自宅訪問という言葉をご存知であろうか?
小学校の頃であれば家庭訪問、とでも言い表わせるものだが、しかし時にそれを大人になってと仮定すれば、意味は二つある。
一つは友達間で家に遊びに行く意味。そしてもう一つは――彼女が自分の家に彼氏を呼んで、かつ家族との顔合わせの意味。
瀧は今回、ある意味でその二つを同時に味わっていた。
ただ彼には特に緊張などはない。何分、既に四葉とはかなり仲を深めていて、更には――
「瀧くんがウチの孫の彼氏で安心や。初めて連れてくる言うもんやから、ちょっと身構えてたんやよ」
「朝のお婆ちゃんが三葉のお婆ちゃんだったのか……偶然ってすごいですね」
――今朝、瀧が助けたお婆ちゃんこと宮水一葉が彼のことを気に入っているからだ。
……先ほどの三葉のオハナシを経て、四葉が色々な空気を壊した後、四葉に事情を説明した瀧であった。その後、一葉が家に帰ってきて初顔合わせ――となるはずが、既に瀧と顔を合わせていたため、それも省略。
三葉もそれを知らなかったため事情を話すと驚いていたが、しかし恋人である瀧が一番の関門である一葉に気に入られていたことに安心した……というよりも、素直に嬉しかった。
今は一葉の前に瀧を中心として右に三葉、左に四葉が彼を挟むように座っており――
「っていうか四葉、なんであんたが瀧くんの隣におるん?」
「それは……ほら、将来のお兄ちゃん候補だし?」
「お、お義兄ちゃん候補……そ、それならしょうがないね!」
三葉は分かりやすく顔をニヤけさせて、四葉の言うことに納得する。全く以って、単純な姉だと思いつつ、彼女もまた三葉の恐ろしさを知っているため、そんなことを口にも出さないが……。
ちなみにその時に四葉と目があった瀧は、彼女の考えていることを理解できたのか、苦笑いをして彼女の肩にポンポンと手を置いた。
……三葉からすれば失礼な話であるが、今回と前回の一件でより一層仲良くなった四葉と瀧。恐怖の共感とは、このように結束力を高めることになるのだ。
「そ、それでお婆ちゃん。私、この瀧くんとお付き合いをしてるわけで……偶にでいいから、瀧くんの家にお泊まりしたいなー――とか思ってるんよ」
「……まあええんちゃうか? そもそも三葉はもう大人や。それにその子なら、三葉を無闇に傷つけはせんやろ」
一葉の視線が三葉から瀧に向かう。それは鋭い視線というよりも、彼を試しているような視線であった。
……もちろん答えは一つだ。
「その、偶にちょっと三葉を怒らせたりはするかもしれませんけど――絶対に大切にします」
「……やったら、別にお婆ちゃんから言うことはないわ」
一葉は湯飲みに入っているお茶をズズッと飲んで、それ以上は特に何も言わなかった。
対する三葉はホッと一息ついて、瀧の方に身体を少し寄せた。椅子の下で手を握ると、瀧は三葉の手を握り返す。
それをチラッと見ていた四葉は何とも言えなくなって、プクッと頬を膨らませる――と、同時に何かに閃いたように机をバンッと叩いて立ち上がった。
「わ、私もお姉ちゃんと同じで偶に瀧くんのお家に外泊したいんよ! ほら、やっぱり将来のお兄ちゃん候補とは仲良く――」
「そんなアホなこと言うてる暇あったら彼氏の一人でも見つけ。それにあんたは高校生で子供やろ」
……少しキツめの一葉の一言で一刀両断される四葉――それを見ていた瀧と三葉は苦笑いを浮かべるのであった。
ともあれ、瀧はこれで今日の役目を無事に果たせたと思った。そろそろ時間も良い頃で、そろそろお暇しようと荷物を持とうとする――も、その荷物は三葉と四葉の巧みな連携によって部屋の隅に放り投げられた。
さらにその手を二人によって握られ、動きを完全に拘束される。
「……は?」
「ダメやよ、瀧くん。今日は心置きなく宮水家を堪能してしてもらうんやよ」
「いやいや、もう充分……ってちょっと待て。それってもしかして――」
瀧は三葉の言いたいことを理解したのか、少し狼狽しながら答えを言い当てようとした時、宮水姉妹は悪戯な笑みを浮かべ――
「ねぇねぇ瀧くん。どうして今日四葉がお家にいなかったと思う?」
「し、知らねえよ。それよりも」
