戦姫絶唱シンフォギア ~Gungnir Girl's Origin~   作:Myurefial0913

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EPISODE25 比翼の鳥の巣立ち(1)

 

 

 

 

 

 すうっと息を吐き、余分な肩の力を抜く。

 脇が締まってなかったり肩肘が張ってしまうと動作に支障が出てしまう為、初心者の内にはこういう所をちゃんと意識してないといけない。それにまだ実戦で使えるレベルでも無いし、殺意剥き出しに立ち塞がる様な敵も居ない。今はただの訓練中、何も焦ることは無いでしょう。

 

 のっぺりとした壁のだだっ広い部屋の真ん中に立っている私。半径50メートル以内の位置には大小様々な的が設置されていた。

 握り締める黒鉄のかたまり(45口径)をゆっくりと持ち上げて、空いているもう一つの手でグリップを支えて構える。持ってみると分かるのだが見た目によらずソコソコ重い。装填されているのはもちろん実弾である。ただ持つだけでもズッシリして重いのに、実弾を撃った反動を考えればおいそれと片手で軽々しく扱える物じゃないとすぐに分かる。

 

 そんな物をブンブンと片手で振り回して撃てるのは経験を積んだ熟練者だけ。それでいて狙った獲物に対しては百発百中の精度を誇るのだから凄い。達人たちの本当の凄さっていうのは、実際に自分で一度体験してみないと分からないものなんだよね。普段当たり前に見ているものの中にこそ、そういったものが隠されているのはよくあるもんだ。

 

 やはりこういう所からも緒川さんたち隠密隊の異質さは見て取れる。武器を使うのはお手の物。ずば抜けた身体能力で音を殺し、緒川さんに至っては特殊な異能まで併用しだす。

 今までの任務でスムーズに事を運べていたのは、こうした方達の地道なサポートが裏であったからこそなのかも知れない。表舞台で派手に活動する私たちには実感しづらい一面だ。

 

 師匠や了子さん、緒川さんたちのすんごい実力に目を奪われがちだけど、考えてみれば二課に所属する人たちって全員どこかしら常識外れな能力の持ち主ばかりだ。……思った以上に二課って人外魔境?

 生身で爆発に巻き込まれても誰一人脱落しなかったと聞いたことがあるけど、それが性質の悪い噂話だとは到底思えない。

 

 

 

 「……くっ……」

 

 

 狙い澄ましたはずなのに照準がズレてしまうのは、集中しているからこそ感じる微妙な震えの所為。心無しかじんわりと手汗もかいてしまっている。

 震えが治まるその瞬間を感じ取る為に、私は腕を上げたまま待ち続けなければならない。そしてそれがなかなか上手く定まらないと来たから困ったもんだ。

 

 本人には腕を真っ直ぐにしているつもりでもレーザーポインターを使ってみれば一目瞭然。何度か確認の為に使わせてもらった事があるけど、それはもう見事にブレブレでした。

 

 呼吸する時に上下する胸の動きや額を伝う汗ひとつだけでも意識がそっちに向いてしまい、手元がブレて狙いが逸れてしまう。集中し続けると言うのは存外難しい。

 

 これも緒川さんから課せられた鍛錬の一つ、この訓練で獲られる物が意外とバカにならないので手は抜けない。

 

 集中力と共に忍耐力を身につけられるこの工程は武道の一つである弓道と通ずるものがある。静かな空間の中で遥か遠くにある的を見据えて矢を放ち、的を射る。それが中心であればあるほど評価は高い。

 弓道とは得物が違うだけで、今の私と状況は殆ど同じに見える。

 

 どちらも出来る限り己というものを殺した中で与えられた極限状態をどう切り抜けるかが大切。

 一連の所作の優雅さや型の美しさも求められると言う明確な違いはあるが、こと的を射ると言うことに対して必要な事自体はあんまり変わりない。

 

 的に当たれば成長している証拠でもあるし、的を外してしまえば未熟者という分かりやすい指標ももれなく付いてくる。撃てば、はっきり分かるんだ。

 

 そう考えると、スッと気持ちが落ち着いてくる。

 そう自分自身に思い込ませる。

 ここまで来ればもう少し。ただひたすらに心を凪へと導き、冷徹に。そして鋭く研ぎ澄ます。

 

 ──そして今だ。

 

 「……ッ!」

 

 バンッ!という発砲音が耳を(つんざ)き、発射時に伝わる反動の衝撃が身体全体に響いてくる。ここで目を閉じてしまうほどのヘマはしなくなったが、何度味わってもやっぱり気持ちのいいもんじゃないね。

 

 5秒もかかってないのに、ここまで来てようやく一発目。

 

