学生運動のシヴィルウォー ーハイスクールD×D外典 作:グレン×グレン
そして、会談の当日。
「・・・部長、俺さぼっていいですか?」
「無理に決まってるでしょう」
厳戒態勢の緊張状態に、ガヒドは心底いやそうな顔をして逃げようとしたが、リアスはハッキリと切り捨てた。
「コカビエルが起こした騒動がきっかけでこの会談が始まったのに、そのコカビエルを倒したあなたの参加はもはや義務よ」
「うへぇめんどくせぇ。結局白龍皇がいたわけだし、俺もうほっといてもよかったかもしんねぇ」
ガヒドは肩を落としながらため息をつく。
仕事はきっちりこなすが素行は不良なガヒドにとって、上層部が一堂に会して行われる会議など面倒くさい以外の何物でもない。
実は自分がやらなくても勝手に終わっていたということもあって、ガヒドはいろいろとあの件について思うところがある。
「っていうかですね。さすがに俺なんかがミカエル様と会うのはマズイと思うんですよ。いやホント」
「あれ? ガヒドくんは信仰心がないんじゃなかったっけ?」
信心がないといっていた割にはやけに動揺するガヒドの姿に佑斗が首をかしげるが、ガヒドは青い顔で詰め寄った。
「だからだろうが! こんなことが敬虔な信者に知られたらまた変なちょっかいかけられそうで面倒なんだよ。大体どんな顔で会えってんだ、あ?」
「・・・意外とヘタレ」
「小猫ちゃん、やめたげてホント」
鋭いツッコミにイッセーが憐れみすら覚えて止めに入るが、しかしふと視界に入った約二名の姿を見て目を見開いた。
「ていうか二人とも大丈夫か!? なんか急に顔から汗が出てきてるけど!?」
「で、ででですけどイッセーさん! み、ミカエル様に会えるんですよ!? きょ、教会を追放されたみなのにそんなおそれおおいですぅ」
聖書にしるされし神の死を知らされた時に次ぐレベルでふらついているアーシアを支えながら、イッセーはさらにもう一人に視線を向ける。
「ど、どうしようガヒドくん。私、追放されたのにミカエル様に出会えるなんてコレいくらなんでもおかしいわよ。・・・ま、まさかミカエルさま直々に処刑だなんてある意味恐れ多い栄光を・・・っ」
「無いから! さすがにないから落ち着け!!」
恐れてるのか感動してるのかわからない境地に到達しているイリナに、ガヒドは自分も結構追い込まれているのを忘れて思わず肩を揺さぶった。
本来追放されている状態で悪魔のお世話になっている信徒など近づくことすら許されないかと思われがちだが、この戦いの参加者の一人だったせいかなぜかイリナは参加が許された。
それどころか、どうも天界側の代表者であるミカエルが直々に指名したという話まであるらしい。
イッセーもこの同様っぷりにはもうどうしたらいいのかわからないが、この状態で会談に参加させてはマズイと思ってとにかく落ち着かせようと肩に手を置く。
「と、とりあえず処刑とかそういうことはないと思うぜ? ちょっと前に一度会ったけど、すっごいいい人っぽかったしまさか会談のど真ん中で処刑なんて―」
「ちょっと待ちなさいイッセーくん!? 敬虔な信徒ですらほとんど会えないミカエルさまとあったってどういうこと!?」
胸倉をつかみかねない勢いで詰め寄られてしまった。
「ど、どどどどんな人だったの!? お願い今すぐ教えてイッセーくん!!」
「く、首が締まる・・・っ」
「あらあら。イリナちゃん、イッセーくんが死んでしまいますわ」
やんわりと朱乃がイリナを引きはがす中、ガヒドは現実逃避したいのか窓の外に視線を向けた。
そして、ほとんどにらみ合いになっている三大勢力をみて後悔して視線をそらした。
「はあ、あの大暴れからまだひと月も立ってないのに、今度は三大勢力の三つ巴になるのかねぇ?」
「こ、こここ怖いこと言わないでくださぃいいいいいい!!」
と、段ボール箱から反応して悲鳴が響いた。
「ぼ、僕なんて一人なんですよぉ!? そんなことになったら僕死んじゃいますよぉおおおお!!」
今回の会談、ギャスパーは参加を許されていない。
