シン世紀エヴァンゲリオン アイ   作:ケプラー星人

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第二十二話 最後の日常 想いの告白

 

 エヴァンゲリオン四号機パイロット・シェリア・シャルウェルツェンと七号機パイロット・セトナ・ブライトの寝室に八人のエヴァンゲリオンパイロットが集まっている。皆、暗澹たる表情だ。初号機パイロット・林原愛は部屋の片隅で腕を組みながら立っていた。

 

 

 「しかし、どう転んでも人類は助からないか。投了だな。」

 

 「いや、まだ何かあるはずですわ。何か、何か抜け道が...... 」

 

 五号機パイロット・熱山マサルの嘆きにシェリアは食い下がる。

 

 「でも第十天使を倒しても高次元の更に奥にある領域への扉が開いてしまうし、倒さなかったら天使と生命の種が接触し、セブンスインパクトが起こってしまう。一体どうすれば」

 

 

 エヴァンゲリオン三号機パイロット・苟アリスの言葉と同時に部屋の扉が開く。扉の向こうに居た人物を眼中に入れた愛は思わず声を上げる。

 

 「綾波レイ姉ちゃん! 」

 

 「はは...... やっぱその名前違和感あるね。まあ、愛ちゃんがそう呼びたければそれでいいよ」

 

 「あなたは第一始祖民族の監視役...... 」

 

 「まあ、そんな固くならないでマリって呼んでよ」

 

 エヴァンゲリオン八号機パイロット・タニア・那間・翔子の警戒感を真希波・ マリ・イラストリアスは軽くいなす。

 

 

 「一体何しにきた。まさか俺達を監視するために......」

 

 「まさか。もう君達には退路はない。だから特に注視する必要もない。忠告しに来ただけさ」

 

 エヴァンゲリオン六号機パイロットガドウ・シャブルの疑惑を一蹴し、マリは続ける。

 

 

 「『福音の刻』を止めることは誰にも出来ない。潔く諦めた方がいい」

 

 「じゃあ、あたしたちは黙って死ねって言う訳? そんなの出来る訳ないじゃん! 」

 

 エヴァンゲリオン七号機パイロット・セトナ・ブライトの怒りにもマリは動じない。

 

 「福音の刻は始まりにすぎない。それがたとえ破滅への始まりでも、その後の展開はどうなるかは分からない。10万年前と同じ様にね」

 

 「それはどういう意味だい? 」

 

 エヴァンゲリオン二号機パイロット・黒空詩丹が尋ねるとマリは即座に返答する。

 

 「昨日も言ったけど10万年前、今の君達と同じ様にエヴァンゲリオンパイロットとして戦っていたのさ。第一の生命の種、アダムから生み出された『使徒』は第一、第二の生命の種との融合を果たさんとしていた。それを防ぐために私たち人類は戦っていた。表向きはね」

 

 「なるほど。裏の目的は『人類補完計画』だった、そうですよね? 」

 

 エヴァンゲリオン四号機パイロット・シェリア・シャルウェルツェンの推察にマリは観念したかのような表情を見せる。

 

 「その通りだよ。生命の実、知恵の実を兼ね備えた完全生命体。その創造こそ当時の最高権力者達は望んでいた。それは失敗に終わった。しかしその壮大な流れも第一始祖民族にとっては実験でしかなかった訳さ」

 

 

 「綾波レイ姉ちゃん」

 

 「どうしたの? 愛ちゃん」

 

 「昨日言ってわよね? その名前は昔のエヴァンゲリオンパイロットの名前だって。惣流・アスカ・ラングレーって名前も聞こえたけど、もしかしてパルス教の神アスカってこの人じゃない? 」

 

 エヴァンゲリオン初号機パイロット・林原愛の推察にマリはどこか懐かしそうな表情を浮かべる。

 

