シン世紀エヴァンゲリオン アイ   作:ケプラー星人

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第十四話 集結

 

 青き大空に豪々と響き渡る金属音は止むことはない。超重量級の輸送機二機は徐々にこのアマノンバルバリア支部の滑走路に向かって来る。

 

 滑走路の片隅に佇むエヴァンゲリオン四号機パイロット、シェリア・シャルウェルツェンの美しく長き髪が強風に乗せられ、疎らに舞う。

 

 シェリアの腕を掴み、強風に身を屈ませるエヴァンゲリオン七号機パイロット、セトナ・ブライトは不安を口にする。

 

 「シェリ姉、他のパイロット達と上手くいくかな? なんだか違和感あるなぁ」

 

 「セトナは結構人見知りしますわね。大丈夫、私が付いてますわ」

 

 

 

 「二人とも優秀なパイロットだ。セトナ、心配することないぞ。うん、ないぞ、ないぞ」

 

 

 アマノンバルバリア支部司令官、クリス・ゲルバルがセトナを安心させようとするが、セトナはシェリアの後ろに隠れたままだ。過去の境遇も関係あるのだろう。

 

 超大型輸送機は滑走路に降り立つ。その衝撃風下では人間は立っているのがやっとだ。金属が激しく擦れ会う音は周辺にいる全ての生物を不快にさせる。輸送機はブースターを逆噴射させ、徐々に減速し、続けて後続機が隣の滑走路に着陸する。

 

 

 二機の巨大輸送機がその動きを止めると、一機のヘリコプターがシェリア達の近くに着陸しようとする。風圧でシェリアのスカートが捲れ吹き上がる。

 

 

 「ついに来たか...... 五号機と六号機。そしてパイロット...... 」

 

 クリスが呟くとヘリコプターは着陸し、二人の男が降りてクリス達の方へ向かってくる。

 

 

 「ようこそ、このアマノンバルバリア支部へ。応援感謝しますよ」

 

 

 「エヴァンゲリオン五号機パイロット、燃山マサルです、此方こそ宜しくお願いします」

 

 

 「おっ! イケメン! 」

 

 セトナが叫ぶとクリスは咄嗟にセトナの口を塞ぐ。

 

 「エヴァンゲリオン六号機パイロット、ガドウ・シャブルだ。宜しく」

 

 

 「あら、素敵な殿方ですわ! 」

 

 

 「ええ!? シェリ姉、ああいうゴツい男がタイプ? 」

 

 燃山マサルとガドウ・シャブルは困惑し、顔を赤くする。

 

 「こら、二人とも挨拶しないか」

 

 

 「ご紹介遅れましたわ、私はエヴァンゲリオン四号機パイロット、シェリア・シャルウェルツェンですわ。どうぞよろしくお願い致しますわ」

 

 「あたしは七号機パイロット、セトナ・ブライト、よろしくね! 」

 

 

 「長旅の疲れを癒したいところだろうが、早速ミーティングに入ってもらう。『ウラノス』が『イブ』に到達するまであと3日、それまでなんとか連携を取れるようにしておきたい。さあ、四人ともこっちへ」

 

 

 

 

 

 

 ***********

 

 

 

 

 

 

 

 

 「エヴァンゲリオン八号機パイロット、タニア・那間・翔子よ。宜しく! 」

 

 

 「...... 」

 

 獣の瞳を持つ銀髪の少女、エヴァンゲリオン初号機パイロット、林原愛は八号機パイロットから差し出された手を掴むことはない。黙って見知らぬ『異物』を睨み付けるだけだ。

 

 「こいつはおかしいから無視していいわ。わたしは苟アリス、三号機パイロットよ、よろしくね」

 

 「僕は二号機パイロット、黒空詩丹、よろしく頼むよ」

 

 順番に二人と握手を交わすと、タニアは愛を見つめる。愛の着ていた服が気になっていた、ネットでもまず見ない変わった服だがどこかで見た気がしたからだ。

 

 「そういえば愛、今日は変わった服を来てるわね。どこにも売ってないわよ、そんな服」

 

 「どうでもいいでしょ、聞かないで」

 

 真理谷ルイ戦術指揮官が指摘すると、いつも通りの態度で愛は返す。するとタニアは飛び跳ねて愛に近付く。

 

 「そうよ、思い出したわ! あの子! あの子よ! あの『種』の部屋に居た青髪で肌の白い、赤い瞳をしたあの女の子が着ていた服そのままよ! 何故貴女が来ているの? ねえ! 」

 

 タニアが食って掛かると、愛は片手で軽く払う。愛の表情は歪むばかりだ。しかしタニアは更に愛に詰め寄る。

 

