シン世紀エヴァンゲリオン アイ   作:ケプラー星人

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第四話 敵を滅する、凌辱

 全てが黄昏に染まる夕焼け時、公園に居た子供達は帰っていく。暖かい家族のもとに。

 

 風に押され揺れるブランコ

 

 誰かが忘れた帽子だけが滑っている滑り台

 

 中途半端な作品が崩れ去っている砂場

 

 

 

 

 誰もいない公園、銀髪の少女以外は。

 

 少女は丸太の形をした椅子に座りながら涙を流している。

 

 またひとりぼっち、家に帰ってもひとりぼっち。少女は寂しさを隠せず声を出しながら泣き出していた。

  しかし、涙は止まる。少女の一番大切な人が汗をかき、息をあげながら姿を現したからだ。

 

 

 

 「お父さん!」

 

 

 

 銀髪の少女は父のもとに一目散に走っていき、飛びついて抱きついた。

 

 

 

 「ごめんよ、なかなか帰れなくて...暫くは一緒に居れるから。よしよし。」

 

 

 

 少女は父に頭を撫でてもらい、笑顔を見せた。いつ以来の笑顔だろうか、いつ以来の幸福感だろうか、少女は父と一緒に居れる喜びを噛み締めていた。

 

 

 

 「お父さん!もうどこにもいかないで!」

 

 

 

 

 

 「寂しくさせてごめんよ。さあ、もう帰ろう......愛」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「愛!」

 

 

 「ぐっ、うっ」

 

 

 「愛!応答して!」

 

 

 「ううっ、ぐう」

 

 

 エヴァンゲリオン初号機パイロット、林原愛はエヴァンゲリオン初号機のコックピット席で気を失っていた。しかし、自分を呼ぶ声のせいか、微かに意識を取り戻す。身体全体に伝わる痛みが銀髪の獣のような瞳をした少女に一切の動作を許さない。

 

 

 

 「初号機とパイロットのシンクロ率は94%の高水準ですが、パイロット意識作動率2%、神経回路作動率4%の低水準です」

 

 「全エギュレーター、レベル2以上の破損、各装甲、平均破損率53%! 」

 

 

 「HHは接続中、退避ルートは確保出来てます、退却するなら今かと......」

 

 

 

 アマノン司令部のオペレーター達が忙しなく次々とカリス共和国の港町ブリアンにあるアマノン第一次防衛地域での戦闘情報を伝える。

 

 アマノン司令部の巨大モニターに映し出されていたのは白と青でカラーリングされたボディが全体的に著しく破損し、仰向けになって地面に横たわる、エヴァンゲリオン初号機と――――――『第三天使』だった。

 

 

 

 

 『第三天使』

 

 

 植物のような触手を無数に持ち、その触手で移動、攻撃、対象物の吸収などを行う。中央にエヴァンゲリオンにも似た巨人が触手と同化して、触手を操る司令塔にも見える。全高はエヴァンゲリオン初号機の二倍はあろうかという巨体だ。

 特に巨大な四本の触手が妨害するもの全てを薙ぎ倒す。

 

 その巨大な触手で初号機を吹き飛ばし、『第三天使』と初号機の距離はかなり離れている。『第三天使』は初号機に止めを刺すため距離を詰める。その巨体故か進行速度は遅いようだ。

 

 

 

 「愛! お願い! 目を覚まして! 」

 

 

 アマノン司令部の中段、戦術指揮ルームで、真理谷ルイ戦術指揮官が叫ぶ。

 

 

 「二号機、三号機を出動するべきじゃない? 」 

 

 アマノン司令部の最上段で宮本理彩アマノン副司令官が提案する。隣にいる林原結希アマノン司令官は机に両膝を置き、手を口元で組みながらただ無言でモニターを見つめている。

 

 

 

 「このまま、整備、準備の不完全な二号機、三号機を投入しても初号機の二の舞です。ここは一旦撤退させるべきです! 」

 

 

 

 司令部中段から我蛭ミサ副戦術指揮官が反論する。

 

 

 

 

 

 「愛、早く...... 神アスカ......愛を助けてください」

 

 

 真理谷ルイ戦術指揮官は手を合わせ、目を瞑りながら、世界の絶対的宗教の神にこの状況を打開を祈る。

 

