ルーフスとジャック、狼のステーラと共に旅をしていたチェリー。
たどり着いた都市は、チェリーの生まれ故郷であった。
「強くなりたい」と願うチェリーの過去が今、明かされる…

※この短編小説はMinecraft ~ある冒険家の旅路~の番外編です。

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この短編小説はMinecraft ~ある冒険家の旅路~の番外編です。
予想以上に長くなってしまったため、読みきりとして投稿しました。
本編のキャラが登場するので、本編を読んでから読むことをおすすめします。

そして、とても長いので時間がたっぷりある時に読んでいただければ。

※Minecraftを原作とした小説としてありますが、実際はそれほどMinecraftの要素は入っておりません。ご了承くださいませ。

※一部残酷な描写を含む場面があります。


Cherry's Memories.

ここは病院。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ぉぎゃぁ…おぎゃぁ…おぎゃあ…

 

 

 

病院内に声が響き渡る。

 

 

 

 

「これはこれは元気な赤ちゃんだ…」

 

 

「ペアラさん、ペアラさん…元気な女の子ですよ。」

 

 

「ペアラ、聞こえるか、ペアラ。良かったな、女の子だぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

「…そう、…女の子なのね…」

 

母は子に語りかける。

 

 

 

 

 

 

「チェリー…よく生まれてきてくれたね。…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたの、お母さんだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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Minecraft ~ある冒険家の旅路~

読みきり:Cherry's Memories.  

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都会の、小さな家族の中に生まれた一人の少女。

 

母がタオルケットに包まれた少女を抱く。

 

父は横から笑顔を向ける。

 

 

 

 

「はーい、3人とも、笑って笑って…」

 

ベレー帽を被った老人が笑顔で言う。

 

カシャ。

 

 

 

 

ここに写真が一枚出来る。

 

 

現在、もう残っていない写真の一枚だ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時が少し経ち。

 

赤ちゃんは歩ける程度まで成長した。

 

赤いタンクトップを着て、庭をよちよち歩いている。

 

「ままー。」

 

「どうしたの、チェリー…あら、蟻さんね。ふふ、かわいいわね。」

 

チェリーはしゃがんで蟻の群れを見る。

 

 

「チェリ~お父さんの買ってきた積み木も遊んでよ~ほら、ウサギさんのぬいぐるみも

 

買ってきたぞー!」

 

父が部屋の中から懇願する。

 

しかしチェリーは庭の花を摘んでいる。

 

 

「とほほ…この子はほんとに、外で遊ぶのが好きなんだなぁ…」

 

父はしょぼくれる。

 

「ふふふ…きっと私に似たのよ。私も小さい時はわんぱくで…外でしか遊ばなかったの

 

。」

 

「僕なんか積み木を積んでからは壊して、また積んでから壊して…そればっかりだった

 

よ。」

 

「ははは…不思議な子だったのね。」

 

「近所から心配されたほどだったよ…」

 

「ぱぱー!」

 

チェリーが花を持ってくる。

 

「おー!きれいだなぁ、チェリー。…チェリーは将来、何になりたいのかな?」

 

「…?」

 

「さすがにまだ分からないわよ。パパ。」

 

「ははは…つい先走っちゃって…」

 

夫婦に笑いが灯る。

 

この少女の身の周りにはいつも笑顔があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世の中は理不尽だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無常だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸せは、そう長くは続かないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから3年後。

 

 

 

「やあ、私に仕える紳士諸君。」

 

髭を生やした男が男達に話しかける。

 

「今日君達に集まってもらったのはだな…」

 

 

 

 

 

 

男は自慢気に話し始めた。

 

 

 

暴力団組長とのコンタクトに成功した。

 

暴力団とのつながりを持たせ、交渉をやりやすくするのだ。

 

この都会はより、発展しそうだぞ。…と。

 

 

 

 

 

勿論、誰もが反対していたが、口を開く事はなかった――

 

 

 

 

 

 

ガタン…

 

 

 

 

 

…!!

 

 

 

一人の男が立った。

 

 

 

「ふざけないでください!暴力団撲滅の為に戦っていたのは!あなただったでしょう!

 

 

「ダーティル君、落ち着いて…」

 

隣の席に座っていた年配の男が制をしたが、振りほどく。

 

 

 

 

「ほほう、ダーティル君…この私を逆らうのかね…?」

 

「ああ、あなたなんか信じた俺が馬鹿だった!裏を返せば独裁者じゃないか!

