学生運動のシヴィルウォー ーハイスクールD×D外典 作:グレン×グレン
前回の話ははっきり言えば聖書の神の死に対する個人的な独自考察とお考えください。
とはいえ聖書の教えことキリスト教は世界中で信仰されている大宗教。加えてそれがメインのアメリカでは、いまだにダーウィンの進化論を3割以上が信じておらず、さらに残りの四割ぐらいがそれを行ったのは神の意思であると判断しており、さらに胡散臭いのだと核戦争こそ審判の日だと思っている者がいるとかありましたので、実際に知られたらこれぐらい混乱状態になるだろうなと思っております。
ほかの作品でも最近言及しましたが、聖書の神の死は間違いなく知られたら信徒の大半が恐慌状態になるであろう機密事項であることは想像に難しくありません。原作者がそこまで考えているかはともかくとして、それだけの緊急事態であると思っております。
「・・・な、んだ・・・と?」
驚愕するコカビエルの背中から、弱弱しく、しかし決して意志の強さを失っていないガヒドの声が流れる。
「戦争だっていうなら油断しちゃいけないなぁ。そういう奴を叩き潰すのが得意なんだよ、俺」
全身傷だらけになり、血を流しすぎたのか顔面蒼白な状態で、しかしガヒドは勝利を確信した笑みを浮かべる。
地面に墜落するコカビエルを、何とか着地しながら踏みつけつつ。ガヒドは血の気の引いた顔でしかししっかりと立っていた。
「・・・悪いねみなさん隠れてて。切り札使うにしても正面からだとさすがに勝算低いんで、決定的な隙を見せるのを待ってたんだよ」
「相手の隙をつくのはなんら戦術的には間違っていないが、やはり好かんな。とはいえここで仕留められたのは僥倖か」
今日がそがれたかのように剣をしまいながら、ジョージは嘆息しつつ全身から力を抜く。
その視線が、ガヒドの持つ魔剣へと向けられる。
「エクスカリバーを担ったアーサー王と戦った、ローマ皇帝ルキウスが振るいし魔剣、フロラント。エクスカリバーをめぐる争いの幕引きをそれがなすとは皮肉な話だ」
「まあそういうなよ。堕天使幹部相手に手持ちのPMCから大部隊派遣してたあんたよりましだ」
心底いやそうに告げられたその言葉に、イッセーたちは目を剥いた。
ジョージが私兵集団を持っていることは聞かされていたが、この街に派遣していたとは想定外だ。
そもそもその集団は現代的な軍事兵器で武装しているはず。それを軍事アレルギーを発症している者も多いこの国に投入するなど、下手すれば国際問題に発展してもおかしくない。
「ジョージの使いって嘘ついて解散させるのに苦労したぜ。信仰のためにこの平和主義国家日本に武装勢力大量投入させたなんて、もしばれたらお前暗殺されるぞ」
「教会の宝といっても過言ではないエクスカリバーを奪還するための戦いなのだ。私はまず日本政府に自衛隊の協力要請をするべきだと進言したのだがな」
「頼むから、頼むから表の社会を堂々とこっちの事情に巻き込もうと考えるその思考やめろ。今のご時世でそれやったら死者の数がとんでもないことになるんだよ」
心底うんざりしながらガヒドはため息をつき、それで意識がキレかけたのか膝をついた。
「おい、大丈夫かよ!?」
「いや~、思った以上にコカビエルの連れが手ごわくてねぇ? 切り札はコカビエル用に温存してたから手こずって手こずって。・・・一発勝負なんだよ俺の切り札」
イッセーに肩を借りながら、ガヒドは情けなさそうに苦笑する。
だが、それを笑うものなど誰一人としていない。
不意打ちであったとはいえ、この場にいる中で一番強いコカビエルを倒したのは彼の功績だ。ましてやこの街の命運がかかっていた以上、彼に感謝することこそあれ、嘲笑うものがいるわけがない。
「・・・面白い。俺の出番が全くないじゃないか」
突如、頭上からそんな声が聞こえた。
それに反応して仰ぎ見た全員が、そこに白の輝きを見る。
