ジータちゃんが闇堕ちしたら……   作:もうまめだ

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名前を、決めろぉ!

第3話にも足を運んでいただきありがとうございます、もうまめだです。

兄弟の依頼主と長老が出てくるのですが名前を決めていないので、依頼主、長老という名前で出てきます。口調が違うので区別はできると思いますが。ちなみに、ぶっきらぼうなのだ弟の長老、丁寧なのが依頼主です


次話でタイトルを回収する!

それではどうぞ!


星晶獣アネバルテ

 この家は、島への居住を希望する者が最初に招かれる場所だと依頼主の説明を受けた私たちは商店街に立ち並んでいた店より二回りほど大きいその家に入り、廊下を抜けて、広めの応接間に通された。昔ながらの机や椅子に、他の島では見られない、奇抜だが目を引く装飾が施されたそれらはまるで価値のある芸術品で、壁には風景画とも抽象画ともいえる絵画が飾られたその部屋は、人という多種多様な存在をそのまま表現をしてるようで、そしてその奥に座っているひどく年老いた老人はこの場にはふさわしくないものと思われた。

 

 

「この島の長老で、私の弟です。名前は……」

 

「兄上、またこのような見知らぬ輩を連れてきたのか。私たちの島の問題は私たちで解決する、そういっただろうに」

 

 

 ひどくしわがれた声の主は依頼主の弟のはずなのに、見かけだけでは20歳は余計に年を取っているようだった。しわの多い顔にさらにしわを増やし、吐き捨てるように言葉を発する。それに対し依頼主は、私たちに申し訳ない表情を見せる。

 

 

「みなさん、お気になさらずに。もとはこんな性格ではないのです。しかし、やはり1年前ぐらいからでしょうか、島の異変が始まってぐらいからだんだんと変わってしまって。以前は、若者を信じ、自信と勇気を与えることを一として生きていたのですが」

 

 

 そして長老のほうを向き、優しい表情で話しかける。

 

 

「お前ががんばっているのも知っている。今まで雇った者が島を元に戻すことができなかったことも知っている。だから、ほんとにこれで最後でいい。この方々にこの島を救ってもらわないか。もし今回失敗したら私はもう何も言うまい。それが我々の命運なのだろう、手の打ちようはない。もしお前がこの方々を信頼できないのならそれでいい。だが協力してやってくれないか、この島の最後の希望に」

 

「俺からもお願いします。この島を助けさせてください」

 

 

 グランが立ち上がって頭を下げる。それにつられて私も立ち上がり続く。気づくと、応接間にいる全員が長老に頭を下げていた。

 

 

「……がいします」

 

「えっ?」

 

「よろしく……お願いします」

 

 

 顔を上げると長老が震える手に杖をもって体を支え、深々と頭を下げていた。その光景に私たち以上に驚いたのは依頼主だった。

 

 

「これは……すごい。ここ1年、弟が誰かに頭を下げるところなんて見たことがなかった。ましてや、今あったばかりの若者たちに。私もよろず屋の話を聞いた時点では話半分で聞いていたのですが、もしかしたら本当に、あなた方なら……。私からも、どうぞよろしくおねがいします」

と私たちに頭を下げるのだった。

 

 

 

 

「このりんご本当うめえなぁ!」

 

「ビィさん、それで3つ目じゃないですか?」

 

「あぁ、でも本当うめぇんだぜ、手が止まらなくてよぉ……」

 

「さっき食べたアップルパイとどっちがいいですか?」

 

「うーん、難しい……」

 

「そんなリンゴに埋もれるビィ君に埋もれたい……」

 

「カタリナ、依頼中だよ、しっかりして?」

 

 

 私たちの言葉と態度が心に響いたのか、長老は笑顔で私たちを歓迎してくれた。まるで10歳若返ったかのような明るい顔で島で生まれた様々な料理を机に運びながら私たちの質問に答えてくれるのだった。主にグランが質問するのを聞きながら、私は心の奥底を、暗く渦巻く本心をつつく存在に気づきつつあった。

 

 

「やっぱり異変は1年前からなんですか?」

 

「そうだねぇ、それまでは島には笑顔があふれて、活気があったんだが」

 

