学生運動のシヴィルウォー ーハイスクールD×D外典 作:グレン×グレン
その後の会議は、アザゼルが途中で茶化すという一点を除けば恐ろしいほどスムーズに進んでいた。
これが千年以上の長きにわたって戦乱を続けてきた勢力同士の会談だとはガヒドにはとても思えないレベルだった。
案外、上の方はどいつもこいつもお人よしということか、などと思っているレベルだった。
コカビエルの一件の説明をリアスが求められた時も、サーゼクスはもちろんのことミカエルからもねぎらいの声がかけられたほどだ。
「いや、俺としても戦争なんて勘弁だからヴァーリを送り込んだんだが、まさかヴァーリより先にコカビエルを倒す奴がいるとは驚いたぜ。さすがは魔剣フロレントの使い手だな」
そういいながら興味津々でガヒドに視線を向けるアザゼルに、ガヒドは心底いやそうな顔を浮かべた。
「マジ勘弁してくれません? そっちがもっと早く動いてりゃぁ、俺もここまで苦労しなくて済んだんですけど?」
「そいつは済まねえ。まさか神の死まで告げるとは思ってなくてよぉ。あの野郎本気出しすぎだろ」
皮肉もカラカラと笑って流すアザゼルだが、しかしガヒドは額に青筋すら浮かべる。
「俺はともかくイリナだよイリナ。マジ信仰してる信徒に神の死なんて毒すぎる。おかげで追放だぜ、追放」
「いやガヒド、追放した教会にはツッコミいれねえのかよ」
イッセーはそう止めようとするが、ガヒドは何言ってんだお前と表情で告げる。
「そりゃ仕方がねえだろ。そんな危険人物今まで通りにするなんて選択肢ねえよ。前から何度も言ってるが、暗殺になってないのが奇跡だって」
「それについては頭を下げるほかありません。実際に一部ではそのような意見もありました」
ガヒドの言葉にミカエルがそう続けると、さらにツン通な顔を浮かべる。
「実際、主の死はそれだけ危険な情報なのです。知られたら信仰が集まらなくなり主の遺したシステムが起動しなくなるのもそうなのですが、今の段階でも制御に不安があるため、より一層気を配らねばならないというのが現状で死て」
「システムっていうと、コカビエルがそんなことを言っていたような・・・」
イッセーはコカビエルが、主の代行としてミカエルたちがシステムを使っているといっていたことを思い出した。
「ええ、主はそのシステムを使って信徒たちに加護を施してきていたので、システムが残って居た結果主がなくなられたこの状況下でも信徒たちに加護を与えることはできます。ですが、主がいたころに比べれば不安定かつ弱い効果しか発生できないが故、信仰に影響を与えるものを教会などの信仰を集める場所には近づけると悪影響が出る恐れがあるのです」
その言葉に、イッセーは今まで気になっていたこととつながってある種のひらめきが湧いて出た。
「・・・あの、実はなんでアーシアを追放したのか聞きたかったのがあの時の質問なんですが―」
「―ええ、それが答えです。主が作り出した奇跡とはいえ、悪魔すらいやすことができる力があるなどと知られれば、信仰に揺らぎが生じてしまう」
そうなれば、システムに悪影響が発生してさらに多くの信徒たちが加護から取りこぼされてしまう。
「・・・本当に申し訳ありません。あなた方を追放することになったのは、間違いなく我々の落ち度です」
再び、ミカエルが、今度はイリナだけでなくアーシアに対しても頭を下げる。
「・・・あのすいません。この光景不信心悪魔祓いの俺には恐縮すぎてきついんで退席していいですか!? させてください、お願い!!」
「面白そうだから却下」
「この野郎・・・っ! マジで○頭切り落とすぞ! デリンジャーさらに短くするぞこらぁ!?」
「だからだれがデリンジャーだ!! ビッグマグナムだっつってんだろ!!」
「2人とも落ち着きたまえ。ここで暴れたらそれこそ護衛達がこぞって戦闘を開始してしまう」
場外乱闘をサーゼクスが抑える中、イッセーは恐る恐るイリナとアーシアに視線を向ける。
どんな理由であれ、心から神を信仰していた彼女たちが信仰のために切り捨てられたのは事実なのだ。
だからてっきり怒っているかと思ったのだが―
