特異点Ω/α 時空混濁都市東京 人竜戦記 作:ナガミミ様
原作:Fate/Grand Order
タグ:オリ主 残酷な描写 クロスオーバー セブンスドラゴン セブンスドラゴン2020 セブンスドラゴン3
なぜならばそこは未来の可能性の一つであったからである。人理が焼却された今、2016年を越えて存在する時代など存在しない筈であった。だが、確かにそれはシバによって観測され、一つの地獄絵図を写し出した。
それは、天から降り注ぐように次々と現れる大量の竜種である。
それだけではない。本来ならば一つしか表さない筈の年代が、四つも同時に存在することが判明したのである。
カルデアは、この特異点を調査する事を決定。
かくして、英霊たちとそのマスターは時が混ざりあった東京の地に降り立った。
それは、竜と人の戦いの記録。
__何故だ。何故今俺が生きている。
愛しい女はもういない。そもそも、自分の方が先に死んだ筈だ。
俺は元々、先の短い寿命しか持ってなかった。それをねじ曲げてまで5000年以上眠るように生きてきたのは、託すためだ。
人類の天敵、創造主。食らうが為にこの地球という畑に人類という種を撒いたとほざきやがる、真竜__ドラゴンを殺すために人類が作り上げた最終兵器。ドラゴンクロニクルを。
俺はそれを自らの体に取り込んでいた。結果として俺は人類という種から外れ__憎たらしい事に人の形をした竜へと変わってしまった。
はじめの内はその破壊衝動をまだなんとか押さえ込められた。だが、真竜との戦いを終えて、ぼろぼろになった俺にはそれを押さえ込むことが出来なくなったのだ。
俺は彼女に頼んだ。この身を封印することを。
俺がいた時の戦いでは襲ってきた真竜を殺しきることは出来なかった。だからまた奴がこの星を食らおうと狙うだろうという確信があったのだ。
だから、ドラゴンクロニクルを保存するための器としてこの肉体を使い、その時代の『狩るもの』に託そうとした。
……何回か衝動と封印の緩みが生じた為に、かつての戦友達に迷惑を掛けたが、その思惑は大体は成功した。俺は未来の『狩るもの』、アイツらの後輩たちにドラゴンクロニクルを託して死んだ__そこまでは良かった。
だが、まさか俺が死んだことで__
「なんで、なんでお前達が真竜なんかになっちまってるんだよ、アイテル……っ!」
『「タケ……ハヤ……!?ワ、私ハ……ウガアアアアアッ!!」』
俺の愛した人が俺が死んだことに耐えきれなくなり、その姉のドラゴンへの増悪に飲まれ、自らが真竜になってしまったなんて__その情報を座から引っ張り出した時は、嘘だと思いたかった……!
青い無数の剣が、俺に降りかかる。その動きの鋭さは、どんな物体でも切断してしまいそうなほどの勢いと凄みがあった。だがッ!
