺には出来ない。」

 

「いいのか?彼女が悲しむぜ。」

 

「いいんだ、俺には一人の人間である前にIS学園警備隊指揮官だ。最期まで部下と共にいる覚悟は出来ている。さあ、お前も行け。」

 

その後、東京湾に入った数隻の強襲揚陸艦が損傷の少ない学園島の港湾施設に接岸して残りの避難民、そしてIS学園に残っていたIS、ISの製造・研究設備と研究データを持ち出した。

それらの作業が終わり最後の強襲揚陸艦が出航し、無事に東京湾を出たのは陽が落ちたころだった。

 

 

 

 

 

 

 

-2013年6月22日午後23時30分/IS学園島地下施設―

 

 

 

 

 

 

 

五十嵐少佐は無線機の前に立ち、大井埠頭の一角に追い詰められていた国家親衛隊指揮官足立大尉に聞いた。

 

「これから三十分後に停戦期間は終わる。足立大尉、君達国家親衛隊はどうする。」

 

《五十嵐少佐、我々はもう守るべき国家を失った。それは我々の死を意味している、新たな日本と共に生きて行けると思う隊員は誰もいない。》

 

「ということは玉砕するという事か?」

 

《そうだ、五十嵐少佐》

 

足立大尉は躊躇わず、言葉を濁さずに言った。

 

《我々は最後の国家親衛隊の部隊として栄光ある最期を迎える覚悟だ。》

 

「そうか...それが国家親衛隊隊員の総意ならば私は反対しない。」

 

《ありがとうございます、五十嵐少佐。我々は貴方と共に最後まで戦えたことを誇りに思います。》

 

「こちらこそ君のような“軍人”と戦えたことを誇りに思う。」

 

《では、あの世があるならばそこでまた会いましょう。通信終わり。》

 

五十嵐少佐は無線機を切ると内田中尉に命じた。

 

「この地下施設全体に残った爆弾をすべて仕掛け、破壊しろ。この施設はもうこの国には必要ない。設置終了後は全員埠頭に集合しろ。」

 

「了解しました。」

 

五十嵐少佐は指示を出すと地上に出る。

そして三十分後、足立大尉の国家親衛隊が最後の戦いを仕掛けた。

足立大尉は連隊旗を掲げ、部隊の先頭に立って突撃した。

包囲されていた彼らは機関銃と小銃の銃撃に次々と倒れ、三十分後には全員が戦死した。

学園島からは打ち上げられる照明弾と曳光弾の光、そして幾多の銃声と響き渡る悲鳴が聞こえた。

国家親衛隊の最後を見届けると内田中尉が呼びに来た。

 

「五十嵐少佐、すべて完了しました。」

 

「わかった。」

 

五十嵐少佐と内田中尉は地下施設を通って、学園のあった丘から港湾施設へ向かった。

地下施設には戦いの傷跡と腐り始めた双方の兵士の遺体が転がっていた。

そして地下施設を出て、港湾施設に行くと生き残った学園警備隊の隊員が整列していた。

 

「...爆破用意。」

 

五十嵐少佐は起爆装置を持つ兵士に命じた。

 

「準備よし!」

 

「点火三秒前...3...2...1...点火!」

 

起爆装置が作動し、地下施設に仕掛けられた爆弾が爆発して地下施設は破壊された。

破壊された地下施設は土の重みに耐えられずに崩れ、埋もれた。

丘の学園跡に地割れが起き、一部が陥没する。

 

「これで我々の戦いはすべて終わった...そして新たな戦いがはじまるか。」

 

五十嵐少佐は独り言を呟くと整列した隊員達の前に立って言った。

 

「我々学園警備隊はこれから臨時政府軍に降伏する!だがこれで戦いが終わったわけではない、君たちは新たな日本の為の戦いが始まる。だが新たな戦いは武力を用いない、国家作りという戦いだ。最初は禍根が残っているだろうがそれを乗り越え、様々な人々と協力してこの日本という国を立て直さなければならない!そのために我々は降伏する!皆、私に続け!皆で新たな日本の為に生きよう!」

 

そして夜が明けて2013年6月23日午前五時、IS学園警備隊は臨時政府軍に降伏した。




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