戦姫絶唱シンフォギア ~Gungnir Girl's Origin~   作:Myurefial0913

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EPISODE23 侵されざるべき聖域の外側へ

 

 

 

 

 「……さて了子君、事態の収拾がついたところで詳しく説明してくれないか?」

 

 「本人不在のままだけど、私たちだけでやっちゃいましょう」

 

 研究主任の櫻井了子と司令官の風鳴弦十郎、その右腕の忍者である緒川慎次ら二課首脳部の3名は、失敗に終わった初回のLiNKER改良実験についてブリーフィングを行っていた。

 もう1人の当事者である長月凛花は眠りについたまま日を跨ぎ、未だ目を覚まさないでいる。

 

 「凛花くんが目を覚まさないままでいるのもどこか異常だ。もうあれから1日は経過している」

 

 「それに至っては原因不明、身体の方におかしい所は見られないのにちょっとこれは寝過ぎね。LiNKERの負荷が強すぎたかしら……?何かが影響している所為ではあるんでしょうけども……今の論点はそこじゃなくて――」

 

 「凛花さんの暴走、についてですね」

 

 「そうね。あの時の凛花ちゃんは色々とおかしかった」

 

 長月凛花はLiNKER服用後、唐突に叫びだしたと思いきや声高らかに笑い出した。その後戦闘になってしまったので普段の凛花とのギャップに驚いている暇はなかったが、今思い返してもあの変貌ぶりは衝撃的なものだった。

 

 「こう言っちゃなんだけど、アッチの方が凛花ちゃんの素の姿だと思うわ」

 

 「好戦的で狂人じみた点除けばな……」

 

 「今の凛花さんの寡黙な佇まいの方が本来の姿から逸脱しているように思えます」

 

 ここにいる3人の『長月凛花の本来の姿』のイメージは予てから全会一致で、『明るく快活で感情豊かな心優しき少女』という印象のまま。

 色々と気持ちを揺さぶられる嫌な出来事にぶち当てしまったが、幸い凛花の印象と尊厳は保たれたままだった。

 

 「精神崩壊した理由については昨日車内で話した通りだと推察していて、解決方法もまた然りよ」

 

 「凛花さんの精神的ストレスを取り除く為に僕と司令で訓練や修行をつける、でしたか」

 

 「そうよ。何かと溜め込んじゃう彼女のストレス発散方法は今のところそれくらいしか判明してないからそうする他ないわ。

 あとしっかりご飯は食べさせなきゃダメよ?あの子、気分が落ち込むタイミングは決まっていつもご飯時前なの。それも大事だから徹底してね!明るい笑顔でいられる彼女を取り戻すために私たちで何とかしなきゃいけないんだからね」

 

 「凛花くんのアクションを待つだけではダメだ、俺たちの方から手を引っ張ってやらないとな」

 

 「はい。それから昨日移動中に司令が気付いた点についてですが……」

 

 「凛花くんは俺たちとの戦いの最中、一切歌を口にしていなかった。あの場にいたのがノイズではなく俺たちだけだったから大事にならずに済んだが……」

 

 そう、長月凛花の異常性は突然始まった暴走だけでは済まない。シンフォギア装者が戦うために必ず口ずさむもの、謂わば生命線を彼女は手放していた点だ。

 

 この場に於ける議論の主題は凛花が狂喜乱舞した事ではなく、むしろこちらの方である。

 

 シンフォギア装者が歌を歌わなければノイズの位相差障壁に対してインパクトによる調律が出来ない他、フォニックゲインを高めることが出来ないのでシンフォギアそのものの出力低下を招く。悠々自適にシンフォギアを動かすことすら叶わない。

 

 オマケにノイズから身を守るバリアコーティング機能も損なわれるので、対ノイズ戦においてデメリットしか発生せず戦闘続行は殆ど不可能だろう。

 

 「適合係数以外にもフォニックゲインのデータは取ってあるか?」

 

 「抜かりなくよ。あの後気になって調べたんだけど凛花ちゃんのシンフォギアの出力は落ちることがなく、フォニックゲイン値は何故か高水準のまま一定を保っていた」

 

 「……一定、ですか?」

 

 「ええ」

 

 櫻井了子の言葉に引っかかりを覚えた緒川慎次は躊躇せず質問した。

 

 「上がることもなく下がることもない、まさしく水平線のまんまよ」

 

 「なんだと?普通ならば有り得ない状態だろう。翼が行った検証ではそんな結果にはならなかったはずだ」

 

 装者に対してフォニックゲインの供給が滞ればシンフォギアが機能しなくなるのは周知の事実。

唯でさえフォニックゲインは変動幅が大きいというのに、歌を歌わない状況下で出力が下がることすらしていないのは明らかに異常事態だ。

 