 「名前はそうだね。惣流・アスカ・ラングレーからとったものさ。中身はエヴァンゲリオン零号機パイロット・綾波レイを取り込んだ生命の種、リリスを指したものだけどね」

 

 

 「つまり、生命の種のアダムとリリスと、パルス教のアダムとリリスは別物よね? となるとパルス教のアダムとリリスも実在の人物がモデルとしているはずだわ。あの時レイ姉ちゃんが言いかけた人がアダムなんじゃない? そして人類補完計画を止めた少年と同一人物。違う? 」

 

 

 愛の鋭い考察にマリは笑いが溢れる。

 

 「あはははは。愛ちゃんには負けるね。そうだよ、パルス教のリリスはエヴァンゲリオン弐号機パイロット・惣流・アスカ・ラングレーを指す。そしてアダムはエヴァンゲリオン初号機パイロット・『碇シンジ』のことさ。二人とも人類補完計画から生き残った人間だった。そこから第三の人類の歴史が始まったんだ」

 

 

 

 「初号機パイロット...... 碇シンジ...... 私と同じ初号機パイロットが人類補完計画を止めたのね」

 

 「愛ちゃん。人類補完計画を止めたのは碇シンジだけど、人類補完計画を起こす引き金になったのも碇シンジ、初号機パイロットなんだよ。今回も同じさ。U計画の要となる初号機とパイロット...... つまり愛ちゃんが福音の刻をどんな道へ誘うか握っているようなものだ。第一始祖民族の計画を崩すのははっきり言って不可能だ。でもね10万年前、シンジの意思で人類補完計画が崩れ去ったように、今回も初号機パイロットの意思で何らかの流れが変わるかもしれない。そこに君達の未来を掛けるしかないんだよ」

 

 

 

 

 

 

 ************

 

 

 

 

 

 

 シェリアとセトナは皆が帰っていった部屋でぼんやりテレビを見ている。まるで何時もの日常のようだ。

 

 「こんなだらっとテレビを見るだけでも五年前までは考えられなかった...... 」

 

 「シェリ姉? 」

 

 

 「汚い地下水道を根城にして、汚い大人達に体を売って、その金で大麻を買って...... あの時は疑問はなかった。それが生きるということだと思った。私は悪くない、私を捨てた親が悪いんだと...... 」

 

 「シェリ姉...... 」

 

 

 「確かに人それぞれ運命はあるし、それもある意味正しいかもしれない。でもねクリス支部司令官に出会ってから、私の人生は変わった。厳しくとも人間らしい人生に。そして一番嬉しいのはこの世で一番大切な人が幸せそうなこと」

 

 セトナは泣き出した。

 

 

 「人はひとりじゃ生きていけないもの。大切な人が側にいるだけで、その人が笑顔を見せるだけで生きて行ける。だからこそこの世界を守りたい。私はまだ諦めませんわよ、最後の最後まで抗って見せますわ」

 

 

 「あ、あたしも最後まで頑張る! い、一緒に頑張ろう、シェリ姉」

 

 

 

 

 

 ***************

 

 

 

 

 「初号機パイロット次第か、何か気に入らねえな」

 

 「戦場で生き残ってきた俺達にとっちゃ自分達以外の誰かに頼るのは全身が痒くなる位合わねえことだからな」

 

 

 マサルの不満にガドウが答える

 

 

 「でも初号機パイロットがこの世界の運命の大半を握るのは間違いなさそうね。別にいいじゃない、過酷な戦場で極限まで抗ってきたのが私の人生なんだから。今回も同じことよ。でも出来るならこれが最後の戦いにしたいわね。もう仲間の脳味噌が飛び出るところは見たくないからね」

 

 

 「そうだな、タニア。国にも帰りたいしな。」

 

 「あの瓦礫の山になった町も直していかねぇとな。破滅なんか糞喰らえだ! 」

 

 「そうね、この戦いが終わったら直しましょう。私の故郷を.......」

 

 

 

