学生運動のシヴィルウォー ーハイスクールD×D外典   作:グレン×グレン

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圧倒的格上を脅す方法 A、ピンポイントを集中攻撃すると脅すこと

 

 その日の夜、オカルト研究部は旧校舎の一室の前に集まっていた。

 

「なんですか? この明らかにはいんなオーラが出てる部屋。外見的にもオーラ的にも拒絶が漂ってるんですが」

 

「ええ。実はこの部屋には私の僧侶の1人が住んでいるのよ」

 

 微妙な表情をしたガヒドにリアスはそういう。

 

 なんでも、かつてリアスの眷属にしたはいいが、力を制御できなかったため隔離している眷属だそうだ。

 

「夜は旧校舎内から自由に出てもいいのですが、あの子は自分の意思で引きこもっているのですわ」

 

「コミュ障のにおいがプンプンするぜ。ちゃんと風呂とか入ってるんだろうな」

 

「それは大丈夫。あの子は綺麗好きですから」

 

 朱乃とそんなことを話しながら、ガヒドはしかし首を傾げた。

 

「でも別にその子がパワーアップしたわけじゃないんでしょ? なんで会談なんて緊張感高まる今の時期に許可が下りたんですか?」

 

「おそらく、イッセーの一時的な禁手と佑斗の禁手が私の成長によるものと考えたのでしょうね」

 

 リアスはそう答えるが、ガヒドはそれに顔をしかめた。

 

 確かに彼女は優秀だが、神器の禁手かは心情的なものも多くかかわっている。あれは佑斗自身が成長したからであり、言い方は悪いがその機会を持ってきたバルパーとコカビエルのおかげだ。

 

 イッセーの禁手についても聞いているが、あれも流との取引によるものであり彼自身の決意を評価するべきだろう。

 

「今の悪魔は改革路線とか聞きましたけど、やっぱり本音としては貴族至上主義ってことっすか?」

 

「耳が痛いわね。お兄様たちはより民のための冥界を作りたがっているけど、大王たちは昔通りの悪魔を守り続けたいと考えているようだし・・・」

 

「めんどい政治的取引とか巻き込まないでください・・・といいたいけど直属だと無理か」

 

 そんなことを言いながら、封印が解かれていく。

 

「しっかし俺たちより前から眷属かぁ。いったいどんな奴なんだろうな?」

 

「はい! 私も先輩ができますし、少し楽しみです」

 

 イッセーとアーシアが期待しながら開きかける扉をのぞき込む。そしてその瞬間―

 

「きゃああああああ! なんなんですかぁあああああ!?」

 

 甲高い悲鳴が響き渡った。

 

「・・・あれ? 解放されることは伝えてないのか?」

 

「言っても出てこようとしないからね。彼は自分から進んで引きこもってるんだよ」

 

 佑斗の言葉にガヒドは嫌な予感を察して顔をしかめる。

 

 短い付き合いだがグレモリー眷属は癖が強いのがよく理解している。

 

 そんなメンバーの1人である以上、ただの引きこもりで終わるわけがない。

 

 そんな不安を感じながら、ガヒドは部屋の中を覗き込んだ。

 

 そこには、金髪の美少女がいた。

 

 スペックの高すぎるグレモリー眷属女子の例にもれず、並のアイドルが裸足で逃げ出すような桁違いの美少女だった。

 

「・・・騙されないぞ! 絶対にすごい残念なところがあるはずなんだ! だってグレモリー眷属だからな!」

 

「ガヒド? 後で話があるから時間を空けておきなさい」

 

 思わず口から出ていたため、地獄行きが決定してしまった。

 

「ぎゃあああああああああ!? 給料カットだけは勘弁してください!!」

 

「お前がめついだろ? それにちょっとぐらいあれでもこれだけの美少女なら問題ないって」

 

 金にこだわるガヒドに冷静にツッコミを入れるイッセーだったが、その視線が僧侶に注がれたままだ。

 

 なにせ彼はハーレムを作るために上級昇格を目指す性欲の権化。美少女には目がなくて当然である。

 

「あらあら。ギャスパーくんは男ですわよ」

 

 ゆえに、朱乃の言葉が非常に心をえぐりこんだ。

 

