学生運動のシヴィルウォー ーハイスクールD×D外典   作:グレン×グレン

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戦乱の始まり

 

 壁を粉砕しながら飛び込んできたその人影に、全員が一斉に視線を向ける。

 

 そして何よりトップ三人の判断は素早かった。

 

「―止まりなさい」

 

「出なければ、今この場で滅することもいとわない」

 

「お前らキッツいねぇ。まあ、こんなところまではいってくるような奴なら死ぬ覚悟もできてんだろうが―」

 

 即座にいつでも殺せる体制に入った二人に苦笑しながら、アザゼルもしかし光の槍を取り出し―

 

「―あ」

 

 その人影は、一瞬だけだが寂しそうな顔を浮かべた。

 

 そして、その人の姿があらわになると同時にイッセーは目を見開いた。

 

「・・・って、エルレイさん!?」

 

「や、やあイッセーくん。実は数日前から旧校舎の地下で待機していたエルレイさんだよ」

 

 イッセーの声で我に返ったのか、エルレイはすぐに取り繕うといつもの調子を取り戻す。

 

 そして、わきに抱えていた人物をリアスに差し出した。

 

「ついでにいうと君の眷属も助け出したよ。ほら、大事にしとくといい」

 

「り、リアス部長ぅううううう! 怖かったですぅうううううう!」

 

「ギャスパー!? あなたどうしてここに!?」

 

 突然引っ張り込まれた眷属の姿に、リアスは目を見開いて驚愕する。

 

「か、会談が決裂したらギャスパーが危険だったんで俺がエルレイを雇ってたんです。・・・反対されると思ったから内緒にしてましたすいませぎゃあああああああああああ!?」

 

「あらあら? 理由はどうあれそんなことを独断でされたらお仕置きですわ」

 

「・・・すでにしてから言うのもどうかと思います」

 

 朱乃によって感電するガヒドに、小猫は半眼を向ける。

 

 この新入りはいろいろと問題行動が多すぎる。それは全員一致した意見だった。

 

 だが、問題がそこではないことにすぐに気づいた。

 

「って待ってください! 護衛がこんなところに護衛対象を連れ込むってことは―」

 

「敵は十数人の魔法使い。とりあえず全員仕留めたけど、増援が来そうだったから一番安全そうなところに逃げ込んだってこと」

 

 エルレイがそう告げると同時、外側から爆発音が響きわたる。

 

「・・・今度はなんだよ!?」

 

「そりゃ敵襲に決まってんだろ。和平反対派によるテロってやつなのはわかり切ってる。想定内だ」

 

 動揺するイッセーに冷徹なまでに冷静なアザゼルの言葉が届く。

 

「っていうかすいません。コレ間違いなく榴弾ですよ。こんなもん至近距離でぶっ放すわけないし、これある意味もっとやばいことになってません?」

 

 ガヒドは尋ねる形でそう告げるが、しかしその表情はどこか冷静だった。

 

「・・・グレイフィア。敵はどこから仕掛けてきている?」

 

「最悪です。敵は人間の軍隊が使用する榴弾砲を使って攻撃を仕掛けてきています。・・・それも駒王町の一角に陣取ってです」

 

 その言葉に、全員が緊張した。

 

 街中で堂々と砲兵を展開して攻撃。この日本でそんなことが起こるなどその時点で前代未聞である。

 

「どこの馬鹿だそんなことしでかしたのは! くそ、こんなことなら拾ったはぐれの連中も集めときゃよかった!!」

 

「確かに、この場で我々があの砲撃を排除しようとすれば、間違いなく一般人にその姿を見せてしまう。・・・これはこの国の自衛隊に任せるしかない」

 

「そして、その間待ってるうちに本命がこっちを狙うって言うのが目的ね? もう、魔法少女と戦うのに科学なんて興ざめだわ」

 

 アザゼルたちが歯噛みする中、一人それ以上に汗を流している者がいた。

 

「・・・想像以上に動きが速い。この様子では彼らは止められなかったということですか」

 

「え? え? ミカエルさん何か知ってるんですか!?」

 

 三大勢力の会談で、兵器を使って襲撃を仕掛けてくるような人物に心当たりがあるのだろうか?

