人は何故人を傷付ける?
校内暴力、誹謗中傷、無視、疎外、民族差別、職業差別、年収差別、性別差別、趣味差別、学歴差別、人種差別、容姿差別、万引き、窃盗、強盗、傷害、暴行、恐喝、詐欺、誘拐、監禁、横領、侮辱、強姦、輪姦、殺人、戦争、内戦、紛争、虐殺、隔離、貧困、格差、不平等、搾取、難民問題、虐待、夫婦間暴力、雇用格差、人身売買、強制労働、児童労働、長時間労働、低賃金
楽しいから?
優越感に浸りたいから?
不安に駆られているから?
疎外されていると思っているから?
やられる前にやれと思っているから?
寂しい、孤独と感じているから?
相手を憎んでいるから?
傷付けてもいい人間だと認識しているから?
見下しているから?
どうでもいいから?
疎外したいから?
はぶきたいから?
ムカつくから?
イライラするから?
自分の邪魔だから?
他人だから?
自分ではないから?
人は分ける、自己と他者を
内と外を
ここまで自分で、後は他人
そこまでは自己で、後は外
当然と言えば当然
でも人はその境界線の線引きを時と場合によって変える
自分と近いか、趣味は合うか、自分にとって得な相手か、自分にとって損ではない相手か、自分より立場は上か下か、自分と会話は弾むか
様々な要因を鑑みて自己と他者の境界線はその形を容易に変える
仲が良かった人間が校内暴力を受けるのを無視したり、馬が合わなくても立場が強そうな人間にすり寄ったり、趣味の合わない人間に嫌々付き合ったりする
融通無碍に境界線の形を変える
傷付けたくないから?
傷付けられたくないから?
自分には甘いから?
ねえ? 何故?
「知らない! 聞きたくない! 」
エヴァンゲリオン初号機パイロット、林原愛は両手で耳を押さえ、叫ぶ。自分を攻め立てる声にもう耐えられそうもない。
しかし声は止むことはない。今度は女性二人の声が聞こえる。愛が薄目で前を見ると、二人の女性の形の透明な影のようなものが見えた。一人は青髪のショートヘアーの女性に見える、見覚えがある女性だ。もう一人は茶髪のツインテールの女性の姿だ。
二人は愛に話し掛ける。
「あんた、バカァ? 何時まで逃げてんのよ? 」
「現実を見ることは辛いものね」
「そうやって違う、違うって責任転嫁してるだけじゃない! 」
「そうしないと耐えられないのね」
「自分のやったことに目を背け続けるつもりなの!? 」
「それが一番楽だものね」
「何だよ! 貴様らは! 消えろ! 」
「そうして相手を否定すれば済むと思っているのね」
「今まではそれで済んでいたからでしょ」
「あなたは今まで他人に甘えてばかりいたのね」
「全て他人のせいにすれば楽々だもんねぇ」
「何なんだよ! お前らに何が分かる!? 」
「分からないわ。人間は他人の気持ち、心なんか分からないもの」
「他人から見てあんたは酷すぎるってのよ、少しは自分を客観的に見たらぁ? 」
「客観的に自分を見たら、自分の心が耐えられないものね」
「だから他人にあたる、傷付け続ける、そうでしょ? 」
「自分の居場所が作れないものね」
「あんたのすることは人を傷付けるか、セックス位だもんね」
「セックスの何が悪い! 人は皆寂しいんだよ! やりたいんだよ! 気持ちよくなりたいんだよ! 」
「セックスは気持ちいいもの、誰でも好きだもの」
「お互いの身体を貪って、重ねあってイクまで続ける。出来るならずっとしたいわよね」
「セックスしてる間は『自分』を忘れられる。現実から離れられる。逃避出来る」
「依存してるのよ、セックスに。逃げてるだけなのよ、セックスにね」
「舐められて、吸われて、入れられる。その時人は一人じゃない、擬似的にでも他人と一つになれる」
「でもあくまで擬似的、本当に一つになれる訳じゃない。だから人はセックスが好きなのよ、完全に一つになれる訳じゃないから何回も繰り返す。一体感、他者からの承認が欲しいから」
「幻想だと思っていても繰り返す、それが人の幻想の続きだから」
「キスして、吸って吸われて、色んな体勢を試して、射精と昇天を繰り返す。これが人間かもね」