 

…本日、私はこの会社を今日を以って辞めさせていただきます。」

 

 

 

といって、ダーティルは自分のバッグをひったくり部屋を後にした。

 

 

「全く…青二才はいつまで経っても青二才ですな。…皆さんは賛成ですよね?」

 

 

「いや…私も反対です。…ダーティル君と同意見です。」

 

名乗り上げたのは年配の男だった。

 

 

 

それから次々と連鎖していった。

 

 

 

そして年配の男が最後に言う。

 

「多数決により、反対ですな。この事はなかったことに…では失礼。」

 

 

 

男達が出て行く。

 

市長は歯を強くかみ締め、机を強く叩いた。

 

 

 

「クソッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ…ペアラ…ごめんよ。」

 

ダーティルは赤ちゃんを抱く妻に話しかける。

 

「いいのよ。あなたのほうが正しい。市長さんがそこまで落ちぶれていたなんて…

 

大丈夫よ。仕事なんていくらでもある。すぐに見つかるわ。」

 

「ありがとうな。ペアラ。」

 

父は母を抱きしめた。

 

 

 

 

「ママー。パパー。」

 

見るとチェリーが立っていた。

 

 

 

「どうしたの?チェリー。」

 

「ねれないのー。」

 

「分かったわ。ママももうすぐ寝るからね。布団で待っててね。」

 

「うん…」

 

どこかチェリーは不安気な表情で寝室へ戻る。

 

 

 

 

「おかしいわ…今日もあんなに遊んだのに眠れないなんて…」

 

「…そういや、このごろはチェリーと遊べてなかったなぁ…

 

よぉし!明日はチェリーと思いっきり遊んでやるぞ!!」

 

父は子供っぽく言った。

 

「フフフ…あなたって、本当に元気な人ね。」

 

 

 

 

「さあ、プラムちゃん、おねんねしましょうね。」

 

ペアラは赤ちゃんに話しかけた。

 

 

 

 

 

 

今夜もまた、一軒の家の電気が消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今だ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぎゃぁ!ぎゃぁ!!

 

 

ペアラは赤ちゃんの泣き声で目が覚める。

 

 

 

バチバチ…

 

 

燃える。

 

 

 

 

崩れる。

 

 

 

「ママー!!」

 

チェリーが泣いて飛びつく。

 

「ペアラ!」

 

ダーティルも起きる。

 

 

 

 

 

 

見ると寝室の入り口は火でふさがれていた。

 

 

 

 

 

 

 

だが窓はふさがれていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「窓から飛び降りるぞ!」

 

「あなた、大丈夫…?」

 

「大丈夫だって、俺の体力をなめんなよ。」

 

ダーティルはこんな状況下で笑って見せた。

 

 

 

 

 

 

 

ガラガラ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダーティルは妻と子供達を抱え、窓から飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

 

ズシリ…

 

 

 

 

 

 

 

力強く足を踏みしめ…

 

 

 

 

 

 

 

 

静かに止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きな背中の父は妻と子供を降ろす。

 

後ろを向いてみれば、家が炎をあげている。

 

「私達の…家が…」

 

「…あいつだ…」

 

父はつぶやいて、小さく舌打つ。

 

 

 

 

 

 

チェリーは普段、いつも笑顔だった父の横顔を見る。

 

 

ぱぱって…つよいんだ…!

 

 

 

 

 

「おぎゃぁ…おぎゃぁ…」

 

妹の泣き声が響いている。

 

遅い遅い、消防車と救急車がやっとのこと到着する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一家はただただ、燃え続ける家を見る事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、赤い家の中で写真が欠けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、家族は知り合いの家に居候させてもらうこととなった。

 

 

知り合いはニンマリと迎える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

父は缶詰製造工場に勤める事となった。

 

汗を拭いては拭き、毎日、丸一日働いた。

 

 

父は時々、『もうやめたい』と考えるが、

 

家族を思い出し、手を働かせた。

 

 

 

 

 

あの火事も、俺が元凶だったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分の家族に…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これ以上、迷惑はかけられない…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「市長。あの家事から一ヶ月以上が経ちますが…

 

アクションは起こされないのですか?」

 