 ふうっと深呼吸を小さく吐いて強ばった(こわばった)身体を弛緩し遠くを見る。

 向かい側の壁に設置されたターゲットにはマメ粒のように小さい穴がポツンと開いていた。撃鉄を起こして放たれた銃弾は今回も寸分違わず円の中心を撃ち抜いていたようだ。

 立ち止まった状態で定位置から撃つこの方法に於いては、的から逸れることも無くなってきたので、私自身にも一定の成長は見られるのだろう。

 

 さて、と一息付く暇は無い。再度銃を構えて別の的を狙い撃つ。戦場で銃弾一つ撃ったところで安心しているようじゃ生きて帰れないだろう。

 ターゲットは残り14個、残弾数と同じ数だ。モノによっては素早く動いている的もあるこの訓練。制限時間は極短く設定されており、一つも無駄撃ち出来ないこの事実が私に更なるプレッシャーを掛けてくる。油断は決して許されない。

 

 後は、唯々無心を貫く。

 

 ………………。

 

 一発、二発、三発……。

 

 体勢を変えながらバンバンバンッ、と無音な空間に銃声を響かせ、マガジン内部に弾が無くなるまで撃った。キツい硝煙の臭いが充満する中、私は撃ち終わった銃にセーフティーロックをしっかり掛けて手を下ろす。

 

 「お見事です、凛花さん。全ての的の中心に全弾命中です」

 

 隣で待機していた訓練講師の緒川さんからお褒めの言葉を頂く。確かに訓練を開始してから幾らか時間も経ち、ここでの経験が自分の血肉となって来ているのは実感している。

 

 拳銃を扱う際に胸の底から湧き上がる罪悪感や嫌悪感を押し込めるようになってからはその精度も上がってきていた。

 

 「基本的な事は教え終わりました。次回の訓練からは隠密の修行も並行しつつ、動きながら撃つ動作やペイント弾を使用した擬似戦闘をしてみましょうか。ここでは出来ないので屋外での訓練となりますが」

 

 「……はい」

 

 緒川さんの胸ポケットの携帯端末が着信を知らせる振動音を鳴らす。「少し失礼します」とだけ伝えて緒川さんは通話に出た。

 

 さて、次回からはさしずめ実戦形式というもの。オペレータークラスの戦闘訓練プログラムとしてはいよいよ大詰めになるはずだ。私が日本政府に保護された本来存在しないはずのシンフォギア装者としてではなく、拳銃の使用できる二課職員として合法的に働けるステップの一つにも終わりが見えてきた。

 

 自分が動きながら、もしくは対象が動いている状態での射撃、またはその両方とも合わさったものと言うのは、静止状態の射撃とは違って要求されるものが段違いに難しくなる。

 

 移動によって照準がズレるのは当たり前。発射時間や発射距離の予測は勿論のこと、自分や相手の移動する方向や敵との間合いの把握、遮蔽物の有無、残弾数、相手の武器の種類、射線の予測、これからの戦場の展開予想、などなど……。

 

 最大の変化は、射撃対象が物から人へと変わること、つまり対人戦を視野に入れている事だ。あなたにはこれから人を撃つ覚悟でやってもらいます、という通告でもある。

 

 そんな心がけは考慮から一旦除くとして、実戦訓練ともなると考えるべきことは本当に膨大。その上で先程の様な集中をしなければならないと来たもんだ。

 ……んー、無理。

 

 実際の戦場でそんな事を逐一考えている暇は無いので、瞬時に判断出来るくらいに落とし込まなければならない。腕力で物言わせた、煩わしさ皆無のシンフォギアで特攻出来る素晴らしさよ。

 

 軍人さんは、頭も良くて心身ともに鍛え上げないと務まらないのは事実のようだ……。馬鹿な人が戦場で生き残れるとしたらよっぽど運が良いか、よっぽど戦闘センスに恵まれたかなんだろう。

 シンフォギアを制限された状態で、果たして私はどれだけ生き残れるだろうか?

 

 かつての私は……と、要らぬことをまたもや思い返しかけた所で、神妙な面持ちをした緒川さんから次の指示が飛んできた。

 

 「っと、お待たせしました凛花さん、司令から連絡です。……今日も奏さんの実験が始まるようですね」

 

 「……分かりました。師匠にはすぐそちらへ向かうと伝えて下さい」

 

 ハンドガンを緒川さんへと返却し、射撃演習室を後にする。緒川さんは後片付けがあるのでこの場に残るそうだ。外部に銃を不正流出させない為には責任者が最後に確認するのが一番なんだとか。たとえ私にそのような嫌疑が掛かっていなくても、形式的に必要な事らしい。

 

 

 ……さて。

 

 誰も居ない基地の廊下をコツコツと歩き適合実験室へと向かう最中、私はひとり思考の海へと意識を沈めた。

 

 

 ──奏さんは、未だガングニールと適合するに至っていなかった。

 

 過去に交わされた奏さんとの確約も、もう随分と前の出来事だ。あれから半年以上は時間が過ぎていて、奏さんがどれほど実験を繰り返したかも私には分からない。

 