 

 だが、尋ねたその時イッセーの脳裏にある人物が思い浮かんだ。

 

「ええ、教会内部の開戦派には、人類の軍隊の協力を要請することを主張する者たちが何人もいました。その中でも個人でそれを保有する人物を拘束しておくよう人員を派遣していたのですが―」

 

「見事返り討ちに合って動いたってわけか。あの野郎マジでやりやがった」

 

 心底いやそうな顔で、ガヒドは携帯電話を取り出した。

 

 そして素早く短縮で電話をかけると、同時に皆に聞こえるようスピーカーをONにする。

 

『・・・なるほど、そこにいたのか、ガヒド』

 

「その返答。またお前は日本に兵器持ち込んだのか。っていうかPMCって榴弾砲所有できたんだっけ、ジョージ・・・っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 砲撃が結界に着弾し、爆発が発生するがしかし突破されない中、ジョージはその結界に躊躇なく近づいていた。

 

『お前は絶対反対すると思ったが、まさか会談中に襲撃賭けるとはな。ここ、天使いっぱいいるんですけど?』

 

「たわけたことを。自らが果たすべき役目を忘れ、腐敗した安寧に沈むものなど天使とは呼ばん。・・・この俗物がっ」

 

 結界を断ち切って侵入する彼の視線には、警戒する天使の姿があった。

 

「主がいなくなっているというのにもかかわらず、ゆえにこそしなければならない厳格たる信仰を忘れ和平などと! 貴様らそれでも主に仕えていたものか、恥を知れ!!」

 

 心の底からの怒りを込めた言葉を放ち、ジョージは手に持つ聖剣を突きつける。

 

 だが、その言葉に天使はおろか悪魔と堕天使も困惑していた。

 

「主が、いないだと・・・?」

 

「奴は何を言っているんだ?」

 

「おい、一体どういうことだ?」

 

 その様子をみて、ジョージはため息をついたかと思うと指を鳴らして魔法陣を展開する。

 

『・・・この場にいるものは皆、最重要禁則事項である聖書にしるされし神の死を知っている。・・・それを前提で会議を行うことをまず告げておこう』

 

 コピーであるがゆえにわずかにくぐもっているとはいえ、その声はさっき彼らが確かに聞いたものと同じだった。

 

 そして、それゆえに動揺が一気に襲い掛かる。

 

「こ、これはサーゼクス・ルシファーの!?」

 

「ま、まさか・・・つまり本当に!?」

 

「う、うそだ、嘘だ・・・そんな馬鹿な!?」

 

 誰が見てもわかるぐらいのろうばいを見せる護衛達を目にして、ジョージはあきれ果てたのか天を仰ぐ。

 

「これだけの事態に対して事情を知らないものがほとんどとは。情けないにもほどがある」

 

 情けなさのあまり涙すら浮かべながら、ジョージは剣を突きつけた。

 

「最後通告だ。あの俗物共に裁きを下すのを邪魔するというのならば、例え天使であろうとこの場で滅する。・・・真に生きるべき道を知っているのならば、そのために動く我々の邪魔をするな」

 

 確固たる意志を持って告げられたその言葉に、護衛達はよく理解した。

 

 目の前の男は、自分たちが守るべき主たちを狙っていると。

 

「全員、ミカエル様を守れ!」

 

「魔王様に指一本たりとも触れさせるな!」

 

「総督にあの賊を近づかせるな!」

 

 一気呵成に護衛達が、ジョージに向かい殺到する。

 

「そうか。悪魔や堕天使はともかく天使すら信仰を忘れ俗な道に生きようというのか・・・」

 

 嘆き悲しむようにジョージは首を振り、そして素早く聖剣を構えた。

 

「・・・ふざけるなよこの俗物共がぁ!!!」

 

 次の瞬間、文字通り護衛達は粉々に吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 駒王学園を囲むように展開している護衛達の三割が、一瞬で文字通り吹き飛ばされた。

 

 その光景を目にして、イッセーは目を見開いて身震いする。

 

