学園の守護者   作:新稲結城

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第九話 帰還命令

二〇九高地の戦いから生き残り、五十嵐中尉は九月末に軍病院からの退院を許されたが五反田中尉は着地の失敗で足を複雑骨折した事により本土に移送されて手術となった。

大韓帝国の競技用ISを撃墜したものの中央からは勲章も賛美もされず、緘口令が敷かれIS撃墜時の事を郊外しないよう命じられ、政府発表はただ海軍機がISを撃墜したとだけ報道された。

二〇九高地で戦闘している最中に日韓戦争の戦場に潜入していた外国人ジャーナリストが後方支援で派遣されている日本国防軍正規兵による韓国人への暴力・強姦・略奪の事実が世界中に広めたからだ。

事態を収拾しようとした政府がすべての罪を徴用兵に擦り付けて責任を回避しようとした。

日本国内の報道は『報道規制法』により政府の管理下にあり、意図してすべての報道で徴用兵を卑劣で醜い人間以下の存在だと触れ回り、日本国民に非道な徴用兵像を作り上げ批判の対象とした。

これにより戦場の情報を知らない国民は初めて徴用兵がどのように使われているのかを知り、特に女性至上主義者は徹底的に徴用兵を糾弾した。

そんな中でISを撃墜した英雄的が徴用兵だと知れれば、政府が作り上げた徴用兵像が崩れ政府批判が始まってしまう恐怖があったからだ。

しかしそんな言い訳で国民すべてが納得させることは出来ず逆に政府批判が強まり、海外からの追求も相まって内閣支持率は急落してしまい一週間後には内閣解散に追い込まれ、新たに社会国民党の漆原美由紀が第九二代内閣総理大臣として就任した。

この一週間の間に日中露から無条件降伏をするように要求された大韓民国は拒否し、吉林市を中心に何重もの防衛線を構築して頑強な陣地を作り上げ徹底抗戦の構えであった。

国防陸軍は南からひとつずつ陣地を攻略していたが、何重にも及ぶ防衛線を攻略と気の遠くなるような戦闘、そして上官の無理難題な命令に兵士達は疲れを感じていた。

五十嵐中尉は五反田中尉がいない代わりに他の兵装システム士官と組んで陸軍への近接航空支援を行っている。

十月末のある日もいつものように近接航空支援を終えて急造された前線航空基地に戻ると同僚の航空兵から飛行団長にに呼ばれていると言われ指揮所へと行く。

 

「五十嵐中尉、飛行団長に呼ばれたのですが。」

 

「入れ。」

 

急造で作られた基地である為に指揮所は業務用天幕の中にあり、通信機器に囲まれた中で長机をふたつ並べた上に広げられた地図を見ていた男性が手招きをした。

 

「五十嵐中尉、朝鮮派遣軍司令部から君に本土への帰還命令が来ている。」

 

「なぜですか?」

 

すると天幕の中に背広服に身を包んだ戦場に似つかわしくない男性が入る。

 

「私は内閣府外局IS統合管理局の職員だ。」

 

IS統合管理局はIS登場当初に国防省・国土交通省・経済産業省・文部科学省などの省庁に乱立したIS関連部署を統合・設立した機関である。

国内でのISの開発・運用の管理、IS関連企業への政策、国家代表の選定、IS学園の運用、海外のISに関する開発・運用についての情報の収集などを行っている。

 

「君には本土に戻ってIS撃墜時について詳しく聞きたい。」

 

「それは命令でありますか。」

 

「当然だ、国防省にも承諾を受けている。すぐに荷物を纏めてヘリに乗れ。詳しい話はその後だ。」

 

「了解しました。」

 

荷物を纏め制服に身を包むと職員の後に続いてUH-60JA“ブラックホーク”に乗り込む。

空に上がるとIS撃墜に関する詳しい話と今後の予定を聞かされた。

五十嵐中尉が撃墜したISはIS学園警備隊による回収作戦により回収されたコアの破片から韓国で開発された量産型コアを用いた競技用IS“天弓”と呼ばれるISであると聞かされた。

量産型コアとは篠ノ之束博士が失踪後に各国が独自に開発したコアであるが、量産型と対比してオリジナルコアと呼ばれた篠ノ之博士作製のコアに比べ性能は格段に下がり、生産費用・維持費は一個につき最低でイージス駆逐艦一隻と同等の費用が掛かる。

オリジナルコアと量産型コアでの戦闘ではキルレシオは1:15となり、オリジナルコアの代替とならなかったが通常兵器への戦闘には有効であった。

しかしアラスカ条約後に開発された量産型コアが条約にあたるか国際連合の関連機関国際IS委員会において議論となり日本は量産型ISによる先制攻撃を恐れ条約に当たると主張したが欧州諸国は適用されないと主張して量産型コアによる軍事配備を推し進めた。