 「ねえ、その服どうしたの? ねえ! 」

 

 

 

 「な、なんなのよ! もう! 貰ったのよ! 誰からはいう必要ないわ」

 

 

 「貰った? あの誰も入れないはずの部屋にいた人間の着ていた同じ服を? 」

 

 「はい、はい、無駄口はそこまで。ミーティング始めるわよ。緑ちゃん、バルバリア支部と繋いで」

 

 それ以上の詮索は許さないと言わんばかりにアマノン統括司令官、林原結希は二人の会話を遮った。

 

 

 「林原司令官、繋がりました」

 

 

 「林原司令官、バルバリア支部司令官クリス・ゲルバル、参上しました。今作戦の使用エヴァンゲリオン全機体及びパイロット、集結しました。ミーティングを開始してください」

 

 

 「いいわ、まずは情報局から。ジャリコちゃん、始めて」

 

 巨大モニターにアマノン情報局局長、ジャリコ・クライハムの姿が写し出される。ジャリコは坦々と情報を伝える。

 

 「当初の予測通り『ウラノス』『カミムス』ともにあと約84時間で本部と『イブ』に到着すると思われます。あと情報局の調査で判明しましたが、この二機体はやはり『天使』に乗っ取られていました。『天使』一体で素体二体を操っています、ウイルス型の『天使』です」

 

 「今より『ウラノス』『カミムス』を『第八天使』と認定する。いいわね? 」

 

 林原司令官の言葉に皆は緊張感を高める。

 

 「しかし、『天使』一体で素体二体を操ると言うことは同時に撃破しないとならないパターンですかな? 」

 

 「恐らくそうでしょう。アンチATF弾で通常攻撃を行った結果、『カミムス』に辛うじて一発当たったのですが、その傷はすぐに塞がりました。『ウラノス』も恐らくそうでしょう。しかし同時にダメージを与えれば...... 」

 

 「何千キロ離れた目標を同時に撃破... 難関ですな」

 

 クリスとジャリコは同時に溜め息を付くが、林原司令官は冷静に話を続ける。

 

 「でもやるしかないわ。あと3日と半日、その間に連携を高めるしかない、ただトドメは完全に同時にするしかないわね。緑ちゃん、『極電磁砲』の手配をして。アマノン兵器研究所に二挺あったはずよ」

 

 「しかし、司令官、『極電磁砲』はまだ未完の状態です。手配するなら今から運ばないと間に合わず、整備も出来ません」

 

 「仕方ないわ。安定的な強力攻撃を行うにはあれしかない。すぐに本部とバルバリア支部に運ばせて」

 

 「了解しました......」

 

 

 「早速、八人のパイロットには連携訓練に入って貰うわ。我が儘は許さない、いいわね? 」

 

 母の冷たい視線に、愛は歯軋りをするしかなかった。

 

 

 

 

 

 *************

 

 

 

 「撃ちますわよ! 」

 

 

 「オーケー! 」

 

 

 二つの敵に電磁砲弾が襲いかかる! 同時に着弾した瞬間、黒ずくめの目標は消滅する。真理谷ルイ戦術指揮官は強く頷く。

 

 「よし! その調子よ! 続けて」

 

 八人のパイロット達は仮想空間の中で二体の敵を同時撃破するための訓練をしていた。目標は撃破されるたびに自動的に補充される。

 

 「愛とアリスを交代して次の射撃手はシェリアと愛よ。残りのパイロットは支援、陽動をして。はい、開始! 」

 

 

 二体の敵は仮想のエヴァンゲリオンに襲いかかる。本部班のアリスとタニアは自らの敵に近付き、翻弄する。

 

 「撃つわよ」

 

 「え? 」

 

 シェリアが唖然とする間に、電磁砲弾は敵に放たれる。アリスの仮想エヴァンゲリオンの片手は吹き飛び、目標の半身も消え去る。しかし設定的に半身はすぐに復活した。

 

 「馬鹿じゃないの! 真面目にやんなさいよ! 」

 

 アリスの怒りにも聞く耳を一切持たず、愛は第二撃の準備をする。

 

 「次は合わせなさいよ、金髪」

 

 「ええ...... 」

 

 (酷いと聞いていましたが、ここまでとは思いませんでしたわ...... )

 

 「撃つわよ! 」

 

 愛の合図と同時にシェリアも電磁砲弾を放つ! 二体の敵は同時に消滅した。

 

 

 「やり...... ましたわね。」

 

 「愛、撃破したのはいいけど、最初のは何よ。勝手は許さな...... 」

 

