雪風と風の旅人   作:サイ・ナミカタ

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第96話 嵐と共に……

 ――やはり、わたしは『始祖』に嫌われているらしい。

 

 タバサは悔恨に押し潰されそうになりながら、竜舎へ向かっていた。

 

 王都リュティスの上空は、彼女の心を反映したかのような分厚い雲に覆われている。

 

 ベルクート街のとある商店前でのやりとり――太公望から、ショーケースに並ぶ玩具ではなく、視線をガラス越しに何もない空へ向けるという形で、暗に『窓』による監視を受けていると伝えられたタバサは、行動や言動に細心の注意を払い任務に望んだ。

 

 そんな状況で訪れた、思わぬ好機。

 

 元オルレアン公邸の使用人トーマスに叛意を促すという形で、タバサ自身の心境をイザベラに伝えられるという絶好の機会に恵まれたのだ。

 

 蒼玉の瞳に深い悲しみを湛え、タバサは蕩々と語った。

 

 父シャルルを御輿として担ぎ上げ、ジョゼフ王を打倒しようとしていた派閥こそが全ての元凶であること。

 

 それを防ごうとした伯父に対して複雑な思いを抱いてはいるものの、確たる証拠があることからジョゼフが簒奪者だというのは無責任な噂であり、法的にも正当な王だということ。

 

 ゆえに、タバサには王家に逆らう意志がないこと。

 

 これらの事情を、切々と目の前の青年に――ではなく『窓』の向こう側にいるであろうイザベラへ訴えかけたのだ。

 

 事件の真相に迫り、行方不明の妹を捜すためにはイザベラとの関係改善が必須だ。とはいえ、表立って行動を起こせば不審に思われる。

 

 そこで、タバサはあえて従姉妹が()()覗き見ていた場面で、他者に伝えるところを盗み聞きしてもらうという状況を造り出した。

 

 直接彼女と対面して語るよりも、イザベラに「自ら情報を手に入れた」「他では明かせぬ本音を聞いた」という認識を持ってもらったほうが、より効果的だと考えたからだ。

 

 ……ある意味、太公望の『交渉術』を散々目の当たりにしてきた影響とも言える。それが良いのか悪いのかはともかくとして。

 

 ところが、そこへ思わぬ邪魔が入った。トーマスを思い通りに動かそうとしたギルモアが、タバサたち母娘が生かされていたのはジョゼフが姪を後添えに迎えるためだなどと放言したのだ。

 

 即座に「下衆の勘ぐり」だと切り捨てたが、その言葉が従姉妹姫に与えた衝撃は相当なものだったらしい。

 

 太公望と合流し、任務完了の報告をしにプチ・トロワの謁見室へ向かったタバサが見たものは、怒りと怯えがないまぜとなったイザベラの顔だった。

 

 ――そんな思いを知ってか否か、彼女の相方がぼやいた。

 

「今朝の姫殿下は、何やら様子が変だったのう」

 

 タバサは頷いた。普段から無理矢理自分を大きく見せようと威張り散らすイザベラが、あんな醜態を晒すことなど滅多にない。状況は悪化したと見て間違いないだろう。

 

 とはいえ、この場で太公望に相談を持ちかけるほどタバサは不用心ではなかった。

 

 まだ王城内、もっと言えば敵地にいる今、どこに目と耳があるかわからない。現に太公望も『姫殿下』などともったいぶった言い方をしている。普段からイザベラを『意地悪姫』などと呼んで憚らない彼が、だ。

 

 そんな彼曰く、任務終了以後『窓』は閉じているらしいが……再び開いたとき、タバサ自身にはそれを感知する術はない。

 

 自然と竜舎へ向かう足が速くなる。が、そんな彼女を引き留める者がいた。

 

 いや、正確には――。

 

「勤務明けか、リョボー」

 

「副団長殿!」

 

 太公望のぎこちない敬礼に応えたのは馬上に在った老騎士と、彼と組んで警邏任務にあたっていたらしき若い騎士であった。

 

 東薔薇花壇騎士団の副団長。確か、アルヌルフといった筈――記憶の糸をたぐるタバサを置き去りにしたまま、彼らの会話は続く。

 

「今から風竜でトリステインに戻るつもりか?」

 

「はい。あのう、何か問題でも?」

 

 髭をしごきながら、アルヌルフは言いづらそうに告げた。

 

「アルビオンがトリステインに宣戦布告したことは知っているな?」

 

 太公望は頷いた。

 

「今、その影響で国境や付近の街道がごたついていてな。治安維持のために西の連中だけでなく風竜隊まで駆り出されている始末だ。王宮で竜を借りるのはまず無理だろう」

 

「そんな……」

 

 北の空を見上げながら、アルヌルフはさらに続ける。

 

「おまけに、嵐が近付いてきているようだ」

 

 傍らで彼らの話を聞いていたタバサの眉が、ごくごくわずかに寄った。湿った空気が風となって少女の肌を嬲る。老騎士の言葉に偽りはない、これは大雨が降る兆候だ。嵐の中を好んで駆ける者はまずいない――輸送費として、それこそ目を剥くような大金を積まれでもしなければ。

 

(一刻も早くこの国を出たいのに……!)