 

 「撤退しようにも愛が意識を取り戻さないことにはどうしようも......ん? 」

 

 

 

 

 

 「うっ、ちっ! い、痛えぇ」

 

 

 司令部の巨大モニターには目が半開きで、片手で頭を押さえながら起き上がろうとする林原愛の姿があった。その表情は苦しみと怒りに満ちている。

 

 

 

 「愛! 意識を取り戻したのね! 愛、早く退却して! 6番搬出口が最短ルートよ!」

 

 真理谷ルイ戦術指揮官は安堵の表情を浮かべながら指示を飛ばす。

 オペレーターが初号機のパイロット席のモニターに撤退ルートを表示する。愛はふらつきながらも納得がいかない様子である。

 

 

 「ぐっ、いや......まだ......よ! ま、まだ行ける! 」

 

 

 「何言ってるの! この状態から撃破なんか不可能よ! 早く撤退しなさい! 」

 

 

 「わ、わ、私を、じ、邪魔するや、奴は......ぜ、全員.......」

 

 

 

 「そんな事言ってる場合じゃないでしょ! あなた、本当に死ぬわよ! 」

 

 戦術指揮官とエヴァンゲリオンパイロットの問答が続く最中、『第三天使』は港町を破壊しながら、初号機との距離を詰めていく。天使が通った道には何も残らない。

 

 

 「あんた、私を殺したいじゃないの? このままじゃ願い叶えられないわよ? 」

 

 

 アマノン司令部全体が静まりかえる。普段、まず会話を交わさない林原結希アマノン統括司令官が、嫌っている娘に緊急時とは言え声を掛けたからだ。

 

 「あんた、本当死ぬわよ。ここで死にたいなら勝手にしなさいな、あんたが決めなさい。敗戦の責任だけは取って上げるわ」

 

 

 

 「......ちっ! 」

 

 

 

 「あんたの代わりなんかいくらでもいるのよ」

 

 

 母に突き放された愛の表情は阿修羅の如く怒りに満ち溢れていた。

 逃げなければ死ぬ―――その現実を突き付けられた悔しさの表れでもある。

 

 

 「愛!」

 

 真理谷ルイ戦術指揮官から呼び掛けられた瞬間、エヴァンゲリオン初号機は『第三天使』に背を向け、6番搬出口へ走りだした! 『第三天使』は初号機を追いながら、四本の巨大な触手を伸ばし始めた。

 

 

 ―――初号機は地面に巨大な足跡と振動を残しながら、全力疾走で『第三天使』から逃げる!

 

 

 肉眼でも6番搬出口が見えてきた、搬出口は開いている。エヴァンゲリオンが二体すっぽり入る穴である。

 

 「あともう少し! 早く! 」

 

 『第三天使』の触手は初号機に触れようと限界まで伸ばしていた。今正に触れんとしている。

 

 

 「ちくしょょょょょょょょょょょょうぅぅああ!!! 」

 

 エヴァンゲリオン初号機は地面を蹴り、6番搬出口にダイビングした、その瞬間搬出口の分厚い扉が閉まる!

 『第三天使』の触手は虚しく空を切るだけだった......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 翌日――――――アマノン司令部内第四控え室――――――

 

 

 

 「はあっ? 初号機の復旧と同時に二号機、三号機の出動クリアレベルを4に引き上げろ? わしに過労死しろと言いたいのか? 」

 

 

 「四日以内にお願い、博士」

 

 

 林原結希司令官が軽く頭を下げる。

 

 

 

 第四控え室の中で、白衣を着た青の混じった銀の長髪の女性が下を向いて額に手を当てている。精神的に参っている様子だ。周りには林原司令官、宮本副司令官、真理谷戦術指揮官、我蛭副戦術指揮官等アマノン幹部が勢揃いして白衣の女性を囲っている。

 

 アルテミス・平谷―――――― エヴァンゲリオン計画統括責任者。

 

 エヴァンゲリオンシリーズの全機体の整備及び改造、そして建造の指揮を執るアマノンの裏方の最高実力者だ。

 生物学、ロボティクス、遺伝子学、脳医学、AI、AGI、各分野で世界最高クラスの見識、研究実績を持つ。その彼女が科学の結晶、エヴァンゲリオンに関わることは彼女の出生を別にしても必然であった。

