学生運動のシヴィルウォー ーハイスクールD×D外典   作:グレン×グレン

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最後の良心が一見一番問題児なことってよくあるよね?

 

 一口紅茶をすすって、ガヒドは腰を落として一息ついていた。

 

 揉め事起こした直後の敵地のど真ん中でそんなことができるのに、イッセーは感心したらいいか呆れたらいいか本気で困っていた。

 

「・・・とりあえず、人隠した状態で交渉もなにもねえよな。エルレイ、出てきてくれない?」

 

「はいはいー。エルレイさんの登場だよ」

 

 次の瞬間、魔法陣が展開されるとそこから女性が一人姿を現した。

 

「おお、おっぱい大きい!」

 

 桃色の髪を長く伸ばした胸の大きい女性。おそらく自分たちより何歳か年上だろう。

 

 普通に美女だったこともあり、いろいろあって荒んでいたイッセーは素直にいやされた。

 

 そして、こんなタイミングでそんなことをされれば当然ツッコミが入る。

 

「イッセー? こんな時に鼻の下を伸ばすだなんて緊張感が足りないわよ?」

 

「空気読んでください発情期先輩」

 

「痛い痛い痛い! すいません部長に小猫さま!!」

 

「お、お姉さんのおっぱいに目がいっちゃったか。これでも触り心地も抜群なんだよね。そうでしょガヒドくん?」

 

「機会があればぜひ揉みな! 柔らかいったらありゃしない!」

 

 ニヤニヤしながらエルレイは自分の胸をゆっくりと動かし、それをしっかり視界に収めながらガヒドはサムズアップする。

 

「あなたね。仮にも教会の戦士のくせしてそれはどうなの? 彼らの方がまだまともな気がするわよ?」

 

 色欲まみれのその姿にリアスがツッコミを入れるが、ガヒドは一切気にしなかった。

 

「構わねえよ。俺が教会に所属してんのは孤児なの拾ってくれた恩があるからなだけで、俺個人としちゃあ力だけ寄越してひどい環境にほっぽりなげるような神様に興味はねえ。この国の八百万ってのの方が愛着もてて好きだからねぇ。悪いのもいるってのが実にいい」

 

「貴方よく異端扱いされてないわね」

 

 あまりのあれっぷりに一同そろって呆れかえる。エクスカリバーに刺激されて憎悪に燃え上がっていた佑斗すら、ぽかんとしてしまっていた。

 

「悪かったねアーシア・アルジェント。あいつら悪気はないんだけど、排他的だから異端者殺すことに躊躇ないんだよ。特にジョージは天使たちをテレビ中継で出演させて、間違った信仰をしている者たちを正しい信仰に導こうとか一年に一回は言い出すぐらいの最右翼だから」

 

「人間社会の影響を全く考慮してないわね。世界恐慌が起こったらどうするつもりなのかしら?」

 

「それはそれで構わないんじゃねえの? 人間社会が存在しているのは主のためだって本気で思ってるから、それで信仰が集まるなら何億人死のうが気にしないぜ、あいつ」

 

 嫌味たっぷりなリアスの言葉にため息交じりでそう答えると、ガヒドは勢いよく頭を下げた。

 

「まあ、今回はこちらが完璧に非礼だった。悪いやつじゃねえが了見が狭いんだ。信仰心はあるんだが排他的なんだ」

 

「構わないわ。少なくともあなたはことを収めようとしてくれたのだもの。こっちも佑斗とイッセーがことを荒げてしまって申し訳なかったわ」

 

 ほかの三人はともかく、ガヒドは特に問題はないと判断してリアスは話しを勧めようとする。

 

「それで、そこの彼女は何物?」

 

「俺が仕事で世話になっている情報屋兼傭兵。因みに欲に忠実な俺は夜のベッドでもお世話になってます!」

 

「エルレイ・ライトストーンだよ。仕事に見合ったお金があるなら、ボディガードから鉄砲玉、あなたの夜のお供まで引き受ける。上級悪魔や天使だってぶん殴る。でもボーイズラブだけは勘弁ねー」

 

 ガヒドと同じくこちらも軽い調子でいろいろといってくるが、しかし敵意は全く感じない。

 

 敵意満々だった信徒たちに比べればはるかに話しやすく、そのせいかイッセーたちの気も緩んでいた。

 

「聞いたことがありますわ。禁手に至っているという女性の傭兵。当人が納得すれば、子供の小遣いのようなお金でも仕事を引き受けるという・・・」

 

「何より誠意ってのが一番だからね。そう、誠意さえあれば私は女のことでもしっぽりやれちゃうんだよ」

 

