学生運動のシヴィルウォー ーハイスクールD×D外典 作:グレン×グレン
とりあえず、ここでオリ主及びメイン敵キャラの1人が本格的に動き出します。
兵藤一誠は、割と本気で緊張していた。
ここ最近不安要素がいくつもあって苦労していた。
自分の家で部活の集まりをしていたと思ったら、仲間である木場佑斗の様子がおかしくなった。
あまりにアレだったのでリアスに聞いてみれば、教会の実験の失敗作として処分されかけたというあまりにも不穏すぎる彼の過去を聞かされて暗い気持ちになる。
しかも、どうやら自分の幼馴染がその聖剣と関わりがあるらしい。ろくに記憶にも残っていないが、妙なところで接点があって度肝を抜かれた。
そして、家に帰ったらその幼馴染が来ていてしかも女だった。
「・・・くっ! 俺としたことが一生の不覚!」
「・・・今絶対ろくなこと考えてませんね、イッセー先輩」
あれだけの上玉の存在をスルーしていたことに悔やみの感情を漏らすと、小猫に辛辣な視線を向けられてしまった。
だが、問題はそこではない。
その少女。紫藤イリナは、教会の戦士となっていた。
そして、彼女たちはこの地の管理をしているリアスたちと話をしたいといってきた。
はぐれとはいえ、悪魔祓いが持つ悪魔への敵意は身に染みてよくわかっている。それを持つものがなんで悪魔と交渉し様なんて考えるのだろうか。
とても不安でたまらない。
そして、扉が開かれた。
「どぉもぉ! これ手土産のクッキーだけど良ければ後でみんなで食べてくんない?」
ものすごい軽い声が響き渡って、思わず目を丸くさせた。
一番に入ってきたのは金髪の男。年齢はだいたい自分たちと同じぐらいか。
「あ、その前に名乗らねえとな。俺は一応教会の戦闘要員やってるガヒド・エクスカリボールだ。んで―」
軽い調子で少年が後ろを振り返り―
「昨日ぶりねイッセーくん! 私は特に必要ないでしょ?」
「一応名乗っておこう。ゼノヴィアだ」
昨日家にやってきていた少女二人。
そして、それに続いて最後に一人が部屋に入る。
その瞬間、背筋に悪寒が走り思わず二度三してしまう。
「・・・ジョージ・ウルバヌスだ」
その視線を見て、イッセーは嫌な予感が当たっていることを自覚する。
「安心しろ。お前たちと違って信徒は自らの発言を捻じ曲げたりはしないんだ」
ああ、やっぱり教会は敵なんだな。
敵意通り越して殺意しか見えねえよ
教会から来たものたちが語った内容は、悪魔になったばかりで全く分かっていない自分でもすごいことだということがよくわかった。
なんでも、堕天使の幹部であるコカビエルとかいう男が、教会からエクスカリバーを盗んで寄りにもよってここに逃げ込んだらしい。
しかもエクスカリバーは七本あるとのことだ。戦争で割れたとはいえ、驚くことの連続だった。
そして、それらについての説明をしていたのはガヒドだけだった。
それ以外の意図もあったのかもしれないが、ほかの三人は大なり小なり敵意を向けているのに対して、ガヒドはかなり好印象な表情を浮かべていて、少し気分がいい。
とはいえ、そんなガヒドに鋭い視線を向けている者もいることから見て、彼はもしかして嫌われているのではないかと、頭が悪いなりにイッセーはそう推測してしまう。
「まあ、それで俺らが派遣されてきたわけなんですが、俺はともかく上は堕天使と同じぐらい悪魔を信用なんてしてないんですよ。オタクらだって堕天使たちが魔王の宝物を盗んで教会に逃げ込んだなんて聞いたらどう思います?」
「・・・協力して悪意を向けてきていると思うわね。つまりはそういうこと?」
不機嫌ながらも、リアスも言いたいことを理解したらしく納得の色を見せた。
これで露骨に「お前らつながってるかもしれんけどそこのところどうよ?」なんて言われたらもっと不機嫌になっていただろう。そういう意味ではガヒドの話し方はうまかった。
少なくとも、彼はリアスたちと事を荒立てたくないということが分かる。
「そういうわけなんで、まあ申し訳ないんですけど俺たちが勝手に争ってくたばるところを嘲笑っててくれませんかねぇ? 教会としては悪魔を信用するなんて選択肢もないわけで、いや、腹立たしいのはわかるんですがそういうのは上に行ってくれると助かるですがねぇ?」
