気がついたら、戦国時代に島左近として生を受けていた男。
舞台は、関ヶ原の戦い。天下分け目の大戦である。
歴史で一番好きな、三成を救う島左近の物語。

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三成が唯々好きで、妄想が爆発した作品です。


天下分け目の大戦

主人公SIDE

 

気が付いたら、島左近として三成様の横に立っていた。ついでに、自分の名前は全く思い出さない。

この時代に来る前に、自分が何をしていたのかも思い出せない。

思い出させるのは、島左近として三成様と戦場を潜り抜けたこと。そして、これから三成様が辿る運命のこと。

関ヶ原の戦い。

天下分け目の決戦として、俺がいた時代にも有名だった大戦だ。

豊臣秀吉の死後、表面化した三成様と狸もとい家康の対立。

それが行き着いたのが関ヶ原の戦いだ。

結果は、全員が知っている通り三成様の敗北。徳川家康の世が来たというわけである。

ここに来る前の俺がどう思っていたかは、分からない。思い出せないから。

だけど、今の俺は如何しても三成様を救いたいと思っている。

豊臣と云う家に忠義を貫き通した人が、何故に死ななければならない。

誰よりも、豊臣の世を守ろうとした人が、己の欲だけで動いた家康に敗れなければならない。

どうして、不器用な三成様が死ななければならない。

歴史の改変?知った事ではない。三成様と過ごしたこの記憶は俺の記憶ではなく、左近としての記憶だ。

だから、どうした?今の俺は島左近だ。武士として忠義を貫き通して何が悪い!

 

「左近?急に、握り拳を作って何があったのか?」

 

おっと、興奮しすぎて三成様に要らない心配を掛けてしまったようだ。

関ヶ原に陣取っている今、余計な心配は掛けさせたくない。

それに、三成様に会いに来たのは理由もあるしな。

 

「申し訳ございません。三成様。

少々気が滾っていたようです 」

 

「そうか。致し方あるまい。この戦には豊臣の未来がかかっているからな 」

 

いえ、俺は唯貴方の心配をしていただけです。

 

「はい。一つお願いがあるのですが宜しいでしょうか?」

 

「なんだ?」

 

布陣図とにらめっこをしていた三成様が顔を上げる。

相変わらず、眉間に皺がよっていますね。

 

「小早川秀秋殿の所に行ってきても宜しいですか?」

 

三成様を救うためには、小早川秀秋の裏切りを阻止しなくてはならない。

西軍は小早川秀秋が裏切るまでは、東軍に対して有利な戦を行っていた。

しかし、裏切りによって大谷吉継の部隊が敗走すると、西軍は大混乱。この隙を東軍に突かれ、西軍は負けた。

よって、小早川秀秋を西軍のまま戦を進めれば勝てるかもしれないのだ。

 

「ふむ。何故、小早川殿の所に向かうのだ?」

 

「小早川秀秋殿が裏切る可能性があるからです 」

 

「何っ!裏切りだと⁉︎ 」

 

「落ち着いてください。現状は可能性があるという事です 」

 

三成様は、自分が豊臣に臣従しているから、他の皆もそうだろうと考えている節がある。

と云うかその思考回路のまんまの人間である。だから、敵も多い。

小早川秀秋と三成様の間には、ちょっとした溝がある。

朝鮮出兵のでの敗戦の責任を問われ、小早川秀秋は筑前名島から越前北庄へ転封命令が出された。

……三成様の主導によって。

これによって、三成様に不信感を覚えている可能性はある。

 

「なので、某に任してくれないでしょうか?」

 

「出来るのか?」

 

「はい。ただし、三成様には小早川秀秋殿に約束して頂く事がございます 」

 

「すでに、関白としての地位を与えると言っているが?

