問題児のヒーローアカデミア   作:わたくしメガネ

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気付けば前回の投稿から半年近く経っていました…。
今回もちょいと場面転換が多いので読みにくいかもしれません。
受験も終わったので、これからも不定期にはなってしまいますが、ちょいちょいと投稿させていただきます。
よろしくお願いします。


7話

 

 

 

 

「Aコンビがヒーロー、Dコンビが敵だ!ほかの者はモニタールームに向かってくれ!」

 

「「「 はい! 」」」

 

 

 

オールマイトの指示通り、AコンビとDコンビ以外の面々が、安全に実践の様子を見ることができるモニタールームに向かって歩いていく。

 

緑谷は、最初の対戦相手が爆豪になってしまったことに気まずさや戸惑いを感じているのか浮かばない顔をしており、爆豪は苛立っているのか、緑谷を睨みつけている。

 

逆廻はそんな二人を横目で観察していた。

 

 

(やっぱりどう見ても仲良しには見えねぇな。)

 

 

超がつくほどの短気で自尊心の強すぎる爆豪と、謙虚な姿勢が目立つ、良くいえば穏やか、悪くいえばパッとしない緑谷。

 

いくら幼馴染みとは言えど、こんなに性格が正反対なら小さい頃から噛み合うことのほうが圧倒的に少なかっただろう。

 

それだけでここまで険悪な雰囲気になれるのだろうかと思うところだが、逆廻には、爆豪がなぜあそこまで緑谷に対して苛立っているのかも予想がついていた。

 

 

(かっちゃんのプライドの塊みたいな性格と、この間の“緑谷無個性発言”から考えてみれば、幼い頃から無個性だと思って見下してきた緑谷に、騙されていたという事実を目の当たりにしてキレだしたってとこか。)

 

 

考えながら緑谷の様子を注視するが、爆豪からの強すぎる視線に気づいたようで、思い切り挙動不審になり目を逸らしていた。

 

逆廻はその様子に、やっぱり緑谷は爆豪に勝てないかもな、と思った。

 

(緑谷も幼い時からあんな性格の奴がいたなんて大変だな、大怪我しなければいいが。)

 

 

思考がそこまでに至り、逆廻は視線を二人から逸らしかけた。

 

だが、緑谷が拳を強く握り、意を決して爆豪からの圧力に耐えて睨み返しているのを見て、落ちかけていた気持ちが一気に高揚していくのを感じた。

 

 

(こりゃ面白いことがありそうだ。)

 

 

 

 

個性把握テストの結果だけを見れば爆豪の圧勝。

 

その差は簡単にひっくり返るものではないが、今回は何かが起こるかもしれない。

 

 

 

 

逆廻は今度こそ睨み合う二人から視線を外して、のんびりとした足取りでモニタールームへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「敵チームは先に入ってセッティングを。5分後にヒーローチームが潜入してスタートする!」

 

「「「 はい! 」」」

 

「飯田少年、爆豪少年、敵の思考をよく学ぶように。これはほぼ実戦、怪我を恐れず思いっきりな!」

 

「はい!」

 

「度が過ぎたら中断する。」

 

「はい!」

 

敵チームである飯田と爆豪にオールマイトが話しかける。

 

見たまま優等生の飯田は綺麗な返事をするが、爆豪は話を聞いているのかいないのか、緑谷を見て思い切り歯軋りした。

 

 

 

 

 

「訓練とはいえ、敵になるのは心苦しいな。」

 

 

建物の奥に進みながら、飯田は一人ぼやいた。

爆豪はその言葉に全くと言っていいほど反応を示さない。

 

 

「これを守ればいいのか。」

 

 

だが、飯田はそんな爆豪の様子に気づいていないのか、置かれていた核兵器の模型を叩きながら、ハリボテか、と呟いた。

 

 

 

「おい!」

 

 

 

静かだった空間に、爆豪の声が響く。

 

 

 

「デクは個性があるんだな?」

 

 

 

その問いかけに、何を言っているんだ、と呆れた雰囲気を醸しながら飯田は答えた。

 

 

「あの怪力を見ただろう、どうやら彼の個性はリスクが大きいようだが…」

 

 

しかし、君はやけに緑谷君に突っかかるな

 

飯田は、爆豪の緑谷に対する目に余るほどの言動を非難するかのように言葉を続けた。しかし、爆豪は“緑谷出久には個性がある”という事実が確認できた時点で、他人の言葉を耳に入れられるほどの冷静さを保てていなかった。