 

 焦るタバサの心とは裏腹に、アルヌルフはとんでもないことを言い出した。

 

「まあ、こればかりは致し方なかろう。嵐と街道の混乱が落ち着くまで……そうだな、一週間ばかり街で骨休め、もとい待機しておれ。上には私から報告しておこう」

 

「そんなに!?」

 

「東方から来たお前は知らないのだろうが、この季節の雨は何日も続く。おまけにこの状況だ、リュティスに足止めされる者が大勢出ると見て間違いない。だから、早めに部屋を押さえておいたほうがよいのだよ」

 

 それから、ちらりとタバサのほうを見て付け加える。

 

「もちろん、お前の連れも一緒で構わんぞ」

 

 言い終えると老騎士は腰に差していた軍杖を抜き、呪文を口にしながら軽く一振りする。その途端、空中にぱっと紙とペンが現れた。それらを手にしたアルヌルフは手早く何かを書き記すと、太公望に手渡した。

 

「ボン・ファン街にある馴染みの宿への紹介状と、地図だ。ああ、代金なら気にせんで大丈夫だ。うちの連中がよく使うから、隊の予算に計上されている」

 

「いえ、あの……」

 

「どうした? ああ、そうか。トリステインが気になるんだな?」

 

 太公望が頷くと、アルヌルフは柔らかな笑みを浮かべた。

 

「そうか。ならば安心するといい。トリステインは侵略者どもに完勝。条約破りの恥知らず共は這々の体で逃げ帰ったそうだ」

 

 ぱっと笑みを浮かべた少年に、老騎士はさらなる安心を与えた。

 

「トリステイン側の被害はごくごく僅かに留まったらしい。どこかの街で略奪が起きたり、焼き払われたなどという報告も一切入ってきてはおらんぞ。だから、ほぼ間違いなくお前が滞在している魔法学院も無事だ。詳しくはこれに書いてある」

 

 そう言うと、くるくると丸められた複数の紙束を太公望に渡す。

 

「これは?」

 

「警邏中に手に入れてきた新聞社の号外だ、トリステインの最新情報が書かれている。宿に着いてからゆっくり読むといい」

 

 そう告げて踵を返した老騎士を、若年の騎士が慌てて追いかけてゆく。

 

「お心遣い、ありがとうございます!」

 

 感謝の言葉を背に受けながら、アルヌルフは心の中で大いに安堵していた。

 

(やれやれ。警邏任務にかこつけて、待ち伏せしておいて良かった……)

 

 王都を守護する騎士団の副団長という立場上、彼の耳に入る噂話の類は多い。そんな彼の元に、王女の影武者を務めたシャルロット姫が休む間もなく次の任務に駆り出された、という情報がもたらされた。

 

 直接手助けするわけにはいかないが、姫殿下のお役に立ちたい。そんな思いを抱いていた彼は、即座に行動を開始した。

 

 ガリアとトリステイン間の国境が現在どうなっているのかを、親しくしている伝令係からそれとなく聞き出したり。東薔薇花壇騎士団の中でいちばんの風の使い手であるカステルモール団長に、今週の天気についてさりげなく訊ねたり。

 

 結果として、彼の行為は無駄にならなかった。久しぶりにご尊顔を拝した姫君は幽鬼もかくやといわんばかりにやつれていたからだ。こんな状態の主君を嵐の中、それも未だ混乱が治まらぬ国境方面へ向かわせるなど、もってのほか。

 

 そう判断した彼は、シャルロット姫たち主従が出てくるであろう時刻に合わせて城へ戻れるよう調整を行い、ごくごく自然に彼らへ安全な宿を提供することに成功した。

 

 トリステインの情報源として新聞を手渡したことについても特に心配していない。大公姫殿下が文字を読めないなどということは、絶対にありえない。それに、人通りのある場所で、かつ同僚を連れている状態で受け取らせた。それもこれも、上に無用な疑いを持たせないための気配りだ。

 

 アルヌルフに冠せられた『花壇騎士団の執事長』の二つ名は、伊達ではないのである。

 

 そんな事情など露知らず、立ち去るふたりの騎士を見送った太公望は、満面の笑みを浮かべながらタバサへ振り返った。

 

「いや~、副隊長殿は実に太っ腹だのう! ありがたく、一週間ごろごろだらだらするとしようではないか!!」

 

 しかし、タバサは表情を変えることなく彼を見つめている。

 

「なんだ、不満か?」

 

 蒼い頭が上下する。

 