他にも必要なのか?」

 

「はい。三成様は、人望と云う面において家康殿より圧倒的に劣っています。

小早川秀秋殿は、子供じみた思考の持ち主。三成様が嫌いだからと云う理由で、家康殿に付くかもしれません。

あの狸は、人心掌握に関しては上手いですから 」

 

「さらっと、心にくる一言を言ってくれる。

それで、私に頼みたい事はなんだ?」

 

俺がいた時代では、小早川秀秋が家康から何を報酬として持ちかけられていたかまで明らかになっている。

家康が、報酬として約束したのは、小早川秀秋の所領を筑前一カ国から、二カ国に加増することだった。

ならば、もう答えは決まっているも当然だ。

 

「関白としての地位に加え、秀頼様が関白となった後、所領を二カ国に加増させると云うのは如何でしょうか?」

 

家康の条件を此方も与える。

金で人を釣るという訳ではないが、どれだけ利点があるのか。

そう思わせる事は、時に感情より効果を発揮する。

 

「……左近が其処まで言うのなら、此度の戦において、小早川殿はよほど重要なのだろう。

分かった。書を書きまとめるから少し、待っていてくれ 」

 

三成様が筆を取り出し、書を書き始める。

さて、この間にもう一つの懸念材料を消化にかかるとしよう。

と言っても、すでに部下に頼み布石は打ってある。

部下からの連絡を待つだけだ。

 

「左近様!」

 

おっと、なんていいタイミングだな。

三成様に頭を下げ、陣を出る。

 

「どうだった?」

 

「吉川広家は、裏で徳川家康殿に繋がっていました。戦には参加をせずに静観するつもりのようです 」

 

現代知識フル活用である。

これも、俺のいた時代で判明していた事で毛利家の領地を守る為に、家康と内通していたのだ。

 

「これが、証拠の書状です 」

 

部下から手渡された書状を確認する。

………完全に内通している文章だな。

 

「しかし、よく分かりましたね。吉川殿が内通していた事が 」

 

「ああ。大阪ですれ違った時に、目を合わせなかったんだ。

何か、やましい事が無ければ目を合わせて挨拶ぐらいするだろう?それが、疑問だったんだ 」

 

適当にそれらしい理由を述べておく。

元々、勘が鋭いらしいからこれでも大丈夫だろう。

 

「相変わらずの勘ですね。それでは、これで失礼させて頂きます 」

 

「ああ。感謝する 」

 

それではと移動する部下。

さて、この事を三成様に伝えないと。いい加減、胃に穴が空くんじゃないかな三成様?

 

「左近。戻ったか 」

 

書を書き終えて、満足そうな三成様。

すみません。追加で、連絡があります。

 

「これを 」

 

部下から受け取った密書を渡す。

疑問を持った顔で受け取り、読み進めていく三成様。

その表情が怒りに染まるのは、早かった。

 

「吉川広家……… 」

 

「毛利家は裏切っては、無いと思われます。

恐らく、吉川広家殿の独断だと思われます 」

 

「では、どうする?このままでは、毛利家を戦力として扱う事は出来んぞ 」

 

「恐らく、吉川殿は有利になった方に味方する腹づもりだと考えます。

なので、序盤の戦は大切ですよ 」

 

「そのために、小早川殿を完全に引き込むのだな 」

 

話が早くて、助かるなぁ〜

 

「という訳で、行ってきます 」

 

「忘れ物だ。せっかく書いた書を置いていく馬鹿がいるか 」

 

あ、忘れてた。

三成様から書を受け取る。

地味に、距離があるので馬を使い駆ける。

 

「さて、三成様からの書状と俺の舌先三丁で何処までいけるか。

いや、必ず小早川秀秋を味方に引き入れなければ、三成様を救うために 」

 

暫く、走り続け小早川秀秋の陣が見えてきた。

 

「なんの御用ですか?」

 

「小早川秀秋殿に、我が主石田三成様から受け取った書状を渡しに来た 」

 

門番の兵士が考えるように、下を俯く。

考える暇を与えては、言い訳を作られ機会を逃すな。

 

「どうした?開けてはくれないのか?」

 

