月下美人を枯らさぬようにと 作:諸行無常
すみません、成人式のゴタゴタでゴタゴタしてました。で、久々の投稿なのに超短いです。
あえて言おう、怠惰であると(キメ顔)
気を失った綾華が目覚める頃には、時刻は子夜を迎えようかといった時分になっていた。
急に取り乱したかと思えば、いきなり気絶してしまった綾華に何があったのだと尋ねようにも、一貫して赤面する彼女は消え入りそうな声で「いえ………」と言って俯いてしまうので、その真相は分からず仕舞いだった。まあ、年頃の女というものは理解するに易くない生き物だからな。
綾華が目覚めるのを待っていたのもあり、諫奈や葵を待たせてしまっているかもしれない。俺は重い腰を上げ、野太刀・黒椿を取りにいく。
「…家まで送る、お前も早く外に出ろ」
未だ心ここに在らずといった様子の綾華に、表に出るよう催促をするが、綾華はふるふると頭を横に振る。
「いえ、もてなして頂いた上にお送りしていただくなんて、さすがに申し訳ないです」
「もてなすも何も、俺は茶を淹れただけで、後は勝手に気絶してただけじゃないか」
「……蒸し返さないでくださいませ」
綾華が膨れっ面で作務衣の裾を引っ張ってくる。やめんか、この服は安くないんだぞ。
「物のついでだ。……まあ、お前に送ってもらうまでもないと言う事ならば、それはそれで構わんが」
「物のついで……ですか。このような夜更けにご用事があるのでしょうか?………あっ」
綾華が何かに気付いたような声を上げるなり、またしても赤面する。
「……おい。何か勘違いしてないか?夜這いに行くわけじゃないぞ」
別の女の所へ行くついでに女を送り届けるなど、畜生にも程がある。
「ご、ごめんなさい。日が日なので、早合点してしまいました…」
「…まあ、女を待たせていると言う事には相違ないが」
「……え?」
「油を売りすぎた。向こうからわざわざお出迎えに来たみたいだな」
キョトンした表情の綾華をその場に、俺は玄関の戸を開ける。
「もう、遅いですよ詠水くん!!もうちょっとで日付が変わりま………え?」
「詠くんは相変わらず時間にルーズだね。待ちくたびれちゃっ………え?」
戸を開けた先には、全く同じ間抜けヅラを晒す、
「はわ…はわわ……諫ちゃん!!詠水くんが女子を家に連れ込んでますよっ!?詠水くん!!説明を求めます!!」
「あわ…あわわ……急展開すぎるよ!!詠くん、これは一体…!?」
「あ、あの……詠水様、なぜ里守の巫女様と姫女様がいらっしゃるでしょうか?」
お前らいっぺんに話しかけるな。聖徳太子じゃないんだぞ俺は。
意外にも一番最初に冷静さを取り戻したのは諫奈だった。諫奈は綾華を見るなりハッとした表情になり、姫女モードに切り替わる。
「こんばんは、折鶴綾華」
態度を一変させた諫奈の挨拶を受けた綾華は、気絶して以来どこかボケっとしていた表情を、堅く改める。
「こんばんは、姫女様。先日はご足労いただきありがとうございました」
ご足労…?つい最近に、こいつらは会っているのか?
「一村民として一任された役割を果たしたに過ぎません。……折鶴綾華、貴女にとって大切な方に、柳包みをお渡しできましたか?」
ああ、そうか…今年からは、諫奈が柳包みを配り回っているから、二人は会っていて当然か。
「…そうですね、お陰様で渡したい方にお渡しできました」
綾華はそう言うと、気付かれないよう、こちらに目配せするなり、天邪鬼のような笑みを浮かべる。村の連中は姫女を前にすると、皆こぞって無駄に萎縮するというのにな…意外にも彼女は豪胆な一面を見せた。この女の人間性というものは、今まで会ってきた輩よりも、遥かに捉えにくいようだ。
ここまで、完全に蚊帳の外で目を白黒させていた葵だったが、諫奈と綾華の堅苦しい社交辞令を遮るようにして口を開く。
「えっと、詠水くん。こちらの女性は一体…?」
俺がどう答えたものかと考えている間に、綾華が葵の問いに答える。
「いつもお勤めお疲れ様です、里守の巫女様。私は詠水様より身に余るご厚意を賜った一村民に過ぎません。詠水様のお勤めをお邪魔してしまった事、お詫び申し上げます」
「あ、いえいえー、そんなつもりで言ったわけじゃないですし、そんなにかしこまらなくてもいいですよ。とても詠水くんと会話が成立するとは思えないほどしっかりした方ですね!!」
