ファンタジー習作、第2話でございます!
ぶっちゃけ既に設定がガバってきております!ファンタジー系は用語の説明とか設定の説明が難しいですね!
そんなガバガバな作品ですが、とりあえず......。
第2話、どうぞー!
「わ、私関係無い––––––––っ!」
「チッ。どけ小娘!」
公園で出会った不審者集団と私を含めた六人へと剣を振りかざしつつ飛行して来た機械人形。ソレが勢いよく振り下ろしてきた剣は、“魔王”を名乗る男性......アグル・ミラーが掲げた大剣によって受け止められた。
「きゃーっ⁉︎」
「はいはい、人間の女の子はコッチに避難しようねー。ホラ、アタシが障壁張ってあげるから」
機械人形と魔王の剣がぶつかり合い、火花を散らし、とんでもない規模の衝撃波を発生させる。ていうか、衝撃波なんてものを身を以て感じたのは初めてだよ!あと剣同士が衝突し合う音が五月蝿い!ギンギンギンギンって!ミュート機能無いんですか⁉︎
私は“魔女”を名乗る少女、ミーニャの手招きに素直に応じ、その背後に隠れた。すると、気のせいか先程までひっきりなしに身体を打っていた衝撃波が急に無くなったのを感じる。
「え、凄い何コレ」
「えへへぇ。アタシの障壁魔法は中々強いからね!この程度の衝撃なら、軽く防げちゃうよ!」
相変わらず言っている事の半分以上は理解不明だけど、ミーニャの目の前に出現している薄紫のガラスみたいなのが、私をあの衝撃波から守ってくれているのは理解出来た。凄い、一家に一台欲しい。
「––––“魔王”アグル。アナタは日本政府ヨリ討伐対象トサレテイマス。ヨッテ、“勇者”機体No.46ガ、アナタ及ビアナタ率イル魔王軍ヲ殲滅シマス」
「ふん、我輩が討伐対象だと?戯けた事を。殲滅されるのは貴様だ、機械人形風情が」
何かあの機械と魔王が話しているみたいだけど、こちとら自分の身を守るのと、状況判断をするので精一杯だ。私はミーニャの背後に隠れたまま、2体(もう2人でも2機でも何でも良いや)の闘いを甲冑越しに傍観している“暗黒騎士”アイリスさんに話しかけてみた。
「あ、あのー!」
「はい?いかがなさいましたか、えぇと......」
「あ、えと、
「どうも。カエデ様」
「えっとー!今ってどういう状況なんでしょうかー!ちょっと私、まだ理解が追いついてなくて!」
未だにギンギン打ち合いの音が五月蝿いため、大声でアイリスさんに問う私。その問いにアイリスさんはガシャン、と甲冑から音を立てつつ首を傾げ。
「どういう状況、とは?」
「え、そこからなんですか。じゃあ......その!まずあの機械って何なんですか⁉︎あの二本角の魔王様が“勇者”だとか言ってましたけどー!」
「そのままですわ。初代勇者、ベルディの戦闘データを組み込み製作された、いわば人工の勇者です」
成る程、分からん。
そもそもベルディって誰。初代勇者って何。人工の勇者とか何処で作られてるの。日本語でおk。
「じゃあじゃあ!貴女たちは何なんですかー!」
「まず、私は“暗黒騎士”の––––」
「だから自己紹介しろって言ってるんじゃないんですよ!まず、人間じゃあないんですよね⁉︎」
私が少し身を乗り出しつつ聞くと、アイリスさんは肩を竦め......え、何その反応。何か私が理解力に乏しい子だと思われてるみたいで悔しい。とにかく、アイリスさんは肩を竦め、あくまで穏やかな口調で。
「まぁまぁ。丁度向こうも終わりそうな頃合いなのですし、その後にゆっくり話すとしましょう」
「行けー!ミラちゃんー!そこだー!」
「えっ......」
アイリスさんのその言葉に、私は再度機械人形と魔王の方へと視線を向ける。すると、先程まで互角としか見えなかった戦況は、ものの数分で覆っていた。そう––––、
「フン、この程度か」
「ガ、ガガ......ギッ......」
––––魔王の、圧倒的優勢という形で。
「魔王様。カエデ様が色々聞きたいことがあるそうなので、早急に終わらせて頂くと助かりますわ」
「......む?その小娘はまだいたのか。......まぁ良い」
まだいたのかって。
あんな爆風暴風烈風荒れ狂う中、家まで戻れる訳ないじゃん。ミーニャが作ってくれてた壁が無かったら、タンポポの綿毛のように吹っ飛んでたからね?
