シン世紀エヴァンゲリオン アイ   作:ケプラー星人

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第三話 第四の生命の種

 対天使対策部隊アマノン統括司令官、林原結希は壁、床、天井が全てモニターの異質な部屋にいた。中央にある椅子に座りながら眉間にシワをよせ、険しい顔をしている。

 部屋にあるモニターが区分けされ、その一つずつにバツ印がしてある仮面をした者達が映し出されている。

 奇妙な姿をした異形の者が次々と言葉を互いに投げ掛けていく。

 

 

 

 「禁姦の子......『母』と『弄ばれし息子』の結晶......」

 

 

 

 

 「擬似的、一時的といえ、もう神化を果すとは......な」

 

 

 

 

 

 「『U計画』に支障をきたすようなことはあるまいな?」

 

 

 

 

 

 「擬似神化程度では到底『仮の真の神』等創造出来はしまい」

 

 

 

 

 

 「『神』達は何と仰っている?」

 

 

 

 

 

 「『神』達は些末な事象など気にはしない。そのために我等が『観測者達』が存在するのだからな。

 時に末席の林原結希......」

 

 

 

 

 「なんでしょうか?」

 

 

 

 

 呼ばれた林原結希は椅子から立ち上がる。

 

 

 

 

 

 「お前は『駒』の者達と『神』のことを『カレルレン達』などと嘯いているようだな......」

 

 

 

 

 「『神』達は些末な事象など気にしないのでは?」

 

 

 

 「否、忠誠の問題だ。『駒』達にも『天上計画』の中に組み込むべきだからな」

 

 

 

 結希は髪を靡かせ、返答する。

 

 

 

 「以後気を付けます。『神』達は今何をしているのですか?」

 

 

 

 「知れたこと。『神の舟マハノン』で待っておる。『福音の刻』をな」

 

 

 「約10万年前、『神の児』が起こした『補完』とは違う、我等が起こさんとするのは『ヴァルハラの奥』『ラグナロクの先』......」

 

 

 「だからこそ『神』達は来られたのだ、地球(ここ)にな。」

 

 

 「結希よ......」

 

 結希はその声に即座に反応する。

 

 

 

 「お父様!」

 

 

 

 

 「結希、我々は『神』達の手であり、足なのだ。我々は『神』達の礎に過ぎんのだ。その存在が創られた時からな。そのことを忘れてはならんぞ......」

 

 

 

 結希は軽く頷きながら、目を澱ませる。『神』『神の計画』からは逃れられない......絶望感にも諦めにも似た想いが結希の胸中に去来する。

 結希は再び中央の椅子に座りながら、「仮そめの支配者」達の質疑応答に混ざり行く......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *******

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カリス共和国、旧南フランスから旧ポルトガルまでを股にかける領土を持つ世界有数の経済大国であり、全世界の国家が加盟する世界連盟の中でも強い影響力を持つ政治大国でもある。

 尤もバルバリア王国と同じく、対天使用人型兵器―――――エヴァンゲリオン――――を多数所有している対天使対策部隊『アマノン』の本部を「運良く」抱えることになり、自然と各方面のイニシアティブを取る現状となった。

 

 当然『アマノン』があるジャベリン区、ジャベリン区内のヘリオン市には途方もない――――その数字を見た一個人には溜息しか出ないような莫大な補助金が附けられ、しがないベットタウンだったヘリオン市はカリス共和国の中でも類がないほどの栄えた都市になった。

 勿論、インフラ、条例、商業、住宅街地域の位置等その都市構造は、『アマノン』本部を中心に対天使用に構築されているのは言うまでもない。

 

 

 

 ヘリオン市中央から3キロ離れた森林の中にある『アマノン』本部がある。本部から1.5キロ手前から関係者以外は立ち入り禁止、森林の中にも監視カメラがところ狭しとあらゆる場所に配置されている。

 本部まで到達するためには9つのゲートを潜らなければならず、一つのゲートをパスするには政府政務官クラスでも5分から10分掛かる。そのため、カリス共和国政府関係者からは頗る評判が悪い。

 

 

 

 その一国の政府の力すら及ばない「悪評の道」を黒色のライダースを着た銀髪の少女が自動化バイクで駆けぬく。少女が通ろうするときにはゲートは開いている。ゲート警備員、担当者は銀髪の少女と目を合わせようともしない。

 

