学生運動のシヴィルウォー ーハイスクールD×D外典 作:グレン×グレン
「なあガヒド。あの白龍皇とはマジで戦わなきゃいけないのかよ」
授業参観の当日、ガヒドとイッセーは自販機の横でそんなことを話していた。
「少なくとも向こうはそのつもりだろ。俺は話でしか聞いたことないけど、たいていの二天龍はお互いを宿敵と見てたらしいぜ?」
ガヒドはそこまで二天龍に対して詳しくない。
まさか自分がかかわるなんて思っても見なかったので、教会で教えられている程度の情報しか知らない。しいて言うならエルニル経由で教えられた情報がいくつかあるぐらいだ。
「因みにあのヴァーリってやつ、どうも人間じゃなくて何かの種族のハーフらしい。そういう意味では素人がノリでかく最強もの主人公っぽい設定だな」
「やっぱ堕天使かな? 堕天使側らしいし」
「そこまで知らん。アザゼルという奴は冷徹な命令も下せるそうだが基本的には人がよくて金払いもいいとエルニルは言ってたし、案外悪魔かもしれないぜ?」
秘蔵っ子らしくあまり情報が出ていないが、しかしあの場で派遣されたことから考えても相応の実力者であることは想像できる。
なにせ、堕天使の中枢、
「で、お前さんとしてはどうなんだよ? 宿命のライバル登場に血が湧き立ったりしないか?」
「全っ然! ドライグには悪いけど、あったこともないドラゴンと因縁があるなんて言われても困るって。俺は平和にハーレムが作れればそれでいいんだよ」
ガヒドの茶化しにイッセーはため息で返す。
実際イッセーにしてみれば、赤龍帝の籠手に目覚めたのスラつい最近であることもあり赤龍帝としての自覚すら乏しいのが現状だ。
ついでに言えば、イッセー自身は最強になりたいとかそういう考えは特に持っていない。彼が望んでいるのはハーレムの形成である。ゆえに、ハーレムを作るために上級悪魔相当の強さになることを望んでいても強さそのものにこだわっているわけではない。
そんな状況下で戦えばどちらかが死ぬ様な宿命のライバルなど迷惑でしかないというのが実情だ。
「一万年も生きる気はないけど、せっかくハーレム作るんだから長く楽しみたいって。なんでそんな宿命なんかのために命の危険を感じなきゃいけないんだよ」
「無欲なのか強欲なのかわかんねぇなぁ。っていうかそんなにもてたいんなら覗きやめろよ。性犯罪者が女子高生にウケるわけねえだろ。一世代前の少年漫画じゃあるまいし」
「そこに女体があるんだよ! 我慢できないんだよ! っていうかなんで日本の漫画に詳しいんだよ!!」
「ばっかお前、ジャパニーズ二次創作は世界に広がる日本の力だぞ!? OTAKUは平和の象徴、日本の代表だ!!」
「すっげえ嫌な代表だぁああああああああ!!!」
などと軌道を馬鹿な方向にずらしながら教室に入ると、そこではすでに生徒たちが何人も集まっていた。
「お、イッセーにガヒド! おそかったじゃん!」
「おう松田! 持てたきゃえろ本は学校の外でばらまけよな!」
「ガヒドてめえ! お前にはエロ本貸してやらねえぞ!」
「ほほう? 俺が持っているヨーロッパのお宝はいらないということでいいんだな、元浜ぁ」
「お前俺たちになじみすぎだろ。ホントにもと教会の人間か?」
あまりにも変態になじんでいるその姿に、イッセーは自分が言えた義理ではないがふと疑問に思ってしまう。
あまりのなじみっぷりに教室中から視線が集まるが、しかしそれもだいぶ収まっている。
『ガヒド・エクスカリボールです! 青少年の衝動を抑えられなくて教会から追い出された破戒教徒だけど、警察のお世話になる気はないんでよろしく頼むぜ! 因みに美少女に最高の一夜を提供するのには自信があるので、素敵な諸体験がお望みの方はぜひご一報を!!』
・・・などとふざけた自己紹介から始まり、ガヒドのポジションは完全に変態三人組の同僚と認識されている。
とはいえ覗き好意に関しては「犯罪だから」と即座に止めに入っており、一時期三人組のストレスが溜まっていたので実際に覗きを止めてくれていると判断されていることから、意外にも校内での人気はそれほど低くない。
むしろアウトローじみているところはあるが明るいムードメーカーのところがあるガヒドは、貴重な三人組の抑え役として重宝されていた。