「幻想だからなんだ...... 他者からの...... 他人から承認が欲しい、他者から認めてほしい。人間なら当たり前だろうが! 」
「そうよね、人間なら誰しも他人に認めて貰いたい、誉めて貰いたい。当たり前よね? 」
「承認欲求が全てなのね、承認欲求のためなら何でもするのね」
「他人にセクハラメッセージを送ったり、犯罪行為をアップしたり、嘘をネットに上げたり何でもアリだもんね」
「何度も『あるべき画像』を作り出すのは骨が折れるもの、それに見合った対価が欲しいものね」
「承認、承認、承認、結局他人、他人、他人なの。自分が自分であるために必要なのは他人なのね、バッカみたい」
「他人あっての自分なのね、外があっての内なのね」
「他者に振り回される人生って人生のものって言えるの? 自分の人生は一体どこにいったの? 」
「他者との絆、出合いに感謝と誤魔化して終わるだけだもの」
「他人の価値観や人生に乗っかるのは楽だもんね」
「ただ自分を見つめ直すことから逃げてるだけなのに」
「ありのままの自分から逃げてるだけなのよ! まったくバッカみたい! 」
「自分で自分が許せないのね」
「自分で自分を憎んでいるだけなのよ」
「現在の価値観と比べて、自分が外れているから、ずれているから自分が憎いのね」
「それがもうずれてんのよ」
「アニメや漫画に逃げてるだけなのね、心の底からアニメ、漫画を愛してないのね」
「アニメや漫画が好きなら堂々とそう言えばいいのよ。他人の価値観を捨てきれないから、心のどこかで肯定するからあなたの中でアニメや漫画がどこか後ろめたいものになってしまう。だからアニメや漫画に逃げることになってしまう」
「愛しているというより逃避への道具になってしまっている」
「アニメや漫画だけじゃない。彼氏、彼女、友達、仕事...... あなたは本当にこれらを大切に思っているのかしら? 」
「自分の承認欲求を満たすため、本当の自分に向き合わないための逃避の言い訳に使っているだけじゃないの? 」
「『他』に目を向け続ければ自分を見なくてもすむものね」
「ただあなたは逃げてるだけよ」
「そうよ、逃げてるだけよ」
「逃げてるだけ」
「逃げてるだけ」
「逃げてるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「逃げるだけ」
「ただそれだけ」
******************
黄金の黄昏に染まり行く公園に少女は一人ぼっち、銀髪の少女はただ一人ぼっち。
誰も乗っていないブランコ
夕焼けに染まる滑り台
崩れた城があるだけの砂場
銀髪の少女は皆が帰るべき居場所に帰っていき、誰も居なくなった公園で泣いていた。一人ぼっち、家に帰っても一人ぼっち。
銀髪の少女はただ涙を流す。それは一人ぼっちでいることからの寂しさからか、居場所がないことからくる悲しみからか。
街の全てが黄金に染まる時、全てが黄金の畑に見える時、一番大切な人が近寄ってくるのが見えた。
「お、お父さーん! 」
「愛、遅れてごめん」
父の背に隠れてもう一人いた
「愛、大丈夫だった? 」
「か、母さん? 来てくれたの? 」
「心配だから二人で来たのよ。さあ愛、三人で帰りましょう」
父と母が微笑む。愛は二人の手を繋いだ。
「うん! 帰ろ! 」
*******************
「これは私の妄想? 」
現実か否かは問題じゃない。これは君が望むゆく世界、あるべきと望んだ世界
「これが私の望んだ世界? 私の真の世界...... 」
そう人には在るべく姿がある、居るべく居場所がある。しかし人は迷い、苦しみ、悩み、もがき足掻く。なかなか真の自分のセカイには辿り着けない。しかし近付くことは出来る。それが人生、それが歩み
「私も歩ける...... かな? 」
それは君次第。どこに行くのか、何処まで進むのかも決めるのは君次第だ
黒空詩丹が愛に話し掛ける
「君は多くの人間を傷付けた」
苟アリスが続く
「私達、特に須成屋を傷付けた」
ガドウ・シャブルも続く
「お前は分かっているはずだ」
燃山マサルも問う
「もう目を背けるなよな? 」
タニア・那間・翔子も問う
「これが最後のチャンスよ」