出っ歯と眼鏡の秘書が問う。

 

「まああわてるな。いいか。

 

今、あいつは絶対に無我夢中に働いている。

 

家を買うための()()を、稼ごうとしてな。」

 

 

「なるほど!さすがは市長!その貯めたお金を分捕るというわけですな。」

 

「そう褒めるんじゃない!ガッハッハッハ…しかももう手は打ってあるのだからな。」

 

市長はワインを口にしてから、机にグラスをおいて話す。

 

 

「実はあいつの泊まっている家臣は既にこちらの手にあるのだよ!」

 

「さ~すがは市長!天晴れです!」

 

 

「ハッハッハッハッハッハ!!」

 

市長は腹黒く笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから2年の時が流れた。

 

チェリーもすくすくと成長し、少し大人びてきた。

 

プラムも歩けるようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなある日の夜。

 

ダーティル一家は熟睡していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギィッ…

 

 

 

 

 

 

 

寝室に誰かが入ってきた。

 

 

 

 

 

 

ベッドには人が横たわっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナイフを振りかざし…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズシャ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…!!!」

 

知り合いは驚いた。

 

 

 

 

 

 

 

カカシにナイフが刺さっていたのだ。

 

 

 

 

 

その横のベッドも、他のベッドも、カカシが1体ずつ。

 

 

 

 

 

 

 

「…気づかれたか…こちらソール。逃げられた…黒服を要請する。」

 

「了解した。」

 

 

 

男は無線のスイッチを切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダーティルは知り合いを怪しんでいたのだ。

 

ある程度のお金を貯めて、逃げる。どこか遠い所へ。

 

自然が豊富な所なら、家も無料で建てられる。もし村があれば、必要な物資を交易できる。

 

考えてみれば、こんな歪んだ都会にいる必要などなかったのだ。

 

 

 

ダーティル一家は夜の都会を奔走していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはとある新聞社。

 

40歳の社長は語る。

 

「いいかお前達。新聞に必要なのは『驚愕』だ。

事実じゃなくていいのだ。尾ひれを付け足して、驚愕させるものにしろ!

分かったな!」

 

「「「「はい!!」」」」

 

社員は大きく返事をして、仕事に戻った。

 

 

 

ハヤブサ副社長は一人の記者に指示を出した。

 

「ウェールズ君、君には暴力団についての特集のために、

暴力団の情報を手に入れて欲しいのだが…」

 

「分かりました。では、行って来ます。」

 

「待ってくれ、ウェールズ君。」

 

 

 

 

副社長は社長を顎で示してから小声で話す。

 

「あの若造の言ったことは気にするな。新聞は真実を伝えなければいけないのだ。

…君はどうする?」

 

「…私は社長よりもあなたについていきたいと思っています。

…私は最初から、『真実を撮る』。この一択です。」

 

 

「そうか!良かった。…保障しよう、君は将来、いい記者になれるぞ。」

 

 

「あ…ありがとうございます!では、行って来ます…」

 

 

 

 

 

 

記者は外に飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待てー!!」

 

「はぁ…はぁ…」

 

父は大きなバッグを持って一家を先導する。

 

「お母さん…まだ走るの?」

 

母は今までに見せた事の無いような厳しい顔で言った。

 

 

「絶対に歩いちゃダメよ…チェリー。」

 

 

チェリーは無言でうなずく。

 

母の腕の中にいたプラムは緊張した表情だ。

 

 

 

 

 

「いたぞ!」

 

 

 

横からも黒服が来る。

 

 

 

「くそ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、前から知り合いが飛び出してきた。

 

 

 

 

 

 

手にはピストル。

 

 

 

 

 

 

銃口は母に向けられていた。

 

 

 

 

 

 

「これでエメラルド、いただきだ!!」

 

「危ない!」

 

 

 

 

 

 

 

バキュン!!

