Alderamin of kaleidoscope 作:幻覚の彼女
北に構える約5000の軍勢。
その中でも最上位の階級に属する私(テルン・ラタニク)は、《彼》らが移動に当てる1日ほどを利用し、8名の高位士官とともに軍議を行うこととした。
「いかんせん、《どの手》が来るかが読めない……」
何よりの問題は《彼》が《1人》でないことだった。加えて今までより高度な戦術が要求されるであろうこの状況。
今までの戦術はほぼほぼ体験してきたつもりだったが、実際相手取るとこれがなかなか読めないものだった。
今までの訓練で見せられた戦術の数々。
水攻めからの伏兵に身じろぎさせられたり。
誘い込まれ、囲い込まれたり。
まさに絶勝幾重の能将と言うべき多彩すぎる戦術がこの読むと言う思考を無に帰そうとする。
だが、この状況から言って1つだけ確信できる事があった。
それは「兵」だけで攻める気がないこと。
罠、地の利、その辺は考え出せばきりがないが、これだけは終始念頭に置いてことを運ぶことにした——
——到着。
演習場南端からは大きな山を正面に見据え、右手には広大で高低差もない草原が広がる。
数時間ほど前まで雑談を交わしていた相手はトロッコを降りでも尚、戦術を考えているのだろう。その眉をしかめたままである。
左手で静かに鞘を撫でる。どの戦場でも彼を支える《太刀》命綱は今日も冷たく真っ直ぐ伸びている。そっと目を閉じて、目の前に愛刀のイメージを創り出す。寄せ来る敵の太刀筋に対して自分の体のイメージを捨て去り、剣の動きに全てを預ける。的確な太刀筋で斬り伏せた相手を見下ろし一呼吸。この数秒が彼の全てであり、強さである。目を見開けばさっきまで思慮にふけっていた旧友が指令に走っていた。
人数差がありすぎる事、相手は地の利を生かさせてはくれない事。これだけでも十分に不利な状況と言えるだろう。
負けられない。いや、この状況“程度”で負けるわけにはいかない。
至って冷静に目を瞑る。大きく重い扉を開いてその中に入って行く。重力が薄れて強張っていた身体から意識が遠のく。
大事な情報は目の前に全て揃えられていた。これはつまり、取る策は全て成功する算段にあると言えた。何故なら、彼には十分すぎるほど考える時間があったから
「火騎兵と風騎兵を用意。勝負は右手の草原でつける。」
進軍を始めた北軍5000人。地の利による戦法を警戒した指揮官の意向により平地を平地を進んで行く。
——目指すのは草原——
距離的に北軍は3日。南軍は1日と半日で策略の地を瞳孔に写すこととなる。
猶予は1日。白黒の童の言葉は最速にして的確無比に伝染して行く。
「目覚めには少々衝撃が強いだろうな。」
意識を高く置き直す。左右に針葉樹林が携えられている。左手に大きな山が聳えている。
——よくできている——
2000人。この時点で手足の如く、いや、全て利き手のように使役できる。
——よくできている——
相手は勿論本気であるし、知略の限りを尽くしてこの地へ来る。
——よくできている——
見落としは——ない。
負ける算段は——ない。
「火を放て。」
想定されていたより半日早く北軍は到着。これは指揮官の極端な最短距離を狙って進軍した策によるものであり、一般兵からすると信じられない所業だったが、彼 には想定できていたことだった。中央の湖、そこへ流れる川により分断されているように見える演習場。荷だけを簡易トロッコに乗せ、この短時間で補給路を築き、先行する兵に橋をかけさせる。およそ1日でそれを済ませた指揮官は、流石というべきだろう。自分でもこうしただろうと言う推測も込めながら思う。
「然し、この程度では変わらぬ。寧ろ驚くのは汝等の方であろう。」
草原を見据えた北軍最高指揮官テルン少将は、顔に戸惑いを隠せずにいた。
——そこには背の低い草しか生えていない草原が行く手を阻むかのごとく勢いよく燃える光景があった——
アニメも遂に最終回放送終了……アルデラミンは本当に楽しませてくれる最高の作品ですね!
秋の祭典でヤトリとイクタの物語に仕立てた。という話を聞いて色々感慨深いものがありました。種田梨沙さんの回復を応援し続け、円盤など購入することで二期を待とうかなと考えております。
さて、物語もいよいよ戦闘へ。御都合主義感は否めないかもしれませんが楽しんでいただければと思います。
感想、アドバイス等、いただければ幸いです。
ps.誤字報告ありがとうございます。助かりました!修正いたしましたのでこれからも支えてくださると嬉しいです。