 あの林原結希司令官すらアルテミス博士には気を使い対応する。それもそのはず、今、全世界にあるエヴァンゲリオンは全て博士の指揮の元、たった5年で建造されたのだ。世界連盟の建造計画予定を20年以上繰り上げた『怪物』である。

 余りの才能に『観測者達』は勿論、『カレルレン達』ですら一目置く。

 

 

 

 「現在の初号機の出動クリアレベルは5。対して二号機、三号機は2。せめて4には引き上げないと連携を取ることすら出来ません。三機で掛からないとあの『第三天使』は倒せません」

 

 真理谷ルイ戦術指揮官が機嫌を損なわないよう慎重に説明する。

 

 「『第三天使』は四日後にはこのへリオン市内に到達するとのSAGIシミュレーションの結果が出ました。通常兵器では足止めにすらなりません。ですから......」

 

 「っかった! わかったよ! やればよいのだな? やるよ! やる! やる! その代わり、わしの小飼の優秀な民間設備者、エンジニア、研究者をたんまり入れさせてもらう! そうでもしないと到底終わらんからな、受け入れの準備をしとけ! 」

 

 

 我蛭副戦術指揮官が説明している途中、アルテミス博士は苛立ちながら任務を承諾する。短気な性格のようだ。

 アルテミス博士は立ち上がり、控え室にある窓際に立つ。

 

 

 「ありがとうございます。それでは早速そのスケジュールを前提に作戦を立案します。失礼します」

 

 

 感謝の言葉を述べると真理谷指揮官と我蛭副指揮官は第四控え室から足早々に出ていった。

 

 第四控え室の窓からは装甲を外したエヴァンゲリオン初号機の姿が見える。

 

 鼻、口、目、耳、胸、そして青く長い髪―――人間の女性と何ら変わらない姿だ。サイズ以外は。

 装甲の破損率に比べ、初号機の身体は然程傷ついてはない。

 

 

 「ったく、相変わらず人使いが荒いのう......あとあのじゃじゃ馬娘はなんとかならんのか? 余りにも機体の操作が荒すぎる。結希の娘じゃろ? 」

 

 

 「どうにもならないわよ、あの子は。馬鹿は死ぬしかない―――とは良く言ったものね」

 

 その言葉を聞いた宮本副司令官は大きく溜め息をつき、肩を落とす。

 

 

 

 「しかし、『天使達』は想像以上の強さじゃのう。この『禁姦の子』があの様とは......『カレルレン達』も調整を間違ったんじゃないか? このままでは『仮の真の神』は作れんぞ」

 

 

 「カレルレ......いや『神』達はそんなかっ細かいこと気にしないわよ。33年前に『クリシュナの矛』を使った位だしね。進行具合が気に入らなきゃ、平気でちゃぶ台返しするわ。所詮『U計画』、私達のやってることなんか『保険』に過ぎないのよ」

 

 

 林原結希司令官が語りながらアルテミス博士の横に立つ。剥き出しの初号機を博士と共に眺める。

 

 

 「そう、嘆きなさんな。わしも何故こんなことをしているのか......と思索する時がある。所詮『カレルレン達』の手のひらの上で踊るだけのお人形さんなのか......とな。しかしたとえ操り人形でも意思はある、自分だけの行きたい目標点がある。結希、お前さんもそうじゃろ?光希をどうにかしたいはずじゃ。

 わしもそう。父が作った『タカムス』『クロノス』『ゼウス』『ウラノス』『イシュマエル』『イサク』

 

 そして『ウラノスR』......これらの科学の結晶、いや父の人生の結晶を超えるものを造りたい一心で今まで突っ走ってきた。自分が駒かどうかは関係ない、ただ自分がどこに行きたいか......重要なのは......そこだけじゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 お父さん......お父さん......お父さんはどこ?

 

 な んで

 

 なんでいなくなっちゃたの?

 

 なん で

 

 なんで なの?

 

 わたしのこと きらいになっちゃたの?