 「どこからかフォニックゲインの供給が行われている、もしくはそれに代わる何かがエネルギーを与えている、か……凛花くんが持つギアペンダントに何か秘密は?」

 

 「一部特殊な聖遺物が使われている以外目立った違いは無いわ。凛花ちゃんからその正体を聞いて調べたけど、主たるエネルギーの発生源には恐らくならないわね」

 

 「ふむ、そいつの名前は?」

 

 「北欧神話に伝承される『魔剣ダインスレイフ』。向こうの世界でギアが壊れた時に魔剣の一部を修復に使ってくれた、だそうよ。オマケに基礎出力も上がってパワーアップ!後世に私のシンフォギアを弄れる天才が現れてくれるなんて嬉しいわね!」

 

 よよよ、と櫻井了子が嘘の嬉し泣きをしたが、その数秒後にケロッとして元に戻る。

 

 「ま、それは置いとくとして、肝心のエネルギー源については万策尽きた訳じゃないわ。まだ一つ心当たりが残ってるの。今はそれを調査中、と言っても進行状況は思わしくないけどね……」

 

 「それは一体なんですか?」

 

 「えっとね――」

 

 緒川慎次が櫻井了子に問いかけた所で、タイミング悪く突然警報がブーブーとけたたましくなり始めてしまった。

 

 「……はぁ、こーんな時にお客さんのお出ましよ。んもう、おかげさまで大事な事を話しそびれちゃったわ」

 

 「素行の悪い客にはお引き取り願わねばな。よし!俺たちも一仕事と行くぞ!急ぎ翼に連絡を取れ!」

 

 「了解しました!」

 

 一同は事態に対処するために二課司令部へと移動する。今日も今日とて特異災害対策機動部二課は騒がしくなりそうだ。

 

 その道すがら、風鳴弦十郎は先ほど櫻井了子が発した気になる発言を脳内で思い返していた。

 

 (ダインスレイフ……その刀身を抜けば最後、生き血を完全に吸いきるまで鞘に納まることは無いという厄介極まりない魔剣。影響が無いとは言いきれんだろうが、果たして……いや、まだ様子見とするべきか……)

 

 どんな影響があるかについては使用者たる本人に訊くのが手っ取り早い。弦十郎はいつか機会を設けて凛花からダインスレイフの事を直接聞き出そうと画策するのだった。

 

 

 

 

 

     ○

 

 

 

 

 

 

 「さて、全員揃ったようだな」

 

 「緊急招集と聞きましたが」

 

 「急に呼び出して何させるんだ?弦十郎のおっさん」

 

 「……」

 

 ノイズの出現による翼の戦闘は大掛かりなものにならず、被害者も出ずに済んだので昼過ぎには収束出来た。

その翼が帰ってきたばっかりのタイミングで弦十郎は翼、奏、そして先程ようやく目を覚ました凛花に集まるよう命令をかける。一体何が始まるのか?

 

 「ここ数ヶ月の間ノイズの出現率は比較的穏やかなものだったが、八月も下旬に入ったこの頃、息付く暇も無い程ではないが翼の出撃回数が徐々に増えはじめてきている」

 

 「確かに、奏が二課に来る前くらいの頻度に戻ってきている感じがします」

 

 「うむ、そこでお前達にはより一層鍛錬に励んでもらいたく思い、これからは俺が特訓を付けてやることにした!」

 

 「えぇっ!?そりゃホントか!?」

 

 「司令自らが!?」

 

 「……」

 

 「奏と翼の訓練メニューを考案したのは俺だが、現場を監督する機会が少ないことが気がかりでな。直に見てやったほうが効率よく鍛えられるだろうと言うことでこの場を設けさせてもらった。

 これから出撃が増える翼自身の戦闘力を向上せねばならないし、奏にとっては適合実験に耐え得る肉体に仕上げる必要がある」

 

 肉体の強さは、それ即ち聖遺物の侵食に耐える強さや聖遺物の力を制御する強さと同義。適合係数は身体を鍛え上げる事によって後天的に高められることが可能だ。

 

 実際、シンフォギアに適合出来た当初から鍛錬を欠かさない風鳴翼の適合係数は少しずつ上昇を続けている。それはシンフォギアの鎧の形状が少しずつ変化している点で如実に現れているだろう。

 

 故に、適合できていない天羽奏が訓練によって適合係数を上げられないという理由は存在しない。

 

 「凛花さんはどういった訳で?」

 

 「知っているとは思うが凛花くんは俺の弟子だ、当然俺の特訓に付き合ってもらう」

 

 本当の理由は別にあるが、それを翼や奏に対して言う必要はないだろう。

 

 「凛花くんは俺の弟子ということもあって実に筋がいい。奏は前回辛うじて勝てたが完全復帰した凛花くんに勝てるか分からんぞ?」

 

