私はゆっくりと瓦礫の大地を踏みしめながら歩いていました。今日は少しだけ休みを戴いた為、私はこうして行けども同じ道を歩き続けていました。
結局、私たちはルフレさんを殺す事が出来ずギムレーを封印する事にしたものの…それに失敗して世界が破滅してしまいました。皆殺しに遭い私も死んだ…筈でしたが、私は唯一の女としてギムレーの苗床として生かされる事になりました。
「結局、貴方には敵いませんでしたね……」
廃墟に佇む邪竜ギムレーの幻影を見上げながら私はゆっくりと瓦礫に腰を下ろしました。
自分の甘さの所為で運命を変える事が出来ず世界が破滅した事実にどれほどショックを受けた事か……私は最初、嘆き悲しみ、悔し涙を流してその事実を必死に嚙み砕いていました。でも……こうして時を忘れて生きている内に色々な物が受け入れられるようになりました。正確には「達観した」というのが正解ですが、私はそれを諦めた上でこの廃墟塗れの世界で生きる事にしたのです。本当は死にたかったのですが、ギムレーの呪いの影響で私まで長生きするようになってしまった為諦めました。
「…あ、もう収穫の時期でしたか……」
暫く歩いていると、ギムレー配下の屍兵が農業を始めていました。人の器を手に入れたギムレーには人間の食事が必要です。なので、こうしてご飯を作っては献上しているそうです。苗床の私も一応、食べなければならないのでこれはありがたいのですが…肥料には死体が使われているそうで………。
「…」
「いつもお野菜ありがとうございます」
「……(グッ)」
いつものように山程野菜を受け取りバスケットに移した私は、屍兵の方に感謝を伝えるとサムズアップで応えてくれました。今までは「醜悪で恐ろしい連中」と思っていましたが、付き合いが長いとこう…「いいところ」が見えるようになってきたみたいで…「とてもフレンドリーな亜人」と思えば彼らを許容するのは容易な事でした。今ではすっかり親しい隣人のような彼等です。
「そろそろ帰らなきゃ…」
私は太陽の方角を確認すると一礼してギムレーの下へと急ぎました。
「おかえりなさい!おかあさま!」
「今帰ったわ、マーク・ロロ・ミナ…」
今の私は三児の母親です。2姫1太郎ですが、皆私とギムレーに似た良い子達です。抱きついて幸せそうな表情を浮かべる我が子の姿を見ていると自分がどんな立場にいるのか実感します。暫くして、私の愛していた人の姿となったギムレーが私の前に現れました。
「帰ったようだな」
「ただ今帰りましたギムレー様。私のお出掛け中にマーク達の面倒を見て戴きありがとうございました」
「我が子に竜の事を学ばせるのは我の仕事だからな」
ギムレーと共に生きていると意外にも人間臭い竜であることも最近分かってきました。我が子とはいえ子供の前では不器用ながらも微笑む・人間の血肉を糧とすると言われているが実際は菜食主義・子供に自分の武勇伝を聞かせる間は物凄く目が輝く…など、決して「冷酷非道な邪竜」とは似ても似つきません。尤もそれは「完全に世界を滅ぼし尽くしてやる事がなくなった」からというのもあるかもしれません。ですが、この姿が素なのだろうと最近は思っています。
「じゃあ、今日はシチューにしましょうね」
「「「わーい!」」」
「…では、我々もルキナの料理を手伝うとするか。我は人参を切るとしよう」
「ギムレー様、先に手を洗ってください」
世界中の人間が私以外滅んだ未来………今日も私は家族の為に台所へと向かいます………。
※この短編はあくまでIF展開です。実際のゲームではこのエンドはありませんので御了承ください。