「その1年前に何か起こっていないんですか?」

 

「うーん、覚えはないな……、あぁそういえば、あのときはほかの時期に比べて島を離れる者が集中していたかもしれん」

 

「なるほど、それが星晶獣アネバルテに異変を起こした、というのは?」

 

「それは考えられにくいですね。本来アネバルテは人の心の支えとなる力を持つもの。その支えにより自信を取り戻すことはアネバルテにとっても喜びであるはずなんです」

 

「そうですか……、ルリア!、星晶獣の気配はどんな感じなんだ?」

 

「それが、島に入ってからずっとなんですが、どこにでもいるっていうか、どの人にもいるっていうか。よくわからないんです、ある一か所にいるってわけではないみたいで……」

 

「この子がよろず屋の言っていた星晶獣を感じ、力を吸収することのできる子ですか。本当にすごい力ですね、まさにこの子が言った通りなんです」

 

「へへぇ~」

 

「一か所にいないで、どこにでもいるっていうことですか?」

 

「いや、どの人にもいるっていうところだ。先ほども言ったが、アネバルテは人の心を支える星晶獣だ。つまり人の心の周りに常にいなくてはいけないということなのだ。この子はそれを感じ取ることができたのだろう」

 

「そうなるとアネバルテの捜索は難しいのかもしれません。本体しかいないのであれば、ルリアが気配を察知して場所を特定できるのですが、今回の場合のように多数に分裂している中から本体を探すとなると。本体が必ず出現する場所かあればいいのですが……」

 

 

 険しい顔をした長老が口を開く。

 

 

「必ず出現する場所か、ないわけではないが……」

 

「本当ですか! それならば今回の依頼も成功にぐっと近づくんです! それはどこなんですか?」

 

「それを教える前に、少しこの島のルールについて説明しなければなるまいな」

 

「島のルール?」

 

「そうだ。ルールというよりは、アネバルテが決めた制約だな……」

 

 

 再興の島。異変の起こる1年前までは復活の島とも呼ばれ、一度夢を失ったものが集う島として有名だった。しかしそれでは島民の数が増える一方だ。アネバルテの支えることのできる心の数には限りがあるだろうし、単純に島の面積は限られている。

 

「たくさんの方々が再興の島の評判を聞きここにやってきます。けれどもほとんどの場合彼らは、アネバルテに認められなければ島民になることはできない、というアネバルテ自身が古くに定めた制約については知りません」

 

「認められるですか? それは試験みたいな?」

 

「いいえ。どうやら心を支える力を持つアネバルテには我々人の心がわかるようなんです。そしてその力を使って、大勢来る島民希望者の中から、真に自らを再興したいものを選んでいるのです」

 

「でもそれを知る方法はあるのですか? アネバルテ自身が条件に合わなかったものを排除するんですか?」

 

「そんな野蛮ではない。その結果を知らせるのが長老である私の役目なのだ。まぁ、結果は当の本人がすでに知っているのだが」

 

 話が複雑になりグランも首をかしげている。ルリアにいたっては、ピンと跳ねる髪の毛がクエスチョンマークを描きそうだ。

 

「ふふっ、そんな難しいことではないんですよ。アネバルテに出会えること、それが島民となる条件なのです」

 

 

 島民希望者はまず初めに長老の元へとやってくる。そして長老から話を聞かされる。アネバルテによる島民になるためのルールだ。それは、アネバルテが会いに来ること。島民になるにふさわしい者の元には島に到着してから1日が経つ前にアネバルテがやってくる。

 

 

「だからわしは希望者にこう言うのだ。『一日後もう一度来なさい。もしお前が島民にふさわしければアネバルテがやってくる。実際にやってきたのであればお前は私にアネバルテの姿を報告しなさい。もしそれが正しければ、その時からお前は正式に島民となれる』、とな」

 

「そうなんですか。それでアネバルテの実際の姿とは?……、あぁこれは俺がここの島民になりたいから聞いているわけじゃなくて……」

 

 あせって素がでてしまうグランに対して、ハーヴィンの兄弟は微笑む。

 

「私たちは知らないのですよ」

 

「えっ? それじゃあどうやって……」

 