 

 

 

 

 

 

 

父の胸に穴があき、血が垂れていた。

 

 

 

 

 

「ダーティルさん!」

 

 

 

「おとう…さん…」

 

 

 

 

 

 

ダーティルはつぶやいた。

 

「…お前よぉ…」

 

「…?」

 

 

 

「…お前よぉ!…」

 

 

 

 

 

 

 

 

ダーティルは初めて家族の前で怒った。

 

「俺の大切な家族に…銃口向けるなんてよぉ…

 

 

 

 

 

いい度胸してんじゃねぇか!!」

 

 

 

「ひぃ!!」

 

臆病な知り合いは気迫に負けて銃を落とす。

 

 

 

 

「ペアラ。」

 

 

「!…」

 

 

 

 

 

 

 

「後で行く。…行け!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペアラは目に少し涙を蓄えて走った。

 

 

 

 

チェリーは手を引かれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後ろから沢山の黒服が到着する。

 

知り合いは道路に尻をついていた。

 

 

 

 

 

 

 

男は立ち上がる。

 

 

 

 

 

 

だがすぐによろけ、道路に腰を落とす。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっと…これはこれはダーティルさん…噛ませ役とはこれはまた粋な事を…

 

あの女と子供二人にこれ以上生きることは出来ないというのに…」

 

 

 

 

 

 

「だまれ…お前らに分かる事じゃねぇだろ…」

 

 

 

 

 

 

それでもダーティルは立った。

 

 

 

 

 

 

しかもこの状況で笑って見せたのだ。

 

 

 

 

 

 

「俺が愛した妻と俺が育てた子供だ。

 

 

 

少なくとも、金と上司にしか身を任せられないお前らより強いさ。」

 

 

 

 

黒服の一人に青筋が走る。

 

 

「言うじゃねぇか…やっちまえお前ら!」

 

 

 

 

男は黒服達に飲まれた。

 

 

 

 

 

 

 

今、頬を殴られた。

 

 

 

背中を蹴られ、骨が折れる。

 

 

 

腹を斬られ、血が飛び出した。

 

 

 

四方八方から、男が壊されていった。

 

 

 

体中が血で染まっていく。

 

 

 

骨は既に何本も折られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒の波が下がる。

 

 

 

地面には真っ赤な男が横たわっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少ない意識の中でダーティルは想う。

 

 

 

 

 

 

ペアラ…

 

 

 

 

 

結局、お前に買ってやれたのは…指輪だけだったな…

 

 

 

 

 

 

 

 

チェリー、プラム…

 

 

 

お前達と…もっと遊びたかった…

 

 

 

 

 

 

 

ごめんな…こんな父親で…

 

 

 

 

 

 

 

血で赤くなった顔に涙が混じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペアラは知っていた。

 

 

 

もうあの人はここに来ない。

 

 

 

 

 

 

私達に、自分の死んだ姿を見せたくないからなんだ。

 

 

 

 

 

 

私達に、生きて欲しいがために言ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ペアラはついに涙を垂れ流す。

 

 

 

 

 

「ママ…どうしたの…?」

 

チェリーは母の顔を見上げている。

 

 

 

ペアラは無理やり笑顔を作って言った。

 

「ううん、なんでもない…逃げましょ。」

 

 

母親達はそのまま港へと走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま帰りました。…あれ、皆さんは?」

 

「帰ってしまったよ…全く、あの社長ときても本当に根気が無いのだな…」

 

 

 

 

「そうだ、ハヤブサさん、この写真を見てください。」

 

 

記者は一枚の写真を見せる。

 

 

 

 

走っている女の姿だ。

 

 

何かを抱え、小さい女の子を連れている。

 

 

 

 

 

「また、暴力団の被害者が出てしまいました。」

 

「いや、ウェールズ君、これはただの暴力団がらみの事件じゃないぞ。」

 

「?」

 

 

「普通、暴力団は家に押し入って金を取って帰る。このぐらいだ。

 

普通、逃げ回る事はしないだろう。」

 

 

「…とすると?」

 

「…夜逃げ、だ。誰かが糸を引いているかもしれない。このことはまだ調査する必要が

 

あるぞ…」

 

 

 

 

こうして、ハヤブサは後に市長が糸を引いていたことを知るのだった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ついたわ…!」

 

ペアラ達の周りには、よどんだ潮風が吹いていた。

 

 

港にはジェットボートや様々な色の小船、砕氷船などが横に連なっていた。

 

 

 

その中の小船に近づいていった。

 

 

 

「さあ、その赤色のボートに乗って。」

 

「うん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バキュン!! バキュン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また銃声が鳴り響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母親は無言で港に腰を下ろす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母親はチェリーに、眠ってしまったプラムを抱かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ママ…?」

 

 

 

 

 

 

母のロングスカートには、血が染みこんでいた。

 

 

後ろには知り合いの男の姿が。

 

 

「お前達がいなければ…おれはお金をもらえるんだ…」

 

先ほどの臆病そうな顔から一転、羊を追い詰めた狼のような顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チェリー…逃げて。」

 

「…え…?」

 

 

 

ペアラはボートの上に立ったチェリーを抱く。

 

 

 

 

しまいこんでいた涙がぽろぽろと出始めた。

 

 

 

 

「生きて…何があっても、強く生きて…!

