学生運動のシヴィルウォー ーハイスクールD×D外典 作:グレン×グレン
とりあえず、これを読めばなんでアンチ・ヘイトを付けたのかよくわかり、どういう方向でアンチ・ヘイトがついたのかよくわかる話になっております。
このプロローグでイケるかイケないかわかるプロローグにしてみました。
この世界には、数多くの神々が存在する。
ギリシャを中心とするオリュンポス。北欧を中心とするヴァルハラ。中国に本拠を構える須弥山。
人間の世に宗教として、そして架空のものである神話として語り継がれるそれらは、その多くが確かに存在する。
その中で最も大きな勢力とは、もちろん聖書の教えであるキリスト教である。
唯一神YHVHをあがめる天使。そこから欲望に堕ちた堕天使。そして彼らと対をなす欲望を肯定する存在悪魔。
この三勢力は長きにわたり争いを続け、そして今は小康状態を保っていた。
そして、その長きにわたる時の中、多くの思想に枝分かれをしていたのである。
その悪魔の中で、一つそこそこ大きな出来事が起きた。
72柱の一つにして、今代の魔王ルシファーを輩出したグレモリー。そして同じ72柱であるフェニックス家との婚姻問題である。
そして今この婚約パーティの場において、その婚約は解消された。
リアス・グレモリーの眷属悪魔である兵藤一誠。彼に宿りし力である赤龍帝の籠手の神の領域。赤龍帝の鎧の力が、婚約者であるライザー・フェニックスを打ち砕いた。
厳密には打ち砕く直前で力は消えた。だが、あきらめない兵藤一誠の知恵と勇気と信念が、その直前でとどまった勝利の道を踏破したのだ。
そして、リアス・グレモリーの婚約は解消された。
「よっしゃ! それじゃあ帰りますか部長!」
イッセーはそういうと、その前にグレイフィアからもらっていた紙を取り出した。
もともと負けたときのために渡されていたものだったが、しかし今使っても問題ないだろうとの考えだった。
「主役は遅れて登場するとはよく言うけど、さすがの大活躍だねイッセーくん」
「全くですわ。かわいい子だとは思ってたけどこんなにかっこいいだなんて思っても見ませんでした」
「・・・優秀賞です」
眷属仲間にして先輩である仲間たちも次々にほめたたえる。
その光景に、イッセーは誇らしげな気持ちになった。
自分のやったことが正しいかどうかはわからない。だが、主の望まぬ婚姻を食い止めたことは間違いなく誇れることだ。そしてそれを仲間たちも望んでいた。
なら、迷うことなんて何もない。
「・・・これはこれは。婚姻を引っ掻き回してずいぶん楽しげだな、ミスグレモリーとその眷属は」
その空気に、一筋の冷気が流れ込んだ。
棘があるのを隠そうともしないその言葉を受けて、リアスは鋭い視線を向けて振り返る。
「久しぶりね、ドロニル・ベリアル」
「ああ、貴族同士での会合パーティぶりだな、ミスリアス・グレモリー」
そこにいたのはまるで朝顔のような薄紫の髪を世まで伸ばした、美女だった。
その立ち振る舞いはリアスのように優雅で、しかし抜き身の日本刀のように鋭い。
そしてその視線に明らかな軽蔑の色を浮かべて、ドロニルと呼ばれた彼女は冷笑を浮かべた。
「いやなに。俗な大衆が好みそうな展開ではあるだろう。愛の無い婚姻から逃れるべく試練に挑みしかし破れ、されど優雅さからほど遠い不器用な男が勇気を持ってそれを砕く。ああ、物語として出されれば間違いなく需要があるだろう。相応に金をとれるものではあるな」
「それはどうも。貴族様としては駄作といいたいのがよくわかるわ」
一歩も引かず鋭い視線を返しながらのリアスの言葉に、彼女は言葉を濁すことなく悠然と態度で返す。
「凡俗と同等の行いをもってして満足とは、やはり貴様等は魔王の血族にふさわしくないな」
そこにあるのは完全な軽蔑。
自らに比べ薄く軽いものを見るときに、そしてそれらを侮蔑するときに見せる感情だった。
「表向きの理由をちゃんと作っていたとはいえ、大方あの方のことだから勝算があり望みもわかっていたうえでのあの戯れだろう。ルシファーさまは時々悪ふざけが過ぎるといわざるを得ない」
「・・・その言葉は不敬に当たるのでは? いくらベリアル家次期当主とはいえ、おごり高ぶっていると受け取られかねませんよ」
「それはすまんな木場佑斗。まあ、自ら定めた期間を無理やり繰り下げて婚姻を推し進めようとしたグレモリー卿とフェニックス卿に非がある以上、外野がとやかく言うのも無粋の極みさ。事実、相手が悪魔である以上要求に対して対価は必須だ。ああ、小娘でしかないミスリアスにふさわしい展開でしかない」
「言ってくれるわね、ドロニル・・・っ!」
家族全員等しく愚かと、言外に込めるドロニルに、リアスは殺意すら込めてにらみつける。
そしてその視線を心地よさそうに、ドロニルは余裕の笑顔を浮かべて泰然自若とする
そして、その視線がイッセーに向いた。
「赤龍帝、聞きたいことがある」
「お、俺の名前は兵藤一誠だ!」
「そのような凡俗の名より栄えある赤龍帝の方が雅だろう? それと下級風情が上級相手に敬語を使わんとは何事だ、次同じことをすれば今度は私と戦ってもらうぞ」
一瞬だけ殺意をぶつけてイッセーをけん制しながら、ドロニルは問いを投げかける。
「・・・戦いを見る限りこの戦いで左腕を差し出したようだが、それですべてが解決すると本気で思っているのか?」
