シン世紀エヴァンゲリオン アイ   作:ケプラー星人

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第二十三話 殺戮の乱舞 絶望の宴

 

 荒れ果てた広大な地に強い風が吹き荒れる。空は不気味な程赤く染まっている、まるで終末を告げるかのようだ。 その荒れ地に八体のエヴァンゲリオンが戦闘体制のまま、待機していた。八人のエヴァンゲリオンパイロットは皆、極限の緊張を持ちながら、その時を待っていた。吹き抜ける風以外には何もない荒野はただ不吉な静けさを居る者に提供する。

 

 全身が黄色に染まった機体、エヴァンゲリオン四号機が天を見上げると、空は一層赤みを増す。今から来る災厄が今ある世界を根本から変える序曲のようだ。

 

 

 「もう来ますわ、皆さん、覚悟は宜しくて? 」

 

 

 「シェリ姉、私は大丈夫だ、だよ」

 

 エヴァンゲリオン七号機パイロット、セトナ・ブライトは平然を装いながら声を震わせていた。他のパイロット達も操縦レバーを握るその手は震えを交わせる。

 

 

 

 「これが最後の戦い、最終決戦ですな。もう逃げ切れない、我々はどうなるのですかな? 」

 

 アマノン・バルバリア支部司令官、クリス・ゲルバルの嘆きにも、アマノン副司令官、宮本理沙は冷静に返す。

 

 

 「もうどうにもならないわ、福音の刻は避けられない。その先はただあの子に掛けるしかないわ。」

 

 

 「その前にこの試練を乗り越えられるか ... 越えられれば『U計画』が始まる」

 

 天上ウル帝国支部司令官、マリク・メーリングの呟きと共に、オペレーターの緑が敵の到来を告げる!

 

 

 「『第十天使』襲来! 」

 

 

 最悪の災厄は真紅の空を切り裂くように天高くから超高スピードから降臨する。

 

 着地は至って静かだった。まるで重量がないかの如く、足音すら聞こえない着地だ。

 

 

 

――――――第十天使 ――――――

 

 

 最後の天使の姿にエヴァンゲリオンパイロット達は戦慄を覚える。

 

 背中や脇から無数の腕が生え、その一つひとつが不気味かつ妖しい動きを見せる。その内四本は禍々しい剣を手にしている。脚は四本、その内二本は組んでいる。そして正面、両側面、三つの顔はこの世の全ての悪意を積め込んだ如くの見るもの全てを恐怖のどん底に陥れる狂気溢れる顔だった。

 

 

 

 最強の天使は動きを見せない。ただ八体のエヴァンゲリオンを眺めるように観察している。パイロット達は第十天使の掴めない動きに困惑する。八体のエヴァンゲリオンは同時に後退りする。

 

 「なんだ、こいつは」

 

 

 「やば...... そうですわね」

 

 

 「皆、気を引き締めるんだ! 」

 

 災厄はまだ動かない。邪悪という以外形容しようがない六つの瞳で標的を睨むだけだ。

 

 「まだ来ないか。なら! 」

 

 

 「! 慎重になれ! マサル! 」

 

 

 「こっちから仕掛ける! 」

 

 

 水色基調の機体、エヴァンゲリオン五号機は素早い動きで第十天使の懐に潜り込む。伸ばしたGナイフが第十天使の首筋を切り落とそうとする!

 

 

 しかし刃は第十天使の首筋の側で止まる。

 

 直後に腕が地面に落ちる。次に足、その次に五つに切り裂かれた胴体、最後に首が落下する。

 

 災厄は歩き始める。パイロット達は一体何が起きたか、理解出来なかった。分かることは五号機は二度と起動しないことだけだ。

 

 「マサル! 応答しろ! マサル! 」

 

 「駄目です、メーリング司令官、五号機パイロットはもう...... 」

 

 

 そう呟いた緑は巨大モニターに画像を写し出す。それは無惨にも真っ二つされた熱山マサルの姿だった。

 

 

 「マサルゥ! 」

 

 

 「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

 

 発狂した四号機パイロット、タニア・那間・翔子は持っていた狙撃ライフルを乱射しながら、第十天使に突っ込んで行く! しかし着弾しているはずの第十天使はまるで反応しない。ガドウ・シャブルの操る六号機は重力式ロケットランチャーを災厄に向ける。

 

 「喰らえぇぇぇぇぇぇ! 」

 

 着弾した標的を大爆発に巻き込む弾頭が音速で最強天使へ向かっていく!