 

 

 

 *************** 

 

 

 

 

 

 「そうよ、母ちゃん。家買うから。もう予約したから。うん、うん、お金なんか大丈夫よ。今までの報酬で全然買えちゃうから。心配しないで、この戦いが最後の戦いだから。もう危ないことしなくて良くなるから、心配しないで。うん、うん、そう、父ちゃんにも伝えといて。 ブリジアとダルにも此れからはお姉ちゃん一杯遊んであげられるからって言っといて。うん、うんあとで父ちゃんやダルとブリジアとも話すけどね。取り合えず切るね」

 

 

 苟アリスは決意を固めた表情を見せる。

 

 

 「私、絶対に死なない。必ず家族の元に帰る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 *******************

 

 

 

 黒空詩丹は八体のエヴァンゲリオンを一望出来る広い展望室で須成屋真里を見付ける。真里はただエヴァンゲリオンを眺めている。

 

 

 「須成屋さん、捜したよ。病室に行ったらもう意識が回復して、リハビリがてら散歩しているって聞いたから」

 

 「捜させてごめんなさい。でも何か落ち着かなくて...... 世界が破滅する瀬戸際だと思ったら寝てもいられなくて...... 」

 

 「僕のことは大丈夫だよ。須成屋さんは大丈夫かい? あのマリって人の魂が無理に入っていたみたいだから」

 

 

 「私は大丈夫。だけどあのマリって人が私の中に居たのは無意識の内に分かっていた気がする。電車に飛び込んだ時、助けてくれたのはあの人だと思うの。なんか不思議な気分」

 

 

 「さっき僕らにも色々アドバイスをくれたよ。不思議な人だよね。あの人のお陰で須成屋さんが助かったんだから感謝したいよ」

 

 

 「でもね、あの時もそうだけど一番頭に浮かんだのは黒空君なんだよ。黒空君の存在があったから私は生きてこられた。ありがとう、黒空君」

 

 

 詩丹は下を向き、黙り込む。一呼吸置くと詩丹は再び口を開く。

 

 

 「須成屋さん」

 

 

 「どうしたの? 黒空君」

 

 

 「これが僕、いや、僕らエヴァンゲリオンパイロットにとって最後の戦いになる、この戦いを乗り切ればもう戦わなくて済む。須成屋さん、この戦いが僕と付き合ってくれないかな? 」

 

 「え? ええ? 」

 

 「嫌かな? 」

 

 「そ、そんなことないよ、と、突然だからびっくりしちゃって...... 」

 

 真里は頭を下げる、涙を流しながら。

 

 

 「こちらこそ、よろしくお願いします。だから、だから」

 

 

 「い、生きて帰って来てね...... 黒空君」

 

 

 

 

 

 

 

 ************

 

 

 

 

 

 林原愛はある扉の前に立ち尽くす。この扉を開けるには勇気がいる。しかし宮本副司令官の肩を優しく叩かれ、愛は前に進む。

 

 

 「誰? 」

 

 

 「母さん......」

 

 

 「あ、愛......」

 

 部屋に居たのは、林原結希アマノン統括司令官だった。今までの強く張りの張った調子ではなく、細く痩せ細った姿になっていた。

 

 

 「ど、どうしたの」

 

 

 「ご、ごめん」

 

 

 「え? 」

 

 

 「私、ずっと勘違いしてた。母さんが父さんを初号機に閉じ込めたって。母さんが父さんを殺したも同然だって...... 勘違いしてた、いや、母さんを信じようとしなかった、真実を見ようとしなかっただけだった。ごめん、本当にごめんなさい」

 

 

 「愛」

 

 

 母は号泣しながら飛び付く娘を優しく包み抱く。二人はただ涙を流す、互いの憎しみを流すように。

 

 

 

 シン世紀 エヴァンゲリオン アイ

 

 

 第二十二話 完

 

  

 

 

 

 

 

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