「・・・え?」

 

「マジで?」

 

 イッセーとガヒドが唖然としてギャスパーをまじまじと見つめる。

 

 確かに胸はないがそもそも体格がロリであり、背丈も短いので違和感はない。

 

 だが男だそうだ。

 

「女装趣味があるのですよ」

 

 そして冷徹な現実がたたきつけられた。

 

「う、うそだああああああああああ!!!」

 

 絶望の表情を浮かべてイッセーが崩れ落ちる。

 

「おまえそこまでショック受けなくても」

 

「だって、だって、だって! 俺は一瞬、アーシアとこいつのダブル金髪僧侶を思い浮かべたのに!!」

 

「この一瞬でそこまで想像できるお前がすげえよ」

 

 性欲の権化の想像力に、ガヒドは何気に戦慄した。

 

「人の夢と書いて、儚い」

 

「え? 日本じゃそんな嫌なたとえなのか?」

 

「小猫ちゃんはシャレにならない! あとガヒド、それは漢字の組み合わせだ! 人と夢って感じをくっつけては書かないっていうの!?」

 

 なんでそんな組み合わせでそんな言葉なんだと思ったが、ガヒドはあえて言わないでおく。

 

「ひいいいいい! 僕のことについて話さないでくださいぃいいいい! っていうか誰なんですかあなた方はぁああああ!?」

 

「あれ? 部長から聞いてないのか? 最近入った騎士のガヒド・エクスカリボールさ! 気軽にガヒドお兄様と呼んでくれ!」

 

「全然気軽じゃねえよ! あ、俺は兵士の兵藤一誠だ! これでも赤龍帝だぜ!」

 

「初めまして。僧侶のアーシア・アルジェントです」

 

 三人そろって挨拶するが、ギャスパーは涙を浮かべて後ずさった。

 

「ひぃいいいいいいいい!? こっち観ないでくださいぃいいいい!!」

 

「部長、カウンセラーにでも叩き込んだらどうですか? これいくらなんでも問題あるでしょう」

 

 ガヒドは思わずそう告げる。

 

 その後も外に連れ出そうとするが、しかしギャスパーは怯えて逃げ出そうとばかりする。

 

「なあ皆。こいつは外に出ると死んでしまう病気か何かなのか?」

 

「そういうわけじゃないんだけど、いろいろ事情があって」

 

「たぶんそろそろわかると思います」

 

 佑斗と小猫がそう説明する中、対にイッセーが我慢できなくなったのかギャスパーの腕をつかんだ。

 

「おい、部長が外に出ろって―」

 

「ひ、ひぃっ!?」

 

 その瞬間、ギャスパーの目が怪しく光り―

 

「おぉっとあぶねえ」

 

 次の瞬間、ガヒドが魔剣を抜刀した。

 

 そしてさらに次の瞬間、イッセーたちの動きが一瞬止まり、そしてすぐに動き出す。

 

 そして、その短い時間の間にギャスパーは部屋の隅まで走り出そうとして、ガヒドにつかまっていた。

 

「おいイッセー。明らかに対人恐怖症っぽい相手にその対応はやめとけよ」

 

「え? あれ? なんでギャスパーがそんなところに?」

 

「ひいいいいいいいいい!? なんでこの人動けるんですかぁあああああ!?」

 

「視線で発動するタイプの神器使いと遣り合った経験があってな。あとはフロラントで弾き飛ばした」

 

 さらりとギャスパーにそう答えると、苦笑交じりにリアスの方に顔を向けた。

 

「教会でもたまに見かけましたよ。神器の手綱を握れないたぐいですね? ・・・にしてもこれは凶悪だ」

 

「ええ。この子は変異の駒が必要になるほどの逸材なのよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギャスパー・ウラディ。変異の駒による転生悪魔。吸血鬼貴族の末裔。そして、停止世界の邪眼を持つ驚異の神器使い。

 

 通常の駒では転生させれないほどの好意の存在すら悪魔に転生させる変異の駒。レーティングゲームのルールからすればずるのような気もするが、どうにも上の遊び心に酔って認められているらしい。ただでさえ同年代でも優秀であるリアスで変異の駒が必要だということが、この時点でギャスパーの素質が高いことを示している。