 自分のことを知っていたのが嬉しかったのか、朱乃にしなだれかかるとエルレイはその耳たぶに息を吹きかける。

 

「あらあら。私Sですから痛いかもしれませんわよ?」

 

「いい女は相手次第でSにもMにもなれるものだよ? それに、あなたみたいなかわいい子だったら喜んでブヒブヒないちゃうかも?」

 

「はい! その時は是非オッパイでびんたしてくださいお姉さま!!」

 

「あ、ガヒドてめえ! 朱乃さん、教会の人間なんかより俺に悪戯してください!!」

 

「・・・話を戻してもいいかしら?」

 

 いきなり会話がピンク色に染まりそうになったので、リアスは方向性を何とか戻す。

 

 一応、教会の戦士たちが堕天使と戦うことそのものについては許可は出した。

 

 もしかしたら終わった後にこちらを殺しにかかるかもしれないが、少なくともガヒドにそのつもりはないだろう。

 

「首輪はしっかり握ってもらいたいのだけれでも、正直大変そうね」

 

「そりゃあもう。あいつ米軍に協力を要請して駒王町ごと核で焼き払えとか本気でいってるし。・・・割と本気で人間は神の道具だと思ってる節があるし誇りになってるから」

 

 その時の光景を思い出したのか、ガヒドは疲れたようにため息をついた。

 

「あいつは本気で信仰心強いから厄介なんだよ。確か総資産が兆を超える石油王の末裔なんだけど、聖書の教えに改宗して布教活動に努めている生粋の信徒でなぁ」

 

「へ~。石油王とかってみんなイスラム教徒だと思ってたけど違うんだ」

 

 イッセーはそんなことを思った。

 

 彼の脳内ではターバンを巻いてナマステナマステ言っているイメージが浮かんでいる。

 

「それだけじゃねえ。あいつ当主になってからPMC作ってほかより赤字経営させてんだけど、その理由なんだと思おう?」

 

 イッセーは目を閉じて考える。

 

 あの信仰心の塊っぽい人柄から見て、金稼ぎのために一生懸命になるタイプではないだろう。

 

 となると・・・。

 

「イスラム過激派とか皆殺しにするため?」

 

「違う。『欲物に塗れて信仰心を持つことができない哀れなものたちも、我々信仰心が強き者たちの力になることができれば少しは救われるだろう。私の財はそのためにあるのだと思っている』だとよ」

 

 想像をはるかに凌駕する理由だった。

 

 そんな理由で赤字経営ができるのにも驚きだが、それ以上に信仰がそれだけ重要だと考えていることにも驚きだ。

 

「基本的に宗教っていうのは重いんだよ。日本人にはよくわからない感覚かもしれないが、それが理由で昨日まで友達だった奴を心の底から憎悪することだってできる。信じられないかもしれないがな」

 

 そういいながら、ガヒドは紅茶をすすった。

 

「ミルクなしってのもいいね。俺はここ数年イギリスが中心だから基本的にミルクティーばっかりなんだよ」

 

「あらあら。でしたら今度はレモンティーはいかがですか?」

 

「そいつは楽しみだ。ついでにお茶請けももらっとこうか」

 

 ガヒドはそういうと佑斗の方に視線を向ける。

 

「・・・さて、で、戦敗とか言ったアンタはつまり聖剣計画の関係者か」

 

「察しがいいね。そうさ、君たちの完成のためにボロぞうきんのように捨てられたのが僕達だよ」

 

 敵意満々の言葉に、しかしガヒドは特に変化はしない。

 

「勘違いを訂正しておこう。・・・俺らの中で聖剣計画の産物が使われてるのはイリナだけだ。そもそも俺とジョージはエクスカリバー使いでもない」

 

 そういうと、ガヒドは手に持っていた剣を軽く振るう。

 

 それを懐かしげに見ながら、エルレイは不敵にほほ笑んだ

 

「特に聖なるオーラも出ないだろ? そもそもガヒドのは魔剣だからね。物心つく前から飛んできて、それから離れないいわくつきの逸品なんだよ」

 

「おかげでエルレイも禁手に目覚めるし、いや恐ろしい武装だとは思わねえか?」

 

 そうおどけるが、そこでガヒドは立ち上がると、今度は佑斗に頭を下げた。

 

「仮にも所属している組織の人間として筋は通す。・・・あいつらの暴走を見抜けなかったことを、教皇と主に変わって謝罪する」

 

「え・・・」

 

 まさか、本当に謝罪されるとは思わなかったのだろう。佑斗は目を丸くしてぽかんとする。

 

