戦姫絶唱シンフォギア ~Gungnir Girl's Origin~   作:Myurefial0913

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プロローグ ~少し先のお話~

 ――ガキィィィィンッ……!

 

 

 ――ドォオン! ダンッ! バシッ! ドカッ! バンッ!

 

 

 ――ズゴォォオン……!!!

 

 

 

  

 草木生い茂る森の中、何度も何度も金属同士がぶつかり合う音や地面を蹴って地面が陥没する音、打撃音などが一帯に木霊する。

 辺りに見える人影は二つ。

 一つは明るい茶髪に癖ッ毛が目立つショートカットで、黄色と白を基調としたギアを纏う少女。

 もう一つは、形そのものは先の少女と似ているがそれとは非なる姿形で、刺々しい部分もある赤黒い色をしたギアをその身に包んだ少女。

 

 彼女らは何度も繰り返し徒手空拳や蹴りによる殴り合い蹴り合いの応酬をして戦闘をしていた。

 

 その理由はなにか?

 

 

 意見を違えたのか、元々仲が悪かったのか、反対に二人は仲良しでただの修行をしているだけなのか、はたまた己の正義と相反するが故にぶつかり合っているのか。

 

 

 それはまだ分からない。

  

 戦闘技術や立ち回りでは圧倒的に黒の少女の方が上である、しかし、黄色の少女の方は未熟さを残しながらも戦いの中でも急成長を繰り返し、黒の少女にも迫る凄まじい勢いを見せている。

 見れば、黒の少女も少しばかり焦っているようにも見えた。

 

 正拳突き、踵落とし、震脚、発勁、ラリアット、エルボー、回し蹴り、ニーキック……、

 

 黒の少女が使う中国拳法や色々な格闘技のものが混じった体術のそれは黄色の少女の使う体術にも似ているからか、まるで組手をして対決する姉妹のようにも見える。

 またその逆についても同じことが言えそうで、黒の少女が繰り出した技をすぐさま黄色の少女は吸収して戦闘の中に応用する姿も見えた。

  

 

 黒の少女が何年も積み重ねてきた努力を、苦行に耐えて手にいてた結晶を、黄色の少女は僅か戦っているこの数分間、十数分間のうちに体得し、まるでスポンジが水を吸い込むのではなく、砂地に水が染み込んでいくように力を手に入れていく。

 

 黒の少女は心なしかイラついているかのようで、黄色の少女はどこか不安げな表情を見せる。

 

 対称的な表情を見せる二人。

 

 やはり、何かわだかまりを抱えているのかもしれない。

  

 二人の距離が開き、一瞬間が生まれる。そのときに黄色の少女が黒の少女に向かっって何かを訴えるように言った。

 

 すると、戦況に動きが生じる。

 

 

 黒の少女が大きくジャンプで跳躍して、空中に浮きつつそのまま留まり、何処からともなくとある一つの槍を生み出し両手で構える。

 

 ――それは何物をも貫く無双の一振り、轟々と紫電が稲光りし神々しき撃槍。

 

 伝承の中に現れる主神の持つ槍であった。

 

 

 黒の少女はその槍を手に、急降下して黄色の少女に向けて雷の如き一閃突きを解き放つ。

 

 

 それを迎え撃つ黄色の少女は地面を精一杯踏みしめて黒の少女に向かって跳躍、神槍へと拳をもってして突進していく。

 

  

 

 ――ドカアァァァァアアンッ!!!

 

 

 

 両者がぶつかり合った瞬間、轟音が鳴り響き、驚くことになんと世界の色が急に色褪せて無くなった。二人の中心から光を放って辺り一帯が真っ白になると、パキンッ!と何かが割れた音がした。

 

 二人は地面へと降り立ち、次第に光が収まるとぶつかり合った空間を見上げる。

 

 空間にヒビが入っており、次の瞬間、ガラスが割れたような音がした。

 

 そして、そこから音もなく吹き荒れる風がブラックホールのようにあらゆるものを吸い込んでいって、二人を呑み込んでしまった。そのすぐ後には空間に開いた大穴は塞がってしまう。

  

 

 世界に色が戻って来たころには既に二人の姿はこの世界の何処にもなく、バチバチッと小さい雷が虚しく大穴が開いていた場所に走るのみであった。

 

 

 彼女たちは一体何処へ行ってしまったのだろうか……。

 

 それが分かることはまだ先のことである。

 

 

 

 

 


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