 

 

 

 

 

 

 

お父さんみたいに…強い女の子でいて!!」

 

 

 

 

 

「ママ…?どうしたの…?ボートに乗らないの…?」

 

 

 

 

 

 

ペアラは抱くのを止めると、チェリーを座らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

タン…

 

 

 

 

 

 

 

母は強く赤いボートを押した。

 

 

 

 

 

 

「ママ…!?ママ!!ママ!!」

 

 

 

 

チェリーの眼に映った母の姿が小さくなっていく。

 

 

 

 

 

遠くなっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠く…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ママ!!ママ!!ママ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母は微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と同時に、母を霧が奪い去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ママ…!!…ママ……ママ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バァン!!バァン!!バァン!!

 

遠くで銃声が3発鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

幼い少女は涙を妹の上にこぼす。

 

 

 

 

 

 

 

妹は顔に冷たい水を感じて起きた。

 

 

 

 

 

「ねーたん…なきなき…だめ!」

 

 

 

プラムはチェリーの顔をぺたぺた撫でた。

 

 

 

 

 

 

「そうだね、プラムちゃん。ありがとう。…」

 

少女はプラムを抱いた。

 

 

 

 

 

わたしが、プラムちゃんをまもらなきゃだめなんだ。

 

 

 

わたしがしっかりしなきゃだめなんだ!

 

 

 

ママが『つよくいきなさい』っていってたんだ!

 

 

 

ないちゃ、だめなんだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プラムは母がいない事に気がついた。

 

 

 

「わぁあああん…ママァ…」

 

「だめ!プラムちゃん!」

 

 

 

今度はチェリーが注意する。

 

 

「な、き、な、き。ダメ!」

 

 

チェリーはプラムの涙を拭いて、笑った。

 

「ね?」

 

 

 

プラムの涙はすぐにおさまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからボートは2日かけて、草原に到着したのだった。

 

無論、少女二人は海にいる間、何も食べていない。

 

チェリーはあたりを探してみると、

 

 

 

 

樫の木だ。

 

 

 

 

 

そうだ、樫の木ならリンゴがとれる。

 

 

 

 

 

「プラムちゃん、少し歩くよ。」

 

「うん。」

 

 

 

少女達は樫の木が生えるジャングルへと踏み入ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「プラムちゃん!リンゴおいしい?」

 

「うん!」

 

「よかった…!」

 

 

 

少女達はジャングルの真ん中に到るまでリンゴをかき集め、たらふくリンゴを食べた。

 

 

 

その後、チェリーとプラムは村を探すために、ジャングルから出ることとなった。

 

 

 

 

 

 

緑の木、深緑の木、緑の木…

 

見渡す限りどこを見ても木ばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出られない。

 

 

 

 

 

 

 

 

また元の場所へ戻ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

もう夕方だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歩き続けても、ジャングルから出られない。

 

 

 

 

 

 

ついに夜になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねーたん、こわいよ~!」

 

「だいじょうぶだよ、プラムちゃん。このもりからでれるよ!」

 

 

と言ったものの、やっぱり木ばかりだ。

 

 

 

辺りには明かりは…

 

 

 

 

 

 

…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チェリーの眼に映ったのは、黄色い光。

 

 

 

 

 

 

 

 

遠いがはっきりと見えたのだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プラムちゃん、みつけた!むらだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時。

 

 

 

 

 

 

 

キシュゥ…

 

 

             キシュキシュ…

 

 

  キシュゥ…

 

 

 

 

 

 

 

くもだ…

 

 

 

 

 

赤い眼はこっちに近づいてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チェリーとプラムには恐怖しかなかった。

 

 

 

 

 

 

後ずさりすると、巨木にぶつかった。

 

 

 

 

 

キシュゥ…

 

 

チェリーは咄嗟に落ちていた木の棒を持つ。

 

 

 

「く、くるなー!!」

 

 

 

 

チェリーは木の棒を振り回す。

 

 

 

 

 

一匹の蜘蛛に攻撃が当たる。

 

 

 

 

ギシャァ!!