 「うっ、まあそうだな。怪我してた中でもあんだけ動けたんだ、あたしはもっともっと力を付けなくっちゃな!」

 

 そこへデスクを操作していた櫻井了子が会話に参加してきた。

 

 「随分とまた高評価ね」

 

 「別に間違ったことは言っちゃあいないさ。ただ、それだけ評価してるってことはより厳しいことを要求することになる。俺は贔屓目に見ることは無いぞ」

 

 「……」

 

 「あら、大事な大事な箱入り娘に一体何させたがってるのかしら?」

 

 「そうだな……。簡単な縮地が出来るのだから銃弾を避けることや銃弾を掴むのは勿論のこと、手始めに生身でノイズに遭遇してしまった時に生還できる力を付けてもらうつもりだ!」

 

 「努力の方向が間違ってる気がするぞ……」

 

 人間卒業試験を受けさせようとヒートアップしている弦十郎の発言に奏は、どうしてそうなったんだと思わずゲンナリしてしまった。しかし、そんな奏のボヤキが弦十郎に伝わることは無かった。

 

 「俺に出来る事全てを余すこと無く伝承させる。最終的には俺と同じ高みに来てもらわねばな!凛花くんが強くなれば俺にとっても好都合だ。もちろん翼や奏も大歓迎だぞ?」

 

 「司令……」

 

 「一体何年かかるんだよ……」

 

 翼と奏が冷たい視線を送っていることに気づかない司令官。本人は悪びれる事なくハッハッハ!と愉快そうに笑っている。

 

 一方、無茶な要求にも反論せず沈黙したままの人物がここに一人。奏はその人物を肘で突っつく。

 

 「……何で凛花さんは何も言わないんだよ」 

 

 「……出来ない、とは思ってないから」

 

 「はぁ!?」

 

 奏は予想外な余り素っ頓狂な声を出す。凛花自身は出来ないことは無いと本気で言ったが、不思議と奏も凛花さんならなんか出来ちゃうんじゃないか?と思い始めていた。

 慣れとは怖いものである。

 

 風鳴翼は凛花に対して冷たい視線を送っていたが、発言したげな様子は無かった。

 

 「奏ちゃん、あんまり気にしちゃ身が持たないわよ」

 

 「あぁ……」

 

 「その意気だ、凛花くん!さて、気分が乗ってきたところで早速始めるとしよう!」

 

 「ちょ、ちょっと待て今からか!?弦十郎のおっさん!?」

 

 「ん?なんだ、不満か?」

 

 「不満も何も、翼は今帰ってきたばっかりだぜ!?少しは休んでからでも良くないか?」

 

 風鳴弦十郎謹製メニューによる特訓の開始を高らかに宣言したところで奏の必死な訴えが飛んできた。確かに翼はシンフォギアを身に纏って任務を全うしてきたばかりであり、それなりに疲労も溜まっているはずである。翼の身を案じた奏の言い分は正しいと言えるものだろう。翼も何か言ってやれよ!とばかりに奏は翼の方を見る。

 

 だが、何かを鋭敏に察した翼はまだ何も言えないまま立ち竦み、額には冷や汗をかいている。

 その原因は、厳しい顔つきの二課司令からひしひしと発せられた怒りのオーラにあった。

 

 「戦場に立つものとして甘えは許さん!翼もまさかあの程度の戦闘で根を上げた訳ではあるまいな?水分補給と簡単なメディカルチェックを終えたあと、すぐさま合流しろ!総じて5分もかからん!!」

 

 「は、はい!今すぐに!!」

 

 妙なスイッチの入った弦十郎に叱責を受けた風鳴翼は廊下を駆け出していく。

 

 「奏と凛花くんはすぐにでも始めるぞ!10分後、リディアン近くの公園に集合だ!各員準備を急げ!!」

 

 「準備もあるってのに、あそこまで一体何分かかると思ってんだっ!コンチクショウ!」

 

 天羽奏も翼の後を追うように駆け出し、準備にとりかかる。駆けていく2人の背中を見つめて何故か満足気になった弦十郎は最後の一人に目を向けた。

 この場に取り残されたのはただ一人、長月凛花のみ。

 

 「凛花くんは……っとその格好、どうした?事前に着替えを終えていたのか?」

 

 「……はい」

 

 なんと長月凛花は既に運動する格好になっていた。

 まるで弦十郎が「今から特訓を始める!」と言うのを予測していたと言わんばかりの半袖短パン姿。

 

 この珍妙な事態に櫻井了子はクスクスと笑い出した。

 

 「読まれていたみたいねぇ、弦十郎くん?」

 

 「どうして分かった?」

 

 「……突発的に呼び出されることは良くあることでしたから」

 

 「ふぅん、どうやら経験則のようね。凛花ちゃんのお師匠様?」

 

