レナの兄貴に転生しました【完結】   作:でってゆー

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魅音 詩音

「・・・・ここどこ?」

 

暇だったので散歩に出てた俺。

現在迷子です。

ちなみに場所は森の中、野獣に注意。

 

「まさかこんなことになるとは」

 

調子に乗って知らない道を進んでたら見事に迷子になった。

携帯とかはないし、あれ?終わったか?

 

「落ち着け。雛見沢はそこまで広くない。しばらく歩いてたら見慣れた場所に出れるさ」

 

行方不明になってガチ鬼隠しになるなんてシャレにならない。

焦る気持ちを抑えつけ歩き出す。

少なくとも夜まではだいぶ時間がある。

 

暗くなる前にせめて人がいる場所に出れればなんとかなる。

 

「しかし、こんなとこがあったなんてな」

 

住み慣れた雛見沢でまだ知らない場所があるのは普通に驚きだ。

この際鷹野さんが言った沼とかを探してみるのも面白いか?

 

いや、そんなことしてたら本当に戻れなくなりそうだ。

夜に電灯すらない暗く知らない場所で一人とか、大人でも普通に心細いわ。

 

「・・・・っ!?向こうから声が!」

 

歩いていると微かだが声が聞こえた。

迷ってから初めての人の気配だ、ここで逃すわけにはいかない!

 

「あっちか!?」

 

声のした方へ全力で走る。ほとんど勘だが、こういう時こそ礼奈の兄である俺の勘の鋭さを発揮する時だ。

 

「いた」

 

俺の視線の先には2人の少女が追いかけっこをしていた。

 

少女たちは同じ顔をしていた。違いがあるとしたら髪型ぐらいだろう。

 

片方はポニーテールで

もう片方は普通に髪を下ろしている。

 

髪の色は緑色。

 

なんというか俺の知っている人物にすごく似ている。

 

「まさか」

 

俺はそう呟いたと同じ時に少女たちも俺に気づき、走るのをやめてこちらも見る。

 

「・・・・だれ?」

 

ポニーテールの方の少女は俺を見てそう言う。

こちらをじっと見つめる二つの視線に俺は焦りながら口を開く。

 

「迷子です」

 

違う!事実だけど今言うのはそうじゃないだろう俺!?

焦りすぎて現状の報告してしまった。

 

「迷子?」

 

「まぁ本当に迷子だったりはする。ごめん、遊びの邪魔しちゃって」

 

「いいよ別に。ところで迷子ってどういうこと?」

 

ポニーテールの方は気にした様子もなく首をかしげながら聞いてくる。

ここで知らない道に調子に乗って進んで案の定迷子になったとは言いにくい。

 

なんとか誤魔化しながら事実を伝えたいところだ。

 

「・・・・森を歩いてたら森のくまさんに出会ってダンスをしてて気が付いたらこんなところに出てた」

 

「お姉ちゃん。この人大丈夫?」

 

「こういう時は適当に話を合わせればいいんだよ」

 

あ。完全にバカにされてる。

 

「冗談は置いといて、結構本気で困ってて助けてほしいんだけど。人が住んでるところまで案内してほしい」

 

「えーどうしようかなー?」

 

ニヤニヤと笑みを浮かねながらこちらを見るポニーテールの少女。

焦らしてくるじゃないか。こっちは迷子とお前らの登場で二重に焦ってるんだぞ。

 

「ちなみにどこに帰りたいの?」

 

「できれば古手神社あたりまで連れて行ってほしい。そこからなら自力で帰れる」

 

「古手神社か。うん案内できるよ」

 

「じゃあ!」

 

「ただし!」

 

俺が頼むと言おうとした瞬間。ビシっと指を俺に突き出してきた。

要求か、金ならないぞ!こんな迷子の子供から何をむしり取るつもりだ!

 

「今日1日。私たちと遊ぶこと!これが条件よ」

 

「・・・・なんだって?」

 

つまり2人の遊び相手になれってことか?

子供らしい要求で安心した。

 

この要求はこちらとしてもありがたい。

俺の予想通りなら原作のあの二人だ。

 

ここでぜひとも仲良くなっておきたい。

 

「いいよ。むしろ俺も暇だったからありがたいぐらいだ」

 

「決まりだね!私は園崎魅音、よろしくね!」

 

「私は園崎詩音。おねぇのわがままでごめんね」

 

やっぱり魅音と詩音か。

髪の色的にこの2人以外ありえないよな。

 

原作で主役級の登場人物である二人とこんなところで会うことになるとは思わなった。

これで一応、圭一君以外の同年代の登場人物とは会ったことになる。

 

「で?あんたの名前は?」

 

