外道に憑依した凡人   作:ひーまじん

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HFを観て、刺激を受けて久々に投稿することができました。

例によって、ちょっと強引かつ多少矛盾があるかもしれませんので先に謝罪しておきます。

本当にすみません。


求める答え

 

(……遅いな。あの神父)

 

時刻は午前二時を示し、寒風が死に体に等しい雁夜の肌に突き刺さる。

 

雁夜でなくとも、この季節のこの時間に外を出歩くというのはいささか厳しいものがある。まして、刻印虫によって肉体を蝕まれ、常に死にかかっているといっても過言でない雁夜に今の状況はかなり辛い。

 

すぐにでも暖を取りたいところだが、そう出来ない理由があった。

 

昨日、雁夜は言峰綺礼に同盟を持ちかけられた。

 

初めは時臣の弟子である人間の持ちかける話に聞く耳持たないという姿勢であったのだが、件の時臣が既に死没しているということで状況が変わった。

 

嘘か本当かは確認した。綺礼が嘘をついている可能性を考慮して、あえて受諾も破棄もせず保留にしたのだ。そして嘘か真か、答えはすぐにわかった。

 

結界が機能を果たしていない遠坂邸の書斎と思われる場所の床や壁に飛び散っていた血痕。実行犯があの魔術師殺しとなれば時臣がどのように葬られたか想像に難くなかった。

 

自らの死を偽装して、という線も無くはなかった。

 

だが、時臣の事は憎いが性格も十分把握している。己が死を偽装し、暗闇で暗躍するような人間でない。それこそ他のマスターを暗殺しようなどと画策はせず、正面から討ち果たそうとする人間である。

 

故に信じるほかなかった。怨敵の死を。

 

時臣が死に、最強のサーヴァントであろうギルガメッシュが脱落したことで残すところ英霊はセイバー、ライダー、アヴェンジャー、バーサーカーの四騎。これを見て可能性が上がったと判断したか、臓硯は桜の純潔を食らい魔力を蓄えた秘蔵の刻印蟲を雁夜に与え、間桐邸から姿を消した。勝算が出来たとしてもあくまで雁夜の戦いであり、勝てば僥倖程度にしか考えていない以上援護は期待するだけ無駄だ。間桐邸から姿を消したのも雁夜が聖杯戦争を勝ち残ると考えていないからだ。

 

とはいえ、元より臓硯の援護なぞ必要としていない。己が力で聖杯を勝ち取るというスタンスであるのだから、寧ろ臓硯の顔を見ずに済むと清々しているところだ。

 

強いていうなら今の間桐邸を守る人間はおらず、魔術師殺しのような輩が侵入した時桜の身が危険に晒される可能性がある。

 

自分が死に体であることも踏まえて、無駄な行動は極力避けたいというのが雁夜の心境だ。

 

綺礼と約束はした。ここに来たのも同盟を結ぶ為だ。勝ちの目が薄いのは始まった時から変わらない。少しでも確率が上がるならという思いでここに来た。ただ、指定した時間が過ぎて少し経っている。あちらが無下にするというのであれば早々に切り上げて何か動きがあるまで間桐邸で様子見に徹するべきだろう。

 

「……そうだ。それにあいつは時臣の弟子なんだ。それならあいつはーー」

 

「ーーすまない。随分待たせてしまった」

 

今まさにその場を離れようとした時、約束の人物が姿を現した。

 

もしも来れば悪態の一つでも吐いてやるつもりだった雁夜だったが、彼に抱えられている少女(・・)を見て、驚愕する。

 

「さ、桜ちゃんっ!?」

 

綺礼が抱えていたのは間桐の少女。否、厳密には間桐の人間になった少女というべき存在。

 

雁夜がこの聖杯戦争に参加する発端となった少女を、綺礼が抱えていたのだから驚くのも無理はない。

 

「なんであんたが……っ、まさか!」

 

「ああ。君がいると事態がややこしくなるのでな。君がここに着いたのを確認したのち、間桐邸を焼き払わせてもらった(・・・・・・・・・・)

 

聖杯戦争中に他のマスターが拠点を襲撃し、破壊するのはおかしなことではない。ケイネスがその良い例であろうが、厳密に言えばあの時と今回は目的が違う。マスターを拠点ごと吹き飛ばして脱落させようとした切嗣に対し、綺礼はあえて雁夜がいないタイミングを見計らって間桐邸を襲撃したのだから。