「いえ、主より事前の連絡を受け取って居らぬが故、通して良いものか考えておりまして 」

 

「急な用事だからな。そこは申し訳ない。

しかし、急な事では通してはならぬ訳でもあるのか?私達は、味方の軍であろう?」

 

遠回しに、ここで通さねば小早川秀秋は敵だと認めるという文句を告げる。

少々、頭が回るようだが所詮は門番。

 

「……分かりました。お通り下さい 」

 

門が開き、通れる様になる。

予想通りだな。

門番に頭を下げ、小早川秀秋の元へ急ぐ。

 

「小早川殿 」

 

「君は、確か石田治部の所にいた左近だったね 」

 

「夜分に申し訳ございません。我が主より預かった書状があります 」

 

そう言って、書状を取り出し小早川殿に渡す。

目を通した小早川秀秋は、完全に浮かれた表情になっている。

あれ?思っていたより簡単か?

 

「小早川秀秋殿は、此度の戦において重要な役割を担っています。

我が主もそれを認識し、報酬を上げるとの事です 」

 

頭を下げながら、俺の出来る最大限のお世辞を使う。

気を良くしてくれ。そして、裏切るな。

 

「ほうほう。治部殿は其処まで、私を頼ってくれるのか。

……………西軍を裏切るのはやめておこうかな? 」

 

嬉しそうに笑う小早川秀秋。

最後に呟いた事は、聞かなかった事にしておこう。だが、この様子なら大丈夫そうだな。

 

「共に豊臣の世を守り抜きましょう 」

 

駄目押しに、世辞を言っておく。

三成様と同等に扱うつもりは、全く無いがこう言っておけばさらに効果を発揮するだろう。

 

「うむ。この小早川秀秋に任せておけ 」

 

うわー、完全に気を良くしてるよ。

こんな簡単に、説得できるって逆に怖いわ。

 

「失礼します 」

 

いやー、疲れた疲れたww

とりあえず、仕事は終わりだろう。陣を出て、馬に乗る。

そのまま、三成様の陣まで駆ける。

 

「ッッッ!殺気! 」

 

懐の短刀を取り出し、首の横に構える。

瞬間で火花が上がる。

 

「何者だ!」

 

馬に乗ったまま、短刀をしまい刀を構える。

 

「チッ、しくじったか 」

 

月明かりに照らされた所に黒装束の忍びが見えた。

密偵か?それなら、逃すわけにはいかないな。

 

「島左近。お命頂戴する 」

 

走り出した密偵を、馬の速力で向かい撃つ。

互いが、斬り合う事が可能な距離で馬から飛び降りて、敵の刃を交わす。

飛び起きて、短刀を投げる。

 

「がっ!」

 

敵の右腕に刀が突き刺さった。

目論見通りだな。敵が刺さった刀を抜こうとしている間に、距離を詰め胸から腰にかけて斬り裂いた。

 

「ガァ………クソが…… 」

 

動かなくなった敵を誰にも見つからないところで、放置する。

運び終えた俺の所に、馬がやってくる。

 

「お前も無事だったな 」

 

顔を撫でてやると、嬉しそうに鳴く馬。

随分と懐いてくれてるな。

 

「よしっ。戻るか 」

 

再び、跨り三成様のところへ戻る。

……それにしても、密偵がいる。あいつ以外にも家康の手の者が紛れているかもしれない。

各部隊に、使いを出し見知らぬ者が居ないか調べさせるべきか。

戦が始まる前に、此方の手の内がばれては意味がない。

 

「左近!その姿はどうした?」

 

あ、気付いたら三成様の陣に到着していた様だ。

 

「途中で、家康殿の密偵に襲われました。

と云うより、もしかして待っていてくれたのですか?」

 

俺が出てきたときは、陣の中で難しい顔をしていた筈だ。

なのに、外に出てきている所を見ると俺を心配してくれていたのだろうか?