 

 吸血鬼とは、ルーマニアを中心に活動する異種族の一つ。さらにギャスパーはデイライトウォーカーという太陽の元でも問題なく活動できる種族。加えて人間のハーフであるがゆえに弱点に対して耐性を持ち、さらには強大な力を手にしている。

 

 二つの能力をともに最高峰に高く保有する神滅具ほどではないが、その出力は圧倒的であり、今の段階でも上級悪魔すら停止しかねないほどの時間停止能力を持つ強大な神器、停止世界の邪眼。

 

 一つ一つが強大であることの証明ともいえる能力を持つが、しかしそれを制御できるかは別問題。

 

 ギャスパー・ウラディは神器をろくに制御できない。それゆえに迫害すらされてきたらしい。

 

「っていうか神の遺した神器を吸血鬼がしようって反則だよな。転生したとはいえ悪魔なイッセーやアーシアちゃんが神器持ってるのも反則だけど」

 

「あなたも大概反則じみた力を持ってるのを自覚しなさい」

 

「いや、俺は魔剣使いだからむしろお似合いでしょうに」

 

 などとツッコミがあったが、しかしこの調子ではさすがにマズイ。

 

 ふとした瞬間に相手の時間を止めてしまえば、隠すことなど不可能だ。まともな生活を送らせるには何としても神器の制御を可能にしなければならない。

 

 なんとこのままいけば本来珍しい現象であるはずの禁手に自然に至るとすら言われているのだ。今の段階でも抑えられないのにそんなことになればどんな被害が出るか想像もつかない。

 

 そしてその原因の一つはギャスパーの対人恐怖症にあるだろう。

 

 神器は意思の力で制御するものだ。この状況下では制御など不可能だろう。

 

「さっきも言ったが、神器を制御できなくて害が出ている人間ってのはたまにいるんだよ」

 

 ガヒドはイッセーたちにそう説明する。

 

「そういう意味じゃあ、神の子を見張るものがイッセーを殺しに来たってのも納得できる。言っちゃ悪いが人間の段階じゃ制御できないって判断されたんだろうな」

 

「あのなあ、それで殺される身にもなれよ!」

 

「向こうからしてみりゃいつ爆発するかわからない核爆弾みたいなもんだ。場合によっては俺が暗殺任務を言い渡されてたかもな」

 

 イッセーにそう返しながら、ガヒドは視線を一切そらさない。

 

 ギャスパーを思いっきり凝視していた。

 

「ひ、ひ、ひ・・・」

 

 顔面蒼白で意識を失いかけているギャスパーだが、ガヒドは魔剣でガードしているため停止されない。

 

「なあ、外でガン見するだけって治療法としてありなのか?」

 

「言っちゃなんだけどその程度にしとかねえとかえって悪化しそうでな。こういうのは専門家に任せるのがいいんだが、専門家じゃ停止が防げない。だから少しだけ難易度の高いことをしてならしてくぐらいしかできねえよ」

 

 ガヒドとしては専門家に丸投げしたいと心から思っている。

 

 トラウマというのは素人がうかつに触れてどうにかなるものではない。

 

 基本的には、長い時間をかけてゆっくりとマシにしていくものだ。そしてそれらが難しいからこそ心療内科という専門家の資格が存在している。

 

 だが、その手の専門家はギャスパーの停止を止めることはできないだろう。

 

 いつのまにが自分の思考を体ごと停止されている。そんな状況下では、カウンセラーやセラピストのほうが逆に精神を病んでしまいかねない。

 

 だから、最低限見知らぬ他人と会話できる程度の慣れだけは作っておく必要があった。

 

 そのため室内の深い付き合いの人物だけという状況下から室外で殺気知ったばかりの人しかいないという状況下に難易度を高めているのである。

 

 因みに小猫は残るといったのだが、ガヒドはあえて退出させた。

 

 とりあえず今の難易度で大丈夫かどうか確認するつもりだったが、どこか悪戯しそうな雰囲気があったので逆効果になると判断したのだ。

 

「この手のタイプはスパルタ厳禁。基本的には甘やかすぐらいでちょうどいいんだよ。ほれチョコレートだ」

 