「たかがコカビエルとはいえ、最上級の堕天使を一撃で倒せるものなどそうはいない。なかなかいいものが見れて金を払いたい気分だ」
そこにいたのは龍を模した白い鎧をまとった一人の男。
「・・・白龍皇か。堕天使に組しているとは聞いていたが、まさかコカビエルを助けに来たのか?」
隙を見せずにジョージが剣を構えるが、白龍皇は手を出してそれを制すると、地面に降り立ってコカビエルを担ぎ上げる。
「むしろ俺は止めに来た側さ。叩きのめしてでも連れ戻せとは言われていたが、まさか来る前に倒されるとは思わなかった」
そういいながらついでといわんばかりに倒れ伏しているフリードも拾い上げると、そのまま空へと浮かんでいく。
「赤龍帝にはがっかりだったが、君とはいつか戦ってみたいものだ。縁があったらまた会いたいね」
そういいながら白龍皇は飛び去ろうとする。
そこに、声がかかった。
『・・・無視か、白いの?』
「・・・それでどうすんだお前ら。これ間違いなく上に知られたらやばいことになるぞ?」
ガヒドは白龍皇を無視してジョージ達にそう尋ねた。
「白龍皇と赤龍帝は気にしなくていいのか?」
「興味ない。っていうか俺疲れてるからさっさと消えてほしいのに何で呼び止めんだよ奴さんは」
ジョージにそう答えながら、ガヒドは割と本気で憂鬱な気分であった。
なにせ天使や教会はもちろんのこと、敵対している悪魔や堕天使すら無言の連携で隠し通してきた機密事項だ。下っ端が知っていいような情報ではない。
「・・・エクスカリバーは返還せねばならんだろう。第一、主がなくなられていようが主の教えは遺っている。ならば我々はそれを広め人々を教えただすのみだ」
「強いなあなたは。私はまだ立ち直れそうにないよ」
毅然としてさらりと言い切るジョージに、ゼノヴィアはありえないものを見ているかのように目を細める。
信仰の根幹がすでにないという事実は、まっとうな信徒なら正気を失ってもおかしくない。意識を失っているイリナがその証拠だ。
そんな中、迷うことなく信仰の道を行くジョージはまさに傑物というほかないだろう。
「俺はパス。今まででも厄介者扱いされてんのに、こんな厄ネタ聞いたなんて知られたらマジで殺される」
「そうか。・・・本来なら今すぐにでも多くの悪魔を滅ぼすべきだろうが、今はエクスカリバーの返還が一大事だからな。とはいえイリナはどこかに運んだ方がいいだろう。すぐには目を覚ますまい」
三人は倒れ伏しているイリナに視線を向ける。
この中でも信仰心が人一倍強い彼女にとって、あまりにもこの情報は劇薬に過ぎた。
目を覚ましたとしても一日やそこらで立ち直れるとは思えない。だがエクスカリバーの核はできる限り早く返還するべきだった。
「・・・わかったわかった。手持ちの金はそこそこ残ってるし当分俺が面倒見るよ。今回のことで恩も売ったし、グレモリーも宿ぐらい手配してくれるだろ」
「すまない。私も今は人のことを期にできる状態じゃない。・・・イリナを、頼む」
ゼノヴィアはそういって頭を下げる。
ガヒドはそれを見て苦笑した。
まともな信徒なら恐慌状態になってもおかしくないのに、人の心配ができるだけ彼女も相応に強いだろう。
その強さがあるなら、教会を追放されても何とかなるかもしれない。
「・・・しっかしまあ、こりゃ俺も覚悟した方がいいかもなぁ」
次の日、イッセーは疲れを残しながらも学校に通えていた。
昨夜あれだけの激戦があったのにもかかわらず、学校は元通りになっていた。
悪魔の技術力には感心するほかないが、しかしいろいろと忙しいことになりそうだ。
イリナはいまだに目を覚まさないし、アーシアも表面上は元気を見せているが、やはりショックを受けているのか時々暗い表情を見せている。
「・・・なんかすごいこと知っちゃったよなぁ」
何より聖書の神の死はさすがに驚くべき事態だろう。
コカビエルの言っていたことが本当なら、自分はその気になれば何億人も殺せるようなものだ。
