「あら、魔理沙。こんなひょんなところにどうしたのかしら?」
散々白玉楼の中を探した挙句、見つけたそいつは縁側に座っていた。隣には誰もいない。
「なんだ、一人か?」
床に置いてある湯呑は二つ。誰かいた形跡がある。多分片方は幽々子のものだろう。
「ええ。幽々子は少し席を外しているわ。それで、どうしたの?」
紫はお茶を啜る。
「分かってるんじゃないのか? 私はなくしたモノを取り返しに来たんだ」
「なくしたもの? そういえば貴方、箒を持っていないわね」
紫は私を舐めるように見たあとにそう言った。
「そうじゃない。いや、それもなくしたんだけど、今は箒じゃないものを取り返しに来た」
「へえ、なにかしらそれは?」
「私の記憶。魅魔っていう人物についての記憶だ。お前が持ってるんじゃないのか?」
それを聞いた途端、紫の表情が少しだけ変わった。こいつが犯人じゃないにしろ、何かを知っている証だ。
「面白いことをいうわね。私が貴方の記憶を持っていると? その根拠は?」
「んなもんあるか。強いて言うなら、お前だからだ」
「貴方、結構無茶苦茶言っているってわかってる?」
そんなもの自分だって分かってる。だけど、これといった証拠がない。
「知るか! とりあえず、私の記憶を返しやがれ!」
「全く厄介ね。もし私が貴方の記憶を持っていたとして、はいそうですかって返すと思っているの?」
紫はため息をついた。
「いいや、全く思っていない。人からものを奪う。それが私の専売特許だぜ」
私は懐からミニ八卦炉を取り出し、紫に向ける。
「今は貴方と遊ぶ気分じゃないわ。去りなさい」
「なっ!? なら無理矢理にでも取り返すのみだ――っ!?」
隙間を使って、紫は私の首を絞めてきた。
「去れと言ったのよ。聞こえなかったの?」
紫の目はどこか狂気に満ちていた
「ぐ……嫌だ……私は……絶対に諦めない」
どうにか言葉にする。紫は本気だ。
くそ……意識が遠のいていく……
「返してあげなさい。紫」
そんなとき、私の後ろから声がした。その瞬間、紫の手が私の首から離れた。
「げほっげほっ……小夜……さん……?」
咳き込みながら振り向くと、そこには小夜さんが立っていた。
「小夜……どうしてここに?」
「歴史に綻びを感じたのでここに来ました。最初は貴方の家に行ってみたのですが留守でした。ですから、貴方が行きそうな場所を探した挙句、ようやくここにたどり着いたというわけです」
「歴史に綻び? そんなモノあるわけないじゃない」
紫は笑い飛ばす。
「そうですか? 貴方が魔理沙さんの記憶を置き換えたのもそうといいきれますか?」
小夜がそういった瞬間、紫の顔が曇った。
「……小夜。こればかりはどうしても戻すわけにはいかないの。何も言わずに帰ってちょうだい」
それは紫の本音だったのだろう。いつもより声のトーンが低い。
「そういうわけにもいきません。歴史とは人が様々な事象を受け入れてこその歴史なのです。それをねじ曲げるだなんて神にも許されざる行為です。これは過去にも貴方に言った筈ですが?」
「それは……そうだけど……」
紫がおされている。小夜さんって一体……
「では、返してもらえますね」
「……分かったわ……でも……」
紫は私の方を向いた。なんなんだろうか?
「なんとなくですが、理由はわかります。大丈夫。今の魔理沙さんならきっと受け止めることができるでしょう」
「……どうなってもしらないわよ。魔理沙、こっちに来て背を向けなさい」
私は紫に言われたとおりにする。
「今から貴方は夢を見るわ。それは貴方の魅魔に関する記憶。それがどんなに辛くても途中で終わらせることはできない。それでもいい?」
「もちろんだ」
とはいっても、過去に何があったのか分からない今、相当怖いモノがある。
腹をくくる前にふと、紫の手が頭に触れた。
急に抑えられない眠気が私を襲う。私は抗うことができるはずもなく、闇を受け入れた
次回から過去編です
ザ・私のモウソウワールド!!