「人のことを悪趣味みたいに言ってくれるわね。安心しなさい、魔王ルシファーさまの名に誓って、堕天使と組することなんてありえないわ」
不機嫌さはいくらかあるが、リアスは冷静に対応した。
ガヒドはそれに安堵を隠さず、ほかの三人も事を荒立てるつもりはないのか特に表情を動かさなかった。
「んじゃ俺らはこの辺で。できる限りさっさと終わらせるんで」
そう笑顔でいうと、ガヒドはハンドサインで三人を進ませようとする。
「バイバイイッセーくん。お母さまには内緒にしといてあげるわ♪」
「はいはいイリナ。手早く帰らないと怒られるぜ?」
そういいながら部屋を出ようとするが、そのうちの1人が、動きを止めた。
「・・・まさかと思ったが、君は魔女アーシア・アルジェントか」
動きが止まった。
「なん、だと?」
ジョージと名乗った少年が、愕然とした面持ちで振り返る。
「え? この人が悪魔をいやして追放されたっていう魔女なの? なんでこんなところに?」
「おいおいその辺にしとけよ。これ以上もめたくないからさっさと帰ろうぜ? 信仰捨てて悪魔になったにしたって、今ここでもめる必要はねぇだろうが」
少し焦りの表情を浮かべながらガヒドが声を荒げるが、しかしゼノヴィアは首を振る。
「いや、これでも信心深いものを見抜くことには自信があってね。彼女はまだ信仰を捨てていないよ。信じられないことだが」
ガヒドがこちら側とゼノヴィア太刀を交互に見ながら顔を青ざめさせるが、しかしゼノヴィアは止まらない。
アーシアがまだ信仰を持っていることを理解したからか、エクスカリバーを抜くとそれを突きつけた。
「なら我々に切られるといい。その信仰が本物なら、我らの神は救いの手を差し伸べてくれるはずだ」
次の瞬間、その刃が黒い刃によって押さえつけられ、同時に赤い籠手が割って入った。
「いい加減にしろ、ゼノヴィア」
「これ以上アーシアに触れるんじゃねえ」
「・・・何のつもりだガヒド。私は一信徒として慈悲を向けているだけだが?」
「人様の陣地で好き勝手するなんてふざけた要望突きつけておいて、その眷属殺そうとか戦争する気かお前は! それ以上やるなら俺がお前を切るぞ!!」
ガヒドは本気でゼノヴィアをにらみつける。
「あ~も~マジすいません。こいつ等信仰心は本物なんですけどそのせいで排他的っつーか容赦がなくって」
「ふざけんじゃねえよお前ら。なあ、ただの優しい女の子を聖女扱いと化して独りぼっちにして、少し間違ったら魔女って追い払って、そして何の救いも与えないとかお前ら頭おかしいんじゃねえか!?」
額に青筋を浮かべながらイッセーはそう言い放つが、ゼノヴィアたちはむしろ不思議そうな顔すら浮かべていた。
「聖女に友など必要あるまい。何より、神の救いがないということは救われるに値しないということの証明ではないか?」
その言葉にイッセーは殴りかかろうとするが、しかしそれより先に動くものがいた。
「いろいろ我慢していたつもりだけど、ここまでされたらとても抑えられそうにないね」
今まで沈黙を続けていた木場佑斗が、魔剣を生み出しながら一歩踏み出す。
「・・・何者だ、君は」
「君たちの先輩だよ。まあ、失敗作で処分されたわけだけどね」
誰が見ても殺意がわかるほどの剣幕で、佑斗が一歩前に出る。
そして、そこにさらに一振りの剣が姿を見せた。
「ふむ、これは交渉決裂か。・・・
灼熱のように朱い刀身をもった剣を構え、冷笑を浮かべたジョージが一歩前に出る。
「・・・ジョージ! お前まさかまだあきらめてなかったのか!!」
「剣を収めなさい佑斗! あなた方も、これ以上は宣戦布告と受け取るわよ!!」
ガヒドとリアスが叱責するが、しかし彼らはそれを気にしない。
「私は最初から上に進言していたのだ。ただでさえ八百万の神々などという薄汚い汚物のような価値観の生で正しき信仰が広まらぬこの国に、俗に塗れた悪魔を野放しにしては信仰がいつまでたっても広まらない。いい機会なのだからコカビエルより先にグレモリーを浄化するべきだと思っていたのだよ」
「なかなか興味深い意見だ。適性に値しないのならば、信仰を持っている者すら躊躇なく処分するお前たちらしい意見だね」
お互いが最初の目標と設定したのか、ジョージと佑斗がにらみ合う。
そして、ジョージは佑斗の言葉を肯定するかのように腕を開いた。
