※一回目のネタバレ回です。第一話からの閲覧をお薦めします。
アマノン・天上ウル帝国支部の滑走路は嘗て無い程の混雑具合だった。軍用ヘリや戦闘機、輸送機、偵察機、そして五機の超大型輸送機が犇めきあっている。まるで戦時下のような体制に支部の人間達を空気を張りつめらさせていた。5分に一回、戦闘機が支部上空を飛び交い、軍用ヘリ数十機が常に監視の目を光らせている。
その非日常的な光景を須成屋真里は黒空詩丹と苟アリスと共に支部内から眺めていた。エヴァンゲリオンや戦闘のことを殆ど理解していない真里でも『決戦』が直ぐ側まで迫っていることが肌感覚で理解出来た。支部内部でも人々が忙しなく動き回っている、笑顔を見せる者は誰一人としていない。
「凄い、でも怖い...... まるで戦争でもするみたい...... 」
「実際は戦争より恐ろしいことよ、失敗すれば世界は終わりだからね」
真里の呟きにアリスが反応する。その表情は強張っていた。
「二人ともありがとう。私も同行させてくれるように手続きしてくれて。私も...... 最後まで見届けなければいけないと思っていたから。それに......」
「僕も須成屋さんが居てくれて嬉しいよ」
二人の熱にアリスは思わず、体を反転させる。すると一人のアマノン隊員が駆け寄ってくるのが見えた。隊員は詩丹とアリスに声を掛ける。
「二号機パイロットと三号機パイロット、『会議』があるので至急支部最深部まで集合せよとの事です。統括司令官を除く各司令官と宮本副司令官、あなた達以外のエヴァンゲリオンパイロット全員が既に集合しているようです。最深部への道程はこの端末に記してあります」
隊員から端末を渡されると、端末から声が聞こえてくる。宮本副司令官の声だ。
「二人とも『上』から伝えたいことがあるので、早く来て頂戴。」
(上? )
「分かりました」
「それと...... あの子、須成屋さんも来て頂戴。『上』からの命令なの、いいわね? 」
詩丹とアリスは困惑する。何故関係がない真里が呼ばれるのか? 思考が及ばない。
「副司令官、何故須成屋さんが」
「いいわね? 」
副司令官の有無を言わさない態度に二人は身が固まる思いをする。しかし真里は力強く返答する。
「分かりました、私、行きます」
「では、なるべく早くね」
副司令官の通信は切れた。
「しかし、なんで須成屋が...... それに『上』って...... 噂に聞く『観測者達』のことかしら? 」
「分からないけど、普通の会議ではないことは間違いなさそうだね。須成屋さん大丈夫かい? 」
「私は大丈夫だよ、もう逃げないって決めたから、私」
真里の決心した表情に二人は安堵する。
「わかった、行こう」
*****************
赤い、紅い、血より赤い赤色一色に染まった余りにも広大な部屋に第一使徒アダム、第二使徒リリス、二つの生命の種の融合体が静かに収まっている。宮本副司令官、バルバリア支部司令官クリス・ゲルバル、天上ウル帝国支部司令官マリク・メーリング、アルテミス博士達も集合している。
そして
エヴァンゲリオン初号機パイロット
林原愛
エヴァンゲリオン二号機パイロット
黒空詩丹
エヴァンゲリオン三号機パイロット
苟アリス
エヴァンゲリオン四号機パイロット
シェリア・シャルウェルツェン
エヴァンゲリオン五号機パイロット
熱山マサル
エヴァンゲリオン六号機パイロット
ガドウ・シャブル
エヴァンゲリオン七号機パイロット
セトナ・ブライト
エヴァンゲリオン八号機パイロット
タニア・那間・翔子
八人のエヴァンゲリオンパイロットが全員揃う。八人とも決意を固めた表情をしている。そして全員の視線は同じ所を向いていた。
白色の顔半分だけの少女の姿の第二の生命の種リリスの上に映えるようにエヴァンゲリオンに酷似した第一の生命の種アダムが融合している。そしてその上に異形の者や少女の姿をした者、九人が堂々と佇んでいた。その側に倒れている女性が一人いる。
――――――第一始祖民族――――――
この世界の真の支配者達は見下すように下にいるパイロット達を見つめる。全員集合したのを確認した異神驪洲ミリヤが口を開く。
「全員揃ったようだね。それでは『講義』を始めようか」
「理彩さん、会議じゃなかったの? それにあの偉そうなコスプレ連中は誰なのよ? 」
