シン世紀エヴァンゲリオン アイ   作:ケプラー星人

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第九話 Aであるシンジ Gであるアスカ Lであるレイ

 

 白銀の獣毛に包まれた強固な肉体、敵の全てを噛み砕く、鋭く尖り切った牙、標的を威圧する狂気の瞳。四足歩行で縦横無尽に駆け回り、三体のエヴァンゲリオンに狙いを定めさせない。

 

 四つの獣足から長く伸びる獣爪は、周囲に在るものの強度を無視して全ての無惨に切り裂く。

 

 

 ―――『第六天使』 ―――

 

 

 白き犬獣型の六番目の『災厄』は荒れた山脈を飛び回り、獲物である三体の巨人達を翻弄する。獣の素早き動きに荒れ果てた大地は更に抉れ、荒れて行く。

 

 紺色の巨人が巨大な獣に対して斬撃を繰り出す! 横軸に放たれた斬撃を白き獣は宙高く跳び、回避する。

 

 しかし、全身水色の巨人が獣の着地点に陣取る。巨人は両手に装備している片手斧を交差させるように落下する『第六天使』目掛けて振り下ろす!

 

 

 

 ガキッ!

 

 

 

 白き獣は二刀の斧を巨大な口で噛み付いた。着地し、素早く斧から口を離すと前足を振り、獣爪で水色の巨人の右脚に傷を付ける!

 

 

 

 

 「ガルルゥァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」

 

 

 白き獣が突如悲鳴にも似た雄叫びを上げる。獣の白き左脚からいつの間にか夥しい青き血が流れている。

 

 

 

 バァン!

 

 

 

 大きな銃声が聞こえると、今度は獣の右脚から血が吹き出し、地面を青色に染める。『第六天使』は表現出来ないような雄叫びを上げ、見境なく暴れだす! 三発目であろう銃声が鳴り響くが、白き獣には命中しなかった。

 

 

 二体の巨人と獣が戦闘を行っている場所から離れた場所でオレンジ色の巨人がスナイパーライフル状の兵器を捨てて、立ち上がると、勢い良く崖から滑り落ちる! 猛スピードで戦闘地帯に近付くと、その勢いを利用して、天高く飛翔する!

 

 

 水色の巨人が二刀流の連撃で、白き獣を後退させると、獣の後ろから紺色の巨人がGナイフで白き獣の尾を切断する!

 獣が唸り声を上げ、動きを止めると、二体のエヴァンゲリオンは急に後ろに大きなバックステップで跳び跳ねる!

 

 

 

 

 ズン!

 

 

 

 

 「ガルルォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」

 

 

 

 白き獣は悲鳴を上げ続けた、背に漆黒の槍を突き立てられたからだ。白き獣の動きは鈍くなり、遂には倒れ込んだ。

 

 このチャンスを逃さないと言わんばかりに水色の巨人が二刀の斧を獣の首につき付ける。

 

 

 

 

 ザンッ!

 

 

 二つの刃が交差する瞬間、獣の首が静かに地に落ちる。青き血が凄まじい勢いで地面を青色に濡らしていく。

 

 

 三体のエヴァンゲリオンはその場に佇む。勝利の余韻を感じているかのようだ。

 

 暫くして、オレンジ色の巨人が獣の亡骸から漆黒の槍を抜き、帰途しようとした瞬間―――

 

 

 

 『第六天使』の斬られた首の傷口から夥しい無数の触手が生えて来た! 無数の触手は徐々に長くなり、三体の巨人に襲い掛かる!

 

 

 

 オレンジ色の巨人はバックステップで触手を回避するが、水色の巨人と紺色の巨人は油断したのが、足を絡め取られる。『第六天使』の触手は二体の巨人を軽々と高く持ち上げると一気に振り下ろす!

 

 二体のエヴァンゲリオンは激しく地面と衝突し、地面には小規模のクレーターが作られた。

 

 何度も何度も、巨人達は叩き付けられ、強固な特殊装甲が歪んでいく。

 

 しかし、無数の弾丸が、無数の触手に着弾すると二体のエヴァンゲリオンは触手から解放され、地面に着地する。

 

 オレンジ色の巨人は素早くスライディングし、変形した白き獣の腹下に潜り込む!

 

 

 水色と紺色の巨人は動きを止めた、勝利を確信したからだ。

 

 

 

 その確信通り、『第六天使』の身体は長く鋭利な刃により貫かれ、程無く真っ二つに切断された......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 **************

 

 

 

 仮そめの支配者達はいつものようにモニター越しで陰謀を張り巡らせる、『神』のために...... その席に林原結希はいない。

 

 

 

 

 

 「『第六天使』...... 倒したようだな...... 」

 

 

 「『イブ』の子達もあと四体... 『U』計画は実行出来るのだろうな? 」

 

 

 

 

 「抜かりはないはず。そのために『最強の天使』がいるのだからな」

 

 

 「もし失敗せねば...... 」

 

 

 

 「回収するか? 『クリシュナの矛』を...... 」

 

 

 

 「それはならぬ! それは僭越行為...... 『神』達の逆鱗に触れる。」

 

 

 「『TG計画』成功のためにも『クリシュナの矛』はまだ必要ない...... 」

 

 

 「それにしても林原結希...... 『TG計画』まで首を突っ込もうとするとは...... 娘の管理位はしてほしいものだな。」

 

 

 仮そめの支配者達の視線が結希の父親に集まる。しかし、林原結希の父は微動だにしない。

 

 

 「ふふ...... あの娘は管理など出来ぬ。器が自分より大きな者の管理等な...... 案ずるな、皆。どうせ『TG計画』は『U計画』なしでは実行出来ぬ。皆で悠々と待とうではないか......