 

 しかし着弾することはなかった。第十天使は忽然と姿を消したのである。

 

 「何!? 奴は何処へ行った! 」

 

 

 しかし荒廃した荒野には敵の姿は見当たらない。パイロット達は唖然とする。

 

 

 「馬鹿な! 消えただと!? 」

 

 

 「タニア! 避けて! 」

 

 

 「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ! 」

 

 三号機パイロット、苟アリスの忠告も空しく、八号機の右足は切断される。突如現れた時空の隙間から飛び出した第十天使の腕と剣は八号機を行動不能にする。

 

 時空の隙間から全身を出した第十天使は八号機にトドメを刺そうと剣を振りかざす。

 

 「今だ! 全員撃てぇ!」

 

 

 二号機パイロット、黒空詩丹の号令と共に七体のエヴァンゲリオンがEライフルで一斉射撃を行う。硝煙が空高くまで舞い上がる。

 

 「これじゃ敵を見失う! 一旦下がろうよ! 」

 

 

 セトナは皆に注意を促すが、自らには激痛が走る。気付いた時には七号機の右手は宙に舞っていた。七号機は急いでバックステップで第十天使と距離を取るが、災厄も急スピードで作った距離を縮める。しかしその動きは止まる。三号機のロケットランチャー弾頭が命中したからだ。

 

 「どうよ! まだまだこれから...... 」

 

 

 「!」

 

 

 「父ちゃん、母ちゃん、ごめんね」

 

 アリスが気付いた時にはもう遅かった。第十天使の側面顔の瞳から放たれた超高濃縮レーザーは三号機内を無尽蔵に飛び交った。地面に残されたのはエヴァンゲリオンとパイロットの無数の肉片だけだった。

 

 

 「アリスァァ! 」

 

 

 「苟ェ! チッ! 」

 

 

 エヴァンゲリオン初号機パイロット、林原愛は激しく動揺した。今まで激しく対立して来た愛とアリス、しかし腕はお互い認めていた。そのライバルとも言える存在が瞬く間に殺されたのだ。愛の頭の中に死の恐怖が過る。

 

 

 「なんだ! こいつは! 今までの敵とは比べ物にならねえ程に強え! 」

 

 

 「ATFも此までの天使達のより、数段固い! 突破口が見い出せませんわ! 」

 

 

 「これが最後の天使、最強の天使、第十天使...... 倒せる気がまるでしないわ」

 

 

 「シェリア、セトナ...... 」

 

 第十天使の想像を遥かに超える強さに宮本副司令官とクリス支部司令官は適切な指示も出せない。

 

 

 

 「...... 皆、あたしが行く。皆で攻撃が通るまで奴のATFを緩和して欲しい。後はあたしが第十天使を殺す...... 」

 

 

 セトナの提案にシェリアは身を乗り出さるを得なかった。

 

 「セトナ、駄目ですわ! そんな危険な役目...... 」 

 

 

 「大丈夫だよ、シェリ姉! 七号機の動きなら奴の攻撃は当たらない。シェリ姉、私を信じて! 」

 

 「セトナ...... 」

 

 

 「さあ、行くよ! 皆、お願い! 」

 

 

 七号機は俊敏な動きで第十天使に近付く。反射的に繰り出された斬撃を七号機は横転で回避する。

 

 「セトナ! 私達も行きますわよ! 皆! 」

 

 四号機は足に装着したブースターで天使目掛けて突進する。当然、第十天使のレーザーが四号機に向けられる。

 

 が、ATFを中和しながらの六号機の強烈な体当りにより、第十天使は体勢を崩し、膝をつく。

 

 

 直後、四号機の蹴りが第十天使の顔を直撃する! 第十天使は倒れ込んだ。

 

 「ATF改、全開! 」

 

 

 四号機がATF改を展開すると初号機、二号機、六号機も後に続く。

 

 「よし! ATFが中和されていく! 」

 

 クリスが喜んだのも束の間、第十天使の狂喜に満ちた瞳が光り出す!