 

 おとう さん あい のこと すきっていってくれた よね

 

 

 せかいで いちばん すきって

 

 

 

 おかあ さん よ り すきっていって

 

 くれ た よ ね

 

 

 

 な の に なんで

 

 

 いな くな っちゃ たの?

 

 

 だ れ の せい ?

 

 

 だれの

 

 だれの

 

 おと う さん おか あ さんと

 

 

 いっぱいけんか してたよね

 

 おか あさんと

 

 

 おかあさん

 

 

 おかあさん

 

 

 おかあさん

 

 

 

 

 

 おとうさんがいなくなっちゃたのだれのせい?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさん

 おかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はっ!ぐっ......ここは? 」

 

 

 アマノン司令部内にある医療施設の病室で林原愛は目覚めた。緑色の治療服が着せられ、腕には点滴の針が刺してある。それにしても悪い夢を見た、愛は最悪の目覚めのせいで目線が定まらず、身体を不安定に揺らす。

 

 「病室......か?」

 

 愛は身体を引き摺るように病室のベッドから降り、点滴の台を動かしながら病室から出る。

 病室から出ると真理谷ルイ戦術指揮官とエヴァンゲリオン三号機パイロット、苟アリスが廊下の奥から歩いてくるのが見えた。

 

 「愛、もう大丈夫なの? お見舞いしに来たわよ」

 

 ルイは右手に持ったクッキーを持ち上げる。

 

 「これが大丈夫に見えたら脳味噌がどうかしてるわ、早く帰って」

 

 「愛! 折角来たのにそれはないでしょ? ふぅ......まあいいわ。

 愛は三日以内に体調を良くして貰ってほしいのよ、『第三天使』が 三日後にへリオン市内に侵入するわ。エヴァンゲリオン初号機、二号機、三号機、エヴァンゲリオン三体で迎え撃つ。愛、分かったわね? あの天使の強さは貴女が一番よく知っているはず、我が儘は許さないわ」

 

 

 「ちっ! 」

 

 愛が舌打ちして不快感を示すと、苟アリスが愛に近寄り、片手を差し出す。

 

 

 「......よろしく」

 

 

 「愛、握手なさい。連携しないと『第三天使』は倒せないわ。皆仲良くしないとダメよ。」

 

 「近寄んな、寄生虫が! 」

 

 

 

 苟アリスは特に行動を起こさない、ただ目を細めるだけだ。

 

 苟アリスの出身はカリス共和国の二個隣の国家、シュウナン国。シュウナン国は経済力が貧しく、その影響で反体制派が台頭。各国の「ビジネス」の対象にもなり、世界各国が軍事的介入を行い、シュウナン国は様々な思惑が飛び交う「実験場」となった。シュウナン国民は周辺国に難民として避難した。

 が...当然各国は混乱し、難民受け入れ国の国民とシュウナン国難民とのトラブル、難民への住宅、食糧、衣服等を賄う補助金の絶え間無い増加。

 シュウナン国難民への憎悪を向ける周辺国の国民は増える一方、林原愛もその一人だった。

 

 「他人にタカることしか出来ない、自分の国で生きられない寄生虫......

 

 ヒトモドキが!」

 

 

 愛は苟アリスをこれでもかと罵ると身体を精一杯引き摺りながら、自分の病室へと戻る。

 

 

 「愛! 何てこと言うの! 人の出生のことを罵倒するなんて人間として最低よ! 出てきなさい、愛!」

 

 ルイが愛の病室を開けようと何度も左右に動かすが、鍵を閉められて開かない。

 

 

 「......いいわ、ルイ。愛じゃなくても......慣れてるから、こういうの」

 

 

 「アリス......」

 

 

 ルイは苟アリスを軽く抱きしめ、うっすらと涙を流した。苟アリスは安堵の表情を浮かべながらルイの身体に身を預けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 『第三天使』の一回目の襲来から四日後――――――

 

 

 

 

 

 「エヴァンゲリオン二号機、SSゲート全11工程通過完了! 出動クリアレベル4を認定、発射口に到着。待機します」

 

 「エヴァンゲリオン三号機SSゲート第四工程迄通過。E2神経回路接続、シンクロ率69%、精神汚染率0.6%。

 サブ回路接続...異常なし」

 