––––いや、ていうか何かするっと流れてたけど、こんな所に壁––––というよりバリア、かな?––––を生成出来たミーニャも何者なの......。
私が度重なる非常識によって、早くも感性を破壊されつつある最中にも、魔王は剣を振るい続け、ついに、機械人形が剣を握っていた両手をも切り飛ばした。元々あった両足も既に切り飛ばされており、今や機械人形改め機械ダルマである。
「えぇ......何か猟奇的......何で手足切り飛ばした後にトドメ刺すの......普通に首ちょんぱしてよ」
「機械相手に猟奇的と表現するのもアレですけど、仮に人間に置き換えるのならば、斬首も猟奇的と言わずとも、中々グロテスクだと思いますの」
駄目だ、もう私の感覚は麻痺してしまったようだ。どれもこれも全て魔王が悪い。私は悪くない。
と、その魔王が機械ダルマを足蹴にしつつ言った。
「......うむ、カエデといったか。我輩はこの地を征服するつもりではあるが、別に貴様個人をどうこうしようという気はない。寧ろ友好的に接していきたい位だ。であるからに、ここは一つ、友好の証として貴様の願いを一つ叶えようではないか」
「えっ、ホントに?」
何でも叶えてくれる、というまるで某猫型ロボットのような事を言い出す魔王。その瞬間、私の中の七つの大罪の一角が覚醒した。即ち、強欲。
何でもかー。そうだなー、何にしよっかなー!
私が魔王に叶えて欲しいと思う事柄について、最早先程までの混乱などどこ吹く風、ウキウキ気分で選考していると、魔王は自身の大剣を頭上に掲げ。
「汝の願い、叶えよう––––」
「え?私まだ何も言ってないんだけど......」
「––––『普通に首ちょんぱ』ッッッ‼︎」
それ願いじゃないんですけど。
私は魔王によって機械ダルマの胴から切り離された鉄塊を死んだ目で眺めつつ、心中で呟いた。
......ていうかさ。貴方たちの闘いの余波でそこそこ街に被害が及んでるんだけど......後で直してよね?
◆ ◆ ◆
「––––はい、では説明して頂きましょう」
「う、うん。アタシたちもソレは良いんだけどさ。何かカエデっち、怒ってなーい?」
「怒ってない」
場所は、先程の騒動で崩壊してしまった公園から少し離れた広場。無論、私は部屋着のままだ。
私はミーニャに答え、再び全員に問うた。
「まずは、皆が何者なのか。......あ、もし今度もただの自己紹介とかしたらデコピンするから。目に」
「「「............」」」
「ちゃんとココに来た目的とか、そういうの。私が知りたいこと、分かるね?」
「「「............‼︎(コクコクコク)」」」
私が本気であると気づき、青い顔でコクコクと頷く一同。いや、ていうかアグルさんに至っては、仮にも魔王だとか名乗ってる上に、あんな人外の戦闘力誇ってるのにそんなので良いの?自分で凄んでおいて理不尽だとは思うけどさ。もっと泰然と構えていた方が良いんじゃないの?
