学生運動のシヴィルウォー ーハイスクールD×D外典   作:グレン×グレン

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プール開きで来客来たりて

 

 早朝。ガヒドは朝食を作って失敗していた。十回ほど。

 

「・・・やっぱりなれない事するもんじゃねえな」

 

 今まで食べ物なんてどこかに食いに行くか買って食べるかしかしていないのに、真心こめた料理を作ろうなんて言うのが間違っていた。料理は愛情というが、料理にするまでは技術だということを痛感する。

 

 と、いうことで財布をひっつかんで外に出て、コンビニに言ってとにかく高いものを購入。種類は日本食を中心とする。

 

 数は多いが余ったものは自分が食べればいい。どうせ今日は体を動かすので少しくらい食べ過ぎても太らないだろう。

 

 そう思いながら部屋に戻り、ガヒドはゆっくりと扉を開ける。

 

「朝飯、用意したぞ」

 

「・・・・・・・・・うん」

 

 そこには、生きた屍といってもいいイリナがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・まあ、そりゃ落ち込むのが当然だがいい加減一週間たつんだから少し切り替えろ」

 

「無理よ。だってすべての父たる主がもういないのよ? それに教会も追放されちゃってるのに・・・」

 

「あ、はい。そうです」

 

 絶望に染まり切ったイリナの返しに、ガヒドは反論できなかった。

 

 信心深さということにおいては、殺された神父も含めて派遣されたメンバーの中でもトップクラスのイリナである。当然聖書にしるされし神の死のショックは計り知れない。

 

 加えて彼女の追放が正式に決定し、それが通達されたのも大きい。

 

 いきなり刺客が襲い掛かってこないだけましだとすらいえる。なにせ広まれば文字通り状況がひっくり返る最重要機密。追放しただけで済むとはとても思えない。

 

 正直言って幼児退行や記憶喪失、解離性人格障害などを発症していないだけ彼女は強いのだろう。むしろこの場合は発症していたほうが救いなのではないかと思うぐらいだ。

 

 不幸中の幸いは、イリナの父親が方々駆けまわって助命だけは確約してくれたことだろう。それも情報を漏らさないという条件付きだが、どうやら天使側が動いているらしく何とかなりそうではある。

 

「トウジさんには感謝しないとな。あの人がいなけりゃ今頃悪魔祓いとグレモリー眷属の全面戦争だ」

 

「あなたはともかく私は関係ないでしょ?」

 

「いや、契約には当面のお前の身の安全も含まれてるしな。それにイッセーの奴は止められても助けに来てくれそうだぜ?」

 

 そういいながら、動こうとしないイリナの服を変える。

 

 どう考えても男が女にすることではないが、イリナは特に抵抗しない。抵抗するだけの気力もない。

 

 ショックのあまり死んでもおかしくないとはいえ、自殺しないだけましだと考えるべきだろう。自殺が罪とされる聖書の教えの信者でなければどうなっていたことか。

 

「とりあえず、今日はそと出て気分を変えろ。気分転換にはもってこいのイベントがあるんだよ」

 

 ガヒドが励ますようにそういった直後、呼び出しのためのチャイムが鳴った。

 

「・・・お、噂をすれば影ってのはこの国ことわざだったな」

 

 そういいながら、ガヒドはイリナを引っ張りながら玄関へと歩いていく。

 

「なに? 悪いけど、今の私は人に見せられるような顔をしてないわよ?」

 

「どうせ見に来たわけだから我慢しろ」

 

 苦笑しながらガヒドはドアを開ける。

 

 直接浴びる久しぶりの日光にイリナは目を細めようとして―

 

「おい顔色悪いだろイリナ!? なんでまだそんなにショック受けてるんだよ?」

 

「ショックを受けて当然ですよイッセーさん! ・・・大丈夫ですか、イリナさん」

 

 まさか悪魔が見舞いに来たとは思わず、目を丸くしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「主が失われている。本当にショックだと思って心配していました。私も本当にショックでした」

 

「・・・ガヒド。俺にはやっぱりアーシアたちがここまでショック受けてるのがよくわからない」

 

 思い出して貧血を起こしてふらつきスラするアーシアを支えながら、イッセーは途方に暮れた表情を浮かべた。

 

「まあ、多神教である神道と一神教である聖書の教えじゃ神の価値すら違うからな。そもそも世界じゃ宗教にのめりこむこと自体は悪いことじゃないけど、日本じゃそれだけで悪い印象があるんだろ?」

 

「うん、オ○ムとかそういうやばいのの信者のイメージしかない」

 

「じゃあ本気でわかるのは難しい。ここは突っ込まず見守ってやるのがベターだよ」

 

 イッセーに対してガヒドはやさしく諭す。

 

 宗教問題はデリケートだ。日本ではむしろ少数派だが、世界では宗教とはアイデンディティの一つと言っても過言ではない。

 