だが欧州諸国内で起きたIS開発競争は日本とアジア諸国が開催した第二次アラスカ条約により停滞する。

第二次アラスカ条約は軍事利用の一部制限を決定し、量産型ISの“先制攻撃の禁止”を定めて敵国がISを使用して自国を攻撃した際への反撃は認められた。

その為に量産型ISを開発した国々は白騎士事件により産廃となった大陸間弾道誘導弾の代わりにISを配備を行い報復兵器と位置づけ、新たに『IS抑止論』と呼ばれる考え方が現れた。

量産型コアを使用したISと言えども、それを戦闘機で撃墜したことはISへの新たな対抗策になると考えられていると職員は答えた。

また大韓帝国が保有する三個のオリジナルコアは回収されたが、量産型コアについては何処まで完成しているか分からないと語った。

そして五十嵐中尉には平壌国際空港でIS学園警備隊強襲中隊が回収したオリジナルコアを使用した“天弓”と共に日本に戻るように命じた。

彼は多くの仲間が戦っているのに自分だけが戦場から離れるのに不満を持ったが、命令なので渋々従った。

ヘリは平壌国際空港に到着するとC-2輸送機の傍に着陸する。

 

「中尉、私はここまで!あとは輸送機に乗って岐阜基地で飛行開発実験隊の隊員が待ってる!」

 

「了解しました、これで!」

 

五十嵐中尉は輸送機に乗り込むと貨物室の奥には塗装を剥がされ白い機体になり、周りを鉄の骨組みで組み立てられた箱状の中に入れられ、機内に搬入され固定された天弓の姿があった。

五十嵐中尉が搭乗した輸送機は平壌国際空港を飛び立ち、日本海に出ると右旋回して日本に機首を向けた。

機内では一機の天弓と五十嵐中尉の他に警備の為に四人が武装したIS学園警備隊の隊員が乗り込み、途中で空軍のF-15J『イーグル』戦闘機二機が護衛に就く。

日本海を飛行している時に副機長が定期的にレーダー画面を見ると機体後方にひとつの光点現れた。

 

「機長、六時の方向に反応あり。なんでしょう?」

 

発見と同時に前を飛んでいた一機のF-15Jが撃墜され、レーダーからふたつの光点が消えた。

副機長は後方を見ると一機の黒いISの姿を認めた。

 

「ISが四時の方向に出現!」

 

ミサイル警報が機内に鳴り響き、チャフとフレアが自動的に射出される。

機長は自動操縦装置を手動に切り替え操縦桿を押して急降下を始めた。

五十嵐中尉は突然の急降下に驚き、床に転げ落ちてしまい、仰向けに倒れた彼等は次に断続的な揺れと窓から眩い光が見え、窓に飛び付くと一機の真っ黒なISが接近しているのが見えた。

 

《衝撃に備え!》

 

機長の機内アナウンスを聞いた瞬間、コックピットとキャビンに刃が入り切り裂かれた。

貨物室にいた五十嵐中尉を含む兵士達は大気圧の差で大空に吹き飛ばされてしまう。

切り裂かれた輸送機は爆発して四散し高度一万メートルの大空に吹き飛ばされた彼は目を開けると体は海面に向け頭から急降下していた。

すぐに手足を伸ばし空気抵抗を増やし降下速度を落として周囲を見渡すと四散した機体から飛び散った破片や積荷が海面に向かって落ちていた。

 

「くそ...このまま海面に叩きつけられて死ぬのか...それもそれで悲惨だな、笑えるな。」

 

五十嵐中尉は今までの記憶を思い出し、死ぬ覚悟を決めようとしていた。

何かが脇から追い抜いたのに気づいて、目を開けると天弓が海面に向かって落ちている。

 

「一度くらい...触ってみようか。」

 

彼は腕と足を閉じて体を傾け、落下速度を上げると徐々に近づき天弓に近づいた。

どのような感触なのか、同じ空を飛ぶものとしての興味が彼を動かし手を伸ばさせた。

そして伸ばした右手がISに触れた。

 




第九話目です。
最近、アメリカ独立戦争を扱った『パトリオット』やフランスのナポレオン百日天下の最後『ワーテルロー』などの映画を見て戦列歩兵に興味を持ちました。
多くの兵士が綺麗に一列に並び行進曲に合わせて敵に向かって白目が見えるまで前進し、銃撃を受けても隣の兵士が倒れても進み続けて銃撃する姿がすごく綺麗なのに感動して興味を持ちましたね・・・・自分はやりたくありませんが・・・

また騎兵も今期のアニメや映画に影響されて少し興味と憧れを持ってしまいましたね。
ただ『戦火の馬』で機関銃座に突撃する騎兵隊のシーンはひとつの時代が終わり、新たな戦術・兵器に移り変わったのを表しているように思えました・・・なんとなく悲しい・・・

なんとなく自分は何かしらの作品に影響されて、興味を持つ時代が遡っているのをここ最近感じるようになりました。
史学科へ進むことを決めた身ですが、あるアニメのお陰で中世の馬上槍試合について調べているのもふと考えると自分の興味は止まることを知らないように感じて笑ってしまう。

ではまた今度。
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