 「世界連盟最高理事会から本作戦の戦闘データ及び予算データの移譲要求要請が来ています」

 

 「カリス共和国内閣官房室より本作戦に関わる全権利、全認可の譲渡を確認、作戦ネットワークに認識中。」

 

 「エヴァンゲリオン初号機、発射口にて待機中。シンクロ率、精神汚染率共に変化なし。ステルス機能を使用出来ます。」

 

 

 

 

 「ったく、お蔭で三日徹夜じゃ。頭がくらくらする。この借りいつか返してもらうからの」

 

 アマノン司令部最上段にいる林原結希司令官と宮本理沙副司令官にアルテミス博士は愚痴をぶつける。瞼は半開きで、目の下に隈ができてる。

 

 「この戦闘が終わったらなんでもしてあげるわよ。博士さまさまね。神さま仏さま博士さまよ」

 

 

 「もうおだてても無茶はやらんぞ! あとはあのじゃじゃ馬娘達次第じゃな」

 

 

 

 

 

 「エヴァンゲリオン三号機、SSゲート全工程通過完了! 出動クリアレベル4を認定! 発射口に到着! 」

 

 

 「エヴァンゲリオン初号機、エヴァンゲリオン二号機、エヴァンゲリオン三号機、本作戦使用機体、全機体出動準備完了! 」

 

 

 アマノン司令部オペレーター達がエヴァンゲリオンの出動が可能なことを伝える。

 

 

 「流石平谷博士、私は絶対間に合わないと思ったわ。人類史上最高の天才という渾名もあながち嘘じゃないわね」

 

 

 「まあ、この三日間、民間人が大量に雪崩れこんでアマノン司令部は大混乱だったけどね。功を奏したとも言えるわ......」

 

 

 

 「.....」

 

 

 

 

 アマノン司令部中段で真理谷ルイと我蛭ミサが言葉を掛け合う。そこに笑みはなく、神妙な表情をし、号令を掛けようとする。

 

 アマノン司令部の巨大モニターには発射口にいる三体のエヴァンゲリオンと三人のエヴァンゲリオンパイロットが映し出されている。

 

 ――――――エヴァンゲリオン二号機――――――

 

 パイロットは黒空詩丹。

 

 その機体の色は漆黒という他ない程の黒色だ。全高はエヴァンゲリオン初号機よりやや高い、肩に着いている装甲が初号機の装甲より大きい為だ。しかし横幅は初号機よりか細く、スリムで初号機と対照的な機体だ。

 

 

 

 

 ――――――エヴァンゲリオン三号機――――――

 

 パイロットは苟アリス

 

 ボディカラーリングは赤を主軸に紫が間接部分にカラーリングされている。全長は三体のエヴァンゲリオンの中でも最も高い。細い機体で頭部にある一角の装甲が特徴的だ。

 

 

 

 

 

 

 三人のエヴァンゲリオンパイロットは全員目を瞑っている。精神統一を行っているのだろうか。

 

 三人が着ているプラグスーツと呼ばれるエヴァンゲリオンを操作する際に必須であるスーツの色はエヴァンゲリオンの色に準じている。

 三人共に今から戦闘を行う表情とは思えない程落ち着いていた。

 

 

 

 

 

 「......覚悟出来てるみたいね。いいわ、真理谷戦術指揮官、出動号令掛けて!」

 

 林原司令官が声を出す。

 

 

 「三人共、訓練する時間なんてなかったけど互いを気遣って連携して!」

 

 

 真理谷戦術指揮官は右手を天井に向かって掲げる!

 

 

 

 「エヴァンゲリオン初号機―――エヴァンゲリオン二号機―――エヴァンゲリオン三号機―――」

 

 

 

 

 

 

 

 「発進! 」

 

 

 

 

 三体のエヴァンゲリオンがカタパルトに乗せられ、猛スピードで出動通路をかけ上がり地上に向かう。

 

 へリオン市街内にあるエヴァンゲリオン戦闘専用の扉が三つ開く!

 

 

 

 ガシャン!