「は、はい、いただきます・・・」

 

 ガタガタ震えながらもとりあえずチョコレートは受け取っている。

 

「・・・当分私たちは話しかけないほうがよさそうですね」

 

「確かに。特に俺は体当たり専門だから駄目そうだ」

 

 アーシアとイッセーは顔を見合わせてため息をつく。

 

「お、兵藤じゃねえか」

 

 と、そこに軍手を付けた匙元士郎が近づいてきた。

 

「どうしたんだよ匙?」

 

「いや、会長からリアス先輩が眷属を解放いたと聞いたんで見に来たんだよ」

 

 そういって匙はガヒドごしにギャスパーを覗き見る。

 

「先に言っとくぜ。・・・だが男だ」

 

「なんでそんなスラングしって・・・うそだろ?」

 

 ガヒドの先制に匙は反応が遅れ、しかしまじまじと見つめる。

 

 因みにギャスパーの両目がガヒドの手で隠されいてる。

 

 だがそれが風俗店の紹介みたいで逆にエロい。そう、エロく見えるぐらいに美少女なのだ。

 

「リアルで男の娘ってなんだよそれ」

 

「男の子? 確かにギャスパー君は男の子ですが?」

 

 アーシアはさすがにスラングまで把握して無いようだった。

 

「っていうか引きこもりなのに女装趣味ってなんだよそれ? 何のための女装だよ?」

 

「だよなぁ。見せる相手もいないのにおしゃれして意味案の?」

 

「たまにいるだろそういう趣味。人にカッコつけてる自分を見られたくないってやつ」

 

「「いや、これはまた違うだろ」」

 

 ガヒドに対していきのあったツッコミを入れるイッセーと匙。

 

 ガヒドはこの二人は実は似た者同士ではないかとすら思いはじめるが、しかしそういおうとしたその時になって気配を変える。

 

 素早く魔剣を構えなおすと、さらに悪魔祓いが使う光の拳銃すら取り出して素早く構える。

 

「・・・ここはリアス・グレモリーの縄張り何でちょっかいかけないでくれませんかねぇ?」

 

「おいおいいきなり警戒しすぎだろ。こんなところで弱い者いじめするつもりはねえよ」

 

 そこには、一人の男性がいた。

 

「全員気を付けろ。こいつコカビエルより上の堕天使だ」

 

「っていうか総督だよ。総督アザゼル」

 

 何度もあっていたイッセーが素早く正体を看破し、匙があわてて神器を発動する。

 

 その様子をみて、アザゼルは興味深そうに目を細めた。

 

「なかなかレアな神器があるじゃねえか? 因みに聖魔剣はどこだよ」

 

「おいイッセー。こいつ本気で会談する気あんのか? 問題行動だろこれ絶対」

 

「ガヒド前向け前! それから、木場はここにはいねえよ、ようがあるってなら相手になってやるぜ!!」

 

 微妙に真剣みがないガヒドに苛立ちながら、イッセーは赤龍帝の籠手をだして構える。

 

「おいおい、コカビエル相手にろくに戦えなかったお前らが俺に勝てるわけねえだろ? そこの魔剣使いくんだって真正面から相手すりゃ負けねえよ。剣能についてはある程度はわかってんだぜ?」

 

 アザゼルは余裕の表情を全く崩さない。

 

 たとえ全員を同時に敵に回したとしても、決して負けないという自信がそこにはあった。

 

「んなこたわかってる。だがやり合うことになったら俺は命に代えてもお前の○頭を切り落とす。自分の矮小なデリンジャーをさらに短銃身にする覚悟ができてから仕掛けて来い」

 

 その場にいた男たちが戦慄する脅し文句が飛び出してきた。

 

「お、お前なんて恐ろしいことを!!」

 

「っていうかデリンジャー!? そんなに小さいなんて・・・小さいなんて・・・」

 

「ひ、ひいいいいい!? この人やっぱり怖すぎますぅうううう! そんなひどいことしちゃらめぇええええ!」

 

「ふざけんなお前らもっとあるわ! 普通にマグナムだよこの野郎!!」

 