 長く、黄昏の光に当てられ、眩しいほどに煌めく銀髪の髪を風に靡かせながら少女は長い道を疾走する。

 

 

 

 本部の正面玄関から向かって、裏手にある分厚く赤い塗装がしてある鉄製の扉の前に、黒髪の女性が腕を組ながら立っている。肩のワッペンには『アマノン』の文字。真理谷ルイ戦術指揮官だ。

 

 「愛、待っていたわよ」

 

 

 銀色ロングヘアーの獣のような瞳をした少女、エヴァンゲリオン初号機パイロット、林原愛は目的地に着いて停止した自動化バイクからゆっくり降りた。

 黄昏から空が漆黒に染まりつつある転換期に吹く風は生暖かい。少女は心地好さと不快さ、両方感じながら、真理谷ルイの近くに寄り、話し掛ける。

 

 

 

 「今日は何用よ。くだらない用だったら......許さないわよ?」

 

 

 愛特有の他者を威圧する物言いをルイは軽くかわす。

 

 

 「まあ、いいから入りなさい」

 

 ルイは赤い扉の側にある存在認証システムに触れて扉を開ける。ルイが中に入っていくと、愛も渋々扉の奥へと進む。中は薄暗く、ジメジメと湿気が多い、暫く人の出入りがなかったのだろう。長い、廊下にしては余りにも長い廊下を進んでいく。

 

 

 

 

 20分位歩いたか、何時まで続く解らないほど道のりに漸く終止符が打たれた。黒色が薄気味悪い扉が見え、扉周辺は廊下が広くなっていた。

 そこには人間が二人いた。

 

 一人は黒髪のスラリとした体型の少年、もう一人は白髪のポニーテールで目は青と紫色のオッドアイを持つ小柄な少女だった。

 

 

 「......帰るわよ、何これ」

 

 

 二人を見た瞬間、愛は踵を返そうとする。表情は明らかに苛つきを隠さなかった。

 それを見たルイは止めようとする。

 

 

 

 「愛、待ちなさい!これから三人で見てもらいたいものがあるのよ。それを見て分かってもらいたいの、自分の置かれた状況を」

 

 

 

 「なら、私は後にするわ、コイツらと同じ空気を吸うのも嫌なの」

 

 

 

 愛は後ろを振り向き、また長い廊下を歩こうとしていた。

 

 

 

 「ま、待ちなさい!愛!まっ――――――――――――――」「逃げるのかい!?」

 

 

 

 

 ルイの言葉を遮り、愛を挑発したのは黒髪の少年、黒空詩丹。第二ヘリオン学校での愛のクラスメイトでもある。

 

 獣のような瞳はつり上がり、顔には血管が浮き上がる。黒空詩丹の挑発に愛は激昂する。

 

 

 「黒空ぁ、なんっていった?てめぇ!」

 

 

 

 「逃げるのか?と聞いたんだよ。僕達が普段君の行為の『妨害』をしているのが気に入らないんだろうけど......今、ここでは関係無いだろ?今は自分のやるべきことに専念すべきではないかな?」

 

 詩丹が意見を述べると、隣の白髪の少女が手を挙げる。

 

 

 「......同意、黒空にすべらかく同意......」

 

 

 

 「てめえらぁ......」

 

 

 

 「いい加減になさい!早く三人で入るわよ!入らないと処罰があるわよ!」

 

 ルイは声を張り上げると黒色の扉を開け、中に入っていった。鍵は掛かっていなかったようだ。

 愛を見ながら前の二人が中に入って行く。

 

 

 「ちっ!」

 

 地団駄を踏みながら、愛は激しく肩を動かし、黒色の扉に手をかけ、中に進む。

 

 すると中には車が何十台も停められるスペースのあるリフトがあった。そのリフトには宮本理彩アマノン副司令官の姿が見える。腰に手を当てて、此方を鋭い目付きで見ている。

 

 

 

 

 「待っていたわ......