 約束に於ける私の勝利条件は『適合出来ずに奏さんが死ぬか、もしくは諦めるか』の二択。

 

 奏さんの適合が果たされておらず、かつ諦めていない以上、私と奏さんの間で交わされた勝負事はまだ終わっていない。

 私は複数の意味で当事者だ。奏さんに適合してほしくないと思いつつも、了子さんの下でLiNKERの改良を余儀なくされている私にはそれを最後まで見届ける義務がある。

 

 奏さんが成功する、もしくは諦める、その瞬間まで。奏さんを見殺しにするのを許す人たちは居ないのできっと死ぬ前に実験は取り止められるだろう。

 

 ……本当は、無理矢理にでも奏さんからガングニールを奪ってしまえば良かったのかもしれない。そうすれば明らかな間違いは起こらない。けれど、私はその選択を取らなかった。

 

 適合だってまだ叶っていないのだから、今からやっても遅くないはず。

 シンフォギアはその特殊性故に公共財にはなり得ないのだから一度手にしてしまえばこっちのもの。私のもつシンフォギアと同じ聖遺物のガングニールであるし、適合自体も不自由しないはずだろう。

 

 なのに、私は失ってから再び得たものをみすみす手放してしまう事に恐怖してしまったんだ。そうする事で失ってしまう様々な代償の大きさを恐れてしまったから。

 

 万事解決する手段がすぐそこにあるのに、我が身可愛さに手が出せない。

 奏さんのシンフォギアをここで今奪ったらどうなるか?

 当然、師匠たちに師事するどころの話ではなくなる。それが分からないほど、私はバカでいられなかった。

 

 私のこの選択によって失われてしまうかも知れない生命があるというのに。

 

 

 「……あぁ、弱いなぁ」

 

 

 精神的に弱すぎる、脆すぎる。

 何をしてるんだか。せっかく師匠や緒川さんから修行を付けてもらっているのに、自分を律することに関しては何も上手くいってないだなんてさ。

 

 まだ自分の選択に自信が持てないでいる。結局、未来が居なければ私は何も出来ないのか。

 そんなんじゃ、何一つ叶えられないよ?わたし。

 

 シンフォギアを無理矢理奪わずに結果を待つ事にしたこの選択の理由には確かに打算もあるけれど、全く後悔が無いわけじゃない。可能性の芽は出来るだけ摘みたかったが……どのみち結果がどうであれ、私のすることに変わりはない。

 

 今以上に強くなる。

 ただ、それだけ。かつての決心はまだ揺らいでいない。

 

 思考の海から帰還したと同時に、目の前には実験室の扉がある。果たして今日はどうなるかな……?

 

 

 

 

 

     〇

 

 

 

 

 

 適合実験を実行した回数について、天羽奏は数を数える事を止めた。二課にやって来てからどれ位経つのかなどという細かい事も忘れ、厳しい訓練と薬物の投与を繰り返す実験に明け暮れても尚、未だガングニールの適合には至っていない。

 

 寝そべる奏に器具を装着していく研究員達の動きには焦りはない。淡々と進められていくその作業は不謹慎ながらも恒例行事として認識されつつあり、準備する側も手慣れてしまうほど試行されてしまっていた。

 

 「奏ちゃん、始めるわよ」

 

 今回もカチリッという音と共に、左右の二の腕辺りから体内へとLiNKERが注入され始める。

 

 長月凛花とのいざこざを経た後に奏は適合実験の優先権を実質的に得たまでは良い。LiNKERの改良も櫻井了子の手によって成され、適合係数の数値も僅かに改善された。

 

 『……ッッ!!?』

 

 だが、それまでだった。天羽奏を取り巻く事態は一向に進展を見せていなかったのだ。

 

 『──うわあああああああ!!はあああああああ!はっ、うがぁッ!!うぅああああああアア!!!!』

 

 痛みを訴える為に叫ぶことしかできない天羽奏、その悲痛な声が今日も虚しく室内に響く。既に喉が潰れており、普通に話すだけでも掠れ声になっている奏。それでも尚全身を襲う苦しみは容赦なく奏の身体を壊しにかかって来る。

 

 何か、何か奏に対してしてやれる事はないのか?心に強くそう思う反面、翼と弦十郎にはただそれを見ているだけしか出来なかった。

 

 一体何度この光景を見て来たのか。何度自分たちは年端も行かない少女を傷つけていくのか。

 この苦しみから彼女を救うにはどうしたらいいのか。

 

 そろそろ止めさせなければ行けないのではないのか……?