「当然。我らが常に主の試練に立ち向かい、乗り越えていくことが正しいあり方。耐えきれなかったものを哀れに思うことこそあれ、それを逆恨みするようなものなどにかける情けはない」
そういうと、さらにその鋭い視線はアーシアにも向けられる。
「そもそも祈りとは主のために行うもの。自分たちに返礼があるなどと考えているのならばそれこそ我ら信徒に対する侮辱以外の何物でもない。・・・そのようなものを聖女と認識する馬鹿どものせいで、一人の悪魔が浄化される機会が失われたとなれば情けないことだ。・・・反吐が出る」
そういうと、彼は懐から一枚のビニール袋を取り出す。
「・・・うぉえぇええええっ」
本当に吐いた。
そのあまりの光景に、怒りに呑まれかけていたイッセーたちすら気圧される。
そしてその袋の口を丁寧に縛ってわざわざゴミ箱に入れると、口元を拭いながらジョージは気を取り直した。
「そしてそんなことをしたものを処罰せず追い払い、悪魔としてしまったことは間違いなく我々信徒の失敗だ。今からでも信仰心を持っているというのならば、これ以上悪徳に塗れぬうちに浄化するのは当たり前。それを悪意というのならば、なおさら生かしておく意味もない」
「怪我してるやつを治してやりたいって思うことが何か悪いのかよ!」
「悪いに決まっている。悪魔とは、悪徳を肯定し人々を堕落に誘う種族のことだ。我らが主は罪人をも許すが、それはその罪を自覚し悔いているからこその許し。改心もせず悪行を繰り返す時点で切り捨てられるのは当然だ」
そして、彼は静かにイッセーをにらむ。
「ましてや人間でありながら自ら悪徳の権化へと成り果てるなど醜悪以外の何物でもない。貴様等はその魔女を信仰心があるとか言うが、ならばなぜ自らの邪悪さを恥じて許しを得るために祈ることすらせんのだ?」
「は? そんなことしたら死ぬほど痛いじゃねえか!」
「それはすなわち浄化されているということだろうに。それを喜べぬのならば話にならん。少なくとも、我らに頭を足れた悪魔はその一日のほとんどを祈りに費やしているぞ」
今さらりと変なことを聞いたような気がしたが、イッセーはそれを気にしている余裕がなかった。
こうしている間にも、ジョージが持っている剣からは炎がちらちらと漏れている。
今から戦闘が始まれば、少なくともこの部屋は火の海になるのが確定したようなものだった。
しかし、イッセーも低いはない。
短い付き合いだがイッセーはアーシアという少女がどういう少女かよくわかっている。
勝手に聖女に祭り上げられ、そして魔女として追放されても、彼女は周りを恨んだりしなかった。
それどころか、悪魔になっても祈りをついつい捧げてしまうぐらいの信心深い少女なのだ。
そんな少女を殺すことが正義だというのなら、喜んで悪でいよう。
(・・・おいドライグ。いるんなら右腕を差し出したいから考えといてくれ)
『やる気だな、相棒。まあ、目の前の奴はあのフェニックスより強いと見たほうがいいから当然か』
ドライグも面白そうにしながらも警戒心がわずかに出る。
それほどの相手を前にして、イッセーは素人なりに構えを取った。
「全く、無神論やら八百万やら、なぜイリナのような素晴らしい信仰を持ったものが産まれることもあるのに、この国はそんな腐臭のする価値観を持ってしまったのか」
「うるせえ。悪魔批判の次はウチの国まで批判すんのかよ」
「程度はともかく現在の人類そのものが批判の対象ではあるがな。乗り越えるべき試練から目を背け、怠惰に権利を要求する体たらく。獣と人を同列に語る無知蒙昧な思考回路。大戦の余波で弱体化し、罰を与えることが減ってしまったからといて、安全圏から好き勝手にものを言うことしかできない覚悟の無い豚共が人間の皮をかぶって生きていることには殺意を覚える」
じつに不機嫌そうにそう言い放つと、ジョージはその切っ先をイッセーに向けた。
「さて、では本来の予定通りまずは貴様たちから死んでもらおう。その後信徒たちの手で真なる教えを広めながら、コカビエルを浄化することにする―」
「終了終了ー。これ以上のおいたはだめだよー」
次の瞬間、視界が真っ黒に染まった。
「え・・・・ええええええ!?」
違う、黒く染まったのではない。
黒い金属でできた蜂みたいなものが、視界いっぱいに集まっていたのだ。