「な、マジかよ!?」

 

 ジョージが弱いわけがないことはよくわかっていた。わかっていたがこれは想定外だ。

 

 今の一撃の威力は今まで見てきた攻撃の中でも一番上だ。もしかすると、コカビエルもあいつ一人で倒すことができたかもしれない。

 

「・・・あの野郎あんなに強かったっけ? 護衛の中には中級どころか上級も指折りぐらいだけどいると思うんだけど?」

 

 ガヒドはあまりの光景に冷や汗すら流している。

 

「おいおい。和平が嫌な連中が来るのはわかってたけど、あんな強いやつが出てくるなんて聞いてねえぞ? ミカエル、お前ももう少し本腰入れて拘束してろよ」

 

「面目ありません。上級天使も派遣していたのですが、あの戦いぶりではすでに生きてはいないでしょう」

 

「それ以上に会談の内容が中継されていたことが危険だ。聖書にしるされし神の死がここまで大人数にもれるとは想定外だ」

 

「それに外の軍隊もやっかいね。あのジョージって子、自分がまきこまれることを考えてないのかしら?」

 

 首脳陣が歯噛みしながら見据える中、一瞬で大打撃を与えたジョージは感情を落ち着けようとしているのか深呼吸していた。

 

 実力者も相応にいた護衛部隊の三割を一瞬で滅ぼしたその姿に、全員の動きが止まっていた。

 

「・・・まったく。これだから俗物は嫌いなのだ。目先の欲につられて生きるべき道が見えていない。そんなありさまで何が誇れるというのだ」

 

 吐き気をこらえるかの表情を浮かべながら、ジョージは剣をサーゼクス達につきつける。

 

「一応念のために聞いておこう。和平を撤回し自らのあるべき道を進むことを選ぶ気はあるか?」

 

 一切の虚飾を許さないその視線に対して、一歩前に出たサーゼクスがはっきりと答えた。

 

「ない。キミこそ、神も魔王もいないこの世界で、これ以上戦乱を広げて我々とともに共倒れになる気かね?」

 

 それは戦争を求める者たちに対する牽制球だった。

 

「当然だ。貫くべき正義を忘れてまで怠惰に生きるなど信徒として恥以外の何物でもない。・・・そんなことをするぐらいなら喜んで滅びへと駆け抜けよう」

 

 きっぱりと、これ以上ないほどに冷徹にジョージは断言する。

 

「正しくあろうとすることこそが人々の第一義。それすら捨て去って生き延びて、何の意味がある。ただしさを定義する主がいないのなら、なおのこと正しく生きる努力をするべきではないか」

 

「何を言っているのですか。神なきこの世の中を生きるためには、我らが争っていてはなんの意味のないでしょう! 本当に滅びることが間違っていないというのですか!」

 

 悲しみすら浮かべてミカエルは声を荒げるが、それに対してジョージは嘲笑すら浮かべた。

 

「生にしがみついて聖を捨て去った愚か者が。貴様のような俗物がこれまで信徒を率いてきたなどと、まさに裏切り以外の何物でもない! みろ!」

 

 怒りを全身で表しながら、ジョージは後ろを振り返る。

 

 その時、空中にいくつもの鏡が浮かび上がる。

 

 鏡には動揺している人々の姿が映っており、その表情は皆一応に恐怖に彩られている。

 

 その姿は別に視覚とかそういうのではないと思った全員だが、やがて一つの共通点があることに気が付いた。

 

 神父、シスター、悪魔祓い。所属はともかく全員が教会の人間だった。

 

 そして、鏡の数はあまりのも多く、下手をしなくても万を超える。

 

 その意味を真に理解した者たち全員が、その所業を理解して愕然とした。

 

「お、おい! ジョージ! お前、そいつらは一体なんだよ!!」

 

「・・・一言でいうと、何も知らない信徒だろうね」

 

 この場で信仰から最もはなれていたがゆえに理解が追い付いていないイッセーに、エルレイが口元を引きつらせながらそう告げる。

 

「・・・何も知らない信徒たちに、聖書にしるされし神の死を暴露したんだよ、ジョージは」

 