 「どこの世界の俺でも考えることは同じだったようだな……」

 

 発令所に居るオペレーター達からも生暖かい視線を感じる。未来から来た不束な弟子に見透かされているようで、少し恥ずかしくなった弦十郎だった。

 

 そして特訓開始から3時間後、集合場所であった地上の公園には久しぶりに運動をしてホクホク顔の弦十郎と、死屍累々と地面に突っ伏した3人という構図が出来上がっていた。

 

 

 

 

 

    ○

 

 

 

 

 

 弦十郎の指揮監督のもと、特訓が執り行われた日とは別の日のこと。

 

 「凛花さん、こちらへどうぞ」

 

 目の前にはリディアン地下に位置する特異災害対策機動部二課基地の射撃訓練室がある。特に予定も無く暇を持て余していた長月凛花は緒川慎次に連れられる形で部屋の中へと入室した。

 

 「……ここは――」

 

 「二課オペレーターたちが戦闘訓練を行う為の場所です。その中でもここでは拳銃を用いた基本的な射撃訓練を行います。情報処理担当であっても任務によっては危険な目に会わないと限りませんから」

 

 「……でも、どうして私が?」

 

 「凛花さんにもっと護身の(すべ)を身につけさせるべきと判断した了子さんが政府の上層部に掛け合った結果、上層部の方から思わぬ賛同を得てしまいまして……凛花さんには二課の構成員たちが受けるものと同じ訓練を課すようにと命令されました」

 

 長月凛花は特異災害対策機動部二課にとっても日本政府にとっても『特異な存在』である。

 通常とは異なった経歴で二課に現れ、二課の保有するそれとは違う特殊な聖遺物を持つ。

 

 そんな聖遺物を持つ長月凛花が身の危険を感じた時、その機密性の高さから表立ってシンフォギアや聖遺物に頼る事が出来ないのは凛花自身も分かっている。

 

 また、曖昧な立ち位置のまま庇護下にある凛花がこれから何らかの形で任務に赴く可能性も無いとは言えない。もしそんな時にシンフォギアが使えない状況に陥ってしまったならば凛花は助からないだろう。

 

 凛花が機密を守っていようという考えに留まっている限りは。

 

 そういった最悪の事態を想定した結果、風鳴弦十郎や緒川慎次への師事に加えて凛花には『二課の戦闘員になる為の訓練』が付けられることとなった。櫻井了子のカリスマ性がなせる技なのか、こうした申請は意外にも早く通ってしまった。

 

 緒川慎次がスーツのポケットから二つの異なる拳銃を取り出す。

 

 「凛花さんには今からこれを使ってもらいます。もちろん込められているのは実弾です。お好きな方をどうぞ」

 

 「……」

 

 凛花の冷ややかな視線が緒川を突き刺す。

 しかし今更その視線に動揺する緒川慎次では無い。

 

 「銃を持つのは、怖いですか?」

 

 「……ッ」

 

 むしろ内心動揺していたのは凛花の方であった。固く閉ざされたその口が心の内を吐露する為に開く。

 

 「……武器はあんまり持ちたくないですかね……今更ですけど」

 

 意外にもその口は思いを素直にさらけ出した。

 銃火器といえば真っ先に思いつくのは、誰かを傷つけるためのもの、ということ。人間の醜さに失望したといえども、誰かを無闇矢鱈に傷つけることを凛花は良しとしなかった。

 

 どうでもいい相手は傷つけもしないけど、助けもしないよ?という不干渉主義を持ち、自分から関わりに行かなくなっただけ。

 

 ただ、優先順位を付けて取捨選択をすることが出来るようになっただけで、誰かを傷つける恐怖そのものは漠然と心に残っている。

 

 「人を殺し得る武器に対して恐怖心を持つ事は、普通の人間として当たり前の反応です。何の躊躇いもなく握れてしまう方が一般的にはおかしいでしょうね」

 

 「……」

 

 「安心してください、凛花さん。それが普通です」

 

 どうやら凛花は緒川慎次から試されていたようだったみたいだ。すぐに拳銃を手に取らなくて良かったかも知れないと凛花は思う。

 

 すると、ここで緒川慎次は一つの提案をする。

 

 「では、ここで見方を変えてみましょう」

 

 「……?」

 

 コテンと首を傾げて疑問を浮かべる凛花。

 

 「凛花さんの目には誰かを傷つける道具に映ったかも知れませんが、時と場合によっては自分や誰かを守る為の道具にもなります。実際アメリカの人々は護身用として持っているぐらいです」

 

 「……」

 

 法制度をしっかりと整えた上での事ですけどね、と付け加えて。

 

 「何も犯罪に使うばかりが銃ではないんです。僕だって銃を使うことがありますが、失礼――」

 