 

 

 

 

 

 グシャ!

 

 

 それは第十天使の左側面の顔が八号機の狙撃により、潰された音だった。

 そこに初号機と二号機のGナイフによる斬撃が、第十天使の腕を二本切り落とす。剣と腕が地面に落ちる。

 第十天使のレーザーによるカウンターアタックがなされるも、エヴァンゲリオン達はしゃがんで回避する。

 

 「よし! 皆! 退いて! 」

 

 

 セトナの呼び掛けに各エヴァンゲリオンは一斉に散る。

 

 

 「とりゃああぁぁぁぁぁぁぁぁ! 」

 

 

 青き血が空を舞う、邪悪な三面が宙を舞う。七号機の鋭い刃は第十天使の首と胴体を切り離していた。

 

 

 「や、やった? セ、セトナ! よくやった! 」

 

 「終わり? 勝ったのね? よし! 」

 

 司令部は沸き立つ。アマノン隊員も歓喜の声を上げた。

 

 

 七号機は四号機の目の前に立った。

 

 「シェリ姉、やったよ! どんなもんだい! 」

 

 

 「セトナ、よくやりましたわね。本当、凄いですわ! 」

 

 

 「へへ、凄いだろ? シェリ姉、もう戦わなくていいんだよね? 全て終わったんだよね? 」

 

 

 「そうですわ。もう戦わなくていいの...... 平和に暮らしても良いのですわ。」

 

 

 「これからは好きことをして、シェリ姉とずっと一緒に居れるんだよね? 服もいっぱい買おう、オシャレして、好きなもの好きなだけ食べて、好きなところ行って...... 」

 

 

 「......」

 

 

 

 「セトナ? 」

 

 

 「どうしたの? セトナ...... 」

 

 

 「!」

 

 

 

 その瞬間、七号機は真っ二つに切り裂かれる! 3つの頭を持つ俊敏なエヴァンゲリオンは青き血を吹き出しながら左右に別れた。

 

 

 「セトナ? 」

 

 

 「おい、こいつ、回復してるぞ! 早く散れ! 」

 

 愛の言葉にパイロット達は我を取り戻し、再び戦闘体制に入る。

 

 首と腕が飛んだはずの第十天使はまるで何事もなかったかのように、欠損部分が全回復していた。

 

 

 「再生機能か、まずいのう...... 」

 

 

 アルテミス博士はこれまでにない困惑の表情を浮かべる。

 

 

 「恐らく再生復機能を司る装置があるはずじゃ! それを早急に破壊しろ! 」

 

 

 各エヴァンゲリオンは蛇行し、第十天使の攻撃を回避しつつ、Eライフルで銃弾を打ち込む。その間も四号機は立ち尽くすだけだった。悲しみの極致、絶望の極みにいる四号機パイロットはただ下を向き、呟く。絶望のうたを。

 

 

 「セトナ? セトナセトナセトナ? どこへ行ったの? どこに隠れたの? セトナ、答えて。返事して。あなたの笑顔を見せてよ、もう一度笑ってよ。初めて会ったあの時からまったく変わらないあの笑顔を...... ねえ、見せてよ、セトナ。お願いだから...... ねえ...... 」

 

 

 「セトナァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」

 

 

 赤き空の下に元にある空気、存在全てが極限まで震え出す!