 

 

 

 三体のエヴァンゲリオンがへリオン市内に姿を表し、見えた光景は悲惨なものだ。

 

 高層ビルや商業ビル等の目立つ建物は全てへし折られ、瓦礫の山を作り出していた。住宅地域も大部分が押し潰され、残った住宅も火災に巻き込まれていた。激しい炎と継続的に立ち込める煙がへリオン市内を包む。不幸中の幸いなのか人々の悲鳴は一切聞こえない。天使襲来迄時間があった為、へリオン全市民の避難は完了していた。

 戦闘にも配慮したのだろう。

 

 そしてへリオン市全体にへばりつく触手が有機物、無機物関係なく全ての物を吸収している。

 

 触手の主『第三天使』はへリオン市の中心に陣取っていた。『天使達』の特徴なのか、初号機との港町ブリアンでの戦闘時より一回り巨大化している。

 『第三天使』はへリオン市内に姿を表した三体のエヴァンゲリオンに直ぐに気付くと、四本の巨大な触手をエヴァンゲリオン達に対して振り回す。

 

 「先制攻撃よ! 伏せて!」

 

 

 真理谷戦術指揮官が叫ぶ!

 

 

 

 

 「早速ご挨拶ね! 」

 

 

 そう言いながら愛は狂気が混じった笑顔を見せる。

 

 

 愛の操る機体、エヴァンゲリオン初号機は伏せずに前転し、触手を回避する。二号機、三号機は伏せて回避した。しかし、二号機、三号機の足下にある『第三天使』の触手が二号機と三号機の足に絡み付く!

 

 「くっ! 苟さんGナイフで切り裂こう! 」

 

 「もう......やってる......」

 

 二号機、三号機は肩の装甲からGナイフと呼ばれる伸縮可能なエヴァンゲリオン専用の刃物を出し、足下の触手を切り払う。

 

 「! 詩丹、アリス来るわよ! 」

 

 真理谷ルイ戦術指揮官が危機が迫っていることを二人に伝える。

 

 二号機と三号機は同時に横に跳ぶ!

 

 目標を捉えられなかった触手は地面と激しく衝突した! 衝突した場所の舗装や建物が大破したのは言うまでもない。

 

 

 「このっ! 喰らえ!」

 

 黒空詩丹は『第三天使』のEATFを二号機の強化版ATFで中和して、一本の巨大な触手を刃を伸ばしたGナイフで斬りつける!

 触手は切断された先端を残し、『第三天使』本体の方へ引っ込んだ。

 

 「よし! 」

 

 黒空詩丹が手応えを感じている間に地面に張り巡らしている触手が再び二号機の足に絡み付く!

 

 「くそ......! 」

 

 二号機は勢い良く後方に跳び、足に絡んだ触手を引きちぎる!

 

 「同じ場所に長い間居てはダメよ! 触手を避けつつ動き回って! 」

 

 真理谷戦術指揮官が指示を飛ばす。

 

 「......今......やってる」

 

 三号機は三本の巨大な触手の攻撃を避け、『第三天使』の本体である巨人の前に到着した、赤色の巨人は三号機を睨みつけている。

 

 「......ATF改、全開......」

 

 三号機は強力なATFを展開し、『第三天使』のEATFを中和する!

 へリオン市内は三号機と『第三天使』を中心に強烈な白い光に包まれる!

 

 バン! バァン! バァン!

 

 

 「グオオオォォォォォォォォォォ! 」

 

 「ぐぅぅっ! 」

 

 『第三天使』と苟アリスが同時に雄叫びと悲鳴をあげる!

 突然、銃声と共に『第三天使』と三号機に銃弾が無数に着弾した!

 銃弾は更に二体の赤色の巨人達に降り注ぐ!

 

 「アリス! 後ろに跳びなさい! 」

 

 「! 」

 

 真理谷戦術指揮官の注意も虚しく、三号機は『第三天使』と共に大爆発に巻き込まれた! 三号機は激しく地面に何度も叩きつけられながら後方に吹き飛ばされる!