「妙なところで筋は通すからね、ガヒドは。あんなところで育ってるとは思えないぐらいまっすぐなときあるよね」

 

「エルレイさんはガヒドさんとは親しいんですか?」

 

 姉のような視線を向けるエルレイにアーシアがそう尋ねる。

 

 その頭をなでながら、エルレイは過去を懐かしむかのように遠くを見つめた。

 

「私もガヒドも孤児でね。私は事情があって教会にはいられなかったんだけど、神父さんが慈悲深くってお互いに連絡するための携帯電話をくれたんだよ。だから、今でも格安で手伝ってる」

 

「幼馴染ってやつなんですか。でも、事情って?」

 

 ふと気になったイッセーが聞いてみるが、その口を閉じさせるかのようにエルレイの開いた手が伸びる。

 

「そこは企業秘密。これでも情報屋もやってるからね。欲しければ五万円」

 

「高い!?」

 

 男子高校生にはとても払えない金額だ。ぼったくりとしか思えない。

 

「これでも良心価格だよ? だってある意味人生かかってるし?」

 

 ニヤニヤ笑いながらそういうと、そしてガヒドに視線を向ける。

 

「そういえば追加で受けてた以来だけど、どうせだしここで話していいんじゃないかな?」

 

「お、そりゃいい。詫び代代わりってことで」

 

 明暗といわんばかりに表情を明るくすると、ガヒドは佑斗に顔を向ける。

 

「追加で訂正しておこう。・・・あれは現地担当の暴走だ。少なくとも、挿げ替えられてからは被験者の処分なんて非道は行われていない」

 

 真剣に、ガヒドは真剣に佑斗にそう告げた。

 

「どこの世の中も一神教は排他的で厳しいもんだが、真面目に信仰している連中を無意味に切り捨てるような奴は邪教だよ。当時の研究主任は追放されている」

 

「そ、そうなんですか?」

 

 どこかほっとした様子でアーシアが聞き返し、ガヒドはうなづいてそれにこたえる。

 

 追放されたとはいえ、かつて仕えていた組織が非道な実験をしていたということに心を痛めていたアーシアは、その言葉に少し救われたようだった。

 

「・・・で、その追放された研究主任はいまこの駒王町に潜伏している可能性が高いんだよ」

 

「それは本当かい?」

 

 エルレイの言葉に佑斗の表情が再び真剣さを増す。

 

 佑斗がエクスカリバーを恨むのは、使い手になるために実験を受けながらも処分というむごい扱いを受けたことが原因だ。正しい意味でいうのならば、エクスカリバーに対する復讐は八つ当たりに近い。

 

 そういう意味ではその指示を下した元凶こそ、真の意味での仇なのだろう。

 

「使い手もいないのにエクスカリバー盗んでもリスクしかねえだろうしな。そこらが気になったんでエルレイに調査を依頼してたんだよ」

 

「名前はバルパー・ガリレイ。後で顔写真とかのパーソナルデータを送るよ」

 

 そういうと、エルレイは立ち上がるとドアを開ける。

 

「悪いけど次の予定が埋まってるんでね。私はこれで失礼するよ」

 

「ああ、悪かったなエルレイ。次はいつ一緒に眠れることやら」

 

「葬儀に呼ばれないことを願ってる。じゃ、問題児のお世話頑張ってね」

 

 そういい合いながら、エルレイは部屋の外に出ていった。

 

「・・・さて、それじゃあ俺も帰るとするわ。あいつらそろいもそろって天然だからほっとくと何しでかすかわかったもんじゃない」

 

「あ、ああ、大丈夫なのか?」

 

 イッセーは三人の、特にジョージの様子を思い出してガヒドの心配する。

 

 アーシアを悪魔のままにすることに耐えきれず本当に吐くような男だ。おそらく教会の中でも突き抜けた部類だろう。

 

 そんなのの相手にこの信仰心ゼロがついているとなると、心配にしかならない。

 

「まあ確かに。指示だした上の連中はエクスカリバーを堕天使に使われさえしなければどんな被害が出ようが構わないっぽいし、たぶん俺のことはコカビエルと相打ちになって死んでくれとか思ってるだろうし」

 

 物騒なことを何でもないように言いながら、しかしガヒドはにやりと笑う。

 

「まあ、こっちにも切り札はあるから安心しろ。大丈夫、終わったら首根っこひっつかんででもあいつら連れて帰るから」

 

 そういいながら笑うガヒドの表情は、何というか親近感がわいてくるものであり、そしてどこか苦いものを感じさせるものだった。

 

 

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