 

 感情の極みに達したシェリアに共鳴するように四号機は覚醒する! 頭上には三重のエンジェルハイロウ、背中には六枚の光り輝く翼、周囲には稲妻が走る。

 

――――――擬似神化形態――――――

 

 エヴァンゲリオンが『神』の領域に踏み込んだ証であるその形態は見るもの全てを威圧する。

 

 擬似神化四号機は第十天使に向けて手を掲げる。

 

 

 突如、第十天使の左側の数本の腕が吹き飛ぶ! 天使も何が起きたか理解出来ない様子だ。しかし欠損した腕は忽ち再生する。

 

 が今度は右側の腕数本が弾け飛ぶ。その状況に邪悪なる第十天使の三面は更なる邪悪さを見せる。

 

 凶悪な三面から放たれた六本の破滅の光線は荒れ地を縦横無尽に飛び回る。地面が抉れに抉れ、原形を留めない。蛇行、横薙ぎ、縦薙ぎ、自由なる光線はエヴァンゲリオン達の行き場を無くしていく。

 

 「ちぃ! これはやべぇ! 」

 

 「不味いね、これは」

 

 「ま、まずい」

 

 

 触れたもの全てを切り裂く光線が片足を失い、倒れ込んでいる八号機を狙いに定める。タニアは死を覚悟する。

 

 

 

 

 しかし八号機は無傷だった。六号機が八号機を庇い、突き飛ばした。

 

 その犠牲は重かった。六号機は形容しがたい肉片へと変化した。地面は青き血で満たされた。

 

 

 その瞬間、八号機の右足は光が足形に変形し、再生された。左右三本づつの光の翼は八号機を浮上させる。

 

 

 八号機と四号機の不可視攻撃により、第十天使の大半の腕は消え去る。再生しても、度重なる連撃で吹き飛ぶ。第十天使が高速で回避してもその輪廻は繰り返された。四号機の不可視攻撃が第十天使の胸に当たった時、詩丹は叫ぶ。

 

 

 「あれは何だ!? 赤い時計にも見えるが...... 」

 

 

 「間違いない! あれが再生装置だ! あれを早急に破壊するのじゃ! 」

 

 

 敵の急所を確信したアルテミス博士はパイロット達に命令する。命令と同時に無数の不可視攻撃が第十天使を襲う。

 

 

 

 しかし、第十天使には傷一つ付かなかった。強力なATFが不可視攻撃を無効化したからだ。

 

 

 「ちぃ! 何だ、あの不気味なATFは! 」

 

 愛が視界に入れたATFはまるで地獄への扉を具現化したような黒と紫が入り雑じった禍々しいものだった。

 

 第十天使はその禍々しいATFに包まれ、進化する。腕は増え、剣はより鋭くなる。最強の天使は更なる強さを重ねようとしていた。

 

 「なんだ、こいつ。パワーアップしようとしてやがる! 」

 

 「皆、あれを見てくれ! 」

 

 

 詩丹が声をあげると、一同は戦慄する。第十天使は腕数本を触手のように変形させ、三号機、五号機、六号機、七号機の死体を、パイロットの死体も同時に吸収していた。

 

 

 「エヴァンゲリオンを吸収してる? 」

 

 

 「当たり前じゃ、その為の第十天使じゃからの」

 

 

 禍々しいATFは勢い良く弾け飛ぶ。同時に第十天使の背に十本の白光の翼が生える。その翼は大空にも達した。

 

 

 

 「擬似神化形態? 擬似神化形態...... 天使が神化形態になるなんて......」

 

 「理彩、これも想定内じゃ。これが第十天使、最後のハードルじゃ」

 

 

 

 ――――――擬似神化形態――――――

 

 

 仮初めの神に進化した最強の天使は雄叫びを上げる。四体のエヴァンゲリオンはその衝撃だけで吹き飛ばされそうになる。

 

 「ぐぅ! 」

 

 「ちぃ! 」

 

 

 「セトナ、セトナァァァァ」

 

 

 我を忘れたシェリアが操る四号機は不可視攻撃を連発する。しかし、第十天使は今までの超スピードとも比べ物にならない程の超高速で移動し、不可視攻撃を回避する。

 