「み、みみみミカエル様頭を挙げてください! 恐れ多すぎます!!」
「い、イリナさんの言う通りですミカエル様!?」
・・・むしろ恐縮しまくっていた。
「あれ? いいの、2人とも?」
少しぐらい怒ってもおかしくないと思っていただけに、イッセーはむしろ拍子抜けだった。
「何を言ってるんですかイッセーさん! あのミカエル様が直々に頭を下げてくださっているんですよ!? もう十分すぎるぐらいです!」
「そうよイッセーくん。私なんて、主の死を知ってるのに何で正気を保ててるのか不思議なぐらいなのよ!? 本当に口封じのための刺客が来たって怒れないわよ!」
むしろ何を言ってるんだお前はといわんばかりの視線を向けられると、イッセーとしては反応に困ってしまう。
「ですが、これは全て我々の不手際が原因です」
ミカエルのほうがむしろ困惑すら浮かべているが、しかしイリナもアーシアも笑みすら浮かべている。
「そんな。こういってはほかの信徒の方々に失礼かもしれませんが、いい悪魔なんて存在が本当にいるなんて知れたのはある意味幸運です。彼らをただ悪魔だから断罪するだなんて、今の私ではもうできませんし、信徒失格ですから」
自虐てきな笑みを浮かべるイリナに同意するかのように、アーシアも祈りを捧げるように手を組んで告げる。
「私もそうです。教会から追放されたのはショックですけど、おかげで大切な人たちに出会えました。彼らが悪魔な以上、確かに追放されても文句は言えません」
アーシアはちらりとイッセーを見ながらそう告げ、そして何より満面の笑みを浮かべる。
「何よりあのミカエル様のご尊顔を拝することができたんです。これで起こったら罰が当たります!」
「全くです! これだけの対価をいただいて満足できなかったらそれこそすべての信徒の申し訳ありませんから!!」
満面の笑みすら浮かべて告げる二人に、ミカエルは安堵の表情を浮かべる。
「そういってもらえるだけで、本当に救われます」
「よかったじゃねえかミカエル。まあ、俺の方は下の連中が勝手に殺したりとかでこの後もめるんだよ・・・なっ」
「そりゃ災難だな。まあ監督不行き届きってやつだし我慢しろ・・・や!」
ガヒドと取っ組み合いになっているアザゼルを見ると、少し何も言いたくなくなったがやっぱりイッセーは我慢できず文句を言うことを決める。
「全くだよこの野郎! そのせいでアーシアは一度死んだんだぞ! あと俺も!」
「お前についちゃあ謝らねえよ。人間だったお前はいつ押されるかわからない核爆弾のスイッチみたいなもんだ。まともな連中なら気づいた瞬間に対処するし、処分だって選択肢の範囲内だって断言できるぜ?」
「そこは確かにそうだけど、言い方ってもんがあるだろうがぁああああああああああ足がぁああああああああ!」
一本足固めをガヒドに決めながらのアザゼルの返しに、イッセーはいろいろな意味でなんだかむかっ腹を立ててきた自分を自覚する。
この会談で一下級悪魔の自分が何か言うのもあれかもしれないが、しかしこの流れならもう少し何か言ってもいい気がする。
「おかげで俺は悪魔で、しかも命がけの戦いをもう何回もやっちまったよ」
「そんなに不満に思うことでもねえだろ? 赤龍帝の悪魔なら上級昇格だって夢じゃねえし、そうなりゃ人生ウハウハで、しかもその主は情愛にあふれるグレモリーだ。結果オーライだが間違いなく成功してるぜ?」
「それは・・・」
確かに今のイッセーはかなり恵まれているだろう。
事実そうとはいえ女の敵としてハーレムなど夢のまた夢という状態から、かわいがられる程度とはいえ、好意的に見てくれる女子が何人もいる状態になっているのだ。
加えて佑斗やガヒドなど、頼りになる男の仲間もできた。
だがそれとこれとは全く別の問題な気がするのだ。
「まあ、詫びはしねえが穴埋めぐらいはしてやるよ。とりあえずは和平でどうだ・・・っと」
「まさかあんたから言い出すとはなぁああああああああ折れる折れる折れる!?」
技をかけながらというとんでもないタイミングで告げられた言葉に、全員が思わず息をのむ。
