今、いる場所はスタジオだった。何の変哲も無いスタジオ、カヲルもアスカもレイも皆、出て行った物語の終わりの果てで愛はシンジに語り掛ける。
「もう終わりなのね」
碇シンジの表情は全ての精算を済ました、その思いが詰まっている。
「うん、もう終わりだ。僕らの物語も君の物語も」
「私達のエヴァも?」
「うん、全てのエヴァが居ない世界、エヴァに寄らないセカイ。僕が構築するよ」
「カップリングも、考察も、キャラへの愛も無いセカイ?」
「そうだよ、もう僕らは卒業する」
「私もエヴァが無いセカイで生きる?」
「それは君次第だ。愛が決めるんだ」
「という事は人の数だけエヴァンゲリオンの先の世界はある?」
「うん、それは否定出来ない」
「それじゃシンジ、貴方と綾波レイが結ばれるセカイも、貴方と惣流、式波、両方のアスカが結ばれるセカイもある」
「うん、僕はそこには行かないけど。『エヴァ』がある場所には行かない、いや行けない」
「でも存在する」
「ああ、そうだね」
スタジオの外では全てのエヴァンゲリオンが『この世界』を去っていく。ロンギヌスの槍に貫かれ消え去っていく。愛の搭乗機体だったエヴァンゲリオン初号機も世界を揺らがせる槍に貫かれ、別次元へ旅立った。
「エヴァンゲリオンはどこへ行くの?」
「僕の世界ではないセカイ、『僕』が居ない世界に……」
「完全に消滅する訳ではない、ただ旅立つだけなのね」
「うん」
「私もエヴァがなければ、エヴァが居なければ存在出来なかった。エヴァンゲリオンにさらばって言う切ない言葉を投げ掛ける前に一言だけ言っていい?」
「構わないよ」
「ありがとう」
「全てのエヴァンゲリオン、私達のもを含めて」
「ありがとう」
「全てのエヴァンゲリオン、本当にありがとう」
「さらばって言っても人々の心から『エヴァ』は完全に消える事はない。シンジと式波が結ばれる世界、シンジと惣流が結婚して家庭を作る世界、シンジと綾波レイが結婚している世界、シンジとカヲルが結ばれる世界、アスカとケンスケが結婚している世界、シンジとマリが家庭を作っている世界、世界が生まれる可能性は無限大にある、さらばと再開は矛盾しない。そしてその世界達は決して無価値ではない。人々の思いが詰まったエヴァの結晶。エヴァンゲリオンと別れても思いは、一緒に過ごした思い出は永遠に生き続ける」
「ありがとう、アイ」
シンジが居なくなったスタジオで愛は一人佇む。無数のエヴァが生まれては去っていき、去っていっては生まれていった。自分もその一つだ。愛はさらばすると共に在り続ける。
全てのエヴァンゲリオンよ、ありがとう。