「トリステインなら心配なかろう。ちらっと確かめたが、合戦場は無人の浜辺。それも半日経たずに決着したとか。ならば民に被害はあるまい。無論、魔法学院もな」

 

 相変わらずの超速読である。しかしタバサは食い下がった。

 

「かもしれない。けど」

 

 煮え切らない様子の少女を見て、太公望はぽつりと告げた。

 

「これは命令だ」

 

 想像だにしなかった発言に、タバサは内心たじろいだ。それを見た太公望は、実に嫌らしい笑みを浮かべている。

 

「わしの上司から待機せよと命じられたのだぞ。おぬし、それに逆らうというのか?」

 

「でも」

 

「でももストもないわ! とにかく、この一週間は休むと言ったら休むのだ!!」

 

 わたしには関係ない。タバサはそう反論しようとして、やめた。このひとがこうと決めたらテコでも動かない。下手に逆らうよりも――。

 

「なら、行きたいところがある」

 

「ほう、どこだ?」

 

「王立図書館」

 

 少し考えるそぶりをした後、太公望は答えた。

 

「まあよかろう。本を読みながらだらだらするのも悪くない」

 

 勝った。タバサは己の勝利を確信し、内心拳を握り締めた。図書館なら様々な調べ物をすることができる。宿に籠もって無為に刻を過ごすよりもずっといい。

 

 それに、これまでタバサはリュティス王立図書館へ行ったことがない。長期間王都に留まることを禁じられているからなのだが、今回は特別に滞在の許可を貰っている……と、ここまで考えたところでタバサは気付いた。

 

(まさか、誘導された?)

 

 タバサが本の虫なのは周知の事実。そんな彼女が活字の世界に浸るのは、体調だけでなく精神を安定させうる良い休息になるだろう。主な目的が調べ物であっても、だ。

 

(一週間の滞在、空いた時間、疲労と焦り……おまけに彼自身も読書好き。それらを加味していたとしたら……)

 

 そう考え、改めて太公望に目を向けると――案の定、彼の顔には賄賂を受け取ってほくそ笑む悪代官のような表情が浮かんでいた。

 

「やられた」

 

「何の話だ?」

 

「しらじらしい」

 

「いいから、宿へ行くのだ!」

 

 イラッとしつつも頷くタバサ。その直後、くうぅ……と可愛らしくお腹が鳴った。

 

「ふははは、どうやら腹ごしらえも必要らしいのう」

 

 爆笑する太公望。直後、彼の頭に木の長杖が叩き付けられた。コーンという小気味の良い音が城壁内に響き渡る。

 

「痛いではないか!」

 

「うるさい」

 

 抗議しながらも笑い続ける太公望を、タバサは手にした杖でぽかぽかと叩く。

 

 そんな彼らを、金色に輝くふたつの瞳が城壁の影から見つめていたが……両人に気取られることなく軽やかに身を翻すと――その姿を消した。

 

 

○●○●○●○●

 

 ――ボン・ファン街。

 

 ガリア王都リュティスの中央を流れるシレ川、その中州に発達した旧市街からベルサルテイル宮殿の方向に伸びた街である。政治の中心地に最も近いこの場所には、様々な施設が存在していた。各国の大使館や王立図書館に銀行。王宮を訪ねた、或いはこれから向かう者たちが休息を取るための食堂や旅籠、彼らを相手に一稼ぎしようと立てられた屋台……。

 

 当然、往来する者たちも多い。タバサと太公望はその人混みの中を縫うようにして進んでいた。ちょうど食事時と重なったため、周辺からいい匂いが漂ってくる。

 

「宿へ着く前に、何か腹に入れるか」

 

 返事の代わりに、太公望の脇腹へ手刀が叩き込まれた。

 

「いきなり何をするのだ!」

 

「また笑った」

 

「わしは笑ってなどおらぬ。おらぬぞ~」

 

「嘘」

 

 端から見るとじゃれ合っているようにしか見えないふたりの耳に、悲鳴に近い叫び声が聞こえてきたのはそれからすぐのことだった。

 

「だ、誰か! そいつを捕まえてくれ!!」

 

 直後、ふたりの足下をすり抜けるようにして黒い影が走り去った。タバサは反射的に杖を構え、ルーンを紡ぐ。発動したのは〝風の縄〟の魔法だ。

 

「にゃう!」

 

 見えざる縄に捕らえられた影は、小さく鳴いた。地面に革袋が投げ出され、カシャンという音を立てる。声を上げた拍子に、咥えていたものを落としてしまったようだ。

 

「猫……?」

 

 捕まえたモノを見たタバサは小さく首を傾げた。

 

 黒い毛並みはぼさぼさで、あばらが浮いている。そんな状態の猫が食料ではなく貨幣入りの皮袋を奪って逃げたということは……。

 

(野良猫じゃない。食い詰めたはぐれメイジの使い魔?)