セトナ・ブライトが念を押す
「もう逃げることは出来ないよ」
シェリア・シャルウェルツェンが語る
「あなたの心の闇はあなたにしか克服出来ない。私の闇は私にしか克服出来ないように」
須成屋真里が愛に話す
「さあ、あなたの心を見て、愛」
******************
私達は友達だった。一年半前か、二年前か、はっきりとは覚えてないけど私達は友人だった。初めて会った時のこと、はっきりと覚えている。
「林原さん、私は須成屋真里。宜しくね」
「私は林原愛。宜しくね」
「へえー 須成屋さんは陸上部に入っているんだ」
「まだ大会とか出たことないけどね。その内出るつもりなんだ」
「凄いね、須成屋さんは。私はただエヴァンゲリオンの操縦訓練をしているだけよ。自分で選んだ道だから文句は言えないけど」
「林原さんの方が凄いよ。世界を守るロボットを操縦するなんて誰にも出来ることじゃないわ。尊敬するわ、世界を救うなんて凄いことだもの」
「あ、ありがとう。須成屋さんにそう言われると勇気が出るわ」
「だって本当にそう思うんだもの。林原さんは一番尊いことをしているわ」
「私、家庭で色々あって、今は訓練ばかりで彼氏も居たことないし、彼氏どころか友達も居ないの...... も、もし良ければ友達になってくれる? 須成屋さん」
「うん! 勿論だよ、林原さん! 私も家庭面で色々あって苦しみ思いもするんだ。林原さんに親近感を感じるんだ、宜しくね!林原さん」
「ありがとう、須成屋さん」
それから私達は多くの時間を共に過ごした。同じクラスで同じグループ。トイレに行く時も、教室を移動する時も、休み時間も、放課後も一緒に居た。一緒に写真を撮って、食べ歩きして、ゲーセン行って、歌を歌ったり、遊園地に遊びに行ったりした。私はもう一人暮らしをしていたから週末になる須成屋はよく泊まりに来ていた。夜更かししながら、誰が好きとか誰と付き合いたいとか夜深くまで話ししていた。
しかし、私のエヴァンゲリオン訓練が忙しさを増すにつれて、須成屋とは疎遠になっていった。初めて出来た親友とも言えるかけがえのない友達......
その友達と疎遠になっていくのは辛かった。
私は見た。夕日が沈みゆく黄昏の時、部活働を一所懸命に行う須成屋の姿を
全力で走って、跳んで、駆け抜ける親友の姿を
そして部活働が終わったら、二人でいいねと話ししていた男子とデートに出掛ける所を
私は青春も、恋愛もない訓練付けで親友は部活働も恋愛も謳歌している。自ら選んだ道とは言え、親友との隔絶した人生を恨んだ。そして段々と須成屋のことも怨んでいた。
須成屋への暴力の始まりは覚えていない。たぶん素敵な彼氏を掴んだせいでクラスで妬まれている雰囲気に乗じて私が始めたんだと思う。
私達は支配する側とされる側の関係になった。
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君は疎外感を感じていた。父と離ればなれになり、母と仲違いし、親友には見離されたと感じた。世界が君を見放したと感じた。
君は凄まじい孤独感に苛まれていた。世の中の全ての人間が敵に思えてきた。敵だらけのセカイから身を護るために攻撃的になった。自分の心の隙間を埋めるために他者を傷付け続けた。
青髪の女性が話す
「人間が他者を傷付けるのは、傷付けないと救われないと思っているから。傷付けないと自分が傷付けられると思っているから」
茶髪の女性が話す
「傷付ける以外方法がない、害する以外に自分に道はないと誤認してる」
詩丹が話す
「君はそれしか方法がないと誤認した、正確には他の方法を見てみぬ振りをした」
アリスが話す
「それがあんたの罪、傷付ける以外に道を見つけないで、他者を傷付け続けた、それが罪」
マサルが話す
「他者を見続けて、自分を見なかったんだな」
ガドウが話す
「その方が楽っちゃ楽だ」
タニアが話す
「他人の気持ち以上に自分の気持ちを大切にしなかった」
セトナが話す
「自分は一番近い他人だからね、自分を大切に出来ないと他者も大切に出来ない」
シェリアが話す