       ギシュギシュ!!

 

 

 

チャァアア!!

 

 

 

一匹の蜘蛛がチェリーに襲い掛かる。

 

 

 

 

「きゃあ!」

 

 

 

チェリーは逃げる。

 

 

 

 

しかしもう一匹の蜘蛛に行く手を阻まれる。

 

 

 

 

 

 

「…!!」

 

 

チェリーは手で顔を隠し、眼を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くもがこない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんで…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

!!

 

 

 

 

 

 

プラムちゃん!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

眼をあけると、そこには妹が蜘蛛に踏まれていた。

 

 

 

「わぁぁあああああん!!」

 

 

 

 

 

ギシュギシュ!!

 

          ギシュ!!

 

 

ギシュウ!!

 

 

 

 

 

 

 

チェリーは衝撃のあまり放心していた。

 

 

 

「…やめてよ…」

 

 

 

 

 

ギシュ!!

              ギシュウ!!

 

 

チャァアア!!!

 

 

 

妹の服はボロボロになっていく。

 

 

 

 

「…やめてよ!!」

 

 

 

 

 

(いたいよぉぉお!!)

 

 

血が噴出すのが見える。

 

 

 

 

 

 

「やめてよぉ!!」

 

 

チェリーは泣きながら木の棒で蜘蛛を叩く。

 

 

バシッ!!バシッ!!バシッ!!

 

ギシュギシュ!!

 

 

        ギシュ!!

 

 

「わぁ!!」

 

 

蜘蛛はチェリーに襲いかかろうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たぁ!!!」

 

 

 

ズバシ!!

 

 

キシュゥウウ・・・

 

 

 

 

 

 

 

見るとそこにはお姉さんが剣を持って立っていた。

 

 

 

 

後からはおじいさんがついてくる。

 

 

 

 

蜘蛛は退散した。

 

 

 

 

私「は」助かった。

 

 

 

 

 

 

 

プラムちゃん「は」…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁあああああああん!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チェリーは悲しみを一気に開放した。

 

 

 

 

 

お姉さんは手始めに、プラムを診る。

 

 

「これは大変だ・・・手当てをしなければ!!」

 

「・・・だめです・・・もう・・・脈はありません・・・!!!」

 

「そんな・・・」

 

 

 

 

 

 

 

おじいさんはひざから崩れ落ちた。

 

 

 

 

お姉さんは悔しそうで、悲しそうな顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

チェリーはお姉さんのスカートの裾をつかんで言った。

 

 

 

 

「わたし・・・守れなかった・・・!!妹も・・・ママも・・・ひっく・・・!!

 

・・・つよくなりたいの・・・!!わたし・・・!!えっぐ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

・・

 

 

 

 

 

 

ニースさんはそんな私に涙を流して、引き受けてくれた。

 

 

 

 

 

そして村長さんも、私に村にいさせてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから私は、厳しいメイドの修行を積みながら、

 

仲間達と共に愉快に暮らした。

 

 

 

 

 

 

あの時、お父さんやお母さんが私達だけ、逃げさせてくれなかったら、

 

今の私は無かったんだ。

 

 

 

 

 

あの時、ニースさんや村長さんが来てくれなかったら、今の私は無かったんだ。

 

 

 

 

 

どんなに悲しい思い出も、どんなに苦しい思い出も、

 

 

全部。今の私をつくっているんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、チェリー!」

 

「チェリーさん!」

 

 

 

 

目の前にはかぼちゃ頭の人間が二人。

 

 

 

「クスッ…ルーフスさん達、何やっているんですか?」

 

「そこでかぼちゃ見つけたからよ、かぶってみたんだ、どうだ、似合うか?」

 

 

 

 

「ええ、ものすごく。」

 

チェリーは笑って言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、これから、どんなに辛い旅でも、乗り越えたい。

 

 

 

一人じゃ無理だけど、私には信頼できる仲間がいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…私も、かぶってみようかな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーフスさん、ジャック君、

 

 

 

 

 

 

これからも、よろしくお願いしますね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――終―――――――


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