 

 

 

 

(このオレを騙してたのか…、クソナードがあぁぁ!!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▤ ▥ ▦ ▧ ▤ ▥ ▦ ▧ ▤ ▥ ▦ ▧ ▤ ▥ ▦ ▧ ▤ ▥ ▦ ▧ ▤ ▥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麗日が、紙を見つめながらぼやいた。

 

 

「この建物の見取り図、覚えるの大変だね」

 

 

緑谷の応答なし。

 

 

「でも、オールマイトってテレビの印象と変わらんね!」

 

 

やはり緑谷の応答なし。

 

 

「相澤先生と違って罰とかないみたいだし、安心し」

 

 

た、と言い切る前に緑谷の体がカタカタと小刻みに揺れているのに気づいた。

 

 

「って、全然安心してないね!」

 

「へへ、へへへ」

 

 

緑谷は引き攣った笑い声をあげた。そして一旦落ち着くと、自身を気遣ってくれた麗日に、自分の心境を吐露した。

 

 

「い、いや…、相手がかっちゃんだから…。飯田君もいるし、なんか身構えちゃって…」

 

「そっか…、爆豪くん、バカにしてくる人なんだっけ」

 

 

緑谷の発言で、今までの短い期間だけでもよく分かるほどの爆豪の緑谷に対する言動の酷さを思い出した麗日。

 

 

麗日の言葉に、緑谷は爆豪にされてきた嫌なことを思い出した。

 

だが、同時に今まで見てきた爆豪のストイックも思い出し、ただの“嫌な奴”ではない、と尊敬していることを告げた。

 

 

 

「……すごいんだよ」

 

 

 

嫌な奴だけど、目標も、自信も、体力も、個性も。

 

僕なんかより、何倍もすごいんだ。

 

 

俯きながら、しみじみと言葉を紡ぐ。

 

 

 

そんな緑谷の様子を、麗日は何も言えずに見つめている。

 

 

 

 

 

「…、でも。」

 

 

立ち上がった緑谷。

 

 

 

「だから今は…、 負けたくないな、…って」

 

 

 

―――――緑谷出久は、もう夢見るだけの少年ではない。

 

 

 

 

 

「…男の因縁ってやつだね!」

 

「ええ!?いや、あの、ごめん!麗日さんには関係ないのに!」

 

「あるよ!コンビじゃん!頑張ろ!」

 

「!!…、うん!」

 

 

 

麗日の明るさに、緑谷はまた助けられた。

 

 

 

 

 

 

『それでは、Aコンビ対Dコンビによる、屋内対人戦闘訓練、スタート!!!』

 

 

そして、オールマイトからの放送を合図に、飯田と爆豪の待つ目の前の建物に乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▤ ▥ ▦ ▧ ▤ ▥ ▦ ▧ ▤ ▥ ▦ ▧ ▤ ▥ ▦ ▧ ▤ ▥ ▦ ▧ ▤ ▥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ!君たちも考えて見るんだぞ!」

 

 

場所は変わり、ここはモニタールーム。

 

たった今始まった戦闘訓練を離れた場所で観察していた。

 

 

 

 

状況設定は、敵は建物のどこかに核兵器を隠していて、ヒーローはそれを処理しようとしている。

 

ヒーローの勝利条件は、時間内に敵を確保するか核兵器を回収すること。対して敵の勝利条件は、制限時間まで核兵器を守るか、ヒーローを捕まえることだ。

 

 

 

 

 

侵入に成功したヒーローチームの二人は、緑谷を先頭にして慎重に建物の奥へと進んでいく。

 

迷路のような、死角の多い建物の内部。

 

いつ敵が現れても対処できるように、二人ともすごい緊張感をまとっている。

 

 

 

(さあて。どんな面白いものを見せてくれるのか楽しみだ。)

 

 

 

逆廻はモニターを見上げながら、ニヤリと笑う。

 

 

 

その時、モニターの中で大きな爆発が起こった。

 

 

「「「 !!! 」」」

 

 

ついに始まった、とモニタールームの中にも緊張がはしる。

 

どうやら、緑谷たちが道を曲がる直前に、爆豪が死角から奇襲を仕掛けたようだ。

 

何とか直撃は免れたようだが、緑谷の頭を覆っていたマスクの左半分が消えていた。かすったらしい。

 