シェリアは愛の辛辣な言葉にクスリと笑ってしまった。宮本副司令官はバツの悪そうな表情を見せる。
「レプートン様、まず私から概要だけでも話させて頂きます」
「皆、よく聞いて。この方達は第一始祖民族という方々、この世界の真の支配者よ、この方々の前ではアマノンもアマノンを操る観測者達もただの歯車に過ぎないわ、この方々は『神』なのよ」
第一始祖民族の名に愛は反応する。
(第一始祖民族! 父さんが言っていたこの世界を創った創造神の名前だ! )
「この『神』が皆、特にシェリアの頑張りを認めて下さって、この世界の真実を語って下さることになったの。皆、心して聞くように」
「流石シェリ姉! 」
「やりましたわね、セトナ」
ミリヤは再び口を開く。
「さて始めようか、何から話そうか? 何が聞きたい? 」
一番最初に質問にぶつけたのはシェリアだった。
「ミリヤ、いやあなた方第一始祖民族の目的は何ですの? 何故こんな大掛かりなことを.......」
「それは秘密だね」
「なっ! この前、この世界の全てを教えるって......」
「だから言ったろ? 全てではないけどねって。その質問は『この世界』の範疇に収まってない、教えて上げないよ。『行きたい場所』と『会いたい奴』がいるとだけ言っておこうか」
「じゃああなた達は何者なんですの? 一体どこから来たのです? 」
「本当はそれも範疇に収まってない気がするけど、それならいいや。僕ら第一始祖民族―――――― 尤もそれは君達『レイダ』が勝手に付けた名前で、本当は『エレメタ・パティカル』という種族―――――― この宇宙で一番最初に生まれた知的生命体なのさ」
「あなた達がこの世界を創ったの? 」
愛は身を乗り出し、質問する。父のおとぎ話は真実だった、その思いが愛を真実への探求に向かわせた。
「その通りさ。当時は僕らが幾ら宇宙を探索しても、幾ら待っても他に知的生命体なんか居なかったからね。寂しくもあったし、『行きたい場所』もあったからね。この宇宙に僕らが研究に研究を重ねて作り上げた七つの生命の種をばら蒔くことにしたんだよ。まあ、取り敢えず実験は成功したと言える」
「レプートン様、お言葉ですがカインとイブは兎も角、アダムとリリスは偶然、この地球に落ちたと聞いています。生命の種は惑星につき、一体のはずで成功とは言い難いのでは? 」
「私も古代のインパクトも二体の生命の種の種族同士が争ったから起きたのではと推測しておりますわ。寧ろ失敗なのでは? 」
シェリアの言葉にミリヤは邪悪な笑みを浮かべた。
「そう、それなんだよ」
「?」
「その勘違いが君達人類、一番の間違いなんだ。」
「どういうことですの? 」
「10万年前のレイダ達も勘違いしていたよ...... アダムとリリスは偶然この地球に落ちたとね、ああ、この名前も君達が勝手に付けた名前で本当は『ストリンガ』と『ウィクラ』と言うんだけどね。確かに基本的には生命の種は惑星につき一体になるように手配した。でもね、君達のいうアダムとリリスは偶然にこの地球に落ちたんじゃないよ。元々二つの生命の種がここに落ちるように僕達が仕向けたのさ! 『実験』のためにね! 」
「一つの惑星に二人の生命の種が落ちたのは偶然ではなかった? 何のために? 」
「シェリア、だから言ったろ? 実験のためさ。『行きたい場所』に行くにはまず最初に『Mの扉』を開く必要があったから......ああ、君達はガフの扉と呼んでいたね。種一個では不安だったから二個置いたんだよ。しかしまさか種同士が融合してレイダ達全員が一つの生命体に進化しようとするとは僕達も思わなかったよ。そしてその進化の流れを一人の少年が止めたのも驚きだった。その想像を超えた実験結果を見た僕達は決めたんだよ、地球を『福音の刻』の舞台にしようとね」
「まさかその進化の流れって...... 」
「人類補完計画」
シェリアの疑問に愛が答える。愛は答え合わせを続けた。
「二つの生命の種が融合することにより自我境界であるATFが崩壊し、全人類は一つの生命体へと融合する。生命の実、知恵の実、両方を兼ね備えた完全生命体を創造するための計画。父さんの空想じゃなくて古代人は本当に実行していたのね」
愛の知識に周囲は驚く。しかし愛にとっては他愛のない父との思い出の一つでしかなかった、現実のものとは思いもしなかった。