 

 エヴァンゲリオン初号機パイロット、林原愛。

 

 同じくエヴァンゲリオン二号機パイロット、黒空詩丹。

 

 同じくエヴァンゲリオン三号機パイロット、苟アリス」

 

 

 「あなた達に見てもらいたい『存在』がいるの。それを見てを決めてもらいたい」

 

 

 「何をです? 」

 

 

 

 苟アリスが宮本副司令官に尋ねる。

 

 

 

 「......覚悟よ。

 ......さあ、早くリフトに乗って!」

 

 

 

 

 全員乗り込んだ所で黄色の警報ランプが光り、回る。警報がリフト構内全体に鳴り響き、巨大な獣が唸るような重々たる金属音を放ちながらリフトは底が見えない程深い暗闇の中を下降していく。

 

 

 

 

 「久し振りね、愛。どうして親友の子供って大きくなるのが早く感じるのかしら。同じ時間軸に生きているとは思えないわ。ついこの間まで私の腕のなかで抱いていたのよ?」

 

 

 目のあった宮本副司令官は愛に声をかける。

 

 

 「そう......ね......久し振りです、理彩さん」

 

 

 「ライダース姿も似合っているわよ、愛」

 

 

 愛は少し頬を赤くした。

 

 

 

 

 

 

 !!!!!!!!!!

 

 

 

 

 当事者を除く、その場にいる全員が衝撃を受けた!

 あの、あの誰に対しても――――――恐らくアマノン統括司令官である母親に対しても非常に威圧的、攻撃的な態度、行動、言動をとる林原愛が普通の態度、しかもさん付け、敬語で話すとは誰しも思いもよらなかった。

 

 

 林原結希司令官と宮本副司令官が旧知の親友の仲なのは、アマノン関係者なら周知の事実。それにしてもあの暴虐無人の林原愛がここまで周囲の人間達と違う反応を見せるとは......

 

 真理谷ルイは愛の態度に固まって、愛をじっと見つめる。

 

 

 

 

 「ルイ、何ずっと私を見てんのよ!気色悪い!」

 

 

 

 

 「い、いや別に......」

 

 

 ルイは咄嗟に下を向く。 

 

 

 

 

 

 *******

 

 

 

 

 

 

 微妙に重苦しい空気の中、リフトは下降を続けた。道中10箇所の円盤型のゲートが開くのを待ちながらいよいよ最下層に到達する。一時間、いや二時間は下降を続けただろうか......

 目的地は明らかにアマノン司令部より深い所にある。こんな深地下にいったい何があるというのだろうか?

 エヴァンゲリオンパイロット達は未知との遭遇に不安を抱いていた。

 

 

 

 

 ガシャン!

 

 

 リフトは最下層に着き、大きな金属音を出しその動きを停止した。

 

 「着いたわよ」

 

 宮本副司令官がリフトから降り、目の前を扉を開ける準備をしている。

 扉と言っても高さは優に100メートルは超そうかという規格外の鉄の塊、いや恐らく鉄より遥かに強度がある素材で創られているであろう巨大な扉が悲鳴にも聞こえる音を立てて開き始める。

 

 

 「あなた達、何故『天使達』がここ―――アマノン本部に襲いかかると思う?」 

 

 宮本副司令官がエヴァンゲリオンパイロット達に問いかける。

 

 

 「と言ってもまだ一回しか襲撃を受けてはいませんが......ただの偶然と言うことも......」

 

 

 黒空詩丹が返答する。

 

 

 「いえ、偶然ではないわ。『天使達』はこれからもここを襲撃し続けるでしょうね。『これ』がある限り」

 

 

 規格外の扉が唸り声を上げながら半分まで開いていく。漆黒に近い紺色をした巨大な存在が姿を表していくが余りにも巨大過ぎて、全体像が見えずどんな輪郭かすら認識出来ない。

 

 

 林原愛が吸い込まれるように前に身体を動かし、言葉を放つ。

 

 

 「理彩さん......これは......一体......何......? 」

 

 

 「愛、それ以上前に出ちゃ駄目よ。特殊性レーザー壁が張られているわ。人間なんかあっという間に分子に変換されてしまう。万一突破出来ても、超絶と言ってもいいATFに触れたらエヴァンゲリオンでも瞬く間に蒸発してしまう。」

 

 

 規格外の巨大な扉はもう眼前にはない。開ききったからだ。

 

 

 「―――皆、良く見なさい―――――此れが第四の生命の種―――――――――『カイン』よ―――――――――――――」

 

 

 第四の生命の種、カイン。

 

 規格外の扉が開いた先の広いという言葉も追い付かないほど広いスペースに居た、その広い空間ギリギリに収まっている紺色の巨大な存在――――

 

 