「お前に……その姿になっちまったお前に、やられるわけには行かないんだよっ!」
腕に力を込める。そうして俺の手には、槍が出現した。
これは俺自身だ。人類戦士タケハヤの魂__ドラゴンとしての力の結晶であり、それを人間としての意思で武器に変えた物だ。
故に、その力は__
「オオオオオオオオオォォォオオオオオラァ!」
真竜の一部でさえ、打ち砕く。振るわれたその槍は俺に向かってきた剣をすべて打ち砕き、粉砕する。
『「ドラ…ゴン、ドラゴンハ……敵ダ!スベテ……スベテ討チ滅ボス!!」』
「やってみろ……エメル!だが、俺はしぶといぞ……たとえ相打ったとしてでも、食らいついてでもお前達を止めてやる!」
そうして、竜同士の食らい合いが始まった。この時空が歪みきった東京の地で、開戦の鐘の如く轟音が響く……かつて愛し合った者の、悲しき殺し合いが。
人類戦士タケハヤ対第四真竜ヒュプノス、開戦。
ここは東京。あるいはエデン。もしくはアトランティスと呼ばれた土地。
人理が崩壊した事で、第七の竜に至る筈だった、心優しき人間の世界の創造主は生まれなくなってしまった。それによって元より度重なる時空移動によって歪んでいた空間は楔を失い、耐えきれず混ざりあったのである。
そう、ここは終着点を失った特異点の坩堝。
かの魔術王すらも予想だにしてなかった最悪の特異点__
BC10xxx~AD2022~2100~7xxx 特異点Ω 時空混濁都市東京
天がおびただしい数の竜に覆われる。それらは低位の飛竜であるが、普通の人間からすればけしてかなわない存在である事には変わり無い。だが__
「要救助者を確保ォ!気を失ってるが、軽傷だ!必ず生きて帰すんだ!」
「俺が足止めします…!!ドウジマ隊長達はその子を連れて都庁まで戻ってください!」
「な__そんな、無茶だ!?なんで__」
「お願いしますよ隊長……!実は俺、さっきの攻撃の衝撃で飛んできた破片腹に刺さって出血してて……もうフラフラでここから動けそうじゃ……ゲホッゲボッ、どのみち、もう助かりそうにないっス。だからこの命を__その子と仲間達に使わせてくだざい……!」
「ッ!……わかった、たのん、だぞ……!皆、撤収するぞ……」
そうして、残る彼に自衛隊員達は自然と皆敬礼をした後に__速やかに撤収していった。
(はは、まさか戦いが終わったと思ったのにまた現れるなんてなぁ……家族やアイツらと、会えると思えば悪くないか)
「さあこいよクソトカゲ共……最後まで、足掻いてやらぁ……!!」
それでも足掻く人々は命を散らしていく__勇敢に、己の死を確信しながらも。
「……破ァ!!」
竜の吐息を打ち払い、喉元に肘を捩じ込む。
竜の爪を受け流し、間接を蹴り砕く。
竜の牙をかわし、その目に拳を叩き込む。
そうして暴れまわった周囲には、何十ものおびただしい数の竜の骸が折り重なっている。
その中心には、和装のような半裸の偉丈夫が一人立っていた。全身に竜の帰り血を浴びているその姿は、まるで鬼のようだ。
「フゥーーー、トゥキオンでの戦ってぇのはここまで地獄だったのか。もう何体殺したか覚えてねぇぞっとっっ!」
更に来た増援にすぐ対応する。こうしてこの男はこの場に召喚されてからずっと戦い続けていた。
「す、すまない……エネルギーのチャージが速く済めばこんな事には……」
「なあに、あんたは悪くないさレイブン。聞けば力の無い人のために戦って逃げ遅れたって話じゃないかッ!!おらよっとっ!」
阿修羅のごとき連打が竜の顔面を叩き潰す。それだけでは致命傷ではないので動きが鈍くなったスキに首に飛び付きへし折っておく。
まさしく、その男は無双であった。無手でありながら竜の鱗を容易く砕き、貫き、その骨を容易くへし折る。
驚異的なのが、そうまで大立ち回りしておきながら負傷といえる負傷がほぼ無いことである。全身を赤く染めているのは自らの負傷ではなく、全て返り血なのが信じられないほど体の至るところに血にまみれていた。
「しかし__君は本当にセイバー……?なのかい?デストロイヤーの聞き間違いじゃないよね?」
「いやぁ、これでもアイゼンのサムライだ。剣士なのは間違いないよ。だが一人で戦うとなると、どうしてもなぁ……」
「拳叩き込む方が、やり易いのさね……!」
そういって彼は拳を握り直した。彼の名はガッサン。未来の地球、エデンの地にて真竜『ニアラ』を討伐した英雄の一人。
今はこの世界で、英霊として召喚されたサーヴァント『セイバー』であった。
ただし、一度たりともその腰の剣は抜いてはいないが。
「さあこい。お主ら程度にはこの『星眼』、抜くに値しないぞ。全て拳で相手してくれよう」
そういって、ガッサンは飛竜へと構えを向けた。
同時刻、都庁周辺__
まだかつてのフルメンバーならば、なんとかなったであろう。でもかつての私の仲間達は、一人は戦いの後遺症で動けず、もう一人は別の所で戦っている。私一人でも、避難民が集まる都庁を守る戦力にはなるだろうと思ったのが間違いだったかもしれない。
まさか都庁に直接……真竜が攻めてくるなんて。
「__ぐぅ、スゥゥゥゥゥ__」
呼吸を整え、体に気を巡らせる。それだけでなく外に漂う外気も吸収、増幅させ、体の自然治癒力を高める。
そうすることで、ヒビの入った骨の痛みが消えていった。
「クァハ、クァハ……よく一人で粘るものだな。この真竜ニアラに対して!」
「ほざくなこの悪趣味な金色が……!一度私たちに倒された癖して、随分と余裕じゃないか……!」
「……っ!?貴様ァァァアアアア!!良かろう、じわじわとなぶり殺してやろうと思ったが、遊びは終わりだ!貴様が守ろうとする物ごと消し飛ばしてくれる!!」
(っ、しまった、煽りすぎた!?まずい、このままだと後ろの都庁が__)
やり過ぎた。本当なら自分が囮になることで、都庁への被害を最低限にしようとして煽ったのだが、逆効果だったか!?