 その言葉を聞いて、イッセーは唖然とした。

 

 コカビエルやジョージの説明や、実際に知ったアーシアたちの様子をみて、聖書にしるされし神の死が信徒にとって本当に死にたくなるほど知ってはいけないことだということはわかっている。

 

 それが、いきなり知らされたのだ。それも魔王や熾天使、堕天使総督が認めるという形で。

 

「何を驚いている。貴様たちが欺瞞をもって人々を堕落の生に導こうというのであるならば、我々はたとえ滅びを迎えようとも真実の光に照らされた正道を歩むのみだ」

 

『その通り。つけるべき決着を付けずにただ漫然と怠惰に生きるなどあってはならんのだよ、俗物』

 

 ジョージの宣言を後押しするように、ひときわ巨大な鏡が天に浮かぶ。

 

『全くだ。主がいないのであるならば、それこそ我々は一層厳格に信仰に生きねばならぬ』

 

『それを寄りにもよって従属させるでもなく悪魔と共存などと、信徒すべてに対する裏切りにほかならない』

 

『見よ信徒たちよ。天使はあろうことか我々よりも堕落してしまっているのだ』

 

 祭服を来た者たちが、ミカエルを汚物を見るかのような蔑んだ視線でにらみつける。

 

「おいおい。どいつもこいつも枢機卿クラス。これ想像以上に本気で反乱起こしやがったぞ」

 

「ここまでの重鎮が軒並み反旗を翻すか・・・っ! これは旧魔王派以上に危険な勢力と化しているぞ」

 

 アザゼルもサーゼクスも、目の前で敵意を浮かべる枢機卿たちに警戒心を隠せない。

 

 そして、それらを鏡越しに見る信徒たちは顔を真っ青にさせている。

 

「お、おい! これってイリナたちみたいにやばいんじゃねえか!?」

 

「ヤバイなんてもんじゃねえよ! 冗談抜きでショック死する奴だって出かねねえぞ!」

 

 狼狽するイッセーに怒鳴り、ガヒドは状況の悪化に歯ぎしりする。

 

 今の眼の前で、聖書の教えの根幹が揺らいでいた。

 

 これを知っている信徒の数は少なく見積もっても数十万を超えるだろう。それだけの信徒が精神の均衡を崩せば、一体どれだけの被害が発生するかわかったものではない。

 

 そして、そんな混乱の中、ジョージは一歩前に出た。

 

「・・・鎮まれ。そして、やるべきことを思い出せ」

 

 鋭い視線を鏡へと向け、彼はその場の誰もに聞こえる声を飛ばす。

 

「主の死。それは確かにショックだろう。だが、我々のやるべきことは変わりない」

 

『然り。主がいなくなろうと主の教えがなくなるわけではない。我々は進むべき道を既に与えられているはずだ』

 

『その通り。欲を抑え、悪を正し、正道を進むことを主は教えてくださった。そしてその道を進むことは主がいなくなろうと何ら変わりはないのです』

 

 枢機卿たちが口々に続き、そして、その言葉を聞いた信徒たちは表情を変えていく。

 

『にもかかわらず、彼らは悪魔を糾そうとしない。主は罪を許す存在であれど、罪をただ見逃したりはしないのにもかかわらず』

 

『欲望に従い理性を捨てる者たちこそ悪魔。たとえ滅ぼさないにしろ、彼らは理性ある我らの手で監視されねばなりますまい』

 

『そう、我らが信徒と天使が上に立ち、彼らを正しく指導していく。もし共存するのだとしても、それこそが必須の事項でしょう』

 

「そうだ! まずつけるべきは我らの決着。それすら放棄した彼らを糾すことこそ急務。目を覚ませ、我々は主の死を嘆いている暇すらないのだ!!」

 

 そう告げるとともに、彼はその聖剣を突きあげる。

 

「立ち上がれ信徒たちよ! まずは、堕落した信徒から主の遺されし力を奪還するのだ!!」

 

 そしてその直後、結界を突き破り鎧を身に着けた信徒たちがなだれ込む。

 

 いま、世界を揺るがす大きな戦いの火ぶたが切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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