とはいえそれは当然だろう。非常に強力な神器を、禁手にも到達しかねない勢いで引きだして、しかし制御がいまだできていない。会談の場でうっかり発動しそうで危険すぎる。
そんなことになればそれこそ三つ巴の戦争が勃発する。ゆえにそれを避けるのは当然の判断だった。
「ま、まあ安心していいんじゃないか? 魔王様は戦争する気ないらしいし、ミカエルさんも戦争をやめるいい機会って言ってたし、アザゼルだって戦争に興味ないらしいし? たぶん戦争勃発ってことにだけはならないと思うんだけどなぁ」
なんだかんだでトップ三人とあったことのあるイッセーがそうなだめるが、ガヒドはそこまで安心できない。
「上がそうでも下が納得するかは別問題だからなぁ。下請けが勝手に暴走して大騒ぎなんてよくあるし」
「ガヒドぉおおおおお! せっかく俺が後輩をなだめてんのに、なんで不安あおることばっかり言うんだよ!!」
半分泣きそうな勢いでイッセーに怒鳴られ、ガヒドは舌打ちをしそうな顔でさらに外を見る。
「教会の戦士はたいていの連中が悪魔のことが大嫌いだったからな。和平が結ばれたとして、それに納得してくれるかどうかだって不安なんだよ。・・・それが原因で内乱が勃発しても、俺は全く驚かねえよ」
「悪魔は大丈夫じゃありませんか? 戦争賛成派だった旧魔法派は追放されておりますし、内乱という形にはならないと思いますが・・・」
安心させるように朱乃はそう告げるが、しかし、意外なことにリアスは表情を暗くさせた。
「そうとも言えないわね。お兄様たちは和平を選ぶでしょうけど、大王派や旧家の貴族の中には反対する者がいてもおかしくないわ」
「・・・コカビエルの同類はどこにでもいるか。ま、千年以上続いた戦乱やめようなんていきなり言われて納得できないのも当然か」
「うへえ。俺、自分の学校で二天龍対決なんていやなんだけどなぁ」
ガヒドとイッセーは心底いやそうな顔を浮かべ、ほかの一同もそれにならう。
そんな会談の中心部に自分たちが行くというのは、ある意味で一番厄介な出来事な気がしてきた。
「でも、これはとても名誉なことではあるわ。経緯はどうあれ三大勢力の大きな流れを変える出来事にかかわるのだもの。これを誇らなければ悪魔としてやっていけない」
「・・・責任重大」
「ですね。何が起こるかわからないけど、だからこそ情けない真似は見せられない」
気を取り直して立ち上がるリアスの隣に立つように、こちらも気を引き締めなおした小猫と佑斗が並び立つ。
「安心しなさいギャスパー。何かあったら私が必ず助けに行くから。だから、ここでいい子にして待ってなさい」
「は、はいぃいいい。待ってますから必ず帰ってきてくださいいいいい!」
涙目ながらも背筋をしっかり伸ばしてそう答えるギャスパーに、イッセーもガヒドもふと笑みを浮かべる。
「よし! ゲームもおかしも紙袋も持ってきてるから、それでしっかり耐えろよ! 俺たちも頑張るから!」
「ま、保険はしっかり用意したから安心しろ。新入りとして先輩のサポートはするぜ?」
その言葉に、ギャスパー以外の全員が一人の女性の姿を思い浮かべたが、しかし全員が心のどこかでそれを否定した。
・・・まさか三大勢力の会談に、部外者を入れるなんて真似をするわけがない。
「さ、さあ行くわよ!」
でも一応聞くのは怖かったので、リアスは即座に打ち切って外に出ることにした。
会談の場所となった会議室には、すでに全員が集合していた。
悪魔側、サーゼクス・ルシファー及びセラフォルー・レヴィアタン。
天使側、大天使ミカエルとほか一名。
堕天使側、総督アザゼル及び白龍皇ヴァーリ。
そして給仕役のグレイフィア・ルキフグスに同じく説明役として呼ばれたソーナ・シトリーとその女王が一堂に会する光景をみて、ガヒドはやはり帰りたいと心底思った。
「コカビエル、倒すんじゃなかった」
「ガヒド、本音漏れてる」
イッセーにたしなめられ思わず口をふさぐが、すでに行ってしまったことは覆らない。
「おうおう。あの騒ぎのMVPはやる気なさそうだなぁ。ま、俺もめんどくさいけどよ」
アザゼルが茶化すなか、ガヒドは心底切ってやろうかと思ったが真正面からでは勝ち目がないのでぐっと抑える。