「なにこれ!? キモい!?」
「そんな!? 結界は張っていたはずなのに!!」
突如現れた蜂の大群に、リアスたちも動揺する。
そんな中、ガヒドは特にあわてもせず、肩を落とすとため息をついた。
「・・・念には念を入れて頼んどいてよかったぜ。わりいエルレイ、世話賭けた」
「どういたしましてー。一仕事終わったらちゃんと付き合ってよー。私も仕事終わりで立ち寄っただけなんだからさー」
まのびした声が聞こえる中、蜂の数がへって互いの姿が見えるようになる。
そんな中、ジョージはガヒドを激怒しながらにらみつけていた。
「どういうつもりだガヒド! 貴様、外部にエクスカリバー盗難を漏らしたのか!!」
「口止め料はちゃんと払ってるよ。大体、上の支持無視してグレモリーと交戦しようとしたお前に言われたくないっていうか、そのためにわざわざ呼んだんだからな」
意にも介さずそういうと、ガヒドの剣をジョージにつきつけていた。
「お前ら、グレモリーとの交戦はあくまでグレモリーから仕掛けてきてからだ、こっちから相手の眷属に剣を向けた以上非はこちらにある。・・・ここでグレモリーと交戦するっていうなら、俺はグレモリーにつくぜ?」
思わぬ援軍にイッセーたちが唖然とする中、ガヒドとジョージは鋭くにらみ合う。
「やはり貴様の信仰心には問題があるな。・・・信徒の中ですら正しい信仰心を持てないとは情けなくて涙が出る・・・っ!」
「そりゃどうも。おたくの信仰心は苛烈すぎんだよ」
心底めんどくさそうにガヒドはそう漏らすが、ジョージを一度見直した瞬間、度肝を抜かれて目を見開いた。
「・・・一度は信仰心を持って聖女とまで呼ばれた少女が、悪徳の権化と化していき恥をさらし続けているのに浄化して差し上げることすらできない、できな、できないなんて・・・っ! く、悪魔に支配された汚染地帯では主の輝きは届かないと、いにゅのか・・・うぅううう!!!」
「・・・マジ泣き」
いつの間にやらイッセーの隣にいた小猫がドンビキしていた。
「ああ、正しい信仰を持つがゆえに正しくない信仰を嘆くだなんて! ジョージさんは本当に強い信仰心を持ってるのね! 朱よ、信仰心の塊ともいえるジョージさんにお慈悲を!!」
「悪魔に堕ちたものにも強い慈悲をもち、解釈できぬ事実を心から嘆く。信徒とはかくあるべくかもしれない」
「いやお前ら。アレは参考にしたらいけねえだろ」
なぜか感動しているイリナとゼノヴィアに、ガヒドは本気で呆れの表情を見せる。
「ぐ、ぐぉおおおおおおおおおおん!! 主よ、あなたの慈悲と試練を体現できずして、申しわげありばぜんんんんんn!!」
「ああ、泣かないでジョージさん!」
「おいゼノヴィアとイリナ。お前らジョージ連れて先帰れ。後の交渉はこっちでやっとくから」
「いや待て、アーシア・アルジェントはどうするんだ?」
なんか急激にグダグダになっているが、それでもジョージはなんとかまとめようとしていた。
「今グレモリーの眷属なんだから手を出せるわけがないだろうが。ほら、だから俺一人でいいって言ったんだよ。そのニトログリセリン連れてとっとと帰れ」
心底うんざりしながら、ガヒドは三人を追い出した。
そして剣をしまって両手を挙げて、リアスたちに引きつった笑顔を見せた。
「・・・とりあえず、気分落ち着けたいからお茶くれない? あと、俺はこと構える気ないんで殺意向けないでちょーだいな?」
主人公、ガヒド・エクスカリボール。教会出身だが信仰心がほとんどない不良悪魔祓い。
そしてイッセーたちの宿敵となる男、ジョージ・ウルバヌス。信仰心以外に何もいらないと考える、超ストイックな悪魔祓い。
ガヒドは最初あくまで味方側のオリジナルキャラの1人にする程度のつもりだったのですが、自分の技量ではオリジナルキャラの視点を多用しないとオリジナリティを出せないもので事実上のオリ主になりました。D×Dのメインキャラを張るだけあって、かなりチートな力を持っているのでお楽しみに。
ジョージはある意味でこの作品の根幹を示すキャラクターの1人。彼は信仰心だけで生きているようなものなので、グレモリー眷属をかけらも認めません。アーシアに対しても本当に善意で殺そうとしています。善意百パーセントです。吐いたのも挑発でも何でもなく本当に吐き気を抑えきれなかったからです。