 

 しかし、それは二課の悲願であるシンフォギア装者を増やす試みを放棄するのと同義であり、かつ少女の夢を侵害することでもある。

 

 どちらを取っても上手くいく気配はない。

 様々な葛藤が風鳴弦十郎の心の中で渦巻き、握り拳に力が入る。いくら奏自身が望んだ事とはいえ弦十郎の気持ちは限界を迎えつつあり、掌に食い込んだ爪の所為で血がたらりと床に滴り落ちた。

 

 「奏……」

 

 それを間近に見た風鳴翼は奏の事が更に心配になる。

 

 奏のこの姿は数え切れないほど見てきた。それこそ一番最初の実験から一回も欠かさずこの目に焼き付けてきた。

 

 天羽奏は誰よりも努力家で誰よりも強かった。翼や凛花と共に修行を重ねていくうちに奏は成長を繰り返し、翼との組み手では本気を出し合って戦ってもお互いに遜色無い程強くなった。素手による戦いの勝敗は五分五分といったところ。武器を使えば刀の扱いに分がある翼に軍配が上がる。

 凛花に関しては理解不能な速さで強くなってしまったので奏も翼も凛花には組み手自体では負けてしまうのだが、心の強さ、芯の強さという点では天羽奏が3人の中で一番だったと翼自身は思っている。

 

 適合実験の結果が思わしくないという逆境に決して屈することなく、血と汗を流しながら己の身体を虐め抜く。本当は誰よりも辛い筈なのに周囲にヒステリックに当たる事も無く、いつも自分から明るい笑顔を振りまいている。

 

 これは自分が望んだ道なんだから、と。

 

 だからこそ、いつまでも奏が報われないこの現状がひどく不愉快だった。

 

 絶対に奏は適合出来る、絶対に奏の夢は叶う。翼も奏自身もそう信じてずっとやって来たのに、現実はいつも非情で何回実験をしようとも適合する兆しが見えてこない。

 

 何故だ!どうしてだ!

 そう神に直訴してやりたい。奏の運命を握っているのが神だとしたならば、翼はその神を斬り伏せてでも私が奏の夢を叶えてあげたいと思う。そんな事をしでかした駄神を、風鳴翼は決して許すつもりは無いだろう。

 

 奏の夢を潰すような真似はさせやしない。再度そう誓う翼の視線は前にいる弦十郎からチラリと横へ動く。

 

 「……」

 

 長月凛花は動かない。

 

 長月凛花がこの調子なのはいつもの事なので翼としては既にどうでも良いと感じている。

 此奴(こやつ)が奏をどう思っているのかなども翼にとってはどうでも良くて、自分(翼)と凛花は全てに於いて水と油。相容れず、どこまでも平行線のまま。

 

 それが今まで過ごして来て翼が出した答えだった。

 

 戦闘訓練以外の空間ではぶつかり合う事が無ければ、顔を合わせる機会も少なく会話すらもしていない程。凛花に戦いでは勝てない、という点を除けば翼の意識は全て奏や任務に向かっている。

 

 敗者に甘んじてる現状には激しい憤りを覚えるが、向こう(凛花)からも歩み寄りを見せる気配が無いので、二人の距離間はこのままが最適なのかも知れない、と翼は思った。

 

 

 苦しんだままの奏を見てられなくなった弦十郎が機械を操作する櫻井了子に視線で合図を送り、奏の実験を中止させるよう命じる。櫻井了子はコクリと頷く。機械の停止音が鈍く鳴り、奏の叫び声が止んだ。

 

 酸素を求める激しい息遣いが耳に残響する。これ以上実験を繰り返せば奏の身体が壊れていくのは明らか。この場にいる誰もがそれを理解していた。

 

 「ここまでしても未だ適合ならずか……LiNKERを調整していったとは言え、やっぱり簡単には行かないものね……」

 

 そろそろ奏は肉体的にも精神的にも限界で、潮時かもしれないと櫻井了子は考えていた。

 

 弦十郎と緒川慎次を除き、周囲には黙ったまま密かに行われた長月凛花によるLiNKER改良の成果は櫻井了子自身も強く実感していてる。装者に対し負担は少なく、効果は大きいというデータも現実に出ており、これ以上の改良はもっと大々的にやらなければならない程だろう。

 

 被験者がたった2人だけと言う不安もあったものの、LiNKERに不備を無くす試みは凛花の手助けによって無駄にはならなかった。

 

 これでようやく上手くいってくれる。

 そう期待を込めて実験を敢行した筈だった。

 

 そんな中で臨んだ今回の実験でも失敗。適合出来ない原因はLiNKERの不備にではなく、やはり天羽奏自身にあると結論付けられる。

 聖遺物を起動し得る適合係数を奏自身が引き出せなかったと言うほかなく、シンフォギアに出来る聖遺物がガングニールの他に無い今、聖遺物と人との相性問題を解決する術がない。

 また問題をLiNKERの性能に戻したとしても、天羽奏が成功しない限りF.I.S.への委託も出来ないので解決不可能。実績のない薬品に用は無いのだ。フィーネとして米国政府に譲歩を引き出させるのにも限界があり、裏工作でチマチマやっている暇はもうない。