 「馬鹿馬鹿しい。こんな馬鹿馬鹿しい訓練で『ウラノス』と『カミムス』を倒せる訳ないわ。あの二体の特殊さ、強さをまるで分かってない。私は一抜けさせて貰うわ」

 

 「愛、勝手は許さないって言っているでしょ? 待ちなさい! 愛! 」

 

 指揮官の止制も空しく、仮想エヴァンゲリオンの一体が仮想空間から消えていった。

 

 

 「ったく、一体何なんだい! ありゃ」

 

 タニアが憤ると、バルバリア支部のパイロットも不満を口にする。

 

 

 「何あれ〜感じ悪。シェリ姉、大丈夫?」

 

 「あんたらも大変だな、あんなのといつも一緒に戦っているのか」

 

 

 「もう慣れてしまったよ、慣れは恐ろしいね」

 

 

 「セトナ、私は大丈夫ですわ。しかし初号機パイロットは『カミムス』と『ウラノス』の詳細を知っていたみたいですわね。いくら母親が統括司令官だからって、封印されていた素体の詳細を知れるものなのでしょうか? 仲も良くなさそうですし」

 

 「どうせあの馬鹿のはったりよ。さあ、七人で続きをやりましょ」

 

 

 アリスの言葉で凍り付いた場が動き出す。しかしシェリアはその言葉が府に落ちることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 *************

 

 

 

 

 禍々しい仮面を付けし支配者達はモニター上で言葉を投げ合う。当然ながら林原結希は不在だ。

 

 

 「『カミムス』『ウラノス』...... 始まりなる人形、『六回目の約束』の原因の一つと『息子』の児...... 」

 

 

 「『天使』はあと三体....... 『福音の刻』まで『第五天使』の時のような失敗は許されない」

 

 

 「しかし、今回の戦は種のコピーが八体、素体が二体、天使が一体、嘗てないほどのリスクを孕んでおるぞ」

 

 

 「そこは大丈夫だろう。娘が言うには『彼女』は常に見張っている。その為に泳がせていると」

 

 

 「娘を過信しすぎると痛い目を見るぞ。それに『彼女』は決して我らの味方ではない。ただ今のところ利害が一致しているだけだ。いつ我らに仇をなすか、分かったものではない」

 

 

 「その通り。もし万が一『彼女』が『TG計画』の全容、いや触りだけでも把握していたら、今回の戦で『セブンスインパクト』が起ころうとも無視する可能性も高い。『福音の刻』は『彼女』の目指すところではないからな。一時的に自らの意図とは違う一旦の世界の破滅を選ぶこともあるだろう」

 

 

 「インパクトを制御出来る『ロンギヌスの槍』と『カシウスの槍』を持っているのは『彼女』だけだ。いざとなった時には我らは窮地に立たされる...... 」

 

 

 「ククク、大丈夫、本当にヤバそうならボク達が出るよ」

 

 

 モニターには異神驪洲ミリヤの姿が

 写し出されている。不敵に嗤う真の支配者の姿に仮そめの支配者達は身をすくめる。

 

 

 「『レプートン』様、申し訳ありません。お手を煩わす可能性が出て来てしまったのは我々の責任です」

 

 林原結希の父親が頭を下げると、ミリヤ、いやレプートンは微笑しながら語る。

 

 

 「此処まで来て何千年、何万年待つのも嫌だしね。インパクトが起きそうなら止めるよ、『彼女』が妨害してきてもね。しかし『ブラフマンの種』も完全な作品ではなかったね。『グラビュラ』を生み出すためとはいえ、あんな不確定要素を生み出してしまうとはね。

 いやボクらが『母』の強さを甘く見ていただけか......」

 

 

 

 

 

 

 

 **********

 

 

 

 

 

 

 

 あの訓練から三日間、愛を除いた七人のパイロットは仮想訓練を積んできた。バルバリア支部部隊は『イブ』の手前にある巨大な島、ナヤリバ島に陣取りこの島で『ウラノス』を倒す作戦だ。しかし、『その姿』を見た瞬間、バルバリア支部部隊の四人は思わず、身震いする。

 

 「シェリ姉、あ、あれ......」

 

 

 「想像以上にヤバそうだな......」 

 

 「ちっ! 」

 

 

 「あれが『ウラノス』......」

 

 

 ――――――ウラノス――――――

 

 生命の種程ではないものの、エヴァンゲリオン十体分にもなろうかという巨体が強力なATFの力で宙に浮いている。ATFは本来常態的可視化されないはずだか、『ウラノス』のATFは常時肉眼ではっきりと見える。皮を剥いだ人間のような顔に、切断されたかのように無くなっている両足、肉の手錠のようなもので繋がれている両手。

 余りにも異様な姿に、エヴァンゲリオンパイロット達は五臓六腑に恐怖感が駆け巡る。

 

 

 四体の『敵』を視認した『ウラノス』は突如眼を光らせる。それを見たシェリアは叫ぶ!