 

 ひとり思案に耽っていたところへ、足音が近付いてきた。

 

「捕まえてくれたんだね! 助かった」

 

 駆けつけた声の主は黒猫が落とした革袋を手に取ると、ふたりに向き直った。長身で細身の、女性と見紛う程美しい少年がそこに立っている。だが、彼が他者の感心を最も引き付けるであろうものはその双眸であろう。左目は鳶色だが、右目は宝石のように煌めく碧眼――つまり、左右の瞳の色が異なっているのだ。

 

「危うく一文無しになるところだったよ、ありがとう」

 

 と、そこまで述べたところで少年の表情が一変した。月目を大きく見開いたかと思うと、タバサに向けて大輪の笑みを浮かべる。

 

「ああ、なんて可憐な! まるで月夜に咲く花のようだ」

 

 そんな戯言を人通りの多い街中で恥ずかしげもなく叫んだ少年は、いきなりタバサの白く小さな手を取ると、その甲に口付けした。

 

「んな!?」

 

 無言で立ち尽くす少女に代わり、太公望が声を上げる。

 

「ぼくは美の探求のために、この地へ参ったのです。あなたのような美しい方に出会うためにこそぼくは存在しているのです! マーヴェラス!」

 

(なんだこやつは! この手の類はトリステインにしかいないと思っていたのだが、どうやらそういう訳でもないらしいのう……)

 

 心の中で辟易しつつ、太公望はタバサに耳打ちした。

 

「のう。こういう輩に関わると、長いぞ?」

 

 蒼い頭が同意するように上下する。身近に似たようなタイプの同級生がいるだけに、彼の言葉には説得力があった。

 

 少年の手を振り解くと、マントを翻して目的地へ向けて歩を進めた――そのとき。

 

 ……くうぅ。

 

 空腹に耐えきれなくなった腹の虫が、一斉に抗議の叫びを上げた。ぷるぷると肩を震わせる少女に、月目の少年が微笑みながら申し出た。

 

「財布を取り返してくれたお礼に、何かご馳走するよ」

 

「いらない」

 

「遠慮なんかしないで欲しいな。元はといえば、ぼくのせいであなたに恥をかかせてしまったようなものだし」

 

 少年はそんなことを口にしながら、タバサの前に回り込む。

 

「どいて」

 

「そうはいかないよ。このままあなたを帰したりしたら、男が廃る」

 

「関係ない」

 

 タバサが無理矢理にも押し通ろうとした次の瞬間。再びお腹がぐうと鳴った。滅多なことでは表情を変えない少女の頬に、うっすらと朱が差す。

 

「どうかぼくを立てると思って……」

 

 再びタバサの手を取ろうとした少年の前に、人影がぬっと割り込んできた。

 

「おいこら、わしを無視して話を進めようとするでない!」

 

「ぼくの勘違いかな? 君とは初対面だと思うんだけど」

 

 少年は不機嫌という文字を顔中に貼り付けている太公望に対して怯む様子もなく、無邪気な笑みを浮かべている。

 

「わしはずっとこの娘の隣におったではないか!」

 

「これは失礼。地上に現れた太陽があまりに眩しくて、周りが見えなかったんだ」

 

「自分で言ってて恥ずかしくならんか?」

 

「真実を語っているのに、何を恥じる必要があるんだい?」

 

 月目の少年は、呆れ果てたような太公望の視線をあっさりと受け流す。

 

「ところで、すぐ側にいたのなら……ぼくと彼女の会話を聞いていたよね?」

 

「おぬしが一方的に喋っとっただけだろうが!」

 

 こくこくと蒼髪が上下する。ところが少年は太公望の皮肉にも、タバサのつれない態度にもびくともしないどころか、にっこりと笑いながら言った。

 

「というわけで、是非とも食事に誘いたいんだけど……」

 

「断る」

 

「君も一緒にどうだい?」

 

「話だけなら聞いてやらんこともない」

 

 すわ騒動かと聞き耳を立てていた通行人たちが、一斉にこけた。タバサもその場でよろめきそうになった。すんでのところで耐えきったが。

 

「この近くにあるリストランテでね、ガリア東部の料理がオススメなんだ」

 

「わしはなまぐさが食えんのだが、そのへんは大丈夫かのう?」

 

「なまぐさって何だい?」

 

 即座になまぐさの定義について説明を始める太公望。タバサはなんだか目眩がしてきた。もちろん空腹のせいではない。

 

「大丈夫だよ。料理長にそう頼めばいい」

 

「酒はあるのかのう?」

 

「ガリア産のワインはもちろん、アルビオンの麦酒(エール)まで取り揃えてあるよ」

 

 くいくいとタバサがマントを引いたが、太公望は聞く耳持たず。

 

「果物や甘味などは……」

 