 

 ただでさえ優秀なシンフォギア装者を1人失ったばかりなのだ。慎重になっているF.I.S.から確実な協力を得るにも出来るだけ遠回りはしたくない。

 

 (出来ればここで決めたかったのだけれど……)

 

 雲を掴むような奏の適合実験を打ち切るには十分な手札が揃いに揃っていた。

 

 落胆した櫻井了子が判決を言い渡すその直前、実験室内でガシャン!と奏の寝ていた寝台が奏によって倒された。研究者たちにどよめきが起きる。

 

 幽鬼のようにのそりのそりと動き、顔を上げた奏の手には緑色の液体が入った注射器が一つ。いつの間にか固定具は外されており、ニヒルな笑みを浮かべた奏は躊躇せず首筋にそれの先端を当てる。

 

 「馬鹿者ッ!よせッ!!」

 

 弦十郎は大声で叫ぶ。かつて奏は焦りからLiNKERの二重投与をした事がある。

 LiNKERを手にした奏はその時の禁忌を再び犯そうというのだ。

 

 『……ここまでだなんて、ツレねェ事言うなよ……』

 

 しかし奏は止まらない。 

 弦十郎の抑止は届かず無情にもカチッ、という音がする。既に賽は投げられた。

 

 「はッ……!」

 

 久しぶりに見た奏の狂気孕む行動に思わず翼は息を飲み背筋が凍りついた。適正使用限度を超えた2度目のLiNKER使用の末路は一度この目でもしっかり見て記憶している。奏が目を覚まさない悪夢がまたやって来るというのか。そんなのは嫌だッ!と翼の心は不安で押し潰されそうだった。

 

 『パーティー再開と行こうや、了子さん……!!』

 

 「あっ……あ…………っ」

 

 櫻井了子はいつもの櫻井了子らしさも無く、奏の鬼気迫る表情に圧倒されて言葉を失っていた。

 

 素直に治っていた以前とは違い、最近は劇薬の長期使用による軽度の依存症を発症してしまっていた。LiNKERの副作用を抑え、健康を維持する為に依存症を抑える薬を飲まなければならないと言う負の循環に陥っている。

 奏の肌はボロボロに荒れ、目の下には酷いクマが出来て消えなくなった。弦十郎の恐れていた薬漬けの地獄が現実となってしまったのだ。

 

 今発症している依存症の度合いが軽度なものに留まっているのがせめてもの救いだ。上手く行けばまだ引き返せる。実質的な負担を凛花に分散させていなければもっと重症になっていた事だろう。

 幸いにして、凛花の方は全く問題がない。

 

 「……師匠、それから了子さん」

 

 誰もが言葉を失い動けずにいた時に、この場にいたもう一人の当事者、長月凛花がようやく口を開いた。

 

 「……私が昔この場で言った事、覚えていますか?」

 

 その言葉が動揺しきった心にズシリと突き刺さる。

 櫻井了子、弦十郎には勿論心当たりはあった。忘れられる訳もない。

 

 それは、長月凛花が二課にやって来て間も無い頃の事、奏の実験を見た凛花が『そう遠くない未来にシンフォギア装者となった天羽奏がノイズとの戦いで生命を落とす』と言った事。

 

 あれから時間が経ち、来た当初は短かった凛花の髪の毛も背中の中ほどまでに届いている。脳裏に焼き付いていた当時の面影と、その容姿の変化とが大人二人に対して時間の経過を強く実感させた。

 

 「……止めるのであれば、今のうちですよ」

 

 二人の返答も聞かずに全員に背を向けた凛花は部屋から退出する。

 

 その場には何も言い出せないまま凛花の背中を目で追う櫻井了子と風鳴弦十郎、そして立ち去る長月凛花をキツい顔つきで睨み付けていた風鳴翼が沈黙を保ち佇んでいた。

 

 

 

 

 

     〇

 

 

 

 

 

 そろそろタイムリミットか。櫻井了子によってストップをかけられるのも時間の問題だと、そう奏も薄々感づいていた。

 2つ目のLiNKERはやはり身体にとって毒でしかなく、奏の身体はいつまでも震えが止まらない。加えてつらい倦怠感と吐き気は絶えることが無いので、全く持って嫌になる。本当に地に足がついているのか、平衡感覚すら覚束ない。

 

 だか、それは全て自ら望んで取った選択肢だ。そこに反省も後悔も存在しない。

 

 (……凛花、さん……?)