イッセーもサーゼクスもミカエルもそしてアザゼルも戦争には否定的なのは知っていたが、しかしまさかアザゼルからくるとは思わなかったのか全員驚いている。
だが、サーゼクスもミカエルもすぐに冷静さを取り戻すとうなづいた。
「そうだな。今の状態で戦争を続ければ、今度こそ三大勢力は共倒れだ。悪魔を導く魔王として、悪魔を滅びに導くことなどあってはならない」
「同意です。天使の長として問題のある発言ですが、戦争の大元である神と魔王が消滅した以上、これ以上の戦争は毒にしかなりません。いないものをいつまでも求めるより、迷える子羊を導くことの方が重要です」
「今、俺は仮にも悪魔祓いとしてすごい発言を聞いたけどギブギブギブギブぅううううう!!」
技をかけれたが故の悲鳴交じりだが、ガヒドの驚きも最もかもしれない。
だがまあ、イッセーからしてみるとよくわからないのでそこはスルーした。
「とはいえこっちも大変だがな。でかいのはコカビエルで打ち止めとはいえ、中堅どころだと戦争賛成派は結構いるだろうしよ」
「それは否定できん。こちらも旧魔王派の追放で積極的なものはいないとはいえ、現政権にも最終的な勝利を望むものは少なからずいる」
「我々も否定できませんね。特に信徒もほうではコカビエルの動きを期に戦争を再開させようという勢力も少なからず存在していました」
三勢力のトップはそろってため息をついた。
「ま、それはともかく今はそれ以外のやばい連中の意見を聞こう。まずはヴァーリ、お前だ」
「俺は強いやつと戦えればそれでいいさ。それ以外には特に興味がない」
あっさりと、ヴァーリはアザゼルにそう答えた。
本当にそれ以外に何もないといわんばかりの言葉は、果たして安心していいのかわからない。
「ま、そこはわかってた。で、次は赤龍帝は?」
「え? いや、んなこと言われても・・・。っていうかなんで俺?」
「そりゃお前、赤龍帝って言ったら潜在能力だけならこの中でも白龍皇と並んでツートップだから警戒して当然なんだっつの」
ようやく関節技から解放されたガヒドがそうツッコミを入れるが、どうにも当事者意識に乏しいイッセーからすると反応に困る。
「ならこう言いなおそう。・・・戦争が再開したら、リアス・グレモリーは抱けないぞ?」
「え?」
その言葉に、イッセーは驚愕する。
リアス・グレモリー。最愛たる我が主。
彼女を、抱けない?
「和平を結べば戦争しない。戦争しないなら種の存続と繁栄だから、セックスし放題だ。だが戦争中だとそんな余裕はないから―」
「和平一択! 和平オンリー! 部長とエッチしたいです!!」
アザゼルが最後まで言い終わらないうちにイッセーの答えは決定した。
できるできないはともかくとして、美女とエロいことをするために上級悪魔を目指しているイッセーにしてみれば、それができなくなるのは最初から論外だった。
「おまえ、それでいいのかよ?」
「っていうかイッセーくん? サーゼクスさまがおられるんだよ?」
男二人からツッコミを入れられて我に返るが、おそル降見る限りサーゼクスは笑っているのでどうやら危険な状況ではないようだ。
「リアス。あなた本当に苦労するわね」
「あらあら。部長ったら愛されてますわね?」
「ソーナ! 朱乃! もう、イッセーったらなんでこんな時まで!?」
「す、すすすすいません!!」
ソーナに憐れまれ朱乃にからかわれ、リアスは顔を真っ赤にしてイッセーに怒鳴った。
その光景をまぶしいものを見るかのように目を細めてみながらサーゼクスは苦笑を浮かべた。
「だが、それも平和であるからこそできることだ。お互いに戦争賛成派ににらみをきかせることを忘れないようにしよう」
「そうだな。ま、コカビエルが派手に暴れてくれたおかげでこっちは比較的楽だし、なんなら人材派遣するぜ?」
「ならぜひお願いしましょう。こちらはいろいろときな臭い動きがあるので、どうしても人手が足りなくなりそうです」
トップたちがそう告げる中、イッセーがいろいろとやらかしたこともあって空気がだいぶ緩む。
これならこの会談は大丈夫だと、その場にいる者たちは全員が納得した。
そしてのその直後、会議室の壁が粉砕された。