 

「秀秋殿が、お前を殺したり人質に捕る真似をすれば、即座に潰す準備をしていたところだ 」

 

遠慮がない人だな。そんな事をしたら、西軍の脆い結束は簡単に解けると分かっているだろうに。

いや、案外一つの事を考えたら止まらない人だから考えて無いかもしれないな。

 

「ご心配をお掛けしたことをお詫びします。

再びではございますが、もう一つお知らせがございます 」

 

「今度はなんだ?」

 

「各部隊に、使いを出し徳川の密偵が居ないか確認をして頂きたいのです 」

 

「ふむ。左近が、密偵に襲われた事も考えたら他にもいる可能性があるということか。

だが、その心配はいらぬぞ。すでに、各部隊に使いは出してある 」

 

「随分と早いですね?」

 

「左近がすぐに戻らなかったからな。密偵の可能性もあると考えて使いを出してある。

時期に、確認が終わり戻ってくるだろう 」

 

うん。やっぱり、我が主は頭が良いな。

俺が戻るのが遅いというだけで、此処まで考えるのだから。

 

「申し上げます!合計で、三人の密偵が見つかりました。

処分は如何致しますか?」

 

「左近。どうする?お前のことだ。私の元に許可を貰いに来た時点で、次の手を考えているのだろう?」

 

「はっ。三人から逆に、徳川の情報を聞き出します。

次に、一人を徳川に送り戻します。もちろん、タダというわけではありません。

一人に、こちらが用意した二人の密偵をつけて送り返すのです。

もし、素直に此方の情報を伝えれば殺し、此方が用意した偽の情報を伝えれば生かします 」

 

「相手の策を利用し、相手を混乱させるつもりか 」

 

取れる策は全て取る。

そうしないと、三成様を救えない。

 

「相手が、密偵の顔をしっかり覚えていたらどうする?」

 

「それはありません。某が戦った相手は弱かったです。

とても、信頼を取れている者ではありませんでした。恐らくですが、捨て駒と云う扱いの兵士だと思われます 」

 

密偵であっても、それなりの強さは必要だ。

一対一で敗れるような相手を、わざわざ密偵には使わないだろう。

普通の戦ならともかく、この戦は天下分け目の大戦だ。

俺なら、心臓に悪すぎてやりたくない。

 

「残した二人はどうするのだ?」

 

「送り出した一人が裏切らない様に人質として残しておきます 」

 

「ふっ、分かった。その策で行け 」

 

色々と不安の種を上げれば、あるだろうに会話を終わらせる三成様。

その表情には不安なんて物を一切感じない表情だった。

陣の奥に消えていく三成様。

 

「……失敗出来ないなぁ 」

 

ボソッと素で呟く。

顔を両手で叩き、気合を入れ直す。

 

「三人を連れてきてくれ 」

 

「はっ!」

 

すぐ近くで待たせていたのか三人を連れて戻ってくる兵士。

 

「それぞれ、どこの陣にいたんだ?」

 

「右の男が、島津様の陣に。真ん中の男が、宇喜多家様の陣に。左の男が小西様の陣にいました 」

 

宇喜多殿と小西殿は西軍の要の二人だ。

 

「右の男。前に出てこい 」

 

島津殿の陣にいた男が俺の目の前まで、出てくる。

 

「東軍に送り返してやろう。

その代わり、徳川に偽の情報を流せ 」

 

「………裏切り者に成れと?」

 

「そうだ。残りの二人は此方で預かる。

お前が裏切れば、即刻二人を殺す。そして、お前にも俺の部下を二人は着ける。

偽の情報を流さなければ、その場でお前を殺す 」

 

「…自分の命と同胞の命を対価に賭けろと?」

 

悔しそうに、俺を睨む男。

戦国の世だ。使えるものはなんだろうと使わせてもらうさ。

 

「そうだ。全員が生き残りたければ、お前が偽の情報を流して、徳川が敗退すれば助かる 」

 

「卑怯な…… 」

 

「打てる手を全て打つのが、俺だからな。

さて、どうする?まぁ、承諾しなければこの場で全員死んでもらうだけだが?」

 

