19時頃に練習は終わり、俺たちは各自帰路に着いた。戸塚と明日ラケットと靴を見に行くことになったのは俺たち二人だけの秘密だ。「明日は休みだから、一緒に見に行こうね!」だと。これはデートですよね?そう受け取って構わないですよね??
「たでーまー」
「おっかえりーお兄ちゃん!…ってあれ?なんか疲れてる?」
「いやすまん、今日は運動したからな…先風呂入るわ」
帰るなりまっすぐ風呂場へと向かい洗面所のドアを閉めると外から「お兄ちゃんが運動⁉︎」とかいう、とっても失礼な叫び声が聞こえた。小町さん、お兄ちゃんだって運動ぐらいしますよ。登校とか下校とか登校とか下校とか。
シャワーを浴び、一旦自分の部屋へと戻ろうと思っていたのだが思いの外疲れていたのか部屋につきベッドに座り込むなり泥のように眠ってしまうのであった。
いやぁ、全く己の体力のなさには心底驚いてしまうぜ。いつもの時間に目を覚ましリビングへと降りるとすでに小町が朝食を用意してくれていたらしく、味噌汁の良い匂いが俺の鼻をくすぐる。
「おはよう」
「おはようゴミィちゃん」
おぉう、朝からキツイ一発だ。身震いするほど低い声で答える小町の正面に座り朝食を取ろうとする。
「お兄ちゃん、小町に言うことあるよね?」
「あー、なんだ…その…スマンかった」
「はぁ…もういいけど、なんでそんなに疲れてるの?新しい依頼?」
「いや、そうじゃなくてだな…」
「何、小町には言えないっての?」
「まぁ、その、アレだ…テニス部に入った」
「…はぁ⁉︎」
こらこら小町さん、机を叩くんじゃありません。カマクラがめちゃくちゃビビってんじゃねえか。
「え、何それ…奉仕部は?」
「……」
「ねぇ答えてよ」
「……」
「何か悩みがあるならさ、聞いてあげるからほらほら言っちゃいなって」
「うるせえよ」
自分でも驚くほどの低い声が出る。そして、この話題はそんなにも触れてほしくないものなのだと気づく。この行為が八つ当たりだということを自分でも分かっているのに、俺の口と思考は動くことをやめない。
「黙れ、お前には関係ないことだ」
「ちょっと、なによそれ」
「当然のことを言っただけだが?」
「あっそ…もういいよ。小町、先行くから」
顔に影を落とし、乱暴にリビングのドアを閉める妹の背中を見ながら俺は激しく後悔した。こうやって差し出された手を蹴っ飛ばしては後悔するだけの人生、なんだ何も成長してないじゃないか。奉仕部に居場所をなくしたと思っていたが、その居場所を壊したのは俺自身だ。
「気づいたときにはもう遅い、か」
登校時間までまだ余裕がある、コーヒーを一杯でも飲んでいこう。
部活が終わってヘトヘトになって帰ってきてた頃を思い出します。
横になればすぐ寝れるような毎日を過ごしていました。