 そう言って緒川慎次は右手に持っていたリボルバーをスッと構えて、間を置かずに撃つ。

 

 身体の芯にまで伝わって来そうな重厚な衝撃音が密室全体に響き渡る。慣れることの無い不快な感覚に思わず凛花は眉をひそめた。

 

 緒川慎次は目線上にあるターゲットの中心部を見事に撃ち抜いた。寸分の狂いもない精密射撃を披露した緒川は再び凛花の方へと向き、少し苦笑いしながら話を続ける。

 

 「驚かせてしまいましたか?」

 

 「……いえ、平気です」

 

 「そうですか。今突然撃った理由ですが、僕は仲間が危機に陥っている事を想定して攻めてきた仮想敵へと撃ちました」

 

 「……」

 

 「人を殺す為に撃ったのではなく誰かを守る為、もしくは任務遂行の為に撃ったんです」

 

 反応が返ってこないこの会話はまるで独り言のようだと思った緒川慎次は苦笑いしつつ話す。

 

 「結果的に相手を殺傷してしまうかも知れません。ですが、もし自分が今撃たなければ自分の大切な人物が傷ついてしまう事だってあるんです。それは凛花さんもよく分かっていることでしょう」

 

 「……っ」

 

 言われるまでもない。

 幾度となく自分自身の力について悩み、迷って来たんだ。今だって答えが出ているとは言い難いが、緒川の想定する事態に陥った場合にどうするべきか位は分かっているつもりだ。

 

 「シンフォギアもこの拳銃も等しく力、大事なのは道具の使い方です。凛花さんにはこれから自衛の為に色んな手法を身につけてもらわなければなりませんので、その恐怖心を乗り越えてください」

 

 「…………」

 

 「それに、脅威となる敵を御しきるにはまず自分自身で扱い方を知っておいた方が無難です」

 

 銃器を使うことは何もデメリットだけではないと緒川は言った。実際に銃を撃つ事がなくても使い方を知っている、というのは知らない場合に比べて事態の対処に大きな差を産むこともあるのだ。

 

 「もちろん、本部の許可も無く不正に銃器を使用した場合にはそれなりの罰がついて回ります。それは忘れないようにして下さい」

 

 「……分かってます」

 

 「ふふっ、ではこの二つの内どちらか一つ選んでください」

 

 

 緒川慎次が差し出す二つの拳銃のうち、長月凛花が手にしたのはオートマチック型。

 緒川は少しだけ残念そうな表情を浮かべながらもう片手に持つリボルバーをポケットにしまい込む。

 

 「……この二つって、何か違いがあるんですか?」

 

 「構造上に大きな違いがありますが、人によってそれぞれ好みや向き不向きがあるので今は気にしなくて大丈夫ですよ」

 

 「……そうですか」

 

 それ以降凛花からの質問タイムは訪れず、凛花は緒川から拳銃の扱い方を教わる。

 

 拳銃の構え方、排莢や装填の仕方、セーフティロックの効力、腕の角度や狙い撃つときにどこを見るべきかなどと、一から順を追って説明を受けた。

 

 「凛花さん、構えてください」

 

 そして安全用のゴーグルを着用し、見た目以上に重くズッシリとしている自動拳銃を真っ直ぐに構える。

 

 「……っ」

 

 容赦なく全身に伝わる音と衝撃。

 長月凛花は生まれて初めてその引き金を引いた。

 

 

 

 

 

 〇

 

 

 

 

 

 時の流れが速く感じるようになったのはいつ頃からだっただろうか。

 

 月日は8月から9月へと移り、立花響から長月凛花へと名前が変わった私は誕生日を迎え19歳になった。次元や世界を跨ったとしても歳は食うものらしい。

 9月生まれとしか言ってなかった所為で9月の何日なのかを詮索されたが、そう言うのはいいからと誰にも誕生日を教えることはしなかった。お祝い事大好きな二課の人にはパーティーを開くのを遠慮してもらっている。

 

 静かに、今日という日を私は迎えたかったから……。

 

 イレギュラーな存在である私がこの時間にやってきてから既に季節は幾つか移り、もう少しで半年。 

 

 この期間に私に何かやったのかと言えば、他人に自慢出来る事はほとんど無い。1ヶ月半は寝た切りだったし、残りの時間はただ働きもせずに居候していただけ。

 

 唯一了子さんから頼まれたLiNKERの改良も今でこそ順調であるが、一番最初は目を背けたくなる程の黒歴史をそれはもうバッチリと刻んでしまった。

 あんな状態でも記憶にはハッキリ残ってしまうものだから忘れたくても忘れられない。自制なんて効かなかったんだよ……凄く恥ずかしい……。何言っちゃってんの、私は……。

 

 ……そんな事はどうでも良くて。

 