「――瀧くんが無事お婆ちゃんに認められた後でする、瀧くん歓迎祝賀会のためなんだよ? その食材とかの準備でいなかったんだー――これはもうお泊まり決定だね!」
……瀧の予想が的中する。
――彼女の家の初訪問に加え、初お泊り。しかも保護者と妹付きという、なんとも言えない状況になってしまった瀧であった。
●◯●◯
瀧はリビングで居た堪れなくなり、今はキッチンで四葉と隣り合って食材の調理をしていた。今日の晩御飯はみんなで突けるということで、親睦を深めるためにお鍋をすることになった。
そして今日の調理当番は四葉だったらしく、今は野菜を切って調理をしており、瀧はボールに鶏と豚の挽肉をミンチ状にして、何かを作っていた。
……ちなみに今日に関しては、三葉は全力で四葉と調理当番を代わって欲しいと思っていたりする。
「瀧くんは何作ってるの?」
「ん、つくねだよ、つくね。昔父さんがよく作ってくれたんだけど、鍋になら合うかなって思って。丁度材料も揃ってたし」
「へー。お姉ちゃんが言ってたから知ってるけど、結構料理するんだね」
「お前は逆に出来るのがめちゃめちゃ意外だけどな?」
「あ、それ失礼だよー。花のJKなんだから、料理くらいはね」
……四葉は楽しそうにそう軽口を叩きながら、瀧と楽しく料理をしていた。ちなみにその光景を見ていた三葉は羨ましそうな目で四葉を睨んでいるのだが、それを四葉が気にすることはない。
ただ、瀧と四葉の触れ合いと雰囲気は兄妹であると言われても不思議ではないほど自然であった。
「あの子はあれやな。宮水の女と相性がええなぁ。四葉もよう懐いとるわ」
「うぅー。あれは懐きすぎやよぉ」
「しゃんとしない。心配せんでも、あの子にはあんたしか映っとらんよ」
「それはわかってるやけどさー」
家族にしか見せない顔を三葉がするのを、瀧は横目で見て、不意に微笑みが漏れる。
あまり自分には見せない顔だ。たぶん四葉にも見せない、三葉の一葉にだけ見せる顔。
それを見れただけでここに来た意味はあったと瀧は思った。
……ただまぁ、彼も全く学習しない男ではない。三葉の許容範囲で四葉と親交を深めつつ、お鍋の用意をすること数十分。
瀧と四葉は下準備の済んだ食材を鍋の中に綺麗にいれて、そこに割下を注いでリビングの座敷のテーブルに設置してあるガスコンロに持っていく。
三葉によって既にお皿やお箸、お茶碗の用意はされており、そして――つつがなく、親睦会を兼ねた食事は進んでいった。
……ちなみに――
「そういえば、俺何気に三葉のお父さんに挨拶してないんだけど、大丈夫なのか?」
「あんな馬鹿息子、文句言うて来たらお婆ちゃんが言うたる」
「え、でも――」
「そうそう、それにうちは女家系だから、お父さんは肩身狭いんだよ? 特に糸守から出てからは頭が上がらないんやよ」
「感謝はしてるけどね~。でもお兄ちゃん認めないなら、絶交とかいえば何とかなるよ?」
「あ、そう――ところで四葉、ちゃっかりお兄ちゃんって呼ぶの止めろよ。しかもそれ、確実に義理って言葉は入ってないだろ」
……瀧は心の底から、まだ顔も見たことのない三葉と四葉の父親に同情するのであった。
――彼は覚えていないだろうが、そんな父親の胸倉を勢いよく掴んだことがあるのだが、そんなことを瀧が知る由もなかった。
ともかく、楽しい鍋パーティーは平和に進んでいった。瀧はこのときで完全に宮水家の女性陣とさらに仲良くなったのだった。
……彼女たちの父親よりも心が開かれているなどとは、口が裂けても言わないが。
○●○●
――結局泊まることになった瀧であるが、今は風呂を済ませて三葉の部屋……ではなく、畳の敷かれた一葉の部屋にいた。
なんでも一葉が瀧に話があると少し前に言って、それならばと瀧は快諾して現在に至る。
なお三葉は今、お風呂に入っているためこのことを知らないのであるが。
「そないところに突っ立っとらで、はよ座りや」
「あ、ありがとうございます」
「別に敬語はええ。あんたもワシの孫みたいなもんやからなぁ」
「……ならそうするよ、婆ちゃん」
瀧もその方が何故かしっくりと来たため、言葉に甘えることにした。