「おやおや。ガヒドくんはホントに三人組にも負けないエロ男子だねぇ」
「当然だろ桐生。初戦は童貞のこいつらと違って、俺は経験豊富のテクニシャンだからなぁ。・・・なんなら紹介しようか? パシリにされるけど名器なのは保証するぜ?」
などと桐生に返しながら、エルレイの写真を携帯でちらつかせるのはさすがにどうかと思うが。
・・・ちなみに、イッセーたちはもちろんのこと、かなりの数の男子がリアスとは違った意味で綺麗なお姉さんタイプのエルレイの姿に興奮し、女子のひんしゅくを買ってはいるがそれはまた別の話。
「アーシア。教会にもいろいろな人がいるんだな」
「私がいたところでは、ガヒドさんみたいな人はお目にかかりませんでした」
それは教会が聖女に近づかせたくなかっただけではないかと思ったが、イッセーはあえてそこに触れなかった。
「・・・何考えてんだよお前も先生も」
「うるせえ。体が勝手に作ったんだよ!」
授業参観は実に大変だった。
保護者がくるので普段とは違う特別な何かにしたいという中二病をいい年なのに発症したのか、なぜか粘土で英語を表現しろという気が狂ったのかと疑いたくなるような授業になってしまった。
仕方なくガヒドは使い慣れているフロラントの模造品を作るということで対処し、アーシアは天然なのかあっさり順応したが、イッセーがすごかった。
裸体のリアス像。しかも超がつくほどに精巧だった。
「イッセー、後で俺の分作ってくれ。十万出す」
「いやだよ。作ったら全部俺用に保存するから」
教室でも購入しようと男女が金を出してきたが、どうやらガヒドも狙っているらしい。
リアスとの契約時に年俸契約でかなりの額を確保しただけあって桁が違う。
「そこを何とか。だったら今度エルレイに頼んで裸見せてもらうからそっち作ってくれ」
「やだよ! 俺の作った女の子の像は全部俺のもんだ!」
「じゃあ後でガン見させてくれ。こんな色っぽい姉ちゃんの裸とかマジ価値があるって。お前想像だけでそこまでできるとかおかしいだろ」
割とめが血走っている状態で詰め寄るガヒドだが、しかしそこにイッセーが自分をよく理解していない爆弾発言を投下する。
「え? いや、一緒に寝るとき部長は裸で寝ること多いし、お風呂入ったこともあるけど?」
次の瞬間、ガヒドは朱乃やアーシアとともに自分の像を鑑賞していたリアスに土下座を敢行した。
「今度一緒に風呂入ってください!!」
「いやよ」
冷たく一蹴された。
「じゃあ裸で添い寝してください。大丈夫です、我慢しますから!」
「いやよ」
「そうだぜガヒド。俺だって堕天使に腹刺されて治療するのが最初だったんだから、まずはそれぐらい重傷を負わないとダメだろ」
未練がましいガヒドを嗜めるためにそういったイッセーだが、しかし全方位から冷たい視線を向けられて思わず戸惑う。
「イッセーさん・・・」
「あらあら。イッセーくんは本当にもう・・・」
「おまえなぁ・・・。っていうか部長も何をやってんですかあんたは」
アーシアと朱乃は普通にイッセーを非難するが、ガヒドは続けてリアスにも冷たい視線を向ける。
「・・・さっさと告白しときましょうよ。つつけばあっさり倒れそうじゃないですか?」
「だ、だめよ。できればやっぱり男の方から告白してほしいじゃない」
リアスは顔を真っ赤にしながら小声でそう告げるが、ガヒドは本気で呆れかえる。
「何変なところで乙女になってんですか? 話聞く限り痴女一歩手前なのにそんなことを気にする意味がないでしょう」
「誰が痴女よ! ・・・こういうのには順序というものがあるわよ」
「順序を考える奴はこくる前から一緒に風呂入ったりしませんよ」
ガヒドは、悪魔としてこれからやっていけるかどうか不安に思ってきた。
どうにも人間の常識と悪魔の常識は大きくずれているようだ。どう考えても付き合ってからするようなことを先にやっていて順序を気にしている。
これだけされてわかっていないイッセーにも呆れるが、告白する前からこれだけするリアスにも呆れかえった。
「実は悪魔ってパッパラパー連中ばっかりで構成されてるんじゃないでしょうね・・・」
契約内容をもっと吟味するべきかと悩んだその時、何やら体育館が騒がしくなった。