 

 

「いきなり奇襲…」

 

「爆豪ずりぃ!奇襲なんて男らしくねぇ!」

 

 

爆豪の奇襲に、非難の声があがるが、オールマイトがなだめるように言う。

 

 

「奇襲も戦略の一つ。彼らは今、実践の最中なんだぜ?」

 

 

そう、これは訓練と言えど実践。

 

本物の敵なら、奇襲がずるい、なんてことなど考える訳がない。

 

 

よく避けたな、と緑谷への賞賛の声もあがる中、また爆豪が緑谷に向かっていく。

 

何かを叫びながら緑谷に突進していく爆豪。モニタールームでは現場の音声は聞こえないらしく、何を言っているのかはわからない。

 

 

「爆豪なんて言ってるんだろう?」

 

 

気になるのか、誰かが呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

「“中断されねぇ程度にぶっつぶしてやらぁぁぁあ!!!”って言ってるぞ。」

 

 

逆廻は普通にその答えを提示した。

 

 

 

 

 

 

 

「「「 え? 」」」

 

 

何ともないようにモニターを見続ける逆廻を、その場にいた全員が見つめた。

 

 

「あ?なんだお前ら?」

 

 

それに気づいた逆廻はキョトンとみんなを見返す。

 

 

「え、逆廻お前読唇術も使えんの??」

 

「読唇術だって立派な意思疎通の方法じゃねーか。まあ、メジャー方法ではないけどな。」

 

「お前なんでもありかよ…。」

 

 

驚きを通り越して呆れる人が現れる中、モニターの中では、緑谷も爆豪を迎える形で走っている。

 

どんな攻防が繰り広げられるのか、モニタールームに緊張が戻ってくる。

 

 

爆豪は走りながら右腕を引き、大きく前に突き出した。

 

緑谷にそれが当たる!…と思いきや、その動きを読んでいたかのように、緑谷は攻撃を避け、伸ばされた爆豪の右腕に抱きついた。

 

そしてそのまま爆豪を力いっぱい投げ飛ばした。

 

爆豪はなす術なく床に背中から叩きつけられる。

 

 

「「「 !!!」」」

 

 

その様子にモニタールームの面々も驚きを隠せない。

 

そして、息を荒らげたまま、何かを喋る緑谷を見て、またなんて言ってるのか気になってしまう。

 

 

「逆廻、今緑谷はなんて言ってるんだ?」

 

 

逆廻は、喋り方を緑谷に少し似せながら、緑谷が口にしていることをそのまま声に出した。

 

 

「“かっちゃんは…、大体最初に右の大振りなんだ…。どれだけ見てきたと思ってる…。”」

 

 

上半身を起き上がらせて、爆豪は振り返って緑谷を見つめている。

 

 

「“すごいと思ったヒーローの分析は、全部ノートにまとめてあるんだ。君が爆破して捨てたノートに!”」

 

 

苛立った様子で爆豪はその話を聞き続ける。

 

 

「“いつまでも、雑魚で出来損ないのデクじゃないぞ!かっちゃん!”」

 

 

緑谷は怯えながらも、爆豪を睨み返した。

 

 

「“僕は、頑張れって感じのデクだ!!!”」

 

 

 

 

 

緑谷の最後の言葉の意味はよくわからないが、なんだか聞いてるこっちが恥ずかしい。

 

モニタールームのほとんどの人がそう思った。

 

逆廻は、なんだか面白いからこのまま続けようと思った。

 

 

 

 

緑谷が一通り言い放った後、爆豪がゆらり、と立ち上がる。

 

 

「“デク…”」

 

 

震えながらも、負けじと爆豪を睨み続ける緑谷。

 

 

「“ビビりながらよぉ…。そういうとこが、ムカつくなああああああ!!!!”」

 

 

爆豪は物凄い形相で緑谷を睨み返す。

 

そして、おもむろに耳に手を当てた。

 

 

「“黙って守備してろぉ!ムカついてんだよオレはいまあぁぁ!”」

 

 

どうやら、核爆弾を守っている飯田が連絡を取ってきたようだ。

 

爆豪のあまりの言いように、たくさんの人が飯田かわいそうだなと思わずにはいられない。

 

 

 

 

「そうそう、言い忘れていたが、この戦闘訓練で与えられる持ち物は三つ。建物の見取り図と小型無線機、そして確保テープだ!」

 