 私本来の願望と相反して行われる私のLiNKER実験は、奏さんの適合実験を進展させやすくする為のもの。奏さんに投与していたLiNKERをそのまま私が使い適合係数の変化を調べ続けた結果、このLiNKERは引き上げる成分が強過ぎる事が判明した。

 

 初回の失敗を引き合いに出すのはあんまり嫌だけど、私の適合係数が極端に高くなってしまったのはこの強過ぎる効果も一つの原因でもあった。その他の要因がどうしようもなく大きな比重を占めていたのは否定できないけど。……もう私の話はおしまい。

 

 数回の実験結果からこれらを受けて了子さんはLiNKERの効能の微調整に着手した。奏さんの適合係数の上昇が叶わなかったのは、高過ぎた上昇率とデフォルトの適合係数とのバランスが取れずにいた所為。無理矢理引き上げようとしたが身体の方がついていかず、数値に変化が見られなかったらしい。

 

 それを聞いた師匠は奏さんに対して師匠自ら修行を付け始めた。だけど、奏さんの修行に何故か私も参加することになる。

 

 私にとっては好都合だったから、師匠に話をする手間が省けた。

 

 素の状態で強くなる事を念頭に置いて師匠と修行しているおかげで組み手に於けるパワーとスピードが増して来た。負担のかからない縮地のやり方を教わったり、無駄無く効率的にパワーを伝える為に攻撃の精度を上げる方法を教えてもらったり。

 

 武術の特訓にはもちろん映画を見ながらで。実際これが一番早い。実力が付いてきてるのは間違いなく実感として感じているのに、奏さんたちにこの方法が理解されない事が不思議でたまらない。

 

 お陰様で翼さんや奏さんとの模擬戦では全戦全勝。一度の敗走もなし。翼さんと勝負する度に翼さんから睨まれるのは正直怖いけれど、わざと負けるのも違うので私は全力で勝ちに行く事にしている。

 

 奏さんたちに言わせれば、『もう人間辞めてそう』とか『成長スピードがおかしいだろ』とか何とか。

 

 素で銃弾を避けられるようになったのは確かにおかしく思うけど、人外判定を受けるにはまだ早い。だって、師匠に一発も入れられてないんだもんね。

 もう1発入れてるって?アレはノーカンだよ……。

 

 銃弾だって避ける事が出来ても素手で掴むには至ってない。そもそも掴もうとも思えないよ……高速回転する弾を掴める訳がないし。実際に撃ってみてその威力を改めて知ったよ。それをどうやれって言うのさ。

 

 それらが出来て初めて人外かな、って私の中で線引きしている。ミサイルすら素手で掴み取り、シンフォギア装者相手に軽々とあしらう師匠は相変わらず強すぎる。

 

 師匠との差は埋まらないままだ。

 

 ……………。

 

 ……話をLiNKERに戻すと、LiNKERのベースとなる調整を私を使って行い、個人用に細かく設定する調整を奏さんでするという構図が今出来上がっている。被験者が奏さんの時に比べて効率性は2倍、負担は半分。進行度が遅いとはいえ、やはりその差は大きいみたい。

 

 まだガングニールを起動していないがこの調子で行けば奏さんは適合するだろうと私は思う。いつになるかはわからないけどね。

 

 名目上、了子さんの助手として側付きをしているおかげでシンフォギアのメンテナンスと言った裏方の知識も教えてもらえるようになった。櫻井理論は難し過ぎて、本当に何を言っているか分からない時もあるけど、少しずつ勉強しています。

 

 いずれはLiNKERを自力で作らされるみたいです。

 

 

 私の1日のスケジュールは暇を持て余していた以前よりも大きく変化した。朝起きてから体力を入院前に戻すための走り込みをして、ふらわーのおばちゃんの家に帰り朝食を食べる。

 

 昼は緒川さんに師事の下で拳銃の使い方を受けたり、シンフォギアを使わないで忍法を教示してもらう。影縫いや影分身といった名のある技はまだ教わることは無いそうです。

 

 緒川さんが忙しい時は友里あおいさんか藤尭朔也さんに拳銃の練習を見てもらうことにしている。一人でやってはダメだと言われたので。もちろん忍術修行は緒川さんが居る時のみしか教われない。

 

 ノイズの出現などで二人も手が空いてない時は了子さんの所でお勉強をする。了子さんが忙しくなるのは翼さんが任務から帰って来てからなのでそれまでのお相手をしてもらっている。

 

 その勉強内容が櫻井理論だけに留まらず、大学レベルの勉強もやらされている。櫻井理論だけでとんでもなくキャパシティーオーバーなのに……。それでも手を緩める事をしない了子さんは私に一体何をさせたいんだろうか?

