アーラシュ生前超捏造。盛大な解釈違い注意。混沌・中庸を説明したかった。
「
作者は六章に歯が立たなかった弱小マスターです。当然キャラクエも未プレイです。ご留意ください。
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目を開けると、眼下は一面火の海だった。正確には炎に包まれた村と、そこから逃げるに逃げられぬ人々を、視界の主は高台から眺めていた。視界の先には、まだ辛うじて焼け残った地区に弓を向ける兵の姿。けれど彼からも目を離し、実際に矢が向けられたのは一人だけ革の胴鎧を纏った人物だった。あれが指揮官なのだろう。
狙い過たず彼の矢が指揮官の喉元に吸い込まれると同時、火矢を持つ兵らめがけて矢の雨が降った。その大半は火矢を撃たせぬようにとの牽制や目晦ましに近いものであるように思えたが、この視界の主だけは違う。ろくに狙い定める時間も割かず、つがえるなり放たれた矢は、それでも必ず額や喉や心臓を貫いていた。
次々と人が死んでいく。
これは、夢だ。
しかし、これはいったい誰なんだ?
こんなにも躊躇なく、まだ子供のような兵まで打ち抜くような
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笛の音と弦を爪弾く音。
すでに酒が入っているのか、南軍を指揮する将軍は上機嫌に上手くもない歌を披露している。豪奢な絨毯、豪勢な食事。これは、祝宴だ。掲げられた杯には葡萄酒が注がれ、皆ふんだんに刺繍の施された服を着て口々に戦勝を祝っている。
少し居心地が悪いことは否定できない。自分はただの弓手であって、将軍らに並んでこのような場にいるべき人間ではないというのに。
「相変わらず慣れぬか?
「……フォルーハル将軍」
「正直に言えば」
「ふむ、まあさもありなん。君はあくまで戦場において輝く」
「そうだな……この中の誰も、決して手放しに喜んでいるわけではない。そんな余裕は我々の祖父母の代から既に無い。しかし我々には
葡萄酒で唇を湿らせ、こちらを見ないままに将軍は言葉を続ける。
「君にはもうしばらく
ああ、理解はしている。軽くうなずいて見せると、「ならばよい」と言って、彼はどこかへ行ってしまった。しばらくしてフムスが運ばれてきたのは彼の指示だったのだろうか。
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マスターとサーヴァントの間の絆、それはなくてはならないものではあるけれど、時として非常に無遠慮なものでもある。この夢は、何も
この女性も、きっとその一つ。この視界の持ち主の、一等大切な人なのだろう。
きれいな人だ。中東系かインド系と思しき浅黒い肌に黒い髪。黒曜石にも似た瞳。金属や水晶でその身を飾り、色鮮やかなワンピースの上から丈の長い上着を羽織っている。その衣装を彩る細かな刺繍の一つ一つが、彼女自身の手によるものなのだろう。美しい人だ、顔かたちも、その手による刺繡も。
「■■■■■、」
声が、聞こえない。
ああ、なるほど。これはきっと、自分が見てはならないものだ。この口で言ってはならず、この耳で拾ってはならない言葉だ。
「我が夫、あなたは私の家の者である前に、王の戦士であるのですね」
この視点の主は、いったい誰なのだろう。人々の肌の色から考えれば、インドか中東。その
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砂埃と怒号、そして蹄と車輪の音。常に飛び交う矢と巨石のせいで戦況などちっとも分からない――のだろう。本来は。こういう時こそ、自分が普通の人間ではないのだと思い知らされる。目も耳も、この時代においてはただ一人を除いて比べるもののないほど良く働いた。
千里を見通す――とはいかないまでも、混乱の最中に敵の指揮官を狙い撃つくらいは可能だった。
しかし、それでも。自分が優れていたのは目と、それから弓の才だけで他のことはからきしだった。神代の目のおかげで剣も人並みには扱えたが、所詮は人並みどまり。それで名を残せるようなものではなかった。指揮ができるでもなし、気の利いたことが言えるでもなし、自分が「戦争」において役に立てることはそうなかった。
だから、だったのかもしれない。
王から話を聞かされたとき、考える間も無く名乗り出ていた。それが正しいことだとは分かっている。この役割を果たせるのは自分しかいない。パルス随一の弓手である、自分しか。そして、自分がこの、一応は終わってしまった戦争のためにできることも、それしかないのだろうとわかっていた。