 気付いた時には四号機の首に凶悪な刃が直ぐ側まで迫っていた。

 

 四号機は寸前のところでしゃがみ、斬撃を回避する。しかし天使の蹴りにより吹き飛ばされた。

 

 その隙を狙うかの様に八号機の不可視攻撃が第十天使を襲う。

 

 

 が第十天使またも瞬間的に姿を消した。

 

 二号機は突如現れた斬撃をかわす。カウンターのライフルでの銃撃はまるで効果がなかった。

 

 八号機は第十天使に近付き、蹴りを足元に放つ。天使をバランスを欠き、膝をついた。

 

 合わせるかのように四号機の不可視攻撃が第十天使の胸にクリーンヒットする! このチャンスを狙うかの様に八号機は光の剣をATFによって作り出し、最後の天使に向ける!

 

 

 

 「ああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

 

 タニアと八号機の渾身の一撃は第十天使の再生機能を司る赤い時計の半分を消し去ることに成功した。

 

 しかし、その代償は大きかった。第十天使のレーザーと剣を振り回す回転斬りでタニアと八号機は粉々にされた。間髪入れずに天使は八号機を触手で吸収する。

 

 「不味い! また奴は回復するぞ! 胸が塞がる前に早く再生装置を破壊しろ! 」

 

 

 アルテミス博士の言葉に黒空詩丹が操縦する二号機が動く。二号機はGナイフを長く伸ばし、第十天使の腕数本を切り飛ばす。腕は再生するが、以前より回復速度が遅い。再生装置を半壊させたせいであろう。更に二号機はEライフルで足を撃ち抜く。よろめいた天使に一刀を入れる。

 

 しかし、寸前で回避され、逆に斬撃を喰らう。二号機の右腕は宙に舞った。だが二号機と詩丹は怯まない

 

 。Gナイフによる連撃を行う。上下左右、無作為の攻撃を第十天使は全て回避するが、そのために背後の警戒を失念していた。

 

 四号機の不可視攻撃が三発連続で第十天使の背中に直撃する。合わせる様に初号機のタックルが炸裂する。第十天使は完全に体制を崩した。

 

 「今だ! 黒空、行けぇ! 」 

 

 

 愛の叫びと同時に二号機は再生装置に突きの一撃を入れる! そのまま横に切り裂こうした時、天使の刃が二号機の腹を貫通する。しかし二号機はGナイフを切り進める。

 

 「負けて、負けて」

 

 

 「負けてたまるかぁ! 」

 

 

 黒空の咆哮に供応するかの如く、二号機は光の翼を携える。二号機の力は増幅し、徐々に再生装置に刃を入れ込んで行く。更に胴体に第十天使の剣が突き刺さるが二号機は動じない。

 

 「世界を、僕らの居場所を、家族を、そして須成屋さんを」

 

 

 「壊させてたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

 黒空の願いの強さは第十天使の再生装置を破壊するには十分だった。天使の胸の中にあった赤い時計は粉砕された。

 

 「よし! 再生装置を破壊した! 詩丹早く下がりなさい! 」

 

 「ふ、副司令官、だ、駄目です。もう僕にはそんな体力は残ってません」

 

 「詩丹! 」

 

 

 

 「ああ、駄目だったか。でもずっと君のこと思っている」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「須成屋さん」 

 

 

 

 

 

 第十天使は二号機の首を撥ね飛ばし、レーザーで二号機の全身を微塵切りにし、首と共に吸収した。しかし、再生装置は元には戻らなかった。

 

 

 

 

 「黒空ァァァ」

 

 愛は思わず叫んだ。犬猿の仲と言うべき間柄だったが、アリス同様に腕は認めていた。今までなら死すら想像出来なかった。その黒空詩丹すら死んでいった。その事実を愛は全ては受け止めきれない。

 

 

 

 「初号機パイロット、力を貸して! 再生装置を破壊した今、奴を倒すチャンス。止めを刺さないと仲間達が浮かばれませんわ」

 