部下とともに腰の刀を抜く。

 

「………わ、分かった。言う通りにしよう…… 」

 

苦渋の表情で承諾する。

 

「では、明朝に戻れ。それまで、部下が付きっ切りで見張る。

その後、部下を引き連れ戻るんだ 」

 

後始末を部下に任せ、自陣に戻る。

椅子に座り、一息吐く。身体にどっと疲れが出てくる。

後、1日もすれば徳川の本隊が到着する。まだ、策を練らなければ。

 

「報告!徳川陣営が布陣を開始。東軍の一番後方です!」

 

しめたと笑う。

毛利を動かす材料が増えた。

 

「少数で良い。隠密で部隊を、南宮山の反対側に向かってくれ。

陣を張る必要はない。密かにその場所に待ち伏せていてくれ 」

 

「何故ですか?」

 

「ここの大戦を勝っても、徳川家康を取り逃がしたら意味はない。

一応、毛利が南宮山に陣取っているが、山では伝達に支障が出る。そこで、逃げる徳川足止めに部隊を使う 」

 

もちろん、この他にもいざとなれば旗を掲げ、すぐ近くに我々がいるという事を思わせる。

そうすれば、毛利を動かす事が出来るかもしれないな。

無論、こちらが有利な状況で動かすのが理想だがな。

 

「はっ!迅速に部隊を編成し、迅速に向かいます 」

 

優秀な部下で助かるわ〜。

俺が言いたいことを全て悟ってくれている。

部下が出て行く。

 

「………思っていたより早く始まりそうだな 」

 

そう考え、目を閉じて仮眠した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家康SIDE

 

「密偵が戻ったか 」

 

儂は驚いていた。密偵に遣わしたのは、戻って来れば運が良いという程度の連中だった。

 

「して、なんと言っておった?」

 

「はっ。西軍方の連携はボロボロの様です。

隙を突けば、此方側に投降を考えている者が多いそうです 」

 

やはり、三成は人身掌握を怠っておったか。

ならば、序盤は苛烈に攻めるとしよう。さすれば、容易く西軍を倒せる。

 

「ふふふふ、この戦は儂等の勝ちだな 」

 

 

 

 

 

 

 

 

主人公SIDE

 

「左近!左近!起きろ!」

 

「はっ!すみません。寝ていました 」

 

あたりは、明るくなってきている。

仮眠のつもりだったが、寝すぎてしまった様だ。

 

「雨に加え、霧も出てきた。これでは、戦えないな 」

 

「そうですね。この大軍では同士討ちの危険がありますからね 」

 

「天候は変わりやすい。だと云うのに、眠りこけている馬鹿がいるとはな。

急いで、準備をしろ。寝坊助 」

 

三成様が冷ややかに笑う。

あ、この表情は怒ってらっしゃる。

急いで、鎧を身につける。刀をしっかり手入れをする。

……よしっ、準備完了だな。

 

「準備が出来たようだな 」

 

三成様が、俺の陣の中でも見晴らしの良い場所に移動する。

今、出ても何も見えないと思うんだけど?

 

「左近。お前には、世話になったな。

私には勿体無い部下だ 」

 

「!勿体無いお言葉です 」

 

「ふっ、事実だ。この戦は豊臣の命運がかかってる。

お前と、刑部殿が全力で策を弄した戦だ。負ける訳にはいかない。

少々、緊張してな。暫し、話に付き合ってくれるか?」

 

「はい。某で良ければ 」

 

ある程度、霧が晴れるまで三成様と話し続けた。

 

「三成様、頑固でしたよね。某を部下に加えるためにその場から一歩も動かないなんて 」

 

「ふっ、私は使える者が欲しかっただけだ 」

 

かなり昔の、俺と三成様が今の関係になるまでの話もした。

 

「なぁ、左近 」

 

「何ですか?三成様 」

 

「家康を倒した後も、豊臣の家を守るために、尽くしてくれるか?」

 

三成様にしては、珍しい弱々しい質問だった。

俺が、豊臣を裏切ると思っているのだろうか?