「流石結希ちゃんの娘、そんな昔話を良く知ってるねぇ。完全なる生命体を作り上げ、『Mの扉』までこじ開けた10万年前のレイダ達は良くやったよ。しかしMの扉を開けるだけでは『奴』には会えない。君達がいう『高次元への扉』を開けて存在する高次元の領域の更に奥にある領域にいる『奴』にはね...... 」
(奴...... )
「『奴』に会うにはMの扉の先にある『Sの扉』君達がいう高次元の扉を開け、高次元で更なる仕掛けをしなければならない。その『最後の扉』を開ける鍵を作らなければならなかった。そこで僕達はアダム、リリスとはまた違う性質を持った生命の種を創造することにした。それが君達がいう『イブ』だよ。僕達の言葉では『エレクメタ』と呼ぶんだけど。イブを第三の月である『青き月』に乗せ、僕らは『マハノン』に乗り、地球を目指した。約10万年前の話だよ。」
「つまりアダムとリリスは前もって地球に持ち込んだ種だけど、イブは実験を見た結果、『最後の鍵』を作るために創造された生命の種だと言う訳ですね」
「カイン、カインは一体何処で生まれたの? 」
苟アリスの疑問にも、ミリヤは丁寧に応答する。
「第四の生命の種、カイン。僕らは『グラビュラ』と呼んでいる。アダム、リリス、イブだけでは『最後の鍵』を作ることは無理そうだからね。四つ目を作る準備はしていた。本当は第四の生命の種は地球で作ろうかと思って生命の種の元『ブラフマンの種』を持ち込んだんだけど、地球に行く途中に宇宙空間の中で『この上ない素体』を見つけてね...... 回収して、地球でソイツに『ブラフマンの種』を注入したのさ。そしてカインは誕生した。クックックッ」
「この上ない素体? 」
ミリヤはこの世のものとは思えない邪悪な表情を浮かべた。
「そうさ、カインの元になった素体。それは10万年前、リリス『ウィクラ』から生まれ、アダム『ストリンガ』が生み出した『使徒』を数多倒し、人類補完計画の最重要要素となった紫色の機体、嘗て『エヴァンゲリオン初号機』と呼ばれていたものさ! 」
「「何だって!? 」」
一堂は驚きを隠せない。
「エヴァンゲリオン初号機...... やはり古代人達はエヴァンゲリオンを保有していたのですね」
「エヴァンゲリオン『初号機』? 私の初号機と同じ? 同じもの? 」
愛の困惑振りにミリヤは又々丁寧に解説する。
「僕らが回収した『エヴァンゲリオン初号機』と君が乗っている『エヴァンゲリオン初号機』は別物だよ。君が乗っているエヴァンゲリオン初号機はカインとイブ、二つの生命の種の遺伝子構造をインパクトが起きないように慎重に融合した素体『クロノス』を元に建造されたものさ。10万年前のエヴァンゲリオン初号機からしたら子供にあたるね。四号機も同じさ、素体名は『ゼウス』。カインとイブの遺伝子構造を融合させて創った。初号機の遺伝子構造は主にカイン、四号機の遺伝子構造は主にイブという差はあるけどね」
「だから『禁姦の子』『近姦の子』か...... 」
「そういうこと。君達の神話にあるイブとその親族であるカインが交わって作られた。禁断の交わり。禁断の子供達。そして10万年前に初号機が重要な鍵となったのと同じく、現初号機も重要な鍵となる」
「どういうことですの? 」
「アダムとリリス、『ストリンガ』と『ウィクラ』の融合ではガフの扉、『Mの扉』を開き、ストリンガ、ウィクラの生み出した生物を完全体にするのが精々だった。だから僕らはアダム、リリス、イブ、カイン、全ての生命の種を融合させて、高次元に向かわせ、鍵とする。『奴』のいる場所を抉じ開ける鍵としてな。」
皆は絶句した。そんな途方もない計画を実行したらこの世界はどうなるか目に見えていた。
「ストリンガ、ウィクラ、エレクメタ、グラビュラ。『強弱電重』この世の司る四つの力の要素を持つ生命の種の融合し、高次元にて力を解放すれば必ず『奴』に会えるはず。これが『福音の刻』への最終段階だ。
しかし、僕らの緻密な計算により目的が果たされると分かっていても、語るのと実行するのとでは訳が違う。だから取り敢えず実験したいんだよ。試したいんだ、エヴァンゲリオン初号機でね」
「どういうことだ! 」
愛の剣幕にもミリヤはまるで動じる様子はない。