 シェリアの言葉に愛は突き動かされる。愛は感情の昂りを見せる。それにより初号機と四号機は供応し、初号機は擬似神化形態へと進化した。

 四号機は更なる神化を見せ、全身黄色の光に包まれる。

 

 「あれは擬似神化第二形態...... 」

 

 

 

 「シェリア、頼む。奴を倒してくれ! 」

 

 クリスの懇願に応答する様に四号機は空中へ舞う。

 

 第十天使は空に舞う四号機に狙いを定めるが、初号機のエネルギー攻撃により腕二本を失う。邪悪な三面が初号機を次なる標的にする。

 

 

 「喰らえぇぇぇぇぇ! 」

 

 

 空中から四号機の光翼より放たれた超濃度のエネルギー弾が降り注ぐ。荒れ果てた大地に次々とクレーターが出来ていく。第十天使は超高速移動で回避し続けさるも、徐々に躯の一部が欠損していく。初号機も少し離れて不可視攻撃を放っていた。

 

 

 「行けるぞ! 二人ともそのまま手を休めるな! 」

 

 第十天使の腕が飛び、躯が削れて行く。最強の天使に出来ることは移動だけだった。

 

 

 「よし、トドメですわ! 」

 

 

 四号機はエネルギーを増幅させるために行動を止める。その瞬間を第十天使は見逃さなかった。

 

 第十天使は大空へと羽ばたき、六つの瞳を妖しく輝かせる。

 

 「シェリア、逃げろ! 」

 

 クリスの忠告と同時に第十天使の無慈悲かつ冷酷なる六つのレーザーが上空から放たれた。出来上がったクレーターは切り裂かれ、地面は更に破壊される。大地はまるで一枚の不出来な絵画のようだ。

 

 六つ全てのレーザーが四号機に向かうと、四号機は高速飛行で回避する。しかし無尽蔵のレーザー軌道に、四号機は対応しきれず、光の翼を三枚焼かれる。

 

 四号機は上手く着地するが、第十天使の追撃は止まらない。地面は更に切り裂かれる。

 

 狙いを付けられていない初号機はエネルギー弾を掌から連発する。第十天使は一瞬の怯みを見せた。

 

 

 「金髪! あの時みたいに同時攻撃する! 三つ数えるから合わせろ! 」

 

 

 「分かりましたわ! 」

 

 

 初号機と四号機、愛とシェリア。二体のエヴァンゲリオン、二人のパイロットは波長をシンクロさせ、感情と力を極限まで高める。

 

 「1...... 」

 

 

 二体のエヴァンゲリオンの翼は極限まで延びる。その強烈なエネルギーは空間すら歪ませる。

 

 

 「2...... 」

 

 

 初号機、四号機共に上空にいる第十天使に向け、手を掲げる。しかしそこには敵の姿はなかった。

 

 「二人とも下だ! 第十天使は地上にいるぞ! 」

 

 クリスの言葉に二人は直ぐ様、視点を地面に移す。そこには凶悪な瞳を極限まで輝かせる第十天使が居た。

 

 「3! 」

 

 

 愛の合図と共に初号機と四号機は超濃度のエネルギー砲を放つ! 白と黄色のエネルギーは最強の天使を包み込む!

 

 「「行けぇぇぇぇぇ! 」」

 

 二人の叫びと共にエネルギーは最高潮に達する。極限の波動は成層圏を突き抜け、宇宙空間に飛び立っていった。

 

 

 そこにはただ空高く白煙が舞い上がるだけだった。

 

 

 二人のエヴァンゲリオンパイロットは安堵の溜め息を付く。

 

 

 

 「やった、な。金髪」

 

 

 「そうですわね、やりましたわ」

 

 

 シェリアは涙を流す。それは安堵からではない。一番大切な人を失った悲しみからだ。

 

 

 「セ、セトナ。セトナ。守ってあげられなくてご、ごめんね」

 

 

 「シェリア...... 」

 

 愛は父親のこともあり、シェリアに同情を示した。

 

 「金髪、緑髪もあんたとこの世界が生き残って喜んでいるはずさ、さあ帰ろう。まだやることはある」

 

 愛の言葉に副司令官とクリスは驚くが、シェリアは救われた表情を浮かべる。

 

 

 

 「そうですわね、私達にはまだやることが...... 」

 

 

 シェリアが言い終わる前に、白煙から強烈な光が放たれる!