畳の上に胡坐を掻き、何故一葉がここに自分を呼んだのかを考える。もしかしたら実は自分のことを三葉の彼氏と認めていない? なんて考えたりと複雑な心境になっていると、見抜いたように一葉が言った。
「心配しない。別にあんたと三葉の交際についてとやかく言うつもりはないんやから」
「それなら何で――」
「――礼、言いたくてのぉ。三葉を幸せにしてくれて、ありがとうと言いたかったんやよ」
……瀧は、礼を言われるほどのことをしていないと思った。しかし、それを言う事は出来なかった。
何故なら一葉は、心の底からそう言っていたから――そんな真摯な態度の一葉の言葉を、否定することが出来なかったのだ。
「……糸守。ワシたちは代々あの地で神様と人間を『ムスブ』巫女の役割を賜っていたんやよ――まぁそれも、あの一件でお役目御免になってしまったんやけど」
「……ティアマト彗星の隕石落下」
「そう。あの災害でワシらはお役御免になった。んでな――あの時くらいからや」
……一葉は畳の一部に刺繍されている組紐の模様をなぞりながら、憂いた表情をしながら話し続ける。
「あの時から三葉はいつも何かを探しとった。形も何もない、自分でも覚えとらん『ムスビ』を求めてのぉ……いつもどっか寂しげで、見てるこっちが寂しくなるくらいに――でもあんたと出会って、三葉は本当に幸せそうに笑うようになったんやよ」
「……それは、俺も同じで」
「そう――それがムスビや。例え何かの拍子で断たれた糸も、もう一度結び直せば繋がる。そうやってあんたたちは、なるべくして出会ったんやと、ワシは思ったんやさ」
一葉は一つ、赤と橙色を基調にした組紐を取り出して、瀧に渡した。
瀧はそれを受け取ると、どう反応してよいか分からなくて一葉の顔を一度見る。
「……ワシは元気やけどな、たぶんそない長くない。あの子らには言うとらんけどなぁ」
「――どうして、俺に?」
「……あんたになら、三葉も四葉も任せてもええと思ったんやよ。一目見て、そう確信したわ――もし遺言残すなら、俊樹にあんたのこと絶対認めろって書くくらいや」
一葉は冗談交じりに笑いを交えるも、瀧は言葉の重みを感じた。
……反応は鈍い。突然こんなことを言われたことに驚いているというのもあるが、それ以上に――彼女からの『ムスビ』の話に何か面影を感じたのだ。
……瀧は考える。ここまで一葉に見込まれて、なんて言葉を返したらいいのだろうと。
「……何も言わんでええよ。こんなこと急に言われたら、困るんは分かってたんやさ。でもどうしても、言うときたくてな」
――考える。考えて考えて、瀧は考え抜いた。
正しい答え何てまるで分からない。そもそも何が正しいのかなんて分からない。
何を言っても軽く聞こえてしまうのではないかと、何を言っても肯定されてしまうのではないかと。
瀧は考えた――真に一葉を安心させることが出来る、心に響く『ムスビ』の言葉を。
……いや、そもそも考えるまでもなかったのかもしれない。
――瀧が次に口を開いたとき、瀧の口から発せられたのは考えていた言葉なんかではなかった。
それは自然に口から出てしまった、何気ない何の変哲もない言葉。それは……
「――ずっと、幸せでいるよ」
――それは「する」ではなく、「したい」であった。
「この先何があるかは分からないけど、でも俺たちは何だって乗り越えられると思うんだ。理由は分からないけど……何かさ、俺たちはもっと大きなものを乗り越えてきた気がするから」
その正体は分からなくとも、断言できることを瀧は続ける。
「だから、その――婆ちゃんが生きてる間に、三葉の晴れ姿を絶対に見せるから。そのために色々頑張るし……あ、でもこれって」
「――約束やで。言質、とったんやよ」
……一葉は心の底から優しいと表現できる表情で、瀧の頭を撫でる。
瀧は何かを言おうとするも、しかしその優しい手つきで何も言えない。
――どこかで知っている感触だ。何故かは分からない。それでもこの優しさを、俺は知っている。
……瀧はそう心に思いながら、しかし発言に後悔だけはしていなかった。結果的に瀧は言いたいことを集約し、言ったのだから。
「……そうか。あんたが――」
……一葉はふと、何かに気付いたような表情になる。
しかし、それ以上は彼の前では何も言わず、「そろそろ三葉の元に行きない」と言って、瀧を部屋から退出させた。