 

雁夜の聖杯戦争における勝敗に間桐邸は関係ない。それは雁夜の現状を見ればすぐにわかるだろう。もしも雁夜を本気で援護する気があるならば、このようにボロボロの体を引き摺って歩く必要性もない。最低限、雁夜を補助する礼装なりがあるはずだ。

 

それが無いのはひとえに間桐の翁。間桐臓硯が此度の聖杯戦争を捨て、次回にかけているからだ。

 

今回の聖杯戦争で望んでいるのは間桐を裏切った雁夜が苦しむ様を見る為のもの。援護するどころか雁夜が苦しむ様を眺め、魂の渇きを潤すためのもの。まさに外道とも言える腐った性が生み出した『愉悦』だった。

 

ーーもっとも、それも既に灰燼に帰したが。

 

「いや、なかなか骨が折れた。あの悍ましい化け物を亡き者にするには一切のミスも許されなかったのでな。おまけに要救助者がいるともなれば、難度も上がるというもの」

 

綺礼は毛布で身体を覆い、抱えていた少女ーー間桐桜を公園のベンチに寝かせる。

 

雁夜は脇目も振らず、桜に駆け寄る。

 

もしやと考えた雁夜だが、桜の呼吸が聞こえること、胸が一定のリズムで上下していることを確認してホッと胸を撫で下ろすと綺礼を睨みつけた。

 

「……なんでこんな勝手なことをした」

 

「何故?簡単なことだ。間桐臓硯が邪魔だった。特に君と同盟を結ぶに当たって最大の障害だったのでな」

 

「臓硯を殺しただって?そう簡単にあの化け物を殺せるわけがーー」

 

「殺したとも。使役していた蟲も、真に間桐臓硯と呼べる蟲もこの世から滅した。生憎とあの手の輩を葬るのは本職(・・)だ。逃げ道を潰してしまえば殊の外簡単だったよ」

 

魔術師の家系に生まれ、魔術師を嫌悪し奔走した雁夜は知らない。

 

臓硯のような異形、人の理から外れた存在を狩る者たちがいることを。

 

とはいえ綺礼が代行者と呼ぶ存在であることを、そもそも代行者がなんであるかを知らない雁夜にしてみればやはり臓硯がこうも簡単に葬られるというのは考えにくい。

 

別に評価しているわけではない。

 

五百余年。外法に手を染めてもなお生に執着したあの化け物が、有無を言わせず封殺されるというのが雁夜にとってにわかに信じがたい事実だったからだ。

 

まして、臓硯を葬ることが出来るほどの実力者が未だに急造の魔術師を頼る理由がわからない。聖杯戦争に参加しているマスターの中で時臣以外の魔術師にほぼ興味がなかった雁夜に他の魔術師の実力こそわからないが、臓硯を殺せる時点で少なくとも綺礼の実力は極めて高いということだ。

 

それならサーヴァント同士が戦っている間にマスターを狙えばいいだけの話なのではないか?

 

雁夜がそう思ったところで綺礼は頭を横に振った。

 

「キミの考えていることは大体わかる。残念なことだが、この聖杯戦争で私が優位に立てる魔術師は衛宮切嗣のみだ。何よりライダーのマスターは常にライダーと共にいる。マスター殺しなど到底できたものではないよ」

 

「……だから俺の力が必要だっていうのか?」

 

「ああ。君ならば……いや、君だからこそ必要だ」

 

「俺も聖杯戦争に参加した魔術師だぞ?」

 

「わかっているとも。そのために私は間桐臓硯を殺し、間桐桜を救った」

 

お前の願いは知っている、と暗に言っている綺礼に雁夜は息を呑んだ。

 

確かに雁夜の望みは実質的に果たされた。

 

臓硯の死も、桜の解放も。時臣は切嗣に殺されている。

 

自分が命を懸けて果たそうとした願いは、奇しくも自分以外の、それも魔術師と時臣の弟子によって果たされてしまった。

 

なんと呆気ないことか。今しがた、雁夜が聖杯戦争を勝ち残る理由が失われたのだ。

 