「まぁ良いや。とりあえず貴方たちがココに来た理由。3行で纏めてくれない?」
「では私が。––––私たちは魔族であり、魔王軍でございます。そして、私共はこの国の政府にその存在を隠匿され、日々実験の道具とされておりました。今宵、私共はその実験場から逃走、私共を好き勝手に実験台にした報いを日本人の一人である
「所々ふわっとしてるけど、
甲冑姿の女性が恐らく今の私が理解出来る範囲で一番分かりやすい説明をしてくれた。やはり、この人がこの魔王軍(笑)の中で一番の常識人であるようだ。まぁ、他の人たちの性格もロクに知らないんだけど。人じゃなかったね、魔族だったね。
とりあえず、先程の戦闘から見ても、彼らが人間じゃないのは確定だ。そして、“勇者”とかいうロボットの言動から察するに、日本政府から狙われているらしい。しかも討伐対象ということは、殺害しちゃう気満々のご様子。何それ怖い。
「まぁ、細部は後々聞くよ。今は貴方たちが人間じゃなくて、狙われてるっていうのが分かれば良いや。じゃあ次。あの機械は何?」
「対魔王軍殲滅兵器、通称“勇者”。まぁ、政府から逃げ出した吾輩たちを秘密裏に抹殺すべく差し向けられた自立型の機械人形だな」
「何か貴方の言い方って堅苦しいよね。ミーニャさん、もっと噛み砕いて説明してくれる?」
「アタシたちの敵だよ!」
「分かりやすくて結構」
よし、もう良いや。とにかく今までに分かったことを簡単に纏めてみよう。えぇと......。
➀ 彼等は人間ではない。いわゆる魔族。後々聞いてみたところ、アグルがここにいる魔族の中で一番強力な魔族であるため、暫定リーダーとして便宜上“魔王”を名乗っているらしい。種族は厳密には上級悪魔だとか何とか。興味ない。
➁ よく分からないけど、過去にこの国の政府による実験やら何やらの被験体にされていたらしい。
➂ 彼等は存在自体が国家機密みたいなモノであり、政府は恐らく民間人の目に付く前に抹殺しようとしている。そのための兵器が“勇者”である。
––––ふむ。我ながらよく纏められた方だと思う。
これらの情報より導き出される結論。それは......。
「そうですか。大体分かりました!今後もあの機械人形が襲ってくるのかもしれませんが、日々を強く生きて下さいね!では、私はこれで!」
もう二度とこの魔族たちに関わってはいけない。
私はそう結論付け、その場を後にしようと––––
「待て小娘」
「きゅう」
–––したところで、部屋着の首の辺りを掴まれた。
不意打ちを喰らい、私の首が軽く締まる。
「けほっ、こほっ......な、何するのっ」
「根掘り葉掘り聞いておいて、はいさようならとはどういう了見だ。ここまで聞いたのだ、我輩たちに協力するのが筋というものではないのか」
「恩知らずって言葉知ってる?アレだよ」
「魔王様。もしかしたらこの方は中々の外道かもしれませんわ。この程度のことではとても判断出来ませんが、何故か確信に近い感覚を抱きましたの」
外道とは失礼な。ただ私は誰かから搾取をしまくる割に、対価を払うことが極端に少ないだけだよ。
「とにかく。私は貴方たちにこれ以上関わる気は無いよ。少し話を聞いただけでもヤバい雰囲気がするし、身の危険を感じるよ」
「大丈夫だよー、カエデっち。もしアイツらがカエデっちを殺そうとしても、アタシたちが守ってあげるから!ね?」
「あの、気安くカエデっちとか呼ぶの止めて下さいませんか。その、み、ミー.....トボー......ル......」
「露骨に距離を取りに来てる⁉︎ミーニャだよ!」
目の前の変な格好の女の子が何か喚いている。ていうか貴女誰?見覚えありませんね......。
「あ、じゃあ私帰るんで」
「懐から家の鍵取り出してる⁉︎本気だ、カエデっちってば本気で帰る気だ!」
私は愕然とする五体の魔族たちを置いていったまま、何の躊躇いもなく帰宅したのだった。
◆ ◆ ◆
翌日。
昨夜に魔王軍を名乗る不審者たちに出会った私は、あの後、当然の如く彼らのことは母親には隠してそのまま眠りに就いた。
そして、現在私はいつも通り高校へ向かっている。