「そうだね、今なら苺かオレンジをあしらったお菓子がお勧めかな。ああ、そうそう。もちろんぼくの奢りだから遠慮はいらないよ」

 

「ふむ、悪くないように思える」

 

 少年は微笑みを浮かべると、近くの路地を指差した。

 

「決まりだね。それじゃ、行こうか」

 

 ……そういうことになった。

 

○●○●○●○●

 

 ふたりが案内されたのは、表通りから少し内側へ入ったところに構えられた小綺麗なリストランテだった。店内には貴族だけでなく、身なりの良い平民の姿も見られる。あまりお高くとまらず、それでいて品位を損なわない店構えだ。

 

「そういえば、自己紹介がまだだったね。ぼくはジュリオ。ジュリオ・チェザーレ。良かったら、きみたちの名前を教えてもらえるかな」

 

 席に着くなり、少年――ジュリオは己の名を告げた。

 

「それは本名?」

 

「実は子供の頃、悪友たちにつけられたあだ名でね。それがそのまま定着して、今に至っているんだよ。本名を告げたいところだけど、残念ながらそれは叶わない」

 

「何故?」

 

「両親が赤ん坊のぼくを孤児院の前へ置き去りにしたときに、名前がわかるようなものを残していってくれなかったからさ」

 

「ごめんなさい」

 

 タバサは素直に頭を下げた。

 

「気にすることはないよ。よく聞かれることだから、もう慣れているし」

 

 壁掛け黒板に書かれているメニューとにらめっこしていた太公望が振り向いた。

 

「理由を聞いても構わぬか?」

 

「なるほど。珍しい顔立ちをしていると思っていたけど、やっぱり君はガリア人じゃないんだね」

 

「ふむ、どうしてそう思う?」

 

「普通、ガリア人がぼくの名前を聞いたら『大王』のことを思い出すからね。だから、あなたも本名かどうか確認したんだ。違うかい?」

 

 同意を求められたタバサは頷き、ジュリオの発言に補足した。

 

「『大王』ジュリオ・チェザーレ。アウソーニャ半島の小国だったロマリア都市国家を現在の形にした張本人。軍務、政治共に優れた王として有名で、当時のロマリアは半島内部のみならず、ガリアの半分まで手中に収めていた。〝杖は振られた〟という引用句は彼の発言から生まれたもの」

 

 ジュリオがぱちぱちと拍手する。

 

「よく勉強しているね」

 

「常識」

 

「ガリアやロマリア人にとっては……だけどね。そのせいで、本名かどうかしょっちゅう訊ねられるんだよ。理解してもらえたかな?」

 

「うむ。しかし、そのような由来のある名では苦労するであろう?」

 

「ははは、まあね」

 

 苦笑するジュリオ。

 

 タバサとしても、それには納得せざるをえない。自身が似たような経験をしているからだ。

 

「面倒」

 

「何か言ったかい?」

 

 ふるふると蒼い髪が左右に揺れる。

 

「さて、ぼくの名乗りは終わったわけだけど……」

 

「タバサ」

 

「え?」

 

「タバサ。わたしの名前」

 

「失礼だけど、それは本当の名前なのかな?」

 

「わたしは名前を無くしてしまった」

 

「……すまない。これ以上聞くのはいくらなんでも無礼だね」

 

「あなたと同じ。もう慣れている」

 

 予想通り、ジュリオはタバサの名を本名だとは思わなかったようだ。それもそのはず、普通なら人間には決してつけない名を用いているからだ。

 

(彼の場合は過去の偉人と比較されて苦労してきた。極端な例えだけど『ブリミル』と名付けられたようなもの。けれど、何かが頭の隅に引っ掛かる。これは一体……?)

 

 猛烈な勢いで脳をフル回転させていたタバサは、はっとした。

 

 ガリア人なら、間違っても自分の息子に『大王』の名をつけたりしない。ロマリアの侵攻から始まった統治時代は屈辱の歴史そのものだからだ。何らかの気の迷いでそんな名を付けようとしてもガリア教区の神官が認めないだろう。子供の渾名にしても、周囲の大人が放っておかない。

 

(つまり、彼は少なくともガリア人ではない)

 

 ――他愛のない世間話を分析し、その中から重要な情報を抜き出す。

 

 太公望がよくやる手法だが、抜き出しはともかく話を持ちかけるのが苦手なタバサは全神経を集中し、彼らの一挙一動を見守ることにした。

 

「わしは太公望だ」

 

「よろしく、ミスタ・ジャコモ」

 

「タ・イ・コ・ウ・ボ・ウ!」

 

 名乗りの後にお約束のように発音を間違われ、大声で訂正を入れる太公望を横目に見ながらタバサはさらに思考を重ねる。

 

 彼はよく「ジャコブ」「ジェイコブ」と呼ばれる。これらは言語や綴りは同じでも、国や地方によって発音が微妙に異なる――所謂訛りのせいだ。

 

 前者はトリステインやガリア、後者は魔法学院に勤めているアルビオン出身の料理人が口にしていた。キュルケのご両親は当初「ヤーコプ」などと呼んでいた記憶がある。ゲルマニア方面だと、そう発音するのだろう。

 

 そのどれにも当てはまらない訛りに「ジュリオ・チェザーレ」という名前。おそらく彼はロマリア人だ。

 

 気付いた途端、タバサの目は北花壇騎士のそれに変化する。

 

(……この男、何者?)