部屋には一葉が一人だけいて、そして小さな声で
「……やっと見つかったんか――あんたは幸せ者やよ、三葉」
そう、呟いた。
●○●○
瀧は三葉の部屋に来て、二人で就寝用の服に着替えてベッドの上で隣り合っていた。
しかし、三葉の様子が少しおかしいことに瀧はすぐに気付く。
「三葉? ちょっと顔、赤くないか? それに何か距離も近いし……」
「べ、別にそんなことないよ!? た、瀧くんといるときはいつもこんな感じだし!」
「いや、それにしたって何かいつもより――」
「そ、そないことより早く寝よ!? ほら、布団に入るんよ!」
三葉は何か慌てるように瀧を布団の中に引っ張り、電気を消す。瀧は三葉の行動が昼の時とは違い、余裕がないように見えて訝しく思った。
……しかしそれよりも
「お、同じ布団で大丈夫なのか?」
「……い、一回だけやけど、一緒に寝たでしょ? それに今日は……ずっと、こうやって」
……三葉は横になって、瀧を真正面からギュッと抱きしめる。お腹から背中に向けて手を回し、これでもないほどに密着した。
――この一連の行動は、三葉が瀧と一葉の最後のやり取りをこっそり聞いていたことが由来する。
要は簡単に言ってしまえば――瀧が三葉と結婚したいということを他の誰でもない一葉に断言したことが、どうしようもなく嬉しくて、瀧が愛おしくて堪らないのだ。
触れたい、キスしたい、もっと先の繋がりが欲しい……昼間よりもその欲求が強い三葉だが、しかし今は瀧からたったの一瞬でも離れたくないため、それが出来ない。
……更に強く彼を抱きしめる三葉。そんな三葉を見て、瀧は追及を諦めたのか抱きしめ返した。
「――抱きしめていてほしいんやよ」
「あのな、三葉。俺だって男で、こう密着されたら反応しちゃうんだよ」
「……き、気にしないから大丈夫! むしろ反応されて嬉しいっていうか……で、でも今日はダメ!! 色々あり過ぎて、たぶん今日しちゃったら心臓がドキドキで破れるんやよ!」
「――そんなはっきり言うなよ、まったく」
三葉の暴走発言に頭を抱えるように瀧は溜息を吐く。
……三葉の割と大きな胸の感触を何とか耐えながら、瀧は彼女の髪の毛を梳いた。
「――俺だから我慢できるんだからな? 他の男だったら、もう襲ってるんだから」
「……いいもん。瀧くんしか知りたくないんやから……っ」
「だーかーら! ――我慢してるんだから、そんなこと今は言うなよ。襲っちまうぞ?」
「……して、み、……みたら?」
「さっきと言ってることが逆転してんじゃん、この馬鹿娘は」
「ば、馬鹿とは失礼やよ、アホ――」
――最後まで言い切ることなく、三葉は瀧に襲われるような形で、抱きしめられながらキスをされる。
それを受けて、もう何も言えなくなってしまう三葉。
……瀧はそんな三葉の頭を、先ほどの一葉のように優しく撫でてあげた。
「……今日はもう、寝よう。ほら、三葉が寝るまでこうやって頭撫でといてやるからさ」
「……ありがと。思ったんだけど、瀧くんってさ――絶対に、良いお父さんになると思う。面倒見よくて、かっこよくて、たまに家事してくれて、子供たちに好かれるいいお父さんに」
「――お前だって、絶対に良いお母さんになるよ。綺麗だし、料理上手いし、裁縫できるし、優しいし……おまけに面倒見がいいし」
……二人は少し寝ぼけながらそう褒め合うも、その会話が何を意味しているのか、まるで理解していなかった。
だけどそれは確かに――いや、これ以上は蛇足だろう。
瀧に頭を撫でられながら、三葉は次第にウトウトと眠気に襲われる。そんな三葉を瀧は微笑んでみて、そして――いつの間にか二人は、眠ってしまった。
……その日の夢は不思議なものであったと瀧は、そして三葉は思った。
――瀧が見ていたのは、三葉が見ていたのは互いの夢であったからだ。
瀧が見る夢は、恐らくは三葉の高校生の時の夢。自分には知りもしないはずの景色を、瀧は見ていた。クラスで三葉の陰口を叩く胸糞悪い同級生に対して、机を蹴り飛ばす三葉の姿を見て、瀧はふと「あいつにもそんなときがあったのか」と笑う。