魅音がそう聞いてきたので俺も答える。

 

「竜宮灯火だ。よろしくな。魅音、詩音」

 

 

 

 

「よし」

 

花と花をつなぎ合わせ花の冠を2つ作る。

 

「すごいすごい!」

 

「おーやるね」

 

詩音が興奮気味に花の冠を見て、魅音も感心したように見ている。

田舎の雛見沢だ、やることなんて限られてる。

 

花の冠とかは礼奈たちと作って遊んでいたから完璧だ。

これでも毎日外で遊んでいる風の子だ、二人と暇をつぶすくらいは簡単に出来る。

礼奈や沙都子と一緒にいるからこの年の女の子の好きなこともわかるし。

 

「じゃあはい、二人とも頭下げて」

 

「「え?」」

 

俺の言葉に首を傾げながらも言われた通り頭を下げる二人。

俺はそんな二人の頭に先ほど作った花の冠を乗せる。

 

「うん、似合ってるぞ」

 

緑髪の2人に自然の花は非常に似合う。

前に悟史と二人でそれぞれ妹にしたことを魅音と詩音にもする。

 

礼奈達には非常に好評で、やっぱりこれくらいの年の子はこういった女の子らしいことが好きなのだろう。

 

そのまま礼奈にするのを同じ感覚で二人の頭を撫でる。

なんというか、礼奈や沙都子といるせいで同じ年齢のはずの2人が妹のようにしか見えないな。

 

まぁそのおかげで羞恥とかもなくこういったことができるんだけど。

 

「ちょっ!?何いきなり!?恥ずかしいからやめてよ!」

 

「あはは!おねぇ顔真っ赤!」

 

「う、うっさい詩音!」

 

ふ、初心な奴らめ。

 

・・・・なんか幼気な子を騙すみたいで辛くなったぞ今。

ていうか本当にそっくりだなこの二人。

髪型が同じだったら見分けがつかないぞ。

 

さすが原作で入れ替わっても全員気付かれなかっただけはあるな。

 

・・・・どっかにそれぞれの癖とかないかな?

それさえわかれば二人がどちらかわかるかもしれない。

 

たとえ些細なことでも注意深く見ておこう。

 

しかし魅音と詩音。2人と接触できたのはラッキーだった、たまには迷子になってみるもんだ。

 

出来ればこのまま友達になって礼奈達とも仲良くなってほしい。

・・・・しかし一つだけ気がかりなことがある。

 

「・・・・」

 

「ん?私に何かついてる」

 

無言で見つめる俺に首を傾げる詩音。

 

・・・・果たしてこのまま悟史と合わせていいものか。

 

正直、俺の中で原作での詩音の話はトラウマなのだ。

初めてひぐらしを読んだときは詩音が怖すぎて夜寝れなかったぐらいだ。

 

原作では悟史は雛見沢症候群を発症して叔母を殺し、行方不明になる。

その当時、悟史に惚れていた詩音は気を病んで落ち込む。

 

その後も色々な状況が重なり、詩音が雛見沢症候群を発症して何人もの人を殺してしまう。

 

・・・・今の段階で詩音が悟史に惚れてしまうとどうなるのだろう?

 

さっきから俺の頭の中で『混ぜるな危険』という言葉がちらつくんだよなぁ。

 

まぁ、ここは様子見だな。

 

別に雛見沢症候群さえ発症しなければそんなことにはならないんだ。

悟史を行方不明になんて絶対させないし、それなら詩音が悟史に惚れたとしても問題ない!

 

「そういえば2人って雛見沢に住んでるのか?見たことないけど」

 

「いや、私たちは興宮に住んでるよ。こっちには、ばっちゃに会いにきてるんだ」

 

「興宮か」

 

興宮は雛見沢から1番近い町だ。

魅音は園崎本家がある雛見沢にいると思ってたけど、今はまだ興宮にいるのか。

 

「そっちには行ったことないな」

 

「だったら今度こっちに来なよ!案内するよ」

 

「おお!それはいいな!ぜひ案内してほしい!」

 

魅音の提案に喜んで乗る。

興宮に行ったことがないのは本当だし、これなら次からも魅音と詩音に会うことができる。

 

「お姉ちゃんずるい!私も案内する!」

 

「えぇ、案内だけなら私だけでも」

 

「私も行くの!!」

 

嫌がる魅音に詩音が頬を膨らませて抗議する。

魅音が嫌がる理由がわからんが、とりあえず興宮の件は確定でよさそうだ。

 

さて、次の予定も決まった。

まだ時間もあるし、沙都子直伝の草結びトラップでも見せてやるか。

 

 

 

「あ!もう夕方じゃん!」

 