それは、純粋な確認だった。
「どちらにせよ貴族の跡取りとなればそれにふさわしい相手を選ぶ必要がある。何より貴族の婚姻に必要なのはそれに見合う立ち位置であり、そして貴族の婚姻とは地位を盤石にするための取引だ」
「・・・できれば、貴族とか関係なく一人の女の子として愛してもらいたいっていうのは、そんなにひどいことなんですか?」
「下らんたわごとだな」
イッセーの言葉を鼻で笑い、ドロニルはさらに続ける。
「仮にミスリアスがそれを条件にしているとして、そんな馬鹿げたことを考慮するわけがない。これからも同じ事態は幾度となく起こるだろう。・・・赤龍帝を配下にする主とはそれだけで価値があるのだ。声をかけるものなど両手の指ではきかん」
そして、その一つをどうにかするために安くない代償を彼は支払った。
「その時、貴様はどうするつもりだ? また同じように体を差し出せるのか?」
このとき、ドロニルは彼が動揺すると考えていた。
目の前にいる男は命をやり取りを意識したことすらなさそうなものだ。そんなことまで考えているとは思えない。
その動揺から、どうやって乗り越えるのかを彼女は狙っていた。
「んなもん、当たり前じゃないですか」
・・・ゆえに、即答で返されて彼女は目を丸くした。
「・・・躊躇なく言ったな」
「いや、そりゃそうでしょ。必要なら次は右腕だし、それでだめなら今度は目とか・・・あ、でも全身龍になったら今度はどうしたらいいんだろ?」
なんのこともないように言い切られ、ドロニルだけでなくリアスたちも目を丸くした。
「ドロニルさんはわからないかもしれないけど、部長は本気でただのリアスを愛してくれる人と一緒になりたいって思ってる。そりゃ貴族とかそういうのだと避けられないことがあるかもしれないし、我が儘かもしれない。だけど、せめて望み通りの結果になるためにできるだけ頑張るぐらいのこと誰だってしていいはずだと思います」
特に気負うことなく、イッセーはそうドロニルに告げる。
「俺はそんなリアス部長が大好きだから、それが俺にできることだっていうならそうするだけです」
何の迷いもなく、ハッキリとそういわれ、ドロニルは唖然とし―
「―ハハッ! そこまで自然に覚悟できるなら、外野がこれ以上何か言うまでもないか」
声を出して笑っていた。
冷笑でも嘲笑でもなく、本当に年相応の笑顔を浮かべられ、イッセーは思わず顔を真っ赤にする。
そこに、鋭い視線が一誠に突き刺さった。
「・・・節操無いですイッセー先輩」
「あらあら。イッセーくんはドロニル様みたいな女性が好みなんですか? どうしましょう、私ドSですけどタイプが微妙に違いますわ」
「イッセー! あんなことを言っておいて目の前で挑発してくる女に顔を赤らめるなんてどういうつもり!?」
「ひぃい!? なんかわからないけどごめんなさい!!」
突然の女性陣の猛攻にイッセーはビビるが、それを気にせずドロニルは踵を返した。
「よくわかった。今宵はここで失礼しよう」
「お帰りですか?」
1人警戒心を残していた木場佑斗がそう告げるが、ドロニルは気にもしない。
「ああ、貴族の決意が足りん餓鬼に説教でもしようかと思ったが、ここまで貫いているならその意味もないだろう」
そういうと、ドロニルは一度振り返って威風堂々と胸を張る。
「覚えておくがいい赤龍帝! 私はベリアル家次期当主ドロニル・ベリアル! いずれ君たちと対立することとなる女だ!!」
・・・この日、冥界の歴史に名を遺すことになる者たちの初めての会話がおきたことを、気づいたものなど誰一人としていなかった。
その数週間後、日本に4人の少年少女が降り立った。
全員が十人いれば少なくとも五人、多い時は全員が振り返るであろう美男子と美少女。
そしてその表情も四人四色。
「ああ、帰ってきたわよ我が故郷日本! うん、何年ぶりかしら!」
「いや~俺も久々だねぇ。日本は酒は飲めないけど飯はうまいから好きだよほんと。稼いだら日本を根城に過ごすとするかねぇ」
たのしげに周りを見渡すもの。
「・・・まったく、2人とも真剣になれ。私たちはこれから決死の覚悟で任務に当たらなければならないんだぞ?」
特に感情を見せず、しかし緊張感をにじませるもの。
「・・・ふん。信仰のにおいがほとんどしない。八百万などとか言うふざけた価値観に染まっただけのことはあるな」
露骨に嫌悪の感情をあらわにするもの。
それぞれ違った感情を浮かべながら、五人はしかし迷うことなく前へと進む。
これが、一歩間違えれば三大勢力の滅びを生み出しかねない戦いの始まりだとは、まだ誰も知らない。
この作品の方向性はただ一つ。
「普通にすごい対立派閥があれば、D×Dのアンチってへったんじゃねえの?」です。
なんでハイスクールD×Dのアンチ・ヘイト作品は多くてしかも人気のある作品すらあるのかを真剣に考えた結果、自分がD×Dに対する数少ない不満点「大物感のある敵がいない」が理由ではないかと考えました。
D×Dはわかりやすい勧善懲悪が基本で、ベクトルとして昔の少年漫画のノリだと考えていますが、それが逆に受け入れないのではないかと思いました。
と、言うわけでこの作品です。さて、アンチ・ヘイトな方々は気に入っていただけたでしょうか?