 

 話しかけなければ喋ることはない寡黙な彼女をチラリと視線で追う。

 メガネの奥からこちらをジッと見つめているだけで身動き一つしない彼女がなんと奏に背を向けて出口へと歩き出したのだ。

 

 櫻井了子や弦十郎が何やら凛花に話しかけているようだったが、その声は意識が朦朧としている今の奏の耳に届いてこない。自分の事で手一杯で、周囲の話し声など殆ど聞いている暇じゃなかったからだ。

 

 しかし、長月凛花のその行動は確かに着火剤となった。

 

 長月凛花が完全に出ていったのと同時に室内全体に異常事態を伝える警告音が鳴り渡り、櫻井了子の顔色が驚きのモノに変わった。

 

 『適合係数が飛躍的に上昇……!?第一段階、第二段階突破!続いて第三段階……!!』

 

 「──ッ!?」

 

 点火した命の炎は、まるで奏の身体を焼き尽くすように全身に奔っていった。

 身体が熱く、喉元が苦しい。何かが込み上げてくる。

 

 「うっぷ、うっ!!……ゲボぁっ……ごはっ!!」

 

 奏の口から出てきたものは、血。

 咄嗟に手で抑えようとしても抑えきれない程の大量の血液が床へと吐き出される。

 

 ──オーバードーズ。

 LiNKERの過剰投与による副作用は確実に奏の全てを蝕んでいく。

 

 

 『くッ……!!何をしている!?中和剤だッ!体内洗浄をして無理矢理にでも掻き出すんだッ!!』

 

 

 急げ!と怒気を孕んだ弦十郎の音声が実験室内に強く響く。

 呆然としていた研究員一同が慌ただしくロンダリングの準備に取り掛かる中、奏は口に手を当てて、止まらない血を必死に抑えた。

 

 そんな状態でも、奏の脳内は加速した世界で思考を張り巡らせていた。

 あんたのターンになるか、あたしのターンのままか、今その瀬戸際にいるってことだが、もう勝ったつもりでいるのか……?フン、舐められたもんだ。奏はそう悪態をつく。

 

 喧嘩をしてる訳じゃないが、翼と同様に特別深い交流があった訳でもない。

 もちろん翼とは違い、奏の方からは歩み寄ろうとしていた。思い切って話しかければちゃんと返事もするし、普通にコミュニケーションも取れる。けれど、思った以上に凛花のガードは固く、社交的な方だと自覚する奏であっても解きほぐすことが出来なかった。

 

 凛花のことは嫌いではない。むしろ仲良くなってみたい人物ではある。

 短い期間でも凛花のことは少し分かったつもりだ。

 

 凛花は自分にとって必要が無いものや興味を失ったものはとことん切り捨てるが、逆に言えば必要なものであれば率先して選び取り、効率的に動く。 

 きっと、さっきの退出は奏が切り捨てる対象になったことを表す。

 

 けれど、それ以外にも何となく感じるものがある。

 

 きっと凛花は身内と判断した者には情に厚いはずだ。人間関係に堅い壁を持つ凛花が、弦十郎や櫻井了子、緒川慎次たちを信頼し自ら教えを乞う立場に立ったのだから誰に対しても薄情である訳じゃないだろう。奏がそこまでの関係になれてないのは奏の中に必要とさせるものが無いのかも知れない。 

 

 もしかして愛想つかされた?と考えてみても、そもそも無愛想な凛花から愛想なんて向けられた覚えはないが、今まで築いた関係を一方的に壊されたくなかった。

 凛花が悪い人間でないのは知っているし、抜け落ちた表情の向こうに何があるのか興味が湧く。ひた隠しにしているミステリアスな一面を剥ぎ取る、いつかそんな日が来てもいいだろう。。折角仲良くなりかけた縁だ、どうせ二課にいるならば無駄にしたくない。

 

 だから、奏はまだ負けを認めていない。

 

 自分は負けず嫌いだ。頑固で諦めの悪い奴だ。そう自覚してるからこそ絶対にこの勝負には勝つし、凛花と分かり合う為に関係を続けていく。

 そして何よりもシンフォギアに適合しない訳には行かない。それがここ(二課)に来た一番の目的なのだから!

 

 (あたしのノイズへの執念は、こんな所で尽き果てる程ヤワじゃないんだッ……!!だから、さっさとその力をあたしに寄越せッ!!)

 

 ──ガングニールッ!!

 

 そう心の中で奏は強く叫んだ。

 

 「……ッッ!?」

 

 「うわぁっ!!」

 

 突然、轟ッ!と奏から謎の衝撃波が放たれ、周囲の研究員達を根こそぎ張り倒した。野太い悲鳴が多数聞こえてくる。

 

 『なッ……!?』

 

 力が漲る。滾る。溢れだしてくる……!!