 

 

 夜はおばちゃんのお店でお好み焼きを食べるか二課でしっぽり夜ご飯を食べる。実験も修行も身体が資本だと言われた以上は夜に無理する事が出来ないので、素直におばちゃん家か二課の自分の部屋に戻って寝る。

 

 相変わらずふらわーのおばちゃんの家に居候していて申し訳ないが、おばちゃんはおばちゃんで良いと言ってくれているので強く言えない。せめてもの償いとして今度お店の手伝いでもするべきかな。

 

 師匠との修行は全員の都合が合う時のみだけなので3日に1回あれば多い方。みんな忙しい時は1人で映画を見て予習中。

 

 そんなこんなで夏が終わり9月になった。本当にあっという間に過ぎてしまった。

 

 

 夏休みが終わったので翼さん達は学校へ行くことになった。ちなみに奏さんはこの時期からの編入らしい。二課のムードメーカー的存在の奏さんが二課から離れる事なんてずっと無かった事だから、奏さんのいない時間帯はすごーく静かで違和感を覚える。

 

 そういえば2人はまだ学生でしたね。

 

 そんな中訪れた私の誕生日というイベントは何故か皆の刺激になったらしく、私に何かをしたくて堪らないらしい。……ストレス解消をコッチにされても困るので私は丁重にお断りした、筈だった。

 

 そう、私は二課のみんなが誕生日パーティーをやらなくていいと言われてめげる人達で無かったと言う事をすっかり忘れていた。特に了子さん。

 

 ……やっぱり私は読みも詰めも甘い。

 

 せめて誕生月なんだから何かは贈らせてと、ふらわーのおばちゃんから言われたのが、結果として了子さんに隙を与える事となり決定打になってしまった。

 

 実は裏で了子さんから話が通じていたらしく、『ふらわーのおばちゃんから受け取らないなら、私からのプレゼントも受け取らない訳は無いわよね?』と私を脅し掛け、私に断らせないための算段を仕掛けていたのだ。

 

 ……いくらなんでも大掛かりすぎるよ。

 そして了子さんからプレゼントを2つほど受け取りました。その執着心たるや。

 

 

 泣く泣くふらわーのおばちゃんに手を引かれる形で次の日曜日に買い物に出掛けることになった。

 そして何の感慨も無く訪れたお出掛けの日。

 時の流れが速く感じるようになった私にとって、その日は印象も薄くいつもと変わらない何気無い日になるはずだった。私としてはそうしたかった一日だったのに。

 

 

 偶然にも出掛けた日曜日は、私の誕生日だった。

 

 

 「……はぁ」

 

 秋始めの昼下がりに吹く風を受け、ショッピングモール近くの緑地公園を一人溜め息を吐いて歩く。おばちゃんはおばちゃん個人の買い物に時間がかかってしまうそうで、しばらく時間を潰して来てと言われてしまった。私へのプレゼントは既に受け取ってある。

 

 「……お花、ね」

 

 ふらわーのおばちゃんからの誕生日プレゼントは、()()()()の文字通り『お花』。しかも結構豪華な花束で貰った。

 

 

 束ねられているそのお花は9月の誕生月の花である、『ダリア』と『リンドウ』。

 

 『ダリア』の花は色んな色の種類があったそうだが、おばちゃんは黄色と赤とオレンジのダリアを選んだらしい。またその中でも特にオレンジが一番多い。

 中心から広がるように重なって咲く八重咲きが綺麗な花でとても美しく、かなりメジャーなお花だ。色によって花言葉が違うとかなんとか言ってたかな?

 

 『リンドウ』の花は青や紫に近い色を持つ鮮やかさが特徴的な一重咲きの花。竜胆色(りんどういろ)という、やや燻んだ青紫のような色があるくらいにはこちらも有名。花の真ん中に相当する柱頭部分が黄色い為に、青紫とのコントラストがこれまた素晴らしく綺麗でよく映える。

 燻んだ、という消極的なイメージをしたがこの色にはそんな印象は全く無くて、逆にそれが上品さを感じさせる。それを何て表現したらいいのかな……?

 紫よりも青っぽさが濃く、群青ほど青くもない。且つ原色のように主張が激しく無いので何だか落ち着く色合いだ。

 

 花束には『ダリア』が8割、『リンドウ』が2割くらいの花が束ねられている。これもセンスなんだろうか。

太陽のように咲き誇るダリアのオレンジに上品なリンドウの青紫が添えられる事により、見栄えの良さも美しさも格段と上がっていた。

 

 私には勿体無い気がするよ……。

 

 花を贈る時は花言葉が重要だったりするが、私にはよく分からない。お花屋さんで買うときに花言葉が書かれた紙が貰えたりするけれどおばちゃんは敢えて渡してくれなかった。知りたかったら自分で調べてみてねと、おばちゃんの視線が暗に仄めかしてもいたので、後で覚えていたら調べよう。