……仕方ないっ、奥義で相殺させる__!!
「天の型、地の構え……!」
すぐさま刀を鞘に収め、意識を集中させる。ただ鋭く、強力な一撃を叩き込む。それを行う為だけの刃へと切り替えた。
そして
「食らうがいい、『真竜ブレス』ッッッ!!!」
「ったあああああああ!!」
とき放った斬撃は、空を切り裂き、全てを断つ一閃。だが、さすがに真竜のブレス。簡単には勢いは止まらない。
「っ、そんな!?」
一部、相殺しきれなかったその閃光が、都庁の方面へと無情にも流れていく。
ダメだ。とそう思ったその瞬間__
「マシュ!令呪を持って命ずる!!宝具を全速力で開放だ!!!」
「了解しました、先輩。真名、開放!」
黒い髪の青年と、大きな盾をもった少女が、都庁を背に立ちふさがった。
「ンフフフ、やはり君か。ナガミミ」
「……チッ。そうだよなぁ。アイツらが生まれなくなっちまったんだからお前も生きてる筈だよなアリー……いや、ND」
そこはかつて、七体目の真竜が誕生するはずの場所であった。言うなれば卵であり、ゆりかご。中身は人と竜としての意思の食らいあいが延々と繰り返される蟲毒という悪趣味な代物である。
本来ならばだれも今は入れない。そんな場所に二体の異形の姿があった。
片方はまるで人形のような姿である。ウサギのような、マスコットのような姿。
もう片方は人の姿をしているものの、背後から真の姿が現れかけていた。桃色の鱗を身に纏った巨大な竜__第二真竜 ND
「しかし、君がここで何かを起こせるとは意外だな。まあ、大した事は出来ないみたいだけども。精々、今やってるように星が記憶してる英雄をエーテルで実態を持たせて甦らせる位だろうね__生まれていないものは、どう足掻いても呼び出せないだろう?」
「……なんだ。オレを始末しないのか?目障りだろうに」
「いやね__私たちは、彼等に破れたんだよ。完璧だと思っていた計画に僅かなヒビを入れ、そこから起こせない筈の奇跡を呼び込んだ」
「私たちの舞台はもう終わってる。劇が終わったキャストは舞台から降りるべきだ。ただ__彼らがこんな下らないことで、消えるなんて許せないけどね」
「今回、私とアイオトは動かない。キミも好きにすればいいさ。ナガミミ__いや、■■■■」
「精々足掻くといい。少なくとも私は邪魔をする気はない」
「……そーかい。なら、そうさせてもらうよ」
そういうと、NDは姿を消した
「……たく!折角、あの姿にも慣れてきたってーのに……!お前らがいなきゃ、意味ねーじゃねーかよ!」
「絶対元に戻してやる……!何をしてでも、宇宙をさまようことになっても、探し当てて見つけて、それで、一発ぶっ叩いてやる!!!」
そういって、ナガミミは再びその場にて方法を探った。その行為が、どれ程危険なのか知りつつも。
これは、竜を狩る者達と、人理を修復しようとする者の物語。