「お前はいちいち一言多いんだよ阿呆が」
「痛っ!?乙女の頭を引っ叩くだなんて信じられないです!!今ので死んだ脳細胞の慰謝料を要求します!!」
「お前の脳細胞は元から死んでるぞ」
「私は既にパンチドランカーだった…?」
「……綴火詠水。神繋葵。折鶴綾華が困っていますよ」
諫奈らしくもないマトモな仲裁を受け、綾華の存在を思い出す。滑稽な茶番を見せてしまったようだ。
綾華は困った…というよりも、どこか儚げで、どこか自嘲的な笑みを浮かべていた。
「皆様は……とても美しいですね。とても美しく、とても眩しいです。人の心とは、こんなにも通い合うものなのですね」
「折鶴綾華……?」
「姫女様、詠……綴火様のご都合を察せず皆様のお勤めを阻害してしまった事をお詫びすると同時に、これからも村を正しき姿へと導いてくださる事、厚く御礼を申し上げます。皆様、おやすみなさい。失礼いたします」
どこまでも固い挨拶を残し、綾華は逃げるようにして夜道を歩いていってしまう。
その純白を、闇夜が完全に覆い隠してしまった時、彼女は誰にも聞こえぬ声で独り呟いていた。
「臆病で卑怯な私は、あなたと対面するのが不安で仕方ありません…………姫女様」
そのか弱き声は、ツヅレサセの鳴き声に溶けた。
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「………で、誰なんですか?あの折鶴って方は?」
「……綾華が自分で言っていただろ」
「説明になってないですよこのスケコマシ。詠水くんが系名で呼び合ってる時点でフラグ立ってるようなもんじゃないですか。誰なんですか?あの折鶴って方は?」
「……諫奈に聞け」
「えぇっ!?私が折鶴さんに会ったのは昨日が初めてなんだよ!?私が詠くんに聞きたいくらいだよ!!」
俺は白い巫女と黒い巫女に挟まれ、不毛な問答を繰り返していた。
里狐の山へ向かう道中、綾華の話題になる事は分かりきっていた事だが、それでもやはり面倒臭い物は面倒臭い。知らぬ存ぜぬで通すのが一番平和だ。
「綺麗な
「茶を淹れた」
「で、その後にナニをしたんですかね?」
「テレビゲーム」
「いやいや、私じゃないんだからそんなわけないでしょう!?折鶴さんゲームとかやりそうな顔じゃなかったですよ!?あれは絶対に花とかを愛でてそうな、大和撫子の顔でしたよ!?」
「人を顔で判断するな低脳貧乳クソ駄目巫女。確かに花は愛でるが、存外ノリノリでゲームに食いついてたぞ」
「葵ちゃん。詠くんは嘘をついてないよ」
「えぇ………尚更意味がわからないですよ。でもどうせ柳包みを渡されたんでしょう?」
「さあな」
「あ、詠くん今ちょっと隠し事しようとしてた」
「……チッ」
勘の鋭さがカンストしてるような相手が、2人ともなると無理があるようだな。
「さすがは歩く生殖器ですね」
「…詠くんはなんだかんだ毎年違う女の子を連れてるよね」
ジト目の葵と諫奈に、横腹を肘で突かれる。針のむしろとはこの事を言うのだろう。
馬鹿どもめ。俺から優位を取ろうなど、あいも変わらず学習能力が低い連中だ。
「………俺は今、猛烈に走りたい気分だ。この夜道はたまに猪が出るらしいぞ。気をつけろ。じゃあな」
そう吐き捨て、俺は帯刀した打刀・朧紫乃月と佩いた野太刀・黒椿をカチャカチャと鳴らしながら、絹羽商店めがけて全力疾走を開始した。
「ああ!?ま、待ってくださいこの畜生!!悪魔!!私の未来の旦那さん!!うら若き巫女を置いていくなんて大幅減点ですよ!!」
「ま、待ってよ詠くん!!葵ちゃん!!姫女の巫女服じゃ走りにく……ひゃあっ!?」
「おい、葵。諫奈の馬鹿が転んだぞ」
「諫ちゃん!!安心してください!!骨は後で私が拾いますよ!!」
「えぇ!?まさかの見殺し!?」
やかましい罵声を互いに浴びせながら、半狂乱に疾駆する俺たちは、祭りという酒に泥酔した村の連中とさして大差ないものだっただろう。
だが、もとよりこいつらとはこういう関係だった。諫奈はいつだって馬鹿だし、葵はいつだって阿呆だ。そして、それに付き合う俺も大概だ。
全てが移ろいゆく中で、決して変わらない者は、お前ら二人だけだ。
だから、これからも変わらない。
涙目になって俺の後を追う黒白の巫女たちに、俺は根拠のない確信を描いていた。
全く話が進んでなくて草。3488文字ってなんやねん()