 

 愛が気付いた時には後方で十字の形をした巨大な爆発光が出現していた。あまりの爆風に初号機ですら持ち上がった。

 

 

 「ちぃ! 一体何だ! 」

 

 

 「!」

 

 

 愛の視界に入ったのは上半身が抉り取られた四号機の姿だった。愛は突然の出来事に絶句する。

 

 

 「シェリアァァァァァァァァ! 」

 

 

 クリスは発狂する。宮本副司令官は言葉も出なかった。

 

 

 四号機の下半身はあっと言う間に触手に吸収される。

 

 

 愛は身震いする。白煙から表したのは両側面の顔を削り取られながらも生き延びた第十天使だった。

 

 

 第十天使は笑う、嗤う。まるで人間と同じ様に笑みを浮かべる。しかしその邪悪な笑顔は人間には決して真似は出来ない。

 

 

 愛は此れまで感じたことのない恐怖感に包まれる。

 

 黒空詩丹、苟アリス、シェリア・シャルウェルツェン、燃山マサル、ガドウ・シャブル、セトナ・ブライト、タニア・那間・翔子

 

 

 仲間は全員死んだ。全員たった一体の天使に殺された。

 

 

 愛は震えが止まらず、失禁する。自分の死がこれ程までに近付くのは初めてである。

 

 最強天使の究極の恐怖の笑みは愛を絶望という衣に包む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 **************** 

 

 

 

 

 アマノン統括司令官、林原結希は天上ウル帝国内に用意された部屋で観測者達と会議をしていた。部屋の壁を使ったモニターに観測者達が映し出される。

 

 

 「福音の刻は近い。神の目的はもうすぐ果たされる」

 

 

 

 「我々の役目もそろそろ終わりだ。あとは帰るだけだ。神と共にな」

 

 

 

 「皆、今までご苦労だった。個は無くなろうともこれからは神の、いや真の神の部品として役目がある。結希、お前もご苦労だった」

 

 

 「いえ、御父様。私はただやるべきことをやっただけです」

 

 

 「そうか、お前は強いな。まあいい、あとは戦いを見届けるだけ...... 」

 

 

 「何だ! お前は! 」

 

 

 「ぎゃあぁ」

 

 

 「や、やめろぁ、ぁぁぁぁぁ」

 

 

 「御父様! 一体何があったのですか! 」

 

 「早く、早く、逃げろ、結希」

 

 

 父の言葉を最後にモニターの通信は途絶えた。

 

 結希は茫然とした。一体何が起こったのかまるで分からなかった。しかし父の言葉の通りにしようと考えた時には遅かった。

 

 ドアノブが回ると扉が開く。部屋に入って来る人物を見て、結希は目を細めた。

 

 

 ――――――セフィラム――――――

 

 紫色の翼を持った人間大の天使は片手にロンギヌスの槍、背中にカシウスの槍を携えながら結希に近付く。

 

 

 

 「あら、貴女だったの。随分暴れるわね、最後の足掻きって奴かしら」

 

 

 「福、福音の刻は...... 起こさせない。あ、あの子の残した世界は、壊させない」

 

 セフィラムはロンギヌスの槍を結希に向けると、セフィラムは更に結希に近付く。結希は軽く嗤う。

 

 

 

 「あらあら物騒ね、エヴァンゲリオン初号機パイロットの母親同士仲良くしましょうよ」

 

 

 

 

 

 

 「ねえ? 碇ユイさん...... 」

 

 

 

 

 

 

 シン世紀 エヴァンゲリオン アイ

 

 

 第二十三話 完

  

 

 

 

 

 

 

 

 

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