「しかしそれは貴女の罪を免罪するに値するものではありませんわ。貴女はどうするのですか? 」
林原結希が話す
「私への謝罪は形だけだった部分はあるかもしれないけど、本心からだった部分もあったはずよ。愛、勇気を出して」
林原光希が話す
「愛、自分と他者のセカイの構築は悩み、過ちを正しながら行っていくものだ。さあ愛、踏み出すんだ」
「私は許されるの? 散々酷いことしてきて謝罪しても聞き入れてくれることすら無いんじゃないの? 」
林原光希が話す
「愛、許されるか否かじゃない。自分が傷付けた他人に対して何を行うかなんだ。自分の生きざまをどうするかなんだ」
「私が罪に対してどうあるべきか...... 」
林原結希が話す
「あなたはどうすればいいか、分かる、分かっているわ」
「私は」
須成屋真里が話す
「私は聞くわ、愛。あのお互い語りあった時と同じように」
愛は大粒の涙を流した
もう自分には罪を謝罪する機会などないと思っていた。もう自分は他人を死ぬまで傷付けるしかないと思っていた。もう自分の生きざまの転換は出来ないと認識していた。
だが須成屋真里から謝罪を聞くと言われた。自分が一番傷付けた人間から言われた。
愛の涙は止まらなかった。
「ぐ、ぐっ...... ぐす ご、ご、ご」
「ごめんなさい」
「皆、皆、ごめんなさい。傷付けてごめんなさい...... 苟も、黒空も、クラスの皆も、先生も、他のエヴァンゲリオンパイロットの皆も、母さんも、そして須成屋、皆本当に...... ごめんなさい......」
「人の彼氏を寝とってごめんなさい、疑ってごめんなさい、暴言吐いてごめんなさい、暴力振るってごめんなさい、殺そうとしてごめんなさい、人生を否定してごめんなさい......」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい...... 許して貰えないだろうけど、傷は癒えないだろうけど、本当にごめんなさい...... ううっ...... ひぃ......ううっ...... ごめんなさい...... すいませんでした...... ごめんなさい......」
須成屋真里は軽く微笑んだ
「私は許すよ、愛」
「え? 」
「あなたにされたこと、思い出すと今でも恐怖感が吹き出す。あなたの顔を見ただけでも身がすくむ。でも私は許すよ、愛。あなたの謝罪、受け入れたわ」
「ううっ...... す、須成屋、さん...... あ、ありがとう」
「だって人は許さないと前に進めないもの。それに私達、友達だもの...... 」
「ううっ......須成屋さん...... ありがとう、本当にすいませんでした...... 須成屋さん 」
アリスが応答する
「しゃーない、私も許すか」
詩丹も続く
「僕も許すよ」
林原結希も続く
「私も許すわ、愛」
「み、みんな....... 本当に、本当にごめんなさい...... そしてありがとう...... 」
セトナが話す
「まだ君にはやるべきことがあるよ」
シェリアが続く
「そう、世界を、私が憎んで愛したを助けて」
ガドウも続く
「俺達にはもう手助けくらいしか出来ねえ」
マサルも話す
「もうあんたに託すしかねえみたいだ」
タニアも続く
「もう終焉まで間近だ、頼んだよ」
アリスも続く
「あたしらもついてるから行ってきて、お願い」
詩丹も続く
「須成屋さんを救えるのはもう君だけだ、頼んだよ」
青髪の女性も愛に話す
「このままではあの時の繰り返しになってしまう。お願い、あの人が受け入れた世界を救って」
茶髪の女性も続く
「あいつの作ったこの世界を救えるのはもうあんたしかいない、頼んだわよ」
林原結希が愛に話す
「愛、辛い道を歩ませてごめんなさい。でももう愛に託すしかないの。お願い、世界を救って」
林原光希も愛に話す
「愛、皆も、そして私も側にいる。行こう、世界を救いに」
須成屋真里が話す
「アイ、お願い....... 皆の世界を取り戻して...... 」
アイは涙を拭う。その表情は一点の曇りもなかった。
「わかったわ。私は世界を救う。皆の居場所であるこの世界を! 」
シン世紀 エヴァンゲリオン アイ
最終話 完