「もしも、だ。叶えるべき願いも果たされ、戦うつもりが無くなったというのであれば今すぐにでもバーサーカーを自害させればいい。同盟を結べないのは残念だが、参加者が脱落することも私としてはありがたい。最も困るのは君が同盟を断り、かつ聖杯を諦めていない場合だ。流石にそうなると私も君を見逃すわけにいかなくなる」

 

当然のことながら雁夜が申し出を受けない場合、綺礼が不確定要素になり得る雁夜を捨て置くことはない。聖杯戦争に参加する者として全力で排除するだろう。

 

そうなった場合、圧倒的に不利な状況なのは間違いなく雁夜だ。ただでさえ、バーサーカーへの魔力供給だけで死に体になるのだ。戦うどころか逃げられるかさえわからない。

 

なにより、桜が近くにいるこの状況下で戦うのだけはなんとしても避けたい。

 

この少女を救うために聖杯戦争に参加したのだ。その聖杯戦争で、救うべき少女の命を脅かすようなことになればそれこそ本末転倒というものだ。おまけに雁夜のサーヴァントであるバーサーカーには理性がない。桜を救ってこの場を離れるなどという器用な真似は出来ないどころか下手をすると一番危険な存在だ。

 

それに、だ。

 

(本当に臓硯が死んだなら、こいつの言う通り聖杯にかける願いなんてない)

 

強いて言うなら、遠坂に戻った桜が幸せな日々を取り戻すことぐらいだろう。もっともそれは聖杯がなくとも叶うものだと雁夜は思っている。

 

あの家に帰れば、以前の暮らしに戻れば、壊れてしまった心も治るのだと。

 

「……俺は魔術師が嫌いだ。人を人とも思わない、あんな奴らと同じ血が俺にも流れてるのかと思うと反吐がでる」

 

「……」

 

「だが、どうにもアンタは俺の知る魔術師とは違うらしい」

 

雁夜と同盟を結ぶに当たり、臓硯は殺す必要があったかと問われれば否だ。雁夜が聖杯戦争で何をどうしようと自身に害が無ければ臓硯は口出ししない。桜の救出も雁夜の願いではあるが、同盟を結ぶだけならこちらも綺礼がする必要はなかった。

 

それに雁夜の目的を知っているのだとすれば、桜を人質にする事で雁夜を意のままに操ることも出来たのにそれもしなかった。

 

だからこそ雁夜には綺礼がとてもあの遠坂時臣の弟子であり、魔術師であるとは思えなかった。

 

……そもそも正規の魔術師かどうかも怪しい気がするが。

 

「ならば問おう、間桐雁夜。私と同盟を結ぶか否か」

 

「桜ちゃんをあの地獄から救ってくれた……その恩人の申し出だ。ありがたく受けさせてもらう」

 

それが善意からでなかったとしても、桜が救われたのは紛れもない事実だ。桜を救うことが雁夜の目的であり、綺礼が同盟を結ぶためにそれを行なったと言うのならいよいよ雁夜には断る理由が見当たらない。

 

仮に利用されるだけにしても、桜が救われたという結果は紛れも無い事実。後で自分がどう利用されることになっても、臓硯無き今、聖杯戦争参加時点に比べれば遥かに良い状態だ。

 

「同盟成立、だな」

 

「ああ。……俺に出来ることなんてたかが知れてるが、それでもまだ少しぐらいは無茶が利く」

 

後顧の憂いはない。一月と持たないのはわかっていることだ。この聖杯戦争で命を落としても、後悔などないだろう。

 

「そうか。では早速だが一つ頼みたいことがある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライダーが強引に執り行った先の宴で結界が破壊され、拠点をアインツベルン城から築九十年を数えるほどの老朽物件に移し替えたのは昨日の話だ。

 

攻略されてしまった場合の予備拠点として購入し、契約に際して地元の暴力団と一悶着起こしかかる羽目になったものの、結果的には無駄な買い物にはならない。

 

ーーはずだった。

 

「これは……ッ」

 

新たな拠点を離れたのは数時間ほど。

 

その間にこの予備拠点ーー厳密には拠点内にある土蔵の扉が荒々しく破壊され、内部は無残な状態に成り果てていた。

 