 もうこれだけで大きな隔絶があるのだ。下手に突っ込む方が余計な混乱を生むのだと、これまでの経験でガヒドは理解していた。

 

 そして、イリナは静かに涙をほろほろと流す。

 

「・・・あんなことを言ったのに、私に同情してくれるの?」

 

「当然です。同じ主を敬愛する者同士、同じ悲しみを分け合うのは当然じゃないですか!」

 

 ショックがぶり返したのか此方も大粒の涙を流すアーシアに、イリナの表情が大きく崩れる。

 

「う、うう・・・。やはりあなたは聖女と呼ばれるだけのことはあるわ。悪魔を救ってしまったことが信じられないけど、だけど世の中はそれ以前の問題。ああ、主よ、なぜ逝ってしまわれたのですか!」

 

「イリナさん。イリナさんだって主のために命をかけて戦ってきたはずです。それなのに、主は天へと昇ってしまわれたなんて」

 

 2人はどんどん涙をこぼすと、耐えられなくなったのかお互いに抱き合ってさらに涙を流す。

 

「「・・・うわぁあああああああん!!」」

 

「ガヒド、俺、なんていったらいいんだろう」

 

「宗教問題はデリケートだ。ここは黙って出ていく水分を補給させる準備をしよう」

 

 騒音問題を考慮に入れて扉を閉めながら、ガヒドはイッセーを伴って奥へと歩く。

 

「そういや、日本はなれたか?」

 

「日本の宗教間の緩さは俺向きなんで結構勉強してたが、文字多すぎなのがきつい。俺、期末で補習になりそうなんだけど」

 

「頑張れ。役に立たないかもしれないけどノート貸すから」

 

 学習水準も高い日本の壁に苦労するガヒドは、そんな中手を貸してくれる相手がいることに救いを感じる。

 

「まあ、イリナもこれで少しはすっきりするだろ。今後の身の振り方はともかく、第一段階はクリアーだな」

 

「それなんだけどさ、部長が駒一つ余らせてるからよければどうだって言ってるんだけど」

 

「そいつはやめとけ。あいつは信仰を捨ててないんだから、余計なトラブルは避けたほうがいい」

 

 イリナの今後について語り合いながら、2人はいろいろと準備をする。

 

「つーか日本暑い。気温はともかく蒸し風呂かよここは」

 

「俺も結構きつい。でもさ、だからこれからが楽しいんじゃねえか」

 

 それを言われると返す言葉もない。

 

 その前に労働があるのは大変だが、その分すごく気持ちよくなることは間違いない。

 

「ああ、いい女抱くのも気持ちいいが、こういうのもホント最高だ。いや~日本は娯楽が多くて楽しいぜ」

 

 この後のことを考えると、にやにや笑いが止まらない。

 

 しっかり泣いて出すものを出したイリナも、今度は思いっきり発散してさらにすっきりすることになるだろう。

 

「プールだプール! はっはっは、マジ楽しみだぜ本と二よぉ!!」

 

 本日、プール開き。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本日は、ご招待してくださってありがとうございました!」

 

「俺からも礼を言わせてもらいます。ありがとう部長!」

 

 二人合わせて勢いよく頭を下げられて、リアスは少し苦笑した。

 

「そんなにかしこまらなくても構わないわよ。この人数でプール掃除も大変だったし、人手が多いに越したことないから」

 

「そんな! 敵である私のためなんかにわざわざ招待してくれるなんて、もし私の立場がかつてのままだったら改宗を引き換えにして助命嘆願してもいいくらいです!!」

 

 思いっきり恐縮するイリナだが、しかし思い出したかのように表情が暗くなる。

 

「まあ、存亡にかかわる情報を知ってしまった以上しかたないとはいえ、教会もこんな敬虔な信者にひどいことをするわね」

 

「ぶっちゃけ始末してきそうな気もするんですが、その辺考慮してくれると嬉しいです我が上司」

 

「はいはい警告はしてるから安心しなさい私のかわいい下僕悪魔くん」

 

 とっくの昔にイリナの安全を考慮するための根回しは終わっていた。

 

 簡単にいえば、事情を知ったものとして当面の監視を引き受けるとリアスが買って出たのだ。

 

 この状況下でうかつに無視して刺客を送り込めば、リアスを敵に回しかねない。

 

 魔王の妹というだけでも殺したら戦争勃発の引き金なのに、イリナと同じく聖書の神の死をしるグレモリー眷属を敵に回せば下手をすればばらされかねないと考えるものは多いだろう。

 

 それがある限りリアス・グレモリーの監視かにいれば安全の確保はかなり楽になる。

 

 そこまで考えて売り込んだのはガヒドだったが、しかし契約には結構苦労した。

 

「しっかし部長さん。どいつもこいつもレアキャラぞろいなんだから、もうちょっと給料払ってやったらどうなんですか? 特にイッセーなんて憶の一つや二つ問題ないでしょ?」