「『カインとイブの子供』グラビュラとエレクメタの仮初めの融合体、エヴァンゲリオン初号機にストリンガとウィクラの素体である他のエヴァンゲリオンやエレクメタ、グラビュラ単体の遺伝子構造の素体のエヴァンゲリオン、天使なども融合させ、仮の全ての生命の種の融合体を作り上げる。その様子を見てから本番だ。それにその状態になった初号機は『磁石』になるはずだ。その仮の真の神を作り上げる計画が『U計画』だ」
「しかしどうやって!? 他のエヴァンゲリオンを取り込むとでも? 」
「シェリア、それは此れから現れる最強の天使であり、最終天使である『第十天使』と闘えば解ることだ」
「そんな! 何故天使とあなた達の計画が関係あるのですか! 大体それじゃ勝っても負けても私たちは滅んでしまうのは確定じゃありませんの! 」
「天使はそのために作られたんだよ。世界の危機でも何でもない。ただ『U計画』の材料さ。最初は『青き月』にいた微生物をエレクメタが培養した結果生まれたものだったのを僕らが『材料』用に改造したものだ。どんな結果になっても破滅なのはしょうがないよ。君達も歯車にも為れない、ただの材料なんだから! 」
「そんな...... 」
シェリアは膝をつく。セトナを守り、世界も守る。そんなシェリアの命を掛けた目標が見るも無残に崩れ去ったからだ。
「シェリ姉...... 」
「しかし、あなた達、10万年前の地球のことをまるで直接見たかのように語るわね。その時は自分達の星にいたんじゃないの? 」
「フフフ、10万年前どころか地球の動向はずっと把握していたよ。ストリンガとウィクラを送り込んだ時からね。特別な情報媒体も『黒き月』に入れていたからね、地球の動きは手を取るように分かったよ、僕らの『目』は優秀だからね」
「ねえ? 真希波・マリ・イラストリアス」
ミリヤが古代に居たエヴァンゲリオンパイロットの名前を口にすると、須成屋真里は突然膝をつき、倒れる。それと同時にアダムの頭上に居た倒れていた女性が起き上がる。
スラッとした躰、後ろ髪を左右に分けた髪型に眼鏡を掛けている。瞳は愛にも似た獣のような瞳だった。
「須成屋さん! 大丈夫かい! 須成屋さん! 」
詩丹が真里に駆け寄り、必死に声を掛ける。その姿を見たマリは詩丹を静止させる。
「僕、大丈夫だよ。今まで『魂』を無理矢理二つ入れていて、いきなり一つなったから倒れただけだよ、命に別状はない。軽い脳震盪を起こしているから揺すらない方がいい」
「誰だ! お前は! 須成屋さんに何をした! 」
「誰だって言われても、ミリヤンの言うとおりさ。あたしはこの地球の成行を第一始祖民族に伝えるための媒体、監視役。この目は瞬時にミリヤン達に地球の動向を伝えることが出来る、それに人間感覚だと不老不死に近い。あたしはただ監視のために作られた存在さ。あと真里ちゃんには何もしてないよ、ただ前の『容器』が五年前にバラバラにされちゃったからね。愛ちゃんの側にいた真里ちゃんに無理矢理『魂』を入れさせてもらっただけだよ」
「五年前!? バラバラ!? 愛ちゃん!? まさか! 」
愛は疑問は的中する。
「久しぶりだね、愛ちゃん。いや、愛ちゃんのことはずっと見ていたけどね」
「まさか!? あなたは...... レイ姉ちゃん、綾波レイ姉ちゃんなの!? 」
「そうだよ、ただその名前とあの躰は、昔の友人のものだけどね。このリリスから創ったものさ、『あの人』に壊されてしまったけど」
「友人!? 」
「そう、遥か昔、あたし達はエヴァンゲリオンパイロットだったんだよ。共に戦った仲さ。あたし、真希波・マリ・イラストリアス、綾波レイ、惣流・アスカ・ラングレー、そして」
「おっとマリ、そこまでだ。まあ、君達に教えられるのは大体こんなものだ。どうだい『真実』を知った感想は? 」
一堂、特にエヴァンゲリオンパイロット達はただ黙るしかなかった。余りにも重く、辛く、受け止めることが出来ない『真実』だった。
「クックックッ。君達には荷が重すぎたか。まあ、いい。この流れは誰にも止められない! 最強の天使、『第十天使』は二日後にやって来る! 『福音の刻』を止めたいなら、『第十天使』を野放しにするしかないが、それはセブンスインパクトの開始、世界の滅亡を意味する! 君達は最強の天使を下すしかない! 君達に逃げ場はないんだよ! クックックッ、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
シン世紀 エヴァンゲリオン アイ
第二十一話 完