 

オールマイトは、巻かれている白いテープを取り出した。

 

 

「これを相手に巻き付けた時点で、相手を捕らえた証明となる。」

 

「制限時間は15分で、核兵器の在り処はヒーローチームには伝えられていないんですよね?」

 

「Yes!」

 

「ヒーロー側が圧倒的に不利ですね…」

 

「ピンチを覆していくのがヒーローさ!それに相澤先生にも言われただろ?あれだよ!せーの!」

 

 

逆廻以外の生徒たちがそわそわした様子で声をあげる。

 

 

「「「Plus ultra!!」」」

 

 

いい感じに揃って気持ちよくなっているモニタールーム。

 

 

「Monsieur!爆豪が!」

 

 

マントを羽織ったナルシストの青山という生徒が、視線をモニターに移すように促した。

 

どうやら戦闘側に動きがあったらしい。

 

気を取り直して、モニターを見つめた。

 

 

 

「“麗日さん!行って!!”」

 

 

緑谷の指示に従いその場を離れる麗日。

 

それと爆豪が爆破の勢いを使って緑谷に急接近したのはほぼ同時。

 

爆豪の鋭い蹴りを何とかギリギリの様子で受け止める緑谷。

 

 

「“余所見か、余裕だなぁ! っ!?”」

 

 

何かに気がついた様子の爆豪は慌てて右の大振りで緑谷に攻撃。そして、またそれを読んでいたかのように避ける緑谷。その手には先ほど説明された確保テープが握られている。

 

大方、蹴りをしてきた足にそれを巻き付けられそうになっていることに気がついて慌てていたのだろう。

 

 

「すげーなあいつ!!」

 

「個性も使わずに入試一位と渡り歩いてる!」

 

 

またも緑谷に賞賛の声があがった。

 

新たに構えた爆豪を確認した後、緑谷は走って爆豪から離れていく。

 

 

「“待ちやがれデクウゥ!!!”」

 

 

爆豪は急いで追いかけるが、角を曲がると、既に視界の中に緑谷はいなかった。

 

それから鬼ごっこを続ける二人だったが、痺れを切らした爆豪が何やら叫び始めた。

 

感情が抑えきれないとでも言いたげに、手のひらの上で小規模な爆破を連発している。

 

逆廻はモニターを見るのに集中しているようで、爆豪が何を言っているのかがモニタールームの人間には分かっていない。

 

 

「うっわ何か知らないけどめっちゃ怒ってるよ爆豪こっわ!」

 

「逆廻、今爆豪はなんて言ったんだ?」

 

 

 

 

「ん?ああ悪ぃな。今状況が分からずにモヤモヤした気分を隠せてない飯田って奴のほうを見てたからわかんねぇわ。」

 

 

一瞬間を空けて、逆廻は答えた。

 

 

「え?あぁホントだ。飯田も可哀想になぁ…。」

 

 

多くの視線が一気に飯田を映すモニターに集中する。

 

その様子を見て、逆廻は爆豪の映るモニターを見つめながら微かに安堵した。

 

 

(まあ、本当は何言ったのかわかってるんだが。)

 

 

上手くみんなの意識を誘導することに成功した逆廻は、先ほど爆豪が叫んでいた言葉を思い出す。

 

 

 

 

 

なぁおい!!!オレを騙してたんだろ!?

 

楽しかったかずっと!!!あ゙あ゙!?

 

随分と派手な個性じゃねえか!!!

 

使ってこいや…!オレのほうが上だからよお!!!!

 

 

 

 

 

(爆豪が怒ってる理由は俺の推測通りか。)

 

 

しかし、ますます緑谷の個性の秘密が気になるな…。

 

 

 

 

逆廻が爆豪の言葉をみんなに伝えなかったのは、“緑谷が無個性だったかもしれない”という可能性をあまり人に教えない方がいいと判断したからだ。

 

それに、逆廻十六夜はオールマイトに借りがあった。

 

緑谷の個性とオールマイトには何かしらの関係がありそうだし、オールマイトが隠しておきたいようなら、ほかの人に知られないまま自分一人で真実にたどり着くまで。

 

逆廻はそこまで考えると、またモニターに視線を向け、爆豪たちの口の動きを注視するのだった。

 

 

 

 

 




十六夜が読唇術を使えるのは私の勝手なイメージです。
意見感想等お待ちしております。
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