 

 黒い外套を羽織っていたが、店に入った途端コートスタンドに掛けた。貴族のマントならそんなふうに扱わず、身につけたままでいるはず。腰に差しているのも軍杖かと思っていたが、よくよく見ると鞘に入れられている。つまり、杖ではなく細身の剣なのだろう。

 

 と、そこへジュリオが声をかけてきた。

 

「注文は決まったかい?」

 

 隣では、太公望が店員にプティングについての説明を受けている。

 

(お腹を空かせたままでは思考に悪影響が出る。それに、ここの代金はジュリオが持つのだ。遠慮せず、しっかり食べることにしよう)

 

 先程のお返しとばかりに、ささやかな嗜虐心がタバサの中で首をもたげる。本人たちは嫌がるかもしれないが、イザベラとタバサは間違いなく同じ血を引く従姉妹だった。

 

「レモンサワーと、白パン、鴨のロースト」

 

 愛想笑いを浮かべながら店員が復唱する。が、これでは終わらなかった。

 

「小芋の丸揚げ、極楽鳥のワイン煮込み、赤マスのパイ」

 

「ずいぶん頼むけど、そんなに食べられるのかい?」

 

 ジュリオの問いに頷くタバサ。

 

「鳥のあぶり肉、豚肉の蜂蜜漬け、ハシバミ草のサラダ、苺のパンケーキ……」

 

 ジュリオの愛想笑いが引きつった笑みに変わるまで、さほど時間はかからなかった。

 

 

 ――それから一時間後。

 

 リストランテ内は戦場と化していた。

 

「も、もうそろそろこのあたりで……」

 

 そうジュリオが告げた途端、酒瓶を片手に太公望が吠える。

 

「なぬ!? わしの酒が飲めぬか――ッ!!」

 

「うぷおッ!」

 

 グラスではなく瓶から直接ワインが注がれる。

 

「まだ足り――ぬ!!」

 

「がはぁッ!」

 

 顔こそ赤いが平然とした様子の太公望と、あきらかに限界域に達しているであろうジュリオ。

 

「おかわり」

 

「ウサギのシチューとバケットですね、かしこまりました」

 

 次々と料理を注文しては、残さず腹へ納めていくタバサ。

 

 山のように積み上がる空の皿、転がる大量のグラスと酒瓶。彼らの食卓だけが周囲から明らかに浮いている。

 

 ……それからさらに刻が過ぎて。

 

「ふう、食った食った!」

 

 飲んだ飲んだの間違いでは? などと考えながらお腹をさするタバサ。ふたりは知り得ないことだが、彼らのテーブルで消費された酒と料理は、この店の売り上げ一週間分に相当する。

 

「お客さま、お会計を……」

 

 立ち上がって店を後にしようとしていたふたりに、店員が近付いてきた。太公望は酔い潰れてテーブルに突っ伏したジュリオを指差して見せた。

 

「こやつがまとめて支払うことになっておる」

 

 去り際に店内で交わされた「金あるんだろうな」「ブリミル教の神官さまだし大丈夫だろう」という会話は、太公望はもとよりタバサの耳にも届いていた。

 

 

 ――紹介された宿への道すがら、タバサは太公望に尋ねた。

 

「気付いていたの?」

 

 ロマリアの神官が、何らかの理由でタバサに近付こうとしていた。その場で追い返してもいいが、相手の目的がわからない。

 

 だからわざわざ誘いに乗ったのかと暗に匂わせる。

 

「何のことだ?」

 

「いじわる」

 

 珍しく不満げな声を上げたタバサへ、太公望はニヤリと笑って見せた。

 

「ふふん、昨日の今日で相当疲れておるようだのう。たっぷり食べて飲んだことだし、ベッドに入ればすぐにいい夢が見られるぞ」

 

「夢……あ!」

 

 そうだ。なにもこんな人馬の往来する通りで会話せずとも、彼には〝夢渡り〟という機密保全に適した魔法があるではないか。

 

(こんなことも思い出せないなんて、彼の言う通りわたしは相当疲れているのだろう。おまけに、焦りから自分を完全に見失っていた)

 

 そう結論し、ぽつりと呟く。

 

「早く寝たほうが良さそう」

 