何事かときてみれば、なぜかコスプレした女の子が撮影会を行っていた。
「・・・おいおいおいおい。日本の学校ってのはいつからこんな無秩序状態になったんだ? 日本は治安がいい方のはずなんだが」
「いや、あんなかわいい子が学校にいたなら気づいたけど、誰かの妹さんか?」
ガヒドとイッセーは首をかしげるが、なぜかリアスは額に汗を浮かべていた。
「え、あ、あれは妹じゃなくて・・・姉よ?」
「「「姉?」」」
2人はアーシアとともに聞き返すが、リアスはなぜか応えようとしない。
そして朱乃はなぜか笑いをこらえている。
と、そんなことをしている間に生徒会がきて人だかりを解散させる。
「ちょっとちょっと。やめてくださいよそういうのは。ここ学校何でちゃんと服装を考えてください」
「えー? だってこれが私の正装だし?」
少女の反省の色がない態度に、生徒会のメンバーが表情をいらだたせた。
「落ち着けよ匙。部長が知ってるみたいだし、代わりに説教してもらったらどうだ?」
「お、兵藤か。リアス先輩の知り合いってマジで?」
イッセーたちに気づいた生徒会役員がそういいながら近づいてくる。
「・・・ああ、そういえばコカビエルの時に見かけたな」
「アンタがコカビエルを何とかしてくれた奴だな? 俺は匙元士郎だ。生徒会の書記をやってんだよ」
「つーことは生徒会長の関係者ってわけか。まあ学校じゃ節度は守る気だからそこは安心してくれ」
ガヒドはそういいながらコスプレ少女を見るが、そういえばどこかで見たような気がした。
「あれ? そういえばこの人どっかで見たような・・・」
「何事ですかこれは。今は父兄の方が来られているのです、あまり騒がしいのは感心しませんね」
と、そこに生徒会長であるソーナ・シトリーの声が聞こえてガヒド立ちは振り返る。
そして彼らは見た。彼女の表情が見事に固まるのを。
「あ、ソーナちゃん♪」
そして続けてみた。コスプレ少女が表情を輝かせてソーナに抱き付くのを。
「お姉ちゃんが来ましたよ~。ソーナちゃん生徒会のお仕事頑張ってる?」
そして聞いた。とんでもない一言を。
「「「・・・お姉ちゃん?」」」
三人は一縷の希望をもってリアスに助けを求める。
だが、リアスの言葉は非情だった。
「ええ、彼女はセラフォルー・レヴィアタンさま。ソーナの姉よ」
「「「嘘だぁ!!」」」
思わず全力で叫んでしまった三人を責めるのは失礼だろう。
どこの世の中に大きなお友達を萌えさせるロマンの塊魔法少女のコスプレをした魔王がいるだなんて考えるだろうか。せめて妖艶かつアダルトなドレスを来た長身の美女である。あれは明らかに美少女である。
「おい匙とやら。なんだあれはなんだあれはなんだあれは! あれはトップとしてあれだろう。冥界大丈夫か!」
「俺に聞くんじゃねえ! おれだって悪魔になって日が浅いから会長のお姉さんとはあったことないんだよ! ・・・はあ、こんなのがお姉さんでは俺はどうすれば関係を―」
「「・・・え?」」
不安な発言を聞いて、イッセーとガヒドは匙に詰め寄った。
何やら興味深いことが聞こえた気がして、ガヒドはニヤニヤしながら匙を引っ張っていく。
「おいおい匙君? もしかしてオタク会長狙い?」
「うぐっ!? ・・・わ、悪いかコラ! できちゃった結婚したいと思うぐらい素敵な人なんだから仕方がねえだろ!!」
「へい匙君! 俺もさすがにそこまでは想定してなかったぜ・・・」
見事に馬脚を現した匙に、ガヒドはあきれてため息を吐く。
その視線がイッセーに向いて、ガヒドはさらに目を見開いた。
・・・泣いていた。マジ泣きだった。
「匙。わかってるのか? それは、険しい道だぞ」
「ああ。ただ結婚するだけでもハードル高いのに、しかも先にやっちゃう必要があるなんてそれこそハードル高い。それでも、俺はそれでも・・・っ」
「匙。俺も困難な目標を持っている。部長の乳首を・・・吸うことだ」
何やら男の友情が発生しているようだが、ガヒドはちょとついていけなくなったので距離を取る。
「あ、部長! 話し終わりました?」
「ええ、そろそろ終わるわね」
・・・そしてソーナは耐えきれくなって逃げだし、話は確かに終了した。