襲撃されたのだと理解するのに時間はかからなかった。

 

「舞弥っ!」

 

土蔵の中で倒れる協力者ーー否、『道具』の元に駆け寄る。

 

襲撃者がなんらかの罠を仕掛けていることを警戒しつつ、倒れている女ーー久宇舞弥の容態を確認し、切嗣は僅かに安堵の息を漏らした。

 

殺されたわけでも、致命傷を受けているわけでもない。意識のみを奪われているだけだ。

 

故に切嗣が襲撃に気づくのが遅れてしまったわけだが、切嗣は悔やむことも嘆くこともしない。

 

そしてその安堵の息が、表情が、衛宮切嗣がまだ戻りきれていない証左だ。

 

彼女が意識を失っていなければ指摘していたかもしれないが、この場にそれを指摘するものはいない。

 

切嗣は舞弥をその場に寝かせ、急いで土蔵を出る。

 

襲撃者の目的が聖杯の守り手であるアイリスフィールなのは明白。問題は襲撃者が誰であるかだ。

 

残されている陣営はライダー、バーサーカー、そしてアサシンとは思えない謎のサーヴァントのみ。

 

まずライダーはあり得ない。切嗣の使役するセイバーほどでないにしろ、あの手の輩はこのような卑怯な手段を嫌う。仮に奪いにくるにしても、舞弥に伝令役を任せて一騎討ちの場を設けようとするか、或いはセイバーが来るまでこの場に留まる可能性が高い。

 

そうなると残す二つの陣営。

 

普通に考えられるのはバーサーカー陣営だ。

 

なにせ、マスターが御三家の一つ、間桐だ。アイリスフィールが聖杯の守り手である事を知っていたとしてなんらおかしくはない。理由はわからないものの、アイリスフィールを連れ去るとすればこちらの陣営の方が考えられる。

 

しかし、切嗣の脳裏にはあの男の顔がよぎった。

 

根拠もなければ、証拠もない。

 

だというのに、切嗣はあの男がーー言峰綺礼が関わっているのではないかと思えてならない。

 

切嗣は歯噛みする。

 

おそらく裏で暗躍を続けているであろう綺礼の策略が何一つわからないということに。

 

(一体なんなんだ、お前は……)

 

言い知れぬ焦燥感を募らせながら、影すら見えない襲撃者を探すべく、切嗣は拠点を発つ。

 

既に最終決戦までのカウントダウンが始まっているとも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで、良かったのか?」

 

「ああ。これで衛宮切嗣は冷静さを欠く。襲撃者を唯一知る久宇舞弥は目を覚ますまでに時間はかかり、覚ましたところで彼女は襲撃者をライダーだと誤認(・・)している。その点については彼女の落ち度ではないがいずれにせよ、衛宮切嗣が無駄骨を折っている間にこちらも準備を進める」

 

綺礼が取った戦略はおよそ正史通りのものだった。

 

切嗣及びセイバーが離れたのを彼らが拠点を購入するより以前に取り付けていた小型カメラで確認したのち、宝具を用いてライダーに擬態(・・)したバーサーカーが拠点を襲撃。舞弥を無力化し、アイリスフィールを攫う。ここで舞弥を殺さなかったのは舞弥の生命力の衰えを通じて、切嗣に襲撃を感知させないためだ。その為に正史ではセイバーを無視させるために使用していた令呪を舞弥を殺さず、無力化させる為に使わせた。そしてその結果、切嗣は事が終わってから襲撃を知覚し、唯一情報を持ち得ている舞弥も目を覚ましたとして誤認したままだ。襲撃者が誰であるかを特定するにはそれなりの時間を要する。

 

綺礼の謀略に何も知らない雁夜は人知れず恐怖する。

 

今でこそ同盟関係にあるものの、時臣存命の際はこの男が仇敵と手を結んでいたのだ。仮にもこの男が謀略を用いて雁夜を抹殺しようとしていたなら、雁夜はともかく、桜にも被害があった可能性はあるのだから。

 

「さて、右手を出したまえ。間桐雁夜」

 

「? ああ」

 

訳はわからないが、この男がなんの意味もなくそんな事は言うまいと、雁夜は干からびて筋のういた右手を綺礼に差し出す。

 