 

 「アリス!」

 

 真理谷戦術指揮官は思わず身体を前に出した。

 

 「あの爆発は重力式ロケットランチャー!? 二号機は攻撃していない。まさか......」

 

 我蛭副戦術指揮官が何かに気付く。

 

 『第三天使』からかなり離れた崩れた瓦礫しかない場所から突然ロケットランチャー型の武器が地面に落ちる。

 誰もいない場所から何かがその場所から去る機動音がした。

 

 「ステルス状態の初号機ね! 愛! 少しは味方の事も考えなさい! 」

 

 「ルイが連携しなさいと言ったからしたまでよ。どっちも赤いから解らなかったわ、まぎわらしいのよ」

 

 「愛! 」

 

 愛はルイの叱りを受け流しながら、初号機を走らせつつ装備しているEEライフルで『第三天使』を攻撃する。『第三天使』への着弾は半数以下だがEATFが展開出来ていないであろう現状では異形の巨人に傷を負わせ続けるには最適解である。

 

 二号機も『第三天使』を軸に素早く蛇行しながらEEライフルで攻撃していく。

 

 「グオオオォォォォォォグオオオォォォォォォン! 」

 

 『第三天使』がへリオン市全体に響き渡る叫びを放つ。離れている山々にも伝わる激しい叫びだ。

 その原因は二発目の重力式ロケットランチャー弾の着弾である。吹き飛ばされ、天使から離れた三号機が構えたロケットランチャーを棄て走り出す。

 

 「イケる、イケるわ! 皆、もう一押しよ」

 

 真理谷戦術指揮官が勝利を確信したその時!

 

 

 

 

 活動限界時間......残り408秒

 

 

 アマノン司令部の巨大モニターと三体のエヴァンゲリオンのパイロット席のモニターに突然活動限界を知らせる警告表示が出された!

 

 「何故!?三体のHHは問題ないはず! 」

 

 「大変です! 初号機、二号機、三号機のHHが切断された模様です! 」

 

 アマノン司令部の下層にいるオペレーター、緑が危機を伝える。

 

 

 『第三天使』が地面に張り巡らしている触手が三体のエヴァンゲリオンに接続されている水素エネルギー供給ホース『HH』を切断していた。

 ステルス状態になっていた初号機はその姿を表す。パイロットの最高レベルの精神状態クラスとエネルギー常時満タン状態が揃わないとステルス機能は使用出来ない。

 

 

 「ちっ!」

 

 愛はアドバンテージを喪った苛立ちから舌打ちする。

 

 

 ガシャャャャャャャン!

 

 三号機は激しく転ぶ。著しく破損した三号機に『第三天使』は狙いを付けていた。地面にへばり付いている触手を一定数、三号機に集め転ばせたのだ。

 ここぞとばかりに巨大な触手が二本纏めて、触手の先端に付いている口のような器官で三号機の右腕と左足を吸い付くように掴む。

 

 

 「ぎゃああああああああああああああァァァァァァ! 」

 

 苟アリスは断末魔のような悲鳴をあげた。

 

 「三号機の予備エネルギー、一気にゼロに! シンクロ率6%! 精神汚染率51%! 三号機、活動停止! 」

 

 「アリス! 誰か助けて! 」

 

 真理谷戦術指揮官は指示ではなく、願いを口にした。

 

 しかし3秒後、願いは叶う。三号機を掴まえている二本の巨大触手が大爆発し、弾け飛んだからだ。

 

 二号機は空になった重力式ロケットランチャーを棄て、右腕と左足を失った姿で地面に落ちた三号機の方へ全力疾走する!

 

 「初号機、二号機の活動限界時間、残り226秒! 」

 

 

 

 「苟さん! 大丈夫か!? 」

 

 

 黒空詩丹が苟アリスに呼び掛けながら二号機を三号機に近づけさせる。しかし残り一本になった巨大触手が二号機の正面から迫る!

 

 

 「一本だけなら楽勝で避けられ――――――」

 

 詩丹がそう口にした途端、二号機は何故か動きが極端に悪化した!

 『第三天使』はこのチャンスを逃すことなく二号機を捉えた。巨大触手は二号機の右足に食い付く!

 

 

 

 「ぐぅあああああああァァァ! 」

 

 

 黒空詩丹が苦痛から悲鳴をあげると同時に叫ぶ少女がいた。

 

 

 

 

 

 

 「くぅぅぅろぉぉォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォらああァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ! 」

 

 

 

 あろうことか、エヴァンゲリオン初号機が二号機の後頭部と背中を掴み行動不能にしていた。余りの行動にアマノン司令部にいる人間は怒りを通り越して絶句し、静まり返っている。

 

 「......あ、愛......」

 

 真理谷戦術指揮官は愛の名を呼ぶことしか出来なかった。

 

 

 初号機と巨大触手に挟まれる状態となった二号機の右足は今に折れそうになる。装甲に皹が入る!