 

「そんなことしたらグレイフィアに怒られるわ。学生に大金は荷が重いっていうんですもの。あなたの場合だっていろいろ言われてるのよ?」

 

「この年で仕事してるやつなんてゴロゴロいるっての。日本にだっているだろうに」

 

 余計な事実をしってげんなりするガヒドだが、しかし気を取り直すとイリナに振り返る。

 

「ま、何はともあれストレス発散。パーっと遊べば気も晴れるだろ、イリナ?」

 

「・・・うん、そうよね!」

 

 多少無理やりだが笑顔を取り戻すと、イリナはプールで遊んでいるイッセーたちに突撃する。

 

「私も混ぜなさいイッセーくん! 聖剣に選ばれた戦士の身体能力を悪魔に教えてあげるんだから!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー楽しんだ楽しんだ。こう蒸し暑いとプールが最高だなぁ」

 

 一足先に切り上げて、ガヒドは校門へと歩いていく。

 

 運動して水分を消費したからか、スポーツドリンクが非常にうまい。

 

 そして、校門のところで止まると、ペットボトルから口を話して流し目を向ける。

 

「・・・アンタもどうだい、白龍皇さん?」

 

「気づいていたのか。やはりあの中では君が一番の使い手のようだ」

 

 そこにいたのは、銀の髪の少年だった。

 

 それに気づいたのは偶然だといってもいい。

 

 学校の外側からプールに向かって、自分でも気づくか気づかないかの気配を出したのに気付いたのは僥倖だった。

 

 ほかのメンバーが気づいてないのをいいことに飲み物を買いに行くと言い訳をして警告しに来たのだ。

 

「今デリケートな状況なのわかってんだろ? 頼むからちょっかいかけないでくれ。・・・コカビエル刺したの誰だかわかってるよな?」

 

「だからちょっかいをかけたんだ。宿命のライバルがいまだ禁手にも至っていないのでは、相手がたかがコカビエルとはいえ、そこそこできるものに興味を抱くのは仕方がないだろう?」

 

 心底うんざりした声を聴きながら、ガヒドもまた心底うんざりする。

 

「・・・戦闘狂が。てめえ和平が結ばれたらテロでも起こしそうだな」

 

「さてどうだろうか? 和平が結ばれたら、堕天使側もレーティングゲームに参加できそうだしむしろ歓迎するかもしれないぞ?」

 

 どこまで本気かわからない返答に、ガヒドは警戒心を強くする。

 

 こんなところでいきなり戦闘を仕掛けてくるとも考えずらいが、しかし警戒心は解けはしない。

 

「悪いが俺もすでにグレモリー眷属なんでな、契約した以上身内に襲い掛かる理不尽には反応するぜ? ・・・死にたくなければ失せろ」

 

「それは逆効果だよ。そんなことを言われたら、君の本気を出したくてたまらなく―」

 

 次の瞬間、ヴァーリの首筋に刃が突きつけられた。

 

「そこまでにしてもらおうか、白龍皇」

 

「・・・全くね。この場において堕天使に組する者が許可なく出るとは見過ごせないわ」

 

 連続して発生する事態に、ガヒドはうわっちゃーとでも言いたげな表情を浮かべる。

 

「ちょっとちょっと! 俺がせっかく平和的に収めようと努力してんのになんできちゃうんですか? っていうかなんで気づいたんですか?」

 

「鼻は良いので、風向きが変わって気づきました」

 

「あらあら、いくら強いからって新入りに負担を押し付けるほど私たちはブラック企業じゃありませんわよ?」

 

「一応アーシアはイリナと一緒に待たせてるけど、そいつが白龍皇かよ!」

 

 続々と集まるグレモリー眷属に、ガヒドは無謀とたしなめるべきか人の良さに感謝するべきかかんがえる

 

 考えたうえで、取り合えず結論をだした。

 

「なあ白龍皇。こいつ等どいつもこいつも磨けば光る原石だ」

 

「ああ、それは知っている。グレモリーはめぐりあわせの天運に恵まれている。これだけの若い逸材を見つけ出せるなんて幸運だ」

 

「だったら、伸びきるまで待つべきだとは思わないか?」

 

 ・・・契約が守られる限り、自分もまた彼らを守ることを忘れないようにしよう。

 

「・・・目が変わったな。ああ、確かにこれは将来が楽しみだ」

 

 ヴァーリは愉快そうに笑うと、そのまま踵を返す。

 

「いつか戦う未来のために、ぜひ牙を研いでおいてくれ。特に赤龍帝はね?」

 

「え、お、俺?」

 

 名指しで指名されて、イッセーは構えながらも少し戸惑った。

 

 それを呆れ半分で見てから、ヴァーリは今度こそ去っていく。

 

「・・・君が一番見どころがないんだ、その評価をぜひひっくり返してほしいものだよ」

 

 

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