「アネバルテは島民になるにふさわしい者のところにやってきて、同時にその時から心を支えて始めてくれるのです。そしてそのやってくる姿は自分自身なのです」

 

「自分自身?」

 

「そうです。もしあなたを島民とふさわしいとアネバルテが思ったら、アネバルテはあなたの元へあなたの姿へやってくるでしょう。快活で自信を持ち、少しのおっちょこちょいを隠せないあなたの姿をして。まあそれは決してないでしょうが」

 

 依頼主に性格を見透かされているグランは少し顔を紅くして、それでもまじめ口調で応える。

 

「俺のところには来ないんですか」

 

「はい。ここは再興の島。心が沈んだものを支え、再び興し、そして見送る復活の島。あなたのように、すでに自信のある方は島民には向いてないのです。なのであなたの目の前にアネバルテがくることはない。アネバルテが出向くのは、自分の理想と現実の自分の差に劣等感を抱いて自信を無くし、それでもなおそれに抗い、努力しようとした結果心を病んでしまった者の元なのです」

 

 がたっと大きな音がして私は驚く。そして音を起こした張本人が私自身であることにさらに驚く。周りのみんなが心配そうな目を向け、それに耐えきれなくなった私の心は小声で無意識に大丈夫と告げ、まったく大丈夫ではない心を落ち着かせようとする。と同時に島に近づくにつれ大きくなっていた違和感、心の奥底をつついていた存在に気づいた。私はこの島の島民としてふさわしいのだ、私は……。

 

 

「自信を無くし、自らの価値を見失った者の元へアネバルテ訪れます。その姿は今の自分とは全く異なり、自信に満ち溢れ、輝き、自分が願った理想の姿なのです」

 

「理想の姿ですか。でも人っていうのは自分ではない他人に理想を描くと思うんですけれど」

 

「それは違います。確かに人は他人と自分を比較して希望を抱きます。あの人のように強くなりたい、かっこよくなりたい、背が高くなりたい……。無意識に様々で些細な希望を、他人と自分を比較して抱きます。けれども抱く希望は他人ではなく自分なのです。強い他人ではなく強い自分、かっこいい他人ではなく、かっこいい自分。結局私たちは、他人に変わるのではなく、私自信が自らを保ったまま理想に近づけることでしか納得できないのです」

 

 咳ばらいをし飲み物を飲んだ依頼主は話を続ける。

 

「話をもとに戻しますが、アネバルテは自分の理想の姿でやってきます。つまり長老への答えは、アネバルテは会いに来なかったけれど、理想の自分が会いに来た、というようなものです。もちろん勘のいいものは、その理想の自分が、アネバルテが姿を変えたものだと気づきますが。私は島民ではないので会っていないのですが、ここに住む島民は長老を含め、自分自身の姿に変化したアネバルテに一度会っています。しかしそれはアネバルテの偽の姿。無論、島民にふさわしくないもののところへアネバルテは来ないので、アネバルテの真の姿を見たことがあるものはほとんどいないでしょう」

 

「ということはつまり少なくとも仮の姿のアネバルテを探すには、自分に劣等感を持ち、」

 

「自信を失ってはいるが、その状況を払拭したい、理想の自分に近づきたいと強く願い、努力しているものがいることが条件です。その方のそばにいればやってきたアネバルテの仮の姿に会うことはできるでしょう。確実とは言えませんが、アネバルテに会うのにはそれが一番の方法なのです」

 

 

グランが一瞬、こちらを見た気がした。

 




読んでいただきありがとうございます。


今のジータちゃんの状態ですが…

(古戦場前)気分が落ち込み始めた

(古戦場中)気分が落ち込む原因を知った(団長らしからぬ自分に価値を見いだせない)

(古戦場後)気持ちを切り替えようてさらにがんばろうと決意したが、心の奥底には暗い感情が残っている

(これから)その状態が再興の島の島民にふさわしく、星晶獣アネバルテに……

という感じです。

できるだけ間をあけないで次話を投稿できればと思います。次もよろしくおねがいします。

あと、次からのアネバルテ捜索に参加するキャラを2人ほど考えているのですが、出してほしいキャラがいれば……とか言ってみる
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