 イッセーが戦慄し匙が同情しギャスパーが悲鳴をあげアザゼルが名誉棄損に遺憾の意を示す。

 

 あっという間に大混乱へと陥ってしまった。

 

「・・・デリンジャーって何ですか?」

 

 一人だけ、隠喩の意味どころかたとえに使われたものすらよくわかってないアーシアの天然さが清涼剤だったと付け加えておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、アザゼルはガヒドの特攻に恐れたのか、それとも単にやる気を削がれたのか帰っていった。

 

 その前に匙の神器の能力を説明し、ギャスパーの成長のヒントを残したのが不思議だったが、とりあえず試してみたらうまくいったので練習したりしている。

 

 とはいえそうもうまいくいくわけがなく、徐々に進んでいる程度であった。

 

 そしてそんな中事件が起こる。

 

「おまえ、何したんだ?」

 

「いや、俺のお得意さまってたいていみんな人がいいからいい感じに初心者モードになるかなって思ったんだけど・・・」

 

 イッセーが、鳴き声が響くドアを見ながら汗を一筋流す。

 

 鳴き声の主はギャスパーである。ちなみに先程イッセーに引っ張られてイッセーの悪魔の仕事の見学をすることとなった。

 

「・・・男の娘萌えで興奮してギャスパーが怯えちゃって神器発動させた」

 

「なんだそのミラクル」

 

 ガヒドはため息をついて天井を見上げた。

 

 類は友を呼ぶ。そんな最近知った日本のことわざを思い出して、ガヒドは涙が出てきそうになった。

 

 男の娘を社会復帰させるために仕事に参加させたら怖がらせる相手とかアレすぎる。どんな展開なんだろうか?

 

「それで、お前そこにずっといようってのか? 言っちゃなんだが最近あったばかりの奴に面倒見すぎじゃね?」

 

「んなこたねえよ。なにせ俺はこいつの学校の先輩で悪魔としての後輩だしさ。ちゃんとフォローすんのが仲間ってもんだろ?」

 

 なんてことの無いように言い切るイッセーに、ガヒドは少し苦笑した。

 

「信仰で結ばれた信徒同士でもそこまでできる連中は少ない方だよ。ああ、覗き癖さえなくせば絶対持てるぜ?」

 

 少なくとも、一度友情を結べば嫌われるなんてことはそうないだろう。そういう仁徳を感じられる。

 

 だが、イッセーは少し考え込むと静かに首を振った。

 

「そこに裸体がある。それが分かってる限り、俺は止まらねえよ」

 

「んじゃ一生もてねえよお前は」

 

 心底溜め息をつくと、ガヒドは肩をすくめて踵を返す。

 

「あれ? どこ行くんだよ?」

 

「どうせ長丁場になるんだろ? 夜食でも買ってきてやるよ」

 

 そういいながらガヒドは外に出ると、夜空を見上げた。

 

「なるほどなるほど。イリナの幼馴染なだけあるじゃねえか」

 

 イリナの日常を思い出しながら、ガヒドはそう漏らして笑みを浮かべる。

 

 信仰心が強すぎて暴走している節があるとはいえ、イリナは自分が出会ってきた信徒の中ではあれで親しみやすい性格だった。

 

 信仰に目覚めさせるために隣で聖書をそらんじてきたりするところはあれであるが、信仰心の無さゆえに白眼視されている自分にしてみれば、むしろ好意的に接してきてくれるタイプである。

 

 彼女が彼の影響を受けたのか、彼が彼女の影響を受けたのかはわからない。

 

 だが、幼馴染なだけありお互いにいい影響を与えていたということはよくわかった。

 

「イッセーはスケベ馬鹿でイリナは信仰バカ。なるほど、結構似た者同士だ」

 

 彼がいるなら、イリナは結構大丈夫だろう。

 

 信仰心の強さゆえに悪魔相手には排他的な行動を取ることも多いが、あれで話は分かるタイプだ。

 

 自分に友好的に接してくれるというのなら、これ以上もめる可能性も無いだろう。

 

 そんな風に安心しながら、ガヒドは星空の下を歩いていく。

 

 これからいろいろと騒がしくなるとは思う。

 

 だが、やりようの一つぐらいはあるだろうと思った。

 

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