三葉が見る夢は、瀧とあと二人、仲がよさそうに歩く三人組の男子の姿だった。瀧は一人の男子に肩を組まれてまるで女子のように恥ずかしがって顔を紅潮させている。そんな少し可愛げのある瀧を見て、三葉は少し瀧が可愛く映った。
それからも様々な景色を二人を見て、それを見て何故か――懐かしい、と感じた。
――何故知りもしないことを、夢で見ることが出来るのか。それについて疑問を抱かず、二人は次第に意識を覚醒させていった……――
「――ん……なん、だ? この感触……」
瀧は目を覚ました。周りを見ると、外は既に薄明るく、首を部屋の時計に向けると、そこには短針が6の数字を示していた。
……瀧は朝ということを認識した上で、手の平に感じる艶めかしく弾む『柔らかい感触』について考える。握って離してもすぐに元に戻るそれの感触は素晴らしく、瀧は無意識に何度も強弱をつけて揉んだ。
その度に何か声を押し殺したような喘ぎが聞こえた。
「んん……なん、やのぉ? んんっ」
……んん? っと瀧は次第に状況を把握していく。
――先日三葉と同じベッドで寝た。そして今は、手には割と大きい何か柔らかいものがあり、更にそれを揉むことで聞こえる艶めかしい喘ぎ声。
――瀧は気付いた。抱きしめて寝ていたはずの三葉のパジャマが、いつの間にか胸元だけはだけていることに。
更に自分がそれを――三葉の胸を、服越しどころか直接揉んでいることに。
そして――三葉が既に起きてしまっていることに。
「瀧、くん……いつ、まで、触っ、てんのぉ? もう、私ぃ……あんっ」
「……………………」
瀧は固まる。しかし胸は揉む。何故だか分からないが、瀧はこの感触が手に馴染んでいた。もはや吸い付くと言ってもいい。
しかし彼はまだ気づかない――
「――それに、お尻になんか、固いもん、当たってるんよぉ……」
――男性の朝の生理現象を、思い切り三葉の臀部に押し付けていることを。それに気付いたとき、瀧は血の気が引いた。
瀧はすぐさま三葉の柔らかい胸から手を離し、バッとベッドから飛び落ちる。そのまますぐに立ち上がり、服がはだけた三葉を見た。
――三葉は紅潮した上に蕩けた目で瀧を見つめる。寝ぼけていることと、朝からの強い刺激によるものだが、それが艶めかしさを助長していた。
その上で三葉は――
「――瀧くんの、えっち……」
――さて、お気づきだろうか。
半裸の三葉、現状の瀧の状態。こんな状態で第三者に見られれば、どうなるか。
そしてこの家にいる、好奇心の塊のような少女の名前を。
――瀧はギギギっと、部屋の扉を見た。……そこは、数センチほど空いていた。
そしてそこから部屋を覗くように見ている、眼を。
「……た、瀧くんとお姉ちゃんが、あ、朝チュン……――一度ならず二度までもごめんなさいー!!!!!」
「ちょ、四葉待て! これには深い事情が!! ってか朝チュンじゃないからな!?」
「嘘や! お姉ちゃんおっぱい揉まれて喘いでたもん! ちょっと嬉しそうやったもん!!」
「……ほぇ? ――よ、四葉ぁ!? あんたまた私の部屋覗いてぇ!!」
「気付くの遅い!? それと本当にごめん三葉!!!」
――朝から宮水家は騒がしい。そんな三人の騒がしい声を聴いていた別室の一葉は、お茶をズズっと飲みながらふとこう呟いた。
「――若いって、えぇのぉ」
――その後、三人が何とも言えない状態になったのは言うまでもなかった。
はっは~、本日は糖分抑えめ(前半)で更新しましたぁ!
宮水家の女大集合! そんな中の瀧くんの振る舞い&最後のオチはね?
四葉ちゃんをオチに持っていくのがもう何か目に見えてたでしょう?
さて、今回でここまで三話の続き物のお話しは終わりで、ちょいと違う趣の話になります!
その辺りは次回からの更新をお待ちください!
それと前回の話の後の感想が凄まじい量になって、作者驚きです! 自分の疑問に答えてくれかた、更には感想評価してくださる方! 心の底からありがとうございます!
ちなみに短めにすると良いながらも今回も割と長めになりました(笑)
それではまた次回の更新でお会いしましょう!
「追伸」
……ちなみに本日、映画二回目を見に行きました。もうね、やべぇです。涙腺潤みまくりであと何回か見に行くことが決定しました!