今は高校への道を徒歩で進んでいるところである。家から高校まではわりと近いので、徒歩でも10分とかそこらで着く距離なのである。
「フンフンフフーン♪」
さて、昨日彼ら魔王軍を適当にあしらった話へと戻るのだが。正直なところ、罪悪感とかはあまり無い。寧ろ厄介事を事前に回避出来たことで、何となく嬉しい気分になっている。極端な話、あんな超人(人?)が困っていたとしても、私が解決出来るレベルの事柄ではないことは明白。すぐに忘れてしまうのが吉なのだ。......まぁ、少しは心配なんだけど。
「......むぅ」
やっぱりちょっとわだかまりみたいなのが残る。
確かに色々聞いちゃったしなー。もしかしたら私も既に日本政府の標的になっちゃったりしてるのかなー。一応機密事項とやらに接触したんだし。
ハハハ、まぁ、そんなことあるわけないとは思うけどね。アレはそもそも偶然だし......。
「––––そうでもないかもよ?ホラ、石橋を叩いて渡るっていうじゃん?念のためにカエデっちも一応殺しちゃえーっ、みたいな?」
「あはは、そんなのでいちいち殺されてたら身が保たないよー。私は死んでもループとか出来ない、ただの人間なんだからね?」
「そうだよねー。カエデっちはただの人間。......だからこそ、もしもの為にアタシたちを傍に置いておくのもアリだと思わない?」
「えぇー......それは......まぁ、昨日“勇者”とかいう機械は壊されたんだし?大丈夫じゃないかな」
と、そこまで言った後にふと思う。
ココは高校までの通学路。確かに色々な人が通るが......私の知り合いに、私を“カエデっち”などと呼ぶ人はいただろうか?いや、いない(反語)。
私は不吉な予感と共に声が聞こえてきた方を見る。
「や、カエデっち」
「............」
予感は的中。
その人物は、何故かウチの制服に身を包み、人懐っこそうな笑顔を浮かべている、昨夜魔王アグルと共に行動していた“魔女”––––ミーニャだった。
機密事項だ云々だと言っていた連中の一人がこんな朝っぱらから街中を歩いていることに対し、私は呆れつつミーニャに問うた。
「......何でいるの......」
「んにゃ。昨日カエデっちが帰っちゃった後にさ?ミラちゃんが、『あの小娘の助けは期待出来ないようだな。残念ではあるが、我々と一時的にでも関わったのだ、下手をしたら奴も“勇者”の標的となるやもしれん。ミーニャ、暫くの間あの小娘を守るのだ』って言ってきてさー」
「いや、その気遣いは嬉しいんだけどさ。こうして貴女が私の近くにいると、それだけで私に危害が及ぶんじゃ......」
と、私がミーニャに言うと。
「まぁ、それも目的の一つなんだけど」
............は?
その、どこもなく矛盾しているような発言の意図を掴みかねていると、上空から何かが飛来して来た。
ソレは、既視感が物凄い鉄塊のようなモノで。
「うぇっ⁉︎“勇者”⁉︎何で⁉︎昨日アグルさんが首斬ったよね⁉︎何でまだいるの⁉︎殺り損ねた⁉︎」
「もうっ、そんな訳ないでしょー?アタシたちのリーダーだよ?殺り損ねたなんてことは、絶対にあり得ませんっ!ぷんぷん!」
「じゃあ何で!」
私がミーニャに問うと、彼女はフッと笑い、横目でこちらを見ながら言ってきた。
「––––いつから“勇者”が一体だと錯覚していた?」
「五月蝿いよ!」
くそぅ、この幼児体型め(ブーメラン)!嵌められた、勇者ってのは量産型だか何だかで、彼女はまだ勇者たちに自分たちが狙われていることを認め尚私に近づいて来ていたんだ!その行動の目的、それは間違いなく––––!
「さぁカエデっち!アタシにあの機械による被害から守って欲しければ、今後アタシたちにあらゆる面で協力することを誓うのだー!」
「汚っ!人の弱みにつけ込んできて!」
「––––魔王軍メンバー、“魔女”ミーニャヲ確認。指令ニ従イ、速ヤカニ排除シマス」
「きゃーっ、来た来た来た!ちょ、ミーニャさん、離れてよ!私まで巻き添え喰らっちゃうじゃん!」
「そうだね、喰らっちゃうね!あーあー!カエデっちがこれからアタシたちに協力してくれるなら、障壁を張ってあげることも出来るのになー!」
流石魔女、やり方がとことん外道だ!