ちょっと前まで一般市民だった下級悪魔には過ぎた情報だ。いくらなんでも負担がひどすぎる。
ふと、コカビエルを倒したガヒドという少年を思い出す。
彼だったらこの情報をどう使ったのだろうか。
そんなことを思いながら部室の扉を開けると、目の前にその顔が入ってきた。
「よう、兵藤だったな」
「が、ガヒド!? なんでここに!?」
目の前でとんでもない人物がいたことで、イッセーは目を見開いた。
その姿を見て、ガヒドはにやりと笑うと懐から一つの物体を出す。
・・・そこには、騎士を模したチェスの駒があった。
「い、悪魔の駒!? お前まさか・・・っ」
「まだ交渉中だけどな。年俸の交渉で意外と渋られてんだよ、ケチめ」
そういいながら冗談めかしてリアスをにらむが、リアスはリアスで嘆息した。
「年俸が百万ドルを超えてる時点で反論もするわよ。あなた教会の人間のくせして強欲過ぎない?」
「伝説の魔剣フロラントの使い手なんて野球でいうなら即一軍レベルだろうに。魔王の実妹の直属ならそれぐらい出せるだろうに」
ガヒドもガヒドでため息をつくが、イッセーは割と本気であきれ果てた。
「おいおい。あんた報酬せびってんのかよ」
「あったりまえだ。これからの人生鞍替えするんだぜ? それなりの報酬ってもんが必要だよ」
「俺、別にバイト代とかもらってないんだけど」
「せびれ馬鹿。赤龍帝とか普通に日本円で億もらえるチートだろ」
ツッコミを入れたら逆に呆れられてしまった。
「まあ、適応するかは魔剣側が決めてくれるとはいえ、さて俺自身が切り札込みで駒一つで済むかどうか・・・」
駒を弄びながらガヒドはため息をつくが、少しすると顔色が暗くなった。
「こっちもイリナの面倒も見ないといけないしな」
「・・・あの子、結局追放されちゃうの?」
事態が予測できたのか、リアスの表情も曇る。
「なにせ一神教にとって神がすでに死んでるなんて、滅びがほぼ確定の厄ネタだからな。しかもやろうと思えば代わりを作れる人造エクスカリバー使いの価値はそこまで高くない。・・・そこそこの後ろ盾を作っとかないと暗殺者の一人ぐらい送り込まれたっておかしくないな」
「マジかよ・・・」
動揺することなく冷静に言い放った物騒な事実に、イッセーは思わず動揺する。
「古来より宗教なんてのは異端に対して苛烈なもんさ。存亡の危機を防ぐために少数の犠牲を容認できない組織は長く持たないもんだしな」
そこまで言うと、ガヒドは肩をすくめてリアスに向きなおった。
「そういうわけで妥協しよう。半額でどうだ? コカビエルをワンパンできる男なんて希少価値にもほどがあるぜ?」
「それでも強欲ね。・・・まあ、私もイッセーの幼馴染が殺されるのは忍びないし、彼女の保護を追加するから三分の一あたりでどうかしら?」
ガヒドは少し考えると、納得したかのように両手を叩く。
「OKサービスだ。日本円にして三千万にしよう。これならもうちょっと安いだろ?」
「いや、それでも金せびりすぎだって。アンタホントに教会の人間かよ」
想像できない高額の報酬に、イッセーは割と本気で引くがガヒドは気にせずカラカラ笑う。
「だって教会じゃ金稼ぎたくても稼がせてくれねえんだぜ? 欲望に忠実な悪魔になるんだから、実力分の金を請求するのは当然だろ?」
「その自覚が妄想でないことを祈ってるわよ」
リアスも苦笑すると、立ち上がってカーテンを開く。
「何はともあれ、あなたたちのおかげでこの街は無事に切り抜けた。ありがとう、そしてよろしくねガヒド」
「OK対象。契約した以上仕事は真面目にさせてもらうぜ大将」
にやりと笑ったガヒドを見つめて、リアスも不敵な笑顔を浮かべる。
「・・・一つ契約に追加。私のことは部長と呼びなさい」
ここに、一つの契約が結成した。
のちに、世界を大きく揺るがす戦乱。
その戦いを左右する少年少女たちが今ここに集まろうとしていた。
原作からの少し変わった変更点。この辺もアンチ・ヘイトタグをつけた理由の一つでもあります。