 

 「黒空ァァ、ありがとぅ、な! 」

 

 

 「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああァァァ!」

 

 黒空詩丹は余りの痛みに口から泡を吹いている!

 初号機は更に二号機を前に押し込む!

 

 

 「こ、ここで、ここで――――――」

 

 

 初号機は極限まで腕を――――――伸ばしきった――――――

 

 

 

 「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 」

 

 

 愛が叫ぶと同時に二号機の右足は大腿部から折れ切れた......

 それを見た愛が操る初号機は一気に『第三天使』本体である赤き巨人に向かい、疾走する!

 

 

 「詩丹! 詩丹!? 応答して!」

 

 真理谷戦術指揮官が呼び掛けるが反応は......ない。アマノン司令部の巨大モニターから二号機のパイロット席を見ても黒空詩丹は動かない。

 

 「初号機の活動限界時間......残り、64秒! 」

 

 

 緑がアマノン司令部全体に伝えても返事がなかった。ただ全員固唾を飲んでモニターだけを見つめている。

 

 

 「初号機、活動限界時間、残り32秒! 」

 

 

 そのアナウンスとほぼ同時に初号機は赤き巨人の正面に立つ。すると問答無用で刃を限界まで伸ばしたGナイフを巨人の首根っこに向けて斬りつける! 切断は出来なかったが、初号機はGナイフを前後に動かす!

 『第三天使』も初号機の両腕を掴み、止めようとする!

 

 が、『第三天使』は消耗しているためか、初号機の力が勝り、少しずつGナイフを前後に動かし、赤い巨人の首に刃を食い込ませていく。

 

 「初号機の活動限界時間......残り、22秒!」

 

 もう『第三天使』の手は初号機の活動を妨害する力も無くして、ただ初号機の腕に添えているだけだった。

 Gナイフは赤い巨人の首の半分まで切り開いていたからだ。

 

 

 

 「くくく、『初めて』の時はよくも痛めつけて......くれたわ......ね?初めての時は優しくするものでしょう?もうあなたはいいわ。」

 

 「初号機の活動限界時間、残り、5秒!」

 

 

 「死ね! 」

 

 

 初号機は身体全体を全力で回した!

 

 

 「初号機、活動限界時間、残り......残り......ゼロ! 初号機活動停止! 」

 

 緑が言い終わると、赤色の首が青色の血を撒き散らしながら地面へと落ちる。暫くすると『第三天使』の触手は徐々に枯れ始める。『第三天使』は完全に活動を停止した。

 

 「早く詩丹とアリスの救出部隊を出して! 早く! 」

 

 真理谷戦術指揮官の叫びにも似た命令がアマノン司令部に響き渡る。

 

 

 「ウフフ、ウフフのふ」

 

 愛が鼻歌まじりに微かな笑いを口にする。

 

 「愛! 何が可笑しいの? こんな戦い方ないわ! 今日という今日はもう許さな――――――」

 「やた。やった」

 

 

 「?」

 

 

 「ウフフ、ウフフ、ウフフ、ウフフ、ウフフ、ウフフ、ウフフ、ウフフ、ウフフ、ウフフ、ウフフ、ウフフ、ウフフ。」

 

 「やああああっっってやった! 気に入らない奴! 全員! やってやったああああああああァァァァ! やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!やった!」

 

 全員、口を紡ぐしかなかった。

 

 「ウフフ、最強。私は最強よ! 私を妨害する奴、邪魔する奴、罵る奴、そして否定する奴! 全員やってやる!

 ウフフ、フフフフフフフフフフフフ、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ! 」

 

 

 最早誰にも止められない。

 

 暴虐の少女、林原愛は飽くまで残虐な高笑いを四体の巨人の居るなかで続けていた......

 

 飽くまで何時までも......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シン世紀エヴァンゲリオン アイ

 

 

 第四話 完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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