「そうであろう? ほれ、宿へ急ぐぞ」

 

 タバサは頷いた。イザベラのこと、あのジュリオというロマリアの神官について、それから……話したいこと、聞きたいことがたくさんあるのだから――。

 

 

○●○●○●○●

 

 網の目のように深く生い茂った灌木の影で、男は気配を殺し、息を潜めていた。

 

 標的は間もなく視線の先にある、小高い丘の上に現れる。何故なら、彼がそうなるように仕組んでいたからだ。

 

 男の手元には、この場に持ち込みやすく、かつ仕事の邪魔にならぬよう選び抜いたクロスボウと短矢(ボルト)が十本。矢尻には獲物を蝕む強力な毒が塗られていた。

 

 仕留め損なうことなどありえない。この数年の間に幾度となく繰り返し、既に欠伸が出るほど単調な作業と化しているのだから。

 

 程なくして標的が現れた。人目を引く蒼い髪と、仮に誰かが側を通りかかったとしたら十人中、十人全てが振り返るであろう美貌の持ち主だった。

 

 馬上から、何かを探しているかのように周囲を見回している標的へクロスボウを向けながら、男は小さく呟いた。

 

「恨むなら、己の才と――」

 

 ボルトをセットし、照準を目標の胸に合わせる。

 

「優しさを恨め」

 

 そして引き金を引こうとした次の瞬間。ザアッという轟音が彼を襲い――意識を暗転させた。

 

 

「またあの夢か」

 

 天蓋付きの豪奢なベッドに身を横たえていた男――ガリア王ジョゼフ一世は両手で顔を覆うと、自嘲気味に呟いた。

 

 しばし臥所でまんじりとせず過ごしていた狂王だったが、すぐに夢の世界へ戻れぬことを悟った彼は枕元に置いていた肩掛けを羽織り、窓の側へ歩いてゆく。

 

 それから冬用にしつらえた厚手のカーテンを乱雑に引くと、窓の向こうに見える大庭園が激しい雨に打たれていた。

 

「なるほど、この雨がお前を救ったというわけか。もしもこれが夢の中ではなく……」

 

 独りごちた後、小さく溜め息をつく。

 

 ジョゼフはガリアの王座についてから――より正確に言えば、弟を〝処分〟して以降、深い眠りにつくことができなかった。

 

 典医に症状を訴えれば、適切な治療を受けることができるだろう。なにせガリアは世界に名だたる魔法大国である。腕の良い水メイジの数はもちろんのこと、魔法薬の品揃えも他国とは比較にならない。しかし彼はそれをせず、あえて今の状態にあることを選んだのだった。

 

 ふいに雷光がジョゼフの顔を照らす。続いて落雷による轟音が彼の耳朶を打つ。

 

「おれも、あの空のようにあれたらいいのに」

 

 降りしきる雨を眺めながら、ジョゼフは独白する。

 

「なあ、シャルル。お前と将棋(チェス)をするのは……本当に楽しかった。この世界にお前ほどの指し手はどこにもおらぬ。お前がいなくなってしまってからというもの、おれは退屈と絶望で死にそうだ。この世の全てが色褪せ、孤独という名の毒が全身を蝕み続けている」

 

 王は背後を振り返った。そこには、彼自慢の『世界盤』が置かれている。

 

「おれの相手ができるのは、おれだけになってしまった。だからな、シャルル。おれはこの盤面で遊んでいるのだよ」

 

 巨大模型の側に歩み寄り、盤面を見渡す。

 

「この世界を盤面に見立て……人間を、国を、生きとし生けるもの全てを駒にしたのだ。ただおれの無聊を慰めるためだけにな」

 

 紡がれた狂王の言葉は虚空へと消える。彼の耳に届くのは雨音だけであった。

 

「もしもお前が今のおれを見たら、どんな顔をするだろう。いつものように肩を竦めて笑うのだろうか。それとも――」

 

 苦笑混じりの声でそう告げると盤の北方、海の上と砂浜にそれぞれ配置された駒を見遣る。艦隊と竜騎士で編成されたアルビオン空軍と、浜辺に展開した歩兵中心の陸軍。それを迎え撃つトリステインの軍勢はというと、騎兵と歩兵、わずかばかりの幻獣隊という貧相な有様だ。

 

「これだけ見れば、勝敗は明らかだ。普通はそう思うだろう? ところがだ、この差し手はおれが想像だにしなかった方法で戦局をひっくり返して見せたのだよ!」

 

 先程までとは一転。弾んだ声を上げると、ジョゼフは側に置かれていたトロール鬼の像を数体盤面に載せた。

 

「まだ注文した駒ができていないから、すまんがこれで勘弁してくれ。なんと、攻城用のゴーレム数十体に盾を持たせて、艦隊斉射を防いだというのだ! その報告を受けたときの衝撃がお前にわかるか、シャルル。おれには到底思い至らなかったことだ!」