つまるところ、ミーニャは自分たちに協力しないならこのまま“勇者”の攻撃の余波で死ねと言っているのだ。交換条件にしたってエグ過ぎる!
「ちくしょー分かったよ!協力する!私に出来ることがどれだけあるか分からないけど、とにかく貴女たちに協力することだけは誓うよぅ!」
「よしきた、契約成立ね!––––バリアーッ!」
私が叫んだ途端、ミーニャがどこからか杖を取り出し、ソレの先端を中心に薄紫色の障壁が展開させた。以前アグルと“勇者”の闘いによる衝撃から私の身を守ってくれていたモノと同じモノなのだろう。
故に、その権能も以前と同じであり。
「排除シマス、抹殺シマス、殲滅シマス」
「ふははは!無駄無駄ぁ!アタシの障壁魔法の前ではお前みたいなデクノボーの剣撃など無力!何度斬りつけたって傷一つ付かないよ!」
“勇者”が振るう大剣による剣撃を、ミーニャは全て防ぎ切っていた。......ていうか。
「ねぇミーニャさん!私との契約が成立したんだから、離れてくれないかなぁ!私を守りながら闘うより、一人で戦闘に集中した方が良いと思うの!」
「駄目だね!コレは正式な契約じゃなくてただの口約束だから、隙を見てカエデっちが逃げ出す可能性がある!そうはさせないよ!」
くっ、よく分かっていらっしゃる......!!
というか、正式な契約とやらを結んだ場合は逃げ出すことすら叶わなくなるのだろうか。何ソレ怖い。
だけど、後々結ばされるんだろうなぁ.....。
「それに、カエデっちを守りながらでもヨユーだよ、こんな奴!アタシだって腐っても魔王軍の一員、ちゃんと闘えるんだからね!」
そう言ってミーニャは障壁を張ったままの杖を握り締め、高らかに叫んだ。
「電撃魔法発動!『スパーク』!」
刹那、杖の先端から全方位に渡って雷撃が放出された。それらは周りの建造物や塀、道路を破壊しつつ、“勇者”へと向かって行く。––––そして。
「ギッ......」
「やったぜ!当たったよカエデっち!」
「それは良いけど街がボロボロだよ!ココ、一応通学路だからね⁉︎人が来ちゃったらどうするの!」
「それなら大丈夫!ここら一帯の人たちは皆私の魔法で眠らせてあるからね!」
「凄い迷惑!皆が起きる前に色々直しといてよ⁉︎」
何故よりによってあんな広範囲に被害を及ぼす魔法を選択したのだろうか。アレしか使えないという訳でもないだろうに。まぁ、だとしても迷惑なのは変わらないのだが。
「ギギ、ガッ......機体破損率5%。損傷ハ軽度ノモノト判断。戦闘ヲ継続シマス」
「その上それほど効いてないっぽいんだけど!」
「......私が唯一使える攻撃魔法が効かない⁉︎」
「マジでアレしか使えなかったの⁉︎」
ヤバい、まさか思考さえも死亡フラグになるとは思ってなかった。このままじゃ殺られる––––⁉︎
「何てね嘘だよ!『フレア』!」
「グガ......ッ」
ミーニャの杖から炎が噴き出した。
「ひゃっはー、また命中!どう、カエデっち、少しはアタシのことを見直し......いひゃいいひゃい!ひゃんであひゃひのほっへはひっはふほ⁉︎」
「機械に嘘なんてついてもブラフになんかならないから!私だけが凄い不安になったじゃん!」
私が激情のままにミーニャの頬をつねっていると、ミーニャが放った炎に焼かれていた“勇者”が大剣で自身に纏わりつく炎を払い、再びこちらに向かってきた。全く弱っている様子がない。
「くっ、ミーニャさん!もっと強力な魔法とか無いの!まだ全然元気に動いてるんだけど!」
「はずははなひてほひいは!」
何を言っているのかよくは分からなかったので、とりあえずつねっていた頬を解放、続きを促した。
「ふにゃっ......アレだよ、アタシの魔法は大体射程範囲が狭いからね、こういう人を守りながらの戦闘には向いてないんだよ。だから......」
じゃあ私をとっとと逃してくれれば良いと思うのだが、それは選択肢として含まれていないのだろう。
では、残りの方法は––––?