 

 ……まあいいや。これはこれで綺麗な花だし誕生月の花なんだから間違いはないはず。

 

 ちなみに了子さんから強引に押し付けられたプレゼントの内容は新しい伊達眼鏡と靴、それもハイヒールだ。

 

 伊達眼鏡はやや透明がかった黄色いフルフレームの眼鏡で、前に買ってもらった物よりも丈夫でデザイン性も良く結構お高かったらしい。……まさか、べっ甲の眼鏡じゃないよね?そんな最高級品のものを貰っては私の方が困るんだけど……まさかね?……まさかね。

 

 ハイヒールは正直首を傾げた。履いて慣れろとでもいうのかなぁ?ヒールに関してはあまり良い思い出がないので苦手なんだけどなぁ……しかもよりによってツヤツヤした派手な赤。

 クリスちゃんの履いていた靴に近い色合いで履き所に迷う。あれはクリスちゃんだから似合うのであって私には合わないでしょうに。……()()()()()()()()()()()()()()()()()了子さんにそんな事言ってもしょうがないので心の中に留めておくけど。

 

 デザインはシンプルなんだけど似合う服は当然持って無い。そもそもヒール部分が結構細めなので安定して歩けないかも。完全に身長の高いスレンダーな人向けだと思い、私に履きこなせるとは到底思えない。

 

 今日のお出かけにプレゼントの黄色い眼鏡は付けてきたけど、赤いハイヒールは流石に遠慮しました。了子さんは年甲斐も無くぶーたれて悲しんでいたけど無視。貰ったお礼はちゃんと言いました。聞こえていればいいんだけどね。

 

 

 「……いい匂い」

 

 

 考え事しながら歩いていると気づかないうちに違う場所に来ていることは時たまある。歩いていた緑地公園の中心からやや離れ、誰も居ない所に出たようだ。

 私もここには初めて来た。何故か木製のベンチがポツンと一つだけ近くに設置されてる。

 

 不意に鼻腔をくすぐって来た甘くていい香りは、手に持っていた(フラワー)からでは無く見上げた木々に咲いてた(ブロッサム)から風に乗ってやって来たみたいだった。

 

 ――金木犀(きんもくせい)

 

 しっかりと丈夫な深緑の葉っぱが丸い傘を作っていて、葉と葉の間に小さくつける黄金の花弁が印象的な樹木。秋のこの時期ぐらいによく咲く花だ。実は春過ぎにも咲いている所を見た事がある。

 

 甘い香りは主張が強くとも、くどくなくて良い。

 ずっと香りを楽しみたくなるようなこの匂いに心が落ち着き、甘い香りが匂ってくる度にその花の方向をついつい探してしまう。そしてその正体を見つけると綺麗な色彩にいつも一目惚れする花だ、今更ながら私はこの花が結構好きだと気づく。

 

 

 「……っ」

 

 少しハッとする。

 

 こうしていると湧き上がってくるこの気持ちは何なんだろうか?……好き?心が落ち着く?

 私のこういう気持ちは、死んだんじゃなかったのか?

 今まで何をしても殆ど心が動かなかったのに、どうして今の私はこんな気持ちを感じているの?

 

 「……」

 

 風に揺らされた葉っぱ同士がガサガサと擦れる音が聞こえて来た。

 金木犀の花が再びいい匂いを振りまいてくる。

 

 再び訪れる沈黙の刻。

 

 ……。

 

 つまりは、そういう事らしい……。

 

 私は生きているうちに、少しずつ立ち直って来てしまっている。ずっとずっと悲しみに暮れている事が出来なかった。

 移りゆく季節を身体全体で感じ取る事ができ、その動き方が少しだけであろうとも死んでしまった心が段々と動かされているのが分かってしまった。

 

 小日向未来が隣に居なくても、空に浮かぶ雲の様子や吹き抜ける風、生い茂る木々や咲き誇る花というものから五感を通して私はこうした気持ちになってしまっていた。

 なんだかそれがとても悲しい気分になるし、金木犀のいい匂いが酷く心を落ち着かせてくる。

 

 悲しいのに、いい匂いの所為で気分が良くなってくるという共存出来ない筈のこの気持ち。

 

 それがとてももどかしい。

 

 けれど、この花の香りを嗅げばいつでも未来を思い出せそうな気もする。

 未来に抱きついている時に匂ってくるいい匂いにも似ているような気がしてくるかも知れない。そういう雰囲気になれるかもと思っておく。

 

 「……未来、私はよく分からなくても、こうして図太く生きれているようだよ……」

 

 私は金木犀の木陰に隠れるように座り、幹に背中を預けて決して涙の出ない瞳を閉じた。

 心の中だけに生きている大好きな人を思い出す為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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