「すでにこの場にいるものは皆知っているだろうが、一応紹介しよう。この地の担当をしているリアス・グレモリーとその眷属だ」
サーゼクスが簡単に説明し、そして席につくように促す。
全員がそこそこの緊張を見せながら席に着席する中、特に緊張したいたのが―
「イリナ。深呼吸してゆっくり席に座れ」
「み、み、みみみミカエルさまのご尊顔が・・・」
もはや前後の区別すらついているのかわからない状態で、イリナがガクガクしながら席につくのをイッセーはフォローする。
因みにガヒドも手を伸ばしかけていたが、タイミングが合わずすごくいたたまれない表情だった。
「おいミカエル。敬虔な信者さまが大天使をみてすっごいことになってるぞ? なんか言ってやれよ」
「あなたは本当に茶化しますね。・・・とはいえ、確かに先に一言言っておくべきでしょう」
と、ミカエルは席から立ち上がるとイリナに向かって頭を下げた。
「このたびは、あなたのような敬虔な信徒を追放することになってしまいすいませんでした。事情についてはこの会談が終わった後にさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「・・・・・・・・・え? えっと、その・・・」
まさか謝罪されるとは思わず、イリナはぽかんとした表情を浮かべる。
いくらエクスカリバー使いとはいえ、たかが一信徒にここまでされるとはかけらも思っていなかったのだろう。
「いや、ミカエルさま? それはちょっとさすがにまずいんじゃないでしょうか?」
「あ、アーシアのことも含めて聞くつもりだったんですけど、え、いいんですか?」
ガヒドがあわててとどめようとし、イッセーはイッセーで尋ね返すが、それをとどめるようにグレイフィアの声が届いた。
「皆さま。とりあえず会談を進めましょう。・・・外の緊張感が強くなってきています。早く終わらせないと暴発の恐れも」
つられて外に視線を向けた全員が、もはや戦闘が勃発していてもおかしくない状態となっている外野をみて表情を険しくする。
と、そこで大きくため息をついたアザゼルが唐突に窓を開けると、大声を上げた。
「おいこらお前ら!! 今から会談はじめるからちょっとは落ち着いてまってやがれ!!」
ついでにさっきまではなって言い放つ声に、有象無象が顔を向けて硬直する。
いかにこの会談の護衛のために派遣されたとはいえ、その大半は下級。加えていえば各陣営の最強は間違いなくこの会議室にいる者たちだろう。
圧倒的強者の警告に、爆発寸前まで高まっていたテンションが一斉に下がる。
「特に堕天使! 挑発されても絶対にキレたらだめだし、挑発すんのもなしだ。もしそうなったら責任を持って俺が直々に吹っ飛ばすからな!」
『『『『『『『『りょ、了解しました!!』』』』』』』』
本気の殺意をトップから向けられて、戦闘態勢にすら入っていた堕天使たちが一斉に敬礼する。
「悪魔の者たちも同じことだ。・・・三大勢力のトップによる会談、それに泥を塗るような真似をすれば私も相応の処罰を与えねばならないことを理解してくれ」
「その通りです。この会談の目的は殺し合いではない。天使だというのならば、正道をもって良しとするように」
サーゼクスとミカエルも配下に釘をさし、あれていた空気が一斉に沈静化した。
「影響力すげー」
「そりゃ戦闘能力でもカリスマ性でも最強格だしなぁ。これならこの場で戦争とか言うのだけはなさそうで安心してきた」
感心するイッセーとガヒドを視線の先、窓を閉めて三人は一誠に溜息をついた。
「下の者たちがもめる可能性は考慮していましたが、まさかここまでとは」
「ウチの連中はコカビエルを除けば実力者はほとんどいねえんだが、さすがにそれとこれとは別問題かねぇ」
「しかしだからこそ成功させねばなるまい。このまま逝けばどうなるかなど決まり切っている」
サーゼクスが憂いながらそう告げ、そして部屋を見渡した。
「・・・この場にいるものは皆、最重要禁則事項である聖書にしるされし神の死を知っている。・・・それを前提で会議を行うことをまず告げておこう」