 今までに無かった感触に奏の思いはドンドンと高ぶっていく。

 

 「……あは、アハハ、あはははは!……ついに、ついに手に入れたぞッ……!!!」

 

 

 感動の余りに、心の底から笑いが込み上げてきた。

 麻薬のような快感と抑えきれない興奮が全身を駆け巡り、奏は衝動のまま血塗られた掌をガラスに打ち付ける。壁を伝う血液は意図せずして、驚愕に固まる翼の顔面を塗り潰していた。

 ついに狂ったか。そう錯覚せざるを得ないこの状況に誰もが言葉を失ってしまう。

 血迷った眼をギラつかせて立ち上がる奏の様子を一同が見守る中、ついに変化が訪れた。

 

 

 『───Croitzal ronzell gungnir zizzl』

 

 

 奏の口から出てきたのは、歌。

 シンフォギアを起動させるために絶対に必要となる唯一の鍵、聖詠が奏の口から紡がれた。

 

 力を持つ歌によりシンフォギアと共鳴を果たした奏の身体はシンフォギアのペンダントと共に光輝き、やがてその真の姿を現す。変化は一瞬だった。

 

 

 「これが奴らと戦える力……!!」

 

 

 全身を覆う朱色の意匠は奏を情熱さを表すのに相応しい鎧であり、ダラりと垂れ下げられた腕部の大きいアーマーパーツが力強さを物語る。スラッとした脚部には黒いブーツが施され、頭部のヘッドギアからは奏の強い意志を表す二本角の先鋭さ見て取れる。

 翼のそれとは違うが、そこには確かに機械仕掛けの趣きが現れており、それはつまり奏がついに適合者の境地へと至ったことを証明している。胸のマイクユニットのコアが何よりもその証拠だった。

 

 

 「──あたしのシンフォギアだッ!!!」

 

 

 新たなるシンフォギア装者の誕生。そう、そこには間違いなくシンフォギアの鎧を纏った天羽奏が大地を踏みしめて立っていた。

 血反吐に塗れた自分の掌を握り締め、奏は堂々と宣言する。奏はガングニールのシンフォギアに自分が適合者であると認めさせる事に成功したのだ。

 

 それは翼のように偶然から始まったものではなく、自ら望んで地獄へ落ちて血を吐きながらも勝ち取った力。他でもない天羽奏自身が長きに渡る苦しみの果てに手に入れた力。一体誰がそれを否定出来るだろうか。

 

 翼は目の前に立つ奏を息を呑むようにじっと見つめていた。

 

 非現実を現実に変え、意志を曲げずに貫き通した奏を素直に称賛する。信じられないような出来事に呆然としていても翼の心はどこか喜び、躍っており、これから奏と一緒に戦えるんだと嬉しささえも感じていた。

 

 奏はやっと夢への第一歩を進み始めたんだと、感動した。

 この瞬間にやっと奏は報われた。それだけで翼は踊り狂いそうだった。

 今すぐにでも奏の元へと駆け出したかった。

 

 

 けれど、世界というのはいつも唐突で、理不尽で。

 警告を知らせるサイレンはそんな喜びさえも残酷にかき消してしまう。

 

 「あぁあ?……あぁ、これは……フフッ」

 

 適合できず辛酸を嘗めていた頃に何度聞いたか分からない警告音。それが何か分からないほど奏は無知じゃない。

 

 ──ノイズの出現。

 あまりに急すぎる怒涛の展開に、ただ一人天羽奏を除いてその場にいた誰もが動けないまま硬直していた。

 

 丁度いいじゃねぇか。

 そう言わんばかりに奏は暗く不敵な笑みを浮かべ、翼達に背を向ける。

 

 『か、奏……!?一体どこへ行くの!?』

 

 「決まってんだろ、翼。復讐するんだ……!!」

 

 復讐の時は来た。のそりのそりと歩く奏の足取りは実験時の副作用の所為でいつも以上に重い。けれど確実に一歩一歩踏み締めて歩く事の出来る彼女は、ただ一人で実験室を後にした。

 

 

 警戒態勢が敷かれた二課の廊下は最低限の明かりしか灯っておらず、とても薄暗い。しかしそれでも誰かが通りかかればそれに気付くぐらいの明るさではあるので、すれ違ったとしてもぶつかるようなことは無くスムーズに移動することが出来るだろう。

 

 だから、奏の前に立ち塞がる人物を見間違うことは無かった。

 

 「──奏」

 

 「……んあ?……弦十郎のオッサン、何か用か……?」

 

 隆々とした筋肉質の剛腕を組み、戦地に赴くかのような鋭い顔をした弦十郎は奏の名前を読んだきり黙りこくる。強い眼差しは奏の眼の一点を見つめていた。

 焦れた奏は弦十郎の考えていそうな事に当たりをつけて先に問いかけて牽制する。

 

 「……まさか、今更止めるだなんて言わねぇよな?ようやくここまで来たんだ。こっから先はあたしの好きにさせて貰うぜ」

 

 シンフォギアに適合してノイズを倒す、それが奏の決めた生き方だ。その手段が手に入った今、止められては困るというもの。しかし弦十郎は何も話さないで奏の方を鋭利に睨みつけるだけ。

 問答する時間すら惜しい。黙っているままじゃ話にすらならないと感じた奏は弦十郎の事を無視して、その横を通り過ぎる事に決めた。

 