その弓は、男が見た中でも、格段のものであった。張りが強いのは当然であるが、しかし凡百のものでも引くこと自体はできるだろう。弦も本体も、そう変わった素材でできているわけではない。この国一番の弓作りの作とは言え、男自身も同じ職人の弓を使ったことがあった。
しかし、これは別格であった。
ならばやはり、その業。女神アールマティの智恵によりて造られたそれは、美しく、また強靱だった。真にこの弓の価値を引き出せるものは、この地上には一人もいないのだろう。
この弓を引ききれば、引ききることが叶えば、この五体は砕け散るだろう。
神代の英雄――かの竜殺しには及ばぬ身、慣れ親しんだ体である。そのくらいの見当は付いた。
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「アーラシュ」
王は、妻と子に会うかと訊いた。アーラシュは当然会うのだろう。会って、涙の一つでも流すのだろうか。それは少し見てみたいかもしれない。彼が弱音を吐くところなど、召喚してからこの方見たことがなかった。
沈黙は一瞬だった。
「いえ。儀式は三日後、故郷の村まで行き戻るには早馬が要りましょうが――それでは万全の状態で臨むことができませぬ」
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私がこの時代に生まれた意味はきっとここにある。
この瞬間のためにある。
しかし、これではまるで――いや、きっと、自分だけではない。
人は誰も、死ぬために生まれてくるのだろう。
ならばあとは祈るだけだ。この地上に、自分という存在を、神代の肉をもって使わした存在に。
「陽の、いと聖なる主よ」
「あらゆる叡知、尊厳、力を与えたもう輝きの主よ」
「我が心を」
聖アールマティの真意を疑うというこの不敬を、お許しいただけるのであれば。
「我が考えを」
この卑小なる地上の身に、一時その御心を割いていただけるのであれば。
「我が成しうることを、御照覧あれ」
アフラ・マズダーよ、どうかパルスに栄光を。
「さあ、月と星とを創りしものよ」
すべての光の主、この世すべての善たる
どうかご覧あれ。この地、このとき、我が祖父の生まれたときより続くこの闘争が終わる瞬間を。
「我が行い」
この身が生まれ出た意味を。
「我が、最期」
この命の潰える瞬間を。
「我が成しうる」
この国の新たなる始まりに、そして以降続くであろうマヌーチェフル王の治世に、どうか祝福を。
そして、この一矢を聖霊の名をもって呼ぶことをどうかお許しあれ。
「
さあ、ここに我が命をもって地に流星を成せ。
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長い、永い夢を見た気がする。けれど時計の表示はいつも通りの六時半。
通常のマスターよりもつながりが薄いからだろうか、
今日の夢も、そうだった。
覚えているのは火の海、女性の笑顔と涙、それと、
ともかく。今日もやらねばならないことは山積みだ。サーヴァントたちの強化だけでなく、自分が魔術師として力を付けることも重要だとさんざんに思い知らされた。結局、ジェロニモとクー・フーリンに教えを請うことにしたのだが、これがまた厳しいのだ。
今はとりあえず朝ご飯。俵藤太が来た時、アーチャーの方のエミヤ――まあその時アサシンの方はいなかったが――が五体を地に投げたのは記憶に新しい。けれどその反応も大げさではなかったようだ。何せご飯が美味しい。はじめは食事などばかばかしいと言っていたサーヴァントたちですら、アーチャー二人のタッグには叶わなかったほどなのだ。
扉に手をかざす。科学でも魔術研究の意味でも最新のものを取り入れたと言っていただけあって、ここは指紋認証式らしい。なぜかマシュには突破されるが。
「おはよう、フォウくん。今日もよろしく」
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あのとき、もしも。良き父、良き夫であれたなら。トロイアの将軍を見ていると、不意にそんな考えがよぎることがある。けれどそれは、王の土地を敵に明け渡すということ。"速き矢のアーラシュ"を「友人」だと言ってくれた唯一の人間に不義理を働くことになる。
どちらが「善行」であったのか、アーラシュ・カマンガーとして生きた青年には今なお分からない。
アーラシュはマスターに善人であってほしかった。そして、善人が善行を為すことに障害のない世界を祈っている。自分ができなかったことを他人に託すなど身勝手の限りだとわかってはいたが、それでも。役目ではない、自分の心の底から出てくるものとして善を為すことを望んでいた。英霊となった自分、そして自身の手綱を握るべきマスター、その双方ともに。