「だから、零距離で魔法をブチ込もう」
「じゃあ私帰りますね」
「どこ行くのかなぁ?」
また背後から襟を掴まれた。きゅう。
「零距離まで近づくとか無理だよ!貴女が魔法ブチ込む前に私の身体に剣がブチ込まれるよ!」
「大丈夫だよ!私、蘇生魔法も使えるし!」
「死亡するのが前提だとぅ⁉︎」
驚いた。この幼女は私を守ると言っていたが、ソレは最終的に生きていればオーケー、というような考えだったらしい。しかし、結果的に生存出来るとしても、死ぬのは御免願いたい。
「よし、じゃあこうしよう!まずは––––」
「行くよカエデっちー!」
「人の話を聞いきゃあああ––––––––っ⁉︎」
特攻。私は急に地から足を離し、浮遊しだしたミーニャに手を引かれ、そのまま剣を構える“勇者”の元へと突っ込んで行った。
「対象ガ急接近。速ヤカニ排除シマス」
突っ込んで来た私たちに対し、大剣を頭上に掲げる機械人形。ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい‼︎
「ちょ、ミーニャさん止まっ––––」
「とりゃあ––––ッ‼︎」
ガンッ!
「............ふぇっ⁉︎」
刹那、私の目に入ってきた光景。
それは、“勇者”が振り下ろしてきた大剣を自身の
そしてそのまま剣の腹を滑らすように杖を“勇者”の方へ寄せて行き、その先端が鉄塊に触れた瞬間。
彼女は叫ぶ。
「零距離紅炎魔法!『プロミネンス』––––ッ‼︎」
––––“勇者”は、その体の内部から紅い炎を噴き出しつつ、その身を崩れさせていった。
◆ ◆ ◆
「––––はい。はい。では、そういう訳で、今日は欠席させて頂くということで......はい、すみません」
ミーニャと“勇者”の闘いが終わってすぐ。
至急魔法などの余波で崩れた街を彼女に修復させ、眠らせていたという近隣の住民たちに掛けられた魔法を解かせた。多分このせいで仕事やら学校やらに遅れた人々が多々いるだろうが、命が助かったと思って勘弁して欲しい。一応、ミーニャが遠隔的に障壁を張ってあげてたみたいだし。
そして、私は最早完璧に遅刻をかました高校を欠席することにした。というのも。
「ねーねー、もう休むって言ったー?」
「......はぁ。言ったよ。で、私はこれからどうすれば良いの?帰っていいかな?」
ミーニャに高校を休むように言われたから、だ。
まぁ、契約云々を止むを得ないとはいえ結んでしまった身分だ、これから色々手続きでもあるのだろう。ココで下手に抵抗しても悪い方向にしか転がらないと判断、大人しく高校に欠席の連絡を入れた。
「帰っちゃダメー。......とにかく、ミラちゃんのトコ行こ?多分待っててくれてるしー」
「待っててくれてるって......あの人も最初から私を引きずり込むつもりだったんだね、やっぱり......」
もう怒りも感情すらも湧いてこない位だ。
「んじゃ、行こっか」
「......どうやって......?」
「勿論、歩いてだよ」
「テレポートとか無いんだー......」
そして、歩くこと数十分。
私たちは街の隅に位置する、廃工場に来ていた。
そして、更に奥に進むと進むと––––。
「––––ふむ、久しぶりだな。小娘」
「よく言いますよねー」
私は、“魔王”と早くも再開してしまった。
いかがでしたか?
作品の内容はともかく、ミーニャ単体では結構お気に入りのキャラです。他作品に輸入してやろうとか思うくらいです。
これからはミーニャが魔王軍の中で最も出番の多いキャラになりそうです。魔王様ェ......。
では、また次回!感想待ってます!