 すると、奏と弦十郎が互いに背中を見せあうほど離れた時になってからようやく弦十郎は喋り始めた。

 

 「……後発で翼を応援に出す。お前のその力は……お前のその復讐は、お前の生命があっての代物である事を、ゆめゆめ忘れるな」

 

 「……あぁ、分かってるさ」

 

 お互いの視線が交わる事は無い。それぞれの進むべき方向へと向けられていて、話が終わると二人はそれぞれの道へと歩き出す。

 決して二人はお互いを蔑ろにしているわけではない。寧ろそうではなくて、戦うことに関して十分にお互いを信頼している。弦十郎は鍛錬と努力を積み重ねてきた奏の実力を疑ってなどいない。だからこそ、背を向け合った二人の間にそれ以上の言葉が交わされることは無かった。

 

 これは決別ではない。目指すべき場所は一緒だ。

 

 ――必ず生きて帰ってこい。

 その真意を奏はきちんと受け取った。

 

 

 

 

 

     ○

 

 

 

 

 

 昼下がりというにはまだまだ早い時間帯。

 地下深くの二課本拠地を飛び出して一番に拝んだのは、頂点へと昇っていく太陽だった。

 

 「陽の光はいつぶりだ……?」

 

 思わず伸ばした手は太陽を掴むことは無いけれど、確かな力はここにあると再確認する。

 

 

 奏は己の直感に従ってノイズのいる方向へと駆け出した。何となくわかる、で恐ろしいほどに的中する奏の直感スキルは、二課からのアシスト無しで現場へと到着できてしまう。

 その超能力染みた直感は己のノイズに対する執着心が生み出したものであり、本人は知らず知らずのうちに活用していた。

 

 到着したその場所は、とある東京の市街地。

 人の往来激しいオフィス街に突如として現れたノイズ達によって既に幾らかの犠牲者を出してしまっていた。

 

 ノイズによる破壊活動はそれだけに留まらない。

 破壊された道路やフロントガラスの割れた自動車、脱線した電車やモノレール、火災の起きてるビル群など、人間にだけでなく周囲の環境にも被害が出ている。

 例えば乗用車の運転席、例えば歩道の脇、例えばガラスの向こうの机の近くなど、恐らくはそこに人間が居たのだろうと思われる炭の塊がそこかしこに見られる。

 

 酷い被害を被った一都市の光景。

 そんな惨状のなか天羽奏は、一部陥没した道路の中央線に立ち、ノイズの密集する目の前を一望するように眺める。

 

 「こいつァ、大量大量。どうもこんにちは、ノイズの皆々様……」

 

 他愛も無い挨拶。

 家族の仇がそこにいる。あの時は立ち向かえなかった敵に今自分は相対している。そしてノイズに対抗する力もこの通り得ることが出来た。

 

 ならばどうするか。そんなもの、とっくの昔に決まっている。

 

 (ガングニールなんだから槍の聖遺物って訳だ。だったら……)

 

 「槍ぐらい出せて当然だろっ!!」

 

 槍の出し方はアタマの中で自然にすっと浮かび上がって来たのを実行するまでのこと。何も難しくもない。

 

 両腕のアーマーを繋ぎ合わせ、蒸気を噴出させながら次々に形状を変化させてアームドギアを展開。パーツの一部に過ぎなかったそれは瞬時に幅広長身の槍へと生まれ変わる。

 

 手に取った感覚は見た目に反して軽かった。振り心地も悪くない。

 意識が逸れて隙をみせたなと、これみよがしに突進してきたナメクジ型ノイズ達に対して槍を振ってみる。

 

 すると切り裂かれたノイズは無様にもその身を炭へと堕とし、物言わぬ物体へと相成った。

 

 「意外とちょろいもんだな」

 

 こんな程度なのか、と落胆することは無く、寧ろ気持ちは高ぶって来てしまう程。

 

 思わず笑みがこぼれる。

 ついに仇敵を撃つ事が出来るぞ!その事実だけが奏を動かしていた。

 

 「覚悟しとけよ、ノイズ共!!てめぇらを倒すだけにあたしはここ(戦場)へ帰って来たッ!!」

 

 

 

 『私ト云ウ 音奏デ 尽キルマデ』

 

 

 あぁ、これは歌だ。私の歌だ。

 確かに歌が思い浮かぶ。その事実に奏は気分が高まる。

 

 あれほど待ち焦がれたノイズと戦うための歌が自分の胸の内から溢れだしてくるし、それに応えるかのように奏のガングニールは数段と出力を上げ始めた。

 最初からクライマックスで行く。心に宿った生命の炎が燃え尽きる、その時まで。

 

 ――こっちはもう準備完了だぜ……?

 

 中段に長槍のアームドギアを構えた奏は言った。

 

 

 「……今からお前らを、殺すッ!!」

 

 

 

 

 

 


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