 

 

 「皆! 伏せて! 」

 

 シェリアの合図と共に五号機、六号機、七号機、そして四号機が地面に伏せた瞬間――――――

 

 

 

 『ウラノス』から放たれた紫色の光線が目にも止まらぬ速度で島に落ちる。

 

 

 その数秒後、世界でも有数の巨大な島であるナヤリバ島の3分の一が姿を消した。その凄まじい衝撃圧でエヴァンゲリオンさえ、吹き飛ばされそうになる。十字の爆発光は空高くまで届いていた。

 

 「くそ、これでも喰らえ! 」

 

 

 エヴァンゲリオン六号機――――――紺色の重量級の機体を持つパワータイプのエヴァンゲリオンは『ウラノス』に対して、ロケットランチャーを向ける。搭載されている弾頭は改良型アンチATF弾。並のATFなら簡単に撃ち破れる最新式の弾頭だ。

 

 「喰らえぇぇ! 」

 

 ガドウが叫びながら、最新式弾頭を放つ! 瞬きする間に『ウラノス』に着弾し、周辺が硝煙に包まれる。

 

 しかし、その硝煙を切り裂くように横薙ぎする光線が襲う!

 

 

 「ぎゃあああああああああ! 」

 

 

 「セトナァァァァァァァ! 」

 

 

 光線は七号機の右腕に当たり、右腕は間接から切断された。

 

 「不味いな、このままじゃ『向こう』と連携するどころじゃねえ! 取り敢えずATFを緩和して、攻撃して動きを止めねえと! 俺が行く! 」

 

 

 燃山マサルの機体、エヴァンゲリオン五号機―――――― 水色のスマートな機体であり、専用の特殊な装備や装飾がない、正にオーソドックスなエヴァンゲリオンだ。その為汎用性に優れ、様々な装備が使用可能だ。足に付けられたブースターで、素早く『ウラノス』に近付く! ナヤリバ島の海岸上空まで辿り着いていた『ウラノス』のATFを剥がそうと、五号機はATFを展開する。

 

 

 「ATF改、全開! 」

 

 

 激しい白き発光がナヤリバ島を包む! ぶつかり合うATFとATFの衝撃で地面が見るみる熔けていく。

 

 「ちぃ! いつもなら『EATF』でも中和出来るんだが、こいつのATFは滅茶苦茶固てぇ! 」

 

 

 「マサル君、来ますわよ! 」

 

 

 シェリアの注意と共に五号機は後ろに大きく跳ね飛ぶ!

 

 

 『ウラノス』は自身のATFを切り取り、その切り取ったATFを弾き飛ばす!

 

 「アブねぇ...... 」

 

 その攻撃は地面に深さが解らないほどの深い穴を開けていた。

 

 

 「強いな...... 流石、『カイン』の児...... 」

 

 クリスはまるで勝機が見付からない状況でも弱音を吐くことはない。ただ冷や汗は止まらなかった。

 

 「本部戦線はどうなっている....... 」

 

 

 

 

 

 ************

 

 

 

 

 

 

 

 「糞が! デカい図体のくせに動きが速すぎる! 」

 

 「まいったね、こりゃ...... 」

 

 

 「四人共、避けるのが精一杯...... ヤバイわね...... 」

 

 

 ――――――カミムス――――――

 

 『ウラノス』と同じくエヴァンゲリオン十体分程の巨体を持ち、全身白一色の異様な素体だ。特徴的なのは肩から生える四本の巨大な触手。その巨大さとは裏腹に高速で敵に迫る! 余りの速さに四体のエヴァンゲリオンは避けるだけで時間を消耗する。

 

 触手は残像すら写るスピードで三号機に迫る。アリスは観念し、大きく後退する。

 

 「ダメ、あのまま続けていたら確実に捕まる! 」

 

 三号機の後退を見た他のエヴァンゲリオンも一時的に後退した。

 

 

 四体のエヴァンゲリオンが囲む形になるも、『カミムス』は意に返さない。四本の触手をただ振り回し、周りの全てを破壊する。

 

 「結希...... 」

 

 宮本副司令官に声を掛けられても、林原結希はただ両戦場を見つめるだけだ。彼女の瞳に迷いはなかった。

 

 

 シン世紀エヴァンゲリオン アイ

 

 第十四話 完

 

 

 

 

 

 

 

 

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