 LCL、GCLにも似た液体に浸っており、寝ている様にも見える。頭から背中にかけて背ヒレのようなものがあり、爬虫類を思い浮かべる。完全体ではないのか、『カイン』身体全体に薄い膜が張られている。顔らしき部分も完全には出来上がっていないようだ。

 『カイン』の鼓動が鳴り響く度に空間が微かに揺れる。もし『カイン』が動き出したらどんな事態になるか、容易に想像出来る。

 

 

 「生命の種――カイン......」

 

 何時も強気で周りを圧倒する愛も、想像の埒外の存在を前に圧倒され、言葉も録に出ない。

 

 

 「これが『天使達』の標的であり、アマノン本部がここにある理由よ。」

 

 

 黒空詩丹、苟アリスも驚愕しているのか、沈黙を続けていたが、苟アリスが片手を挙げ、宮本副司令官に質問する。

 

 「『天使達』は何故、この『カイン』を狙うのですか?」

 

 

 「詳細はまだ分からないわ。ただSSシミュレーションの結果、高エネルギー生命体が自分を生み出した生命の種とは違う生命の種と接触、融合すると世界が滅びるほどのエネルギーを放出するとされているわ。『天使達』はそれが狙いかもしれない。」

 

 

 「『カイン』は第四の生命の種と宮本副司令官は仰っていましたが、第一、第二、第三の生命の種はどこにあるのですか?」

 

 

 黒空詩丹が疑問を投げ掛ける。

 

 

 「それはまだ言えないわ。ただ第三以外は『カイン』と同じく『天使達』の標的対象よ」

 

 

 詩丹は暫く沈黙しながら、さらに思考を進める。

 

 

 「『カイン』が生命の種というからには何か生命を生み出したはずです。その生命は?」

 

 

 宮本副司令官は目を細めて答える。

 

 

 「......まだ『カイン』から生まれてきた生命は確認されていないわ」

 

 宮本副司令官はエヴァンゲリオンパイロット三人の方を向き、高らかに声を張り上げる。

 

 

 

 「もし万一―――この『カイン』と『天使達』が接触、融合でもしたら――世界は......終わる。何としてでもそれだけは阻止しなければならないわ!そのことを強く認識してほしい......そう思って今日はあなた達に『カイン』を見せたのよ」

 

 

 「でもさっき理彩さん、『カイン』からは超絶的なATFが張られていて、エヴァンゲリオンすら蒸発するって言っていたわよね。私達が積極的に守ることもないんじゃない?エヴァンゲリオンが触れた瞬間、消滅するなら『天使達』だって消滅するわよ。」

 

 林原愛が問いかける。

 

 

 

 「愛、『天使達』を甘く見ては駄目よ。奴らの『EATF』はATFとは似て非なるもの。中和されたら御仕舞いよ。」

 

 

 

 

 

 

 「なんですって!!分かったわ!すぐに行く!」

 

 端末機で会話していた真理谷ルイが大声を上げる。

 

 

 「何かあったの?真理谷戦術指揮官」

 

 

 「宮本副司令官、大変です!『第三天使』がカリス共和国領海に出現しました!時速1ベルツでアマノン本部に向かっています!」

 

 

 「!噂をすれば......進行スピードが遅いのが幸いね。さあ、皆!早く戻りましょう!『天使達』を撃退しないと未来はないわ」

 

 

 

 

 

 

 **********

 

 

 「フフフ、理彩ったら名演技じゃない」

 

 今までのやり取りを林原結希はアマノン司令部司令官室のモニターで観察していた。テーブルには酒と飴が置いてある。

 

 「『カイン』と『天使達』が接触したら世界が滅びる―――――なんて嘘八百並べちゃってさ。まあ、それでいいわ。お子ちゃま達が張り切る理由にはなったでしょ」

 

 

 

 結希は酒と飴、同じに口にいれた。

 

 

 「早く『U計画』進めて貰わなきゃ困るしね」

 

 

 

 *********

 

 

 

 

 

 

 

 地上に向かい昇っているリフトの上で愛は情報を整理し、思索していた。

 『カイン』『天使達』『他の生命の種』

 自分にはまだ理解出来ないことがあることに苛立ちを感じていた。しかし自分は邪魔するものはただ排除するだけだ。父親が去ったあの日から......

 

 愛は過去を心に固く閉じ込めたまま、下を向き、ただ他者への怒りの解放の機会を待つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シン世紀エヴァンゲリオン アイ

 

 第三話 完

 

 

 

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