空を見た魅音が焦りながら立ち上がる。

なんやかんやで三時間以上遊んでいたな。

 

家までどれくらい離れてるかわからないが、さすがにそろそろ限界だ。

 

「・・・・もっと遊びたかった」

 

俯きながら小さな声でそう呟く詩音。

その姿が妹と重なる。

 

「・・・・じゃあ明日も遊ぶか?」

 

「え?」

 

俺の言葉に顔を上げる詩音。

そんな顔で言われたら、そうするしかないじゃないか。

 

内心苦笑いを浮かべながら詩音の言葉を待つ。

 

「明日も遊べるの?」

 

魅音も意外そうな顔で聞いてくる。

別に驚くことでもないと思うんだが、もしかして園崎家では同世代の子と遊ぶのを制限してたりするのだろうか。

 

「ああ、興宮だろ?明日行くよ」

 

明日は礼奈は親と買い物だし、悟史たちとも約束してない。

せっかく仲良くなったんだ、この縁を切りたくない。

 

「だから今日は帰ろうぜ。明日のことを考えながら笑顔でな」

 

詩音の頭を撫でながら微笑む。

うーん詩音も原作では怖かったけど、実際はそんなことないな。

まだ子供だからってのもあるだろうけど、もはや沙都子と同じで友達だけど妹のようにしか見えない。

 

なぜか詩音はボーッとして動かなくなったがしばらくすると急に笑顔になる。

 

「うん!」

 

花が咲いたような満面の笑みを見せた。

 

「いやぁ、灯火ってお兄ちゃんみたいだね。大人っぽいって言われない?」

 

笑顔の詩音を見ながら魅音がそう呟く。

まぁ大人って言えるほどの年齢ではなかったけど、それでも二人からしたら十分大人っぽく見えるのか。

 

「よくわかったな」

 

「え?」

 

キョトンとした顔になる魅音。

 

「俺には1つ下の妹がいるんだ。だからお兄ちゃんで合ってる」

 

そういえば礼奈にはすぐ戻るって言って出て行ったな。

やべぇ、絶対心配してる。

 

「そうなんだ。いやーなんだかその妹さんが羨ましいや」

 

「んん?なんで?」

 

手を頭の後ろで組んだ魅音が笑みを浮かべながらそう言う。

あれか、姉妹だからお兄ちゃんがほしいってやつか。

 

「灯火がお兄ちゃんかー。それは確かに」

 

詩音も俺の腕にしがみつきながら言う。

この数時間で詩音には一気に懐かれたな。

腕にしがみつく行動とか、礼奈と全く同じだな。

 

こういう行動のせいかどうしても礼奈と姿を重ねてしまう。

 

「・・・・じゃあなるか?」

 

「「え?」」

 

俺の言葉に二人の言葉が重なる。

 

「俺の妹に」

 

うん、勢いで言ったけど意外としっくりくる。

なんていうか二人は友達っていうか妹のほうが合ってるな。

友達は悟史みたいな感じ。

 

「「えええええ!!!」」

 

2人して大声で叫ぶ。あまりの息の合いように驚く。

 

「俺の妹になりたいんだろ?だったらしてやるよ。さぁ喜びな!!」

 

「ええーちょっと、ええー」

 

「あぅぅ」

 

顔を真っ赤にして慌てる2人。

 

そ、そんなに恥ずかしい?

いや客観的に見れば何を言ってるんだ俺って感じで恥ずかしいけども。

 

どうしよう、そう考えたらめちゃくちゃ恥ずかしくなってきた。

 

「あー、嫌なら別にやめても」

 

「「い、いやじゃないよ!!」」

 

2人の同時に発した言葉が重なる。

 

「お、おう。まぁ妹が1人や2人増えようが問題ないから」

 

2人の勢いに押されてそのまま妹の件は続けられる。

 

「えへへ、灯火がお兄ちゃんかー」

 

顔を赤くして照れる詩音。

嬉しそうに微笑む様子を見て微笑ましくなる。

なんだろう、妹って考えたら急に悟史に渡したくなくなってきた。

 

 

「じゃあそういうことで決まりだな。悪いけど道案内を頼む」

 

あと少しで日が沈み、夜になってしまう。

ここから古手神社がどれくらいあるかわからないが急いだ方がいいだろう。

 

「そうだね。こっちだよ」

 

魅音を先頭にして出発する。

 

そして5分後。

 

「着いたよ」

 

「はや!!」

 

全然遠くないじゃねーか!

この距離で迷子なんて言ってたのか俺は!?恥ずかし!!