 

 サン・マロンにはガリア王国空海軍工廠の他に、ジョゼフの命で造られた研究所が存在する。

 

 通称『実験農場』と呼び習わされるその施設では、ゴーレムやガーゴイルをより効果的に運用するための実験が日々行われていた。

 

 中でもジョゼフが特に熱を入れていたのが、攻城用ガーゴイルの建造だ。

 

 ガーゴイルは全てを指示しなければならないゴーレムと異なり、ある程度自立して動けるだけの知能を付与することが前提のため、繰り手の負担が圧倒的に少ない。

 

 ただし、精神力が続けばいくらでも作り直しができるゴーレムと異なり、破壊されたら再起不能になってしまう。そこで、材料を吟味し、さらに〝硬化〟の魔法で強化することによって敵の魔法や砲撃を受けてもびくともしない鋼の巨兵を造り、陸戦の主力とする。

 

 この案も両用艦隊と同様、ハルケギニア六千年の歴史において、誰も考えつかなかった革新的なものである。しかし――。

 

「おれはゴーレムやガーゴイルを攻撃に使うことしか考えられなかった。結局、常識という名の殻から飛び出せなかったわけだ。ああ、もちろん悔しいとも。だがな、それ以上に嬉しくてたまらなかったのだよ! からっぽだったおれの心に、小さな……本当に小さな喜びという名の炎が灯ったのだから!」

 

 まるですぐ側で弟が聞いているかのように、身振り手振りしながら説明する。

 

「おまけに、とんでもない切り札を隠し持っていた! いにしえより伝わる乗法呪文。王家の『ヘクサゴン・スペル』で艦隊を薙ぎ払い、その勢いでもって地上の軍勢を制圧してしまったのだ! そうとも、援軍が来ると確信していなければ、ゴーレムで守りを固めるなどという選択は採らなかったはずだ! かの人物は知っていたのだよ。かの地に〝風〟が吹き荒れることをな」

 

 ジョゼフは半日ほど前にこの報告を〝女神(ミューズ)〟から受け取った。そのときの興奮を弟と――シャルルと分かち合いたい。そんな表情でひとり語り続けた。

 

「もちろん、その前に起きた〝奇跡〟とやらも特筆に値するだろう。だがな、ここであえて最初に話した、ゴーレムで艦隊斉射を防いだ件に戻ろうと思う」

 

 そう言うと、盤のトリステイン側に配置されていた氷水晶の駒を摘み上げる。

 

「そもそもだ、これを思いついたヴァリエール公爵……おっと! 今はサンドリオン一世陛下、だったな。かの人物は融通の効かない、自分の領地を守ることだけに汲々としているつまらん奴だった。将や政治家としては間違いなく有能だが、定石から外れぬ面白みに欠けた人物だった。だったはずなのだ! それが、ここへ来て化けた! 王になって大胆になった? ありえん。実際に会ったことがあるがな、到底こんなことを考えつくような男には見えなかった。単におれの目が曇っていただけのことかもしれんが……」

 

 今から数年前、まだ弟が己の側にいた頃。ラグドリアン湖畔で夫を亡くした王妃を慰めるためという名目で開かれたトリステインの園遊会。病床にある父王に代わり、兄弟で出席したジョゼフはそこで件の人物と会話をする機会に恵まれた。

 

 王族であるにも関わらず、魔法が使えない。国の恥ともいうべき秘事は、しかし他国の王侯貴族たちに伝わっていた。蔑み、或いは哀れみの視線がジョゼフの元へ集う中で、数少ない例外がヴァリエール公爵であった。

 

 湖の底のような蒼い瞳に映っていたのは、王族に対するごく当たり前の敬意。久しぶりにそういった感情に相対することになったジョゼフは彼に興味を持ったが、結果としてそれ以上のものを見出すことは出来なかった。

 

 水の国の新王を模した駒をまじまじと見つめながら、ジョゼフは独白する。

 

「若い頃ならばいざ知らず、年老いた人間がこうも変わるなど、そうあることではない。伝統を守り、腑抜けた王家を不甲斐なく思いつつも取って替わろうなどとは露ほども考えていなかったであろう忠義の士が……王冠を譲り受けて軍の先頭に立ち、滅亡寸前の王国を奇策でもって窮地から掬い上げた。かの人物に一体何が起きた? おれは、それが知りたいのだ。お前もそう思うだろう? シャルル……」

 

 雷光が部屋と王の横顔を照らす。季節の雨が激しさを増して蒼宮グラン・トロワの頂点を激しく叩き続けていた――。

 

 

 




???「最近、誰かに見られているような気がする」

来た、見た、倒れた。ついに出ましたジュリオ・チェザーレ。
ルイ才コンビにはあれで通せましたが、残念! タバ太ズは引っかからなかった!

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