いや、違うだろうな。単純に、心配なんだろう。自分が豊臣の家を支えきれるのかが。

 

「三成様。某は、最後まで三成様の味方でいるつもりです。

だから、三成様が豊臣の家の為に命を賭けるのなら某も同じです。

三成様が、豊臣の家を潰すと言うならそのために全力を使う所存ですよ 」

 

「……いらぬ心配だったな。

最後まで頼むぞ 」

 

俺の背中を叩いて、自陣に戻っていく三成様。

その後ろ姿は、先ほどとは違い自信に満ちた背中だった。

 

「敵襲ーーーーーーーー!!!! 」

 

黒田、細川、加藤が俺の陣地に押しかけた。

さぁ、始めよう。三成様を救う大戦を!

 

「全軍!迎え討てーー!」

 

オォォォオ!と云う掛け声の元、迎え撃つ。

東軍の動きは、迅速に攻め立てるつもりの様だ。

しかし、この動きはあの捕虜は上手く情報を流したようだな。

西軍の陣形は、少し窪んだ形になっている。

小早川秀秋が裏切らずに、戦に参加しているため刑部殿の目論見通り飛び出た東軍の将が次々と討ち取られていく。

 

「井伊直政!討ち取ったり!! 」

 

宇喜多秀家の陣から、声が聞こえる。

井伊直政と言えば、徳川四天王と呼ばれる一人じゃないか。

明らかに、東軍の動きが鈍り始める。進軍を続けようとする者、投降を企てる者、逃げ出す者、と色々現れる。

さらに、東軍を追い詰める状況が発生する。

 

「報告!毛利軍が、東軍に攻撃を開始!

これにより、我が方は圧倒的に有利になりました 」

 

思っていたより、早く動いてくれたな吉川広家。

これにより、豊臣恩顧の大名達が挙って投降。

徳川は撤退を開始した。

 

「別働隊に指示を出せ!徳川家康を逃すわけにはいかない!! 」

 

徳川に偽情報を出して、裏切りを阻止すればここまで簡単に終わる戦なのか。

いや、史実でも一瞬で形勢が逆転し決着が着いていたか。

 

「はぁ、案外呆気無いな 」

 

「気を抜くなよ左近。まだ、家康は捕まっていない 」

 

三成様が馬に乗りながら、俺の横にやってくる。

そう言っても三成様の顔は嬉しそうだ。

 

「まずは、ひと段落ですね 」

 

「ああ。だが、豊臣をしっかり纏めると云う作業が待っている 」

 

「ははっ、頑張ってください 」

 

「何を言うか。左近、お前もしっかり働いてもらうぞ?」

 

「ええっ⁉︎ 」

 

「ふっ、此度の大戦を裏から色々やったのはお前だろう?

その知恵をこの先も借りるからな 」

 

楽しそうに笑う三成様。

ああ、この笑顔が見れるのならまた頑張るとしよう。これから先は、俺の現代知識なんて通じないけど。

この戦の後、武将は挙って三成様に忠誠を誓った。

豊臣の世は、この先500年続いた。

 

「左近!何をしている。仕事をしろ! 」

 

「分かりました!三成様 」

 

滅びる運命の豊臣が残り、死の運命であった三成が生きた。

栄える運命の徳川が消え、生の運命であった家康が死んだ。

それでも、この世界は平和が続いた。

 

〜終わり〜

 

 

 




かなりのご都合主義や、歴史解釈があったと思いますがそこはスルーして貰いたいですm(_ _)m
三成の様な、忠義を貫く人は何故、死んでしまうのでしょうか?
生きてくれても良いと思います。
ただ、ズル賢い人がそういう人達を踏み超える。
ダメなんでしょうか?三成の様な人間が生きてしまっては?
そんな思いが爆発した作品です。
家康ファンの人は申し訳ございませんでしたm(_ _)m

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