 

「魅音!こんなに近いならそう言ってくれれば」

 

「それじゃあつまらないじゃん」

 

「・・・・生意気な妹にはお仕置きだな」

 

「あはは!逃げろー!」

 

「じゃあね!また明日!!」

 

2人はそのまま俺に背を向けて帰るかと思ったら2人は同時に振り返り

 

「「またねお兄ちゃん!」」

 

綺麗な笑みを浮かべた2人の笑顔がそこにあった。

2人はそれだけ言うと今度こそ家に帰っていった。

 

「・・・・これが双子姉妹の破壊力か」

 

思わず固まってしまった。

 

「それにしても今日も疲れた。まさか迷子から魅音と詩音にあって、さらに2人の兄貴になるとは」

 

2人の笑顔を思う出しながら歩いているとあっという間に家に着いた。

 

「ただいま」

 

「あ!お兄ちゃん遅い!!」

 

扉を開けるとすぐに礼奈がやってきた

 

「悪い悪い。ちょっと道に迷ってな」

 

プンプンと怒る礼奈に謝りながら家に入る。

 

「お兄ちゃん!礼奈すごく心配したんだよ!あとちょっとで探しにいくところだったんだよ!」

 

「悪かったって。お詫びに俺のプリンやるから許してくれ」

 

「プリン!?しょ、しょうがないなー今回だけだよ?」

 

ちょろすぎだぜ我が妹。

仕方ないっというかのように腕を組んでいる礼奈に思わず笑みを浮かべてしまう。

 

「礼奈。1つ聞きたいんだが」

 

「何かな?かな?」

 

「あーその、俺がお兄ちゃんで良かったか?」

 

「ふん?」

 

「いや・・・・俺は悟史と違って適当だからさ。あんまりお兄ちゃんっぽくないかなって。沙都子が羨ましいとか思ってないか?」

 

俺が少し緊張しながらそう聞くと。

 

「もう、何言ってるのお兄ちゃん」

 

礼奈は腰に手を当て頬を膨らませる。

 

「礼奈のお兄ちゃんはお兄ちゃんだけだよ。沙都子ちゃんには悪いけど、悟史君よりお兄ちゃんの方がずっとずっとかっこいいもん!」

 

思わず見惚れてしまうような笑顔をそう口にする礼奈。

 

「・・・・礼奈!」

 

礼奈の言葉に感動して礼奈を抱きしめてしまう。

何この子!可愛すぎるんだけど!

 

「おおおおお兄ちゃん!?」

 

いきなり抱きつかれて慌てる礼奈。

そういえば礼奈から抱きついてくることはあっても俺からは初めてかも。

 

「あ、悪い。つい勢いで」

 

俺が慌てて離れようとすると

 

「だ、大丈夫だよ!もっと強くしても良いんじゃないかな?かな!」

 

礼奈がそういうのでそのまま抱きしめる。

 

「あ、そうだ礼奈」

 

「ん?何かな?かな?」

 

「お前に姉妹ができたぞ」

 

「ふえ??どういう意味?」

 

「んーそのうち教えてやるよ」

 

「ええ!?お兄ちゃんどういう」

 

「ちょっと灯火、礼奈。廊下で何してるの?」

 

廊下で抱き合っているのを母に見られてしまった。

 

「あぅ・・・・」

 

顔を真っ赤にして離れる礼奈。

 

「ご飯出来てるわよ。早くきなさーい」

 

そう言ってリビングに消える母。

俺たちもリビングに向かう。

 

「礼奈」

 

俺はリビングに向かう足を止めて礼奈に向き直り

 

「俺も礼奈が妹で良かったよ。沙都子でも梨花ちゃんでもない。礼奈が妹で本当に嬉しい」

 

俺が笑顔でそう言うと

 

「はう!!!!!」

 

真っ赤になった礼奈の顔からボンッと音をたて、そのまま真後ろに礼奈は倒れた。

 

 

 

今日も1日幸せでした。

 

 

 

 

 

「「聞いて聞いてお母さん!」」

 

遅くに帰ってきたと思ったら、興奮気味にこちらに飛び込んでくる魅音と詩音。

 

「どうしたんだい?そんな嬉しそうな顔をして」

 

ここまで2人の嬉しそうな顔を見るのは久し振りだ。

2人を抱き留めながら続きを促す。

 

「えへへ。実はね」

 

魅音が嬉しそうにニヤけながら、詩音が見たことないような幸せな顔をしながら今日のことを報告してくれる。

 

「「私たちにお兄ちゃんができたの!!」」

 

2人の声が綺麗に重なる。

 

「ほぉ・・・・詳しく聞こうじゃないか」

 

何やら面白いことになってるねぇ。

 

とりあえずうちの娘達を誑かした男の話を聞こうじゃないか。

 


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