 『福音の時』を...... 」

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 **************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天上ウル帝国――― 旧ドイツ東部から北は旧フィンランド南部、南は旧トルコ、東は旧ロシアのエカテリンブルクまで股がる巨大国家である。経済規模は世界25位の中堅国だが、先の世界大戦で勝利を収め、世界秩序の一端を担っている。尤もそれは作られた秩序、天上ウル帝国もエヴァンゲリオン所持国家の例に漏れず、世界連盟、そして『観測者達』の強い管理下にある。

 

 国教はこの世界の模範的宗教である『パルス教』の『天上派』である。

 『天上派』とは『パルス教』の神である『神アスカ』が天上――― 宇宙からこの星に降り立ったとする『パルス教』の宗派である。

 『天上派』は世界人口の8割を占め、実質的な地球宗教となっている。

 『天上派』は嘗ては『神アスカ』が地上から生まれたとする『地上派』と覇を争っていた。しかし、二度の世界大戦で『天上派』諸国が勝利したこと、そして仮そめの支配者達の『思惑』もあり『天上派』が世界の規範となった。

 

 

 その『天上派』が支配する国で、政府官邸の凌ぐ、権力を保持しているのが天上ウル帝国の首都南部にある、アマノン・天上ウル帝国支部である。

 鬱蒼と生い茂る原森林の奥深くに、帝国の深部は存在する。血のように紅い不気味な建屋が大帝国の真の力の源泉である。とは言え本部と同様、地上にある建屋は飾りであり、支部の司令部は地下深くにある。

 

 今、天上ウル帝国の秘中の秘であるアマノン支部司令部より、更に地下深くに存在する世界でも極一部の人間しか知らない――― 『超極秘内容』――― を『第六天使』を倒したエヴァンゲリオン五号機、六号機、八号機パイロットがアマノン・天上ウル帝国支部・支部司令官マリク・メーリングと共に目にしていた。

 

 

 

 「これが...... 」

 

 

 「で、デカいわね...... 」

 

 

 

 「これが...... 第一、第二の生命の種

 ―――『アダム』と『リリス』――― 」

 

 

 三人のエヴァンゲリオンパイロットと支部司令官に眼前にあったのは、巨大な白色の少女の頭とその頭の額に生えているエヴァンゲリオンに酷似した巨人の姿だった。壁、天上、床、全てが赤色一色の異様で広大な空間に『第一の生命の種』と『第二の生命の種』が、巨大な鎖に巻かれ、置かれていた。

 

 

 「この『アダム』と『リリス』...... 神話のアダムとリリスとは別物なのか? 」

 

 

 「恐らく... ね。大方、『カレルレン達』『観測者達』得意の情報捏造でしょうね。尤も神話の方のアダムとリリスには『モデル』が居たみたいだけどね」

 

 エヴァンゲリオン五号機パイロット、燃山マサルの応答に、マリク・メーリング支部司令官が答える。マリクは支配者達が気に入らないのか、淡々と真実を話す。

 

 

 「この『アダム』と『リリス』が『イブ』と『カイン』がこの星に来る遥か以前に地球に居たのは確かなのか? 」

 

 背が高く、がたいが良い強面のエヴァンゲリオン六号機パイロット、ガドウ・シャブルが続けて質問をぶつける。

 

 

 

 「ええ、それは確かのようよ。とは言っても全ての生命の種は『カレルレン達』が持ち込んだんだけどね」

 

 

 

 「あのエヴァンゲリオンみたいな巨人が『アダム』で、首だけの赤い瞳の少女が『リリス』よね? 何故中途半端に融合しているのかしら? 」

 

 

 「その通りよ、タニア。巨人の方がアダムで、少女の首がリリス。融合した理由は解らない...... けど過去のインパクトが関係しているらしいわ」

 

 

 

 「まあ、いいわ。要はこの『第一の生命の種』『第二の生命の種』に近付けさせなければ良いのね? 『天使達』を...... 」

 

 エヴァンゲリオン八号機パイロット、タニア・那間・翔子が自信に道溢れた笑みを浮かべ、融合した生命の種を見上げる。

 

 

 

 

 「ふん、戦場で育った俺達にはお似合いのミッションだな」

 

 

 

 「何だろうがぶち殺すだけ。敵はな...... 」

 

 

 マサルとガドウが続けて、自らの心情を発し、三人揃って『融合せし神』を見上げる。六つの瞳は死をも覚悟しているかのようだ。

 

 

 

 

 

 「さて、帰りましょうか。三人共、自分の責任の重さを再確認出来たでしょう」

 

 

 マリクの掛け声で、一同は生命の種達に踵を返す。タニアが唯一の扉に向かおうとし、振り返ると、目の錯覚なのか、居るはずのない存在が視界に入った。

 

 

 

 

 水色の髮と赤い瞳を持つ色白の少女がタニアを見つめていた。

 

 

 

 「み、皆! 誰が居るよ! 」

 

 

 一同がタニアの指の向けた先を見るが、人間の影も形も見当たらなかった。

 

 

 「誰も居ないだろ? 寝ぼけてんのか? 」

 

 「ち、違う...... た、確かに、居たのよ! 青い髮の瞳の赤い、変わった服を着た女の子が...... 」

 

 

 「タニア、貴女、疲れているんじゃない? 早く帰って休みましょう」

 

 

 

 腑に落ちないタニアの背中を押しながら、一同は赤い不気味な部屋から出て行く。

 

 その様を水色の髮の色白の少女は『アダム』の頭の上に乗りながら空虚な瞳で見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 『あなたが作った世界、なんとか残して...... あげたい』

 

 

 

 

 

 『碇くん...... 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シン世紀 エヴァンゲリオン アイ

 

 第九話 完

 

 

 

 

 

 

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