綺礼はその手を取ると、低く聖言を紡ぎながら、令呪の残滓に指を這わせる。

 

たったそれだけの行為で、潰えていた二角の令呪は再び輝きを取り戻した。

 

「っ!? 令呪がーー」

 

「ちょっとした裏技だよ。今の私は教会の保管する令呪をもっている。その令呪を君に再分配したまでだ」

 

なぜ綺礼が監督役が所有しているはずの保管令呪を持っているのか気になったが、さして重要な事でないと思考を放棄する。どういった経緯であれ、戦局を優位に進めているのは他でもない自分達であることが重要な事だ。

 

「……後はこの令呪を使ってセイバーと闘うって事でいいんだな?」

 

「ああ。だが、くれぐれも私が言ったことを忘れないように。ともすれば、君の命に関わることだ」

 

「……わかってる」

 

全力でバーサーカーが戦えば、雁夜は全ての刻印蟲を死滅させることとなり、その最期は凄惨なものとなる。なればこそ、セイバーとの闘いは正史のようにバーサーカーの思いのままに闘わせることなど出来るはずがない。雁夜のためだけではない。戦略の観点から見ても、バーサーカーに切り札を使わせずに戦わせた方がより良い結果をもたらす。

 

その分、雁夜は苦しむ羽目になるが、それはこの聖杯戦争に参加した時点で受け入れている。今更なんの躊躇いがあるのかと雁夜は鼻で笑う。

 

倒すべき敵は死に、救うべき者は救われた。

 

雁夜にとって今の状況は延長戦のようなもの。恐れるものなどありはしない。

 

「ところで、本当に彼女が『聖杯の器』なのか?」

 

雁夜は屋上の床に倒れ込んでいる女ーーアイリスフィールを見て問う。

 

「正しくは彼女の『中身』だが……聖杯を降ろすにはあと二人以上のサーヴァントが脱落する必要がある」

 

「そのうちの一体が俺のバーサーカーってわけか」

 

「そういうことだ」

 

肯定する。

 

正直なところ、今すぐ自害させてしまっても構わないとすら思っている。そうしないのはこの後の戦いでバーサーカーが必要だからだ。

 

「ライダーか、セイバーか……俺はどっちの相手をすればいい?」

 

「セイバーだな。ライダーについては私のサーヴァントが葬るだろう。君は次など考えず、全力でセイバーとの戦いに臨んでくれ。それまでは体を休め、英気を養ってくるといい」

 

「そうさせてもらう」

 

頷くと雁夜は足を引きずりながら、その場を後にする。

 

足音がどんどんと遠ざかっていき、足音が完全に聞こえなくなった直後、それを見計らっていたように綺礼の隣にアヴェンジャーが姿を現した。

 

「ここまで予定通りね。イレギュラーを許さないほど完璧な作戦、とでもいえばいいのかしら?」

 

「起きられては困る。その為の小細工だ」

 

イレギュラーを起こしかねない人物も既にこの世を去った。現在、イレギュラーを起こしかねないのは寧ろ綺礼の味方側にしかいない。

 

「どうするの? 仮にこっちの作戦がバレて、セイバーのマスターとライダーのマスターが手を結んだら」

 

「その時はその時だ。敵は消耗せず、私の消耗が増えることになるが、大勢に影響はない。博打か大博打かの差だ」

 

「…………それでよくもまあ大勢に影響はない、なんて涼しい顔をして言えたものね」

 

呆れたような表情でアヴェンジャーは綺礼の顔を見る。

 

綺礼が見据える聖杯戦争の結末を、アヴェンジャーだけが知っている。

 

アーチャーも、雁夜も知らない。

 

綺礼の目指すエンディングはひどく独善的だ。

 

実際、聞かされたアヴェンジャーが即座に『アンタ、やっぱりロクな死に方出来ないわよ』と口にしたぐらいだ。

 

にも関わらず、賛同したのはアヴェンジャーであるからだろうか。

 

それともーー

 

「……考えるだけ無駄ね」

 

「? 何か言ったか?」

 

「何もないわよ。さっさと行くわよ」

 

雑念を振り払うように踵を返すアヴェンジャーに綺礼は首を傾げながらも、決戦の地へ足を向けた。

 

ーー決着は近い。

 

 

 

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