蒼き鋼のアルペジオ─ディソナンス─   作:葱沢 桐ノ丞

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3ヶ月ほど更新停止して申し訳ありませんでした

これからは出来るだけ月1で投稿できたらと思っておりますのでよろしくお願いします

とりあえず前書きはこのくらにしておきます


Depth.008 彼の道、私の道

 

 

no side

 

市街地から続く道路。そこを行き交う人々は若く、皆同じ制服を着ている。そんな生徒達に混じり歩く1人の少女がいた。その少女は場違いなほど大きなリボンを付けており不思議な雰囲気をまとっていた

 

「・・・関係書類を偽造し制服も調達。他の人間に見せる様々な物も揃えた。ハッキリ言って楽な作業ではなかったぞ・・・。この煩わしさに見合う経験値が積めれば良いのだがな。千早群像、期待したいところだ」

 

side end

 

 

 

side 優

 

あの事件から数週間、学園にはいまだ暗い雰囲気が残っているもののいつも通りになっていた。しかし火災がおきた原因などはいまだ不明のままだった

 

一部記憶にはないことだが琴乃を迎えにいくために戻っていた私は途中で天井の崩落に巻き込まれていたらしい。それをクマノさんが救出し人の声が聞こえたため身を隠した後、声の主に助けられたそうだ。その際、怪我をおっていたがクマノさんの身体を構築するナノマテリアルの一部を使用し私の身体を修復したという。しかしクマノさんのデータにも一部何者かが介入しデータを改ざんした跡がありどこまでが本当かわからないという

 

後から知ったことだがその時救助してくれたのは群像と僧で私が最後の救助者だったそうだ。私を救助して戻ろうとした時に入口が崩落しそこからは救助に戻ることが無理だったという話を入院中に僧から聞いた

 

「琴乃・・・」

 

中庭に設置されたベンチに1人、腰をかけ呟く。そのつぶやきは誰にも聞かれることなく空に消える

 

そして行き交う生徒たちを眺めていると横に人の気配を感じたためそちらに視線を向ける。するとそこには大きなリボンで髪を後ろにまとめた少女が立っていた

 

その少女は不思議そうな顔をして私を見ていた。私は視線を戻し再び行き交う生徒たちを見ながら考える。こんな大きなリボンをつけた少女は見たことないぞ、と。そこで、ここ数日の間に噂になっていた話を思い出した。その話は転校生が来るといったことや転校生が可愛かったなど転校生に関するものだった。そして私がこの子を知らないという事はこの子が転校生なのだろう。そう結論づけた時、その子が声をかけてきた

 

「あなたが深海優?」

 

「・・・だとしたら?」

 

「今度のシュミレーター試験、私の船に乗らないか?」

 

「・・・なぜ私なの?」

 

「あなたとならば彼を・・・千早群像を倒せると思うから」

 

「・・・そうね、答えはまた今度でいいかな?少し考えたいの」

 

「ああ、わかった。また聞きに来るとしよう」

 

そう言ってその少女はさってゆく

 

その少女の後ろ姿を見ながら私は彼女と組むことで得られるメリットとデメリットを考える

 

彼女の実力がどれほどのものかわからないが確かに彼女と組んで群像に勝利した時のメリットは大きいだろう。しかし負けた時はどうなる?総合成績の順位はほぼ変わらず他も今のままだろう。あれ?これってデメリットの方が少なくね?

 

「ゆーう!!」

 

「ひゃっ!?」

 

そんな事を考えていると突然後ろから抱きつかれながら名前を呼ばれた。というかいつから後ろにいた。全く気配を感じれなかったぞ。しかもひゃっ!?ってなんだ?驚き方が完全に女子じゃないか。身体が女になったから心も女っぽくなってきてるのか?

 

「あはははは、珍しく驚いたね」

 

「い、いおり、考え事してる時に急に背後から声をかけないでよって前にも言ったはずだよ?」

 

「ごめんって」

 

四月一日いおり。機関科の1年生で総合成績5位。彼女もまたイ401のクルーになる人物だ

 

「だからやめとけって言っただろ」

 

「杏平もいたのね。どしたの二人揃って」

 

橿原杏平。彼は水雷科で総合成績は毎度200番台だが砲術と水雷に関しては10位以内に入るという水雷魂を持っている。もちろんイ401のクルーになる人物である

 

「いやーね、僧くんから今度のシュミレーター試験のメンバーに入って欲しいから誘ってきてくれないかって頼まれたわよ」

 

「まさか万年2位さまからお誘いが来るとは思ってなかったぜ。ところでさっき話してた子って霧乃さんだろ?」

 

「へぇ、あの子の名前、霧乃っていうのね」

 

「ああ、、霧乃イオナ。この前転校してきたんだけどまあ、あれだな、不思議ちゃんだな」

 

なるほど。やはり彼女がイオナだったか。容姿が似ているなと思ったら本人だったのか

 

「とりあえず今回のシュミレーター試験、群像と一緒に乗るのはやめておくわ・・・。なんだかうまく話せない気もするし・・・」

 

「ん、わかった」

 

「群像と僧にごめんって伝えておいて」

 

「おー、伝えといてやるよ。いおりが」

 

「そうですねー。あんたまだ群像君と僧君と話したことないものね。ぷくく」

 

「なんかすっげぇ、ムカつく」

 

そんな2人に別れを告げイオナを探すため私はその場を去る。彼女が私に声をかけてきたということは群像の周りを洗っているのだろう。きっと入学した頃の打倒千早群像の話を聞いたのだろう

 

side end

 

 

side 群像

 

霧乃イオナさんに出会って数日、彼女のチームクルーのデータを解析しつつなぜ彼女に勝ちたいかを考えた。しかしその理由はいくら考えても答えが出せなかった

 

「群像、もうすぐ試験開始だ」

 

「ああ。みんなこれが今回最後のチームとの対戦だ。副長、概要を頼む」

 

俺は一言、二言だけ述べあとを僧に任せる。僧は今回の使用艦艇のスペックとルールの確認をする。そうこうしているうちに試験開始一分前の合図がなる

 

「まあいつも通りやろう。しかし霧乃イオナは正確な操艦をしている。まるで機械のようにミスは犯さない。その辺が今までのチームとは違う」

 

「なかなか楽しめそうな相手だぜ」

 

「試験開始30秒前です」

 

「よし、各員最終チェック」

 

30秒前となり全員がそれぞれの担当の場所の最終チェックにかかる

 

「各部点検終了。オールグリーンです」

 

「よし、かかるぞ!!」

 

そして試験開始の合図が上がった

 

side end

 

 

 

side イオナ

 

「二号艦、コンタクトできません」

 

「耳で捉えられないのであればすぐに音紋解析をしろ。そして向こうには既に見つかっていると思え。なんせ向こうには聴音科のエースがいるからな」

 

「りょ、了解」

 

「副長、進路転進3-3-0。ダウントリム15。深度270へ」

 

「了解。進路転進します。しかし大丈夫ですか?海底との距離が近くて操艦に影響があるかと」

 

ふむ。と私は息を吐く。

確かに人間からすれば細かな操艦というのはストレスが溜まるものなのだろう。だからと言って海底から距離をとればすぐに見つかってしまうだろう

 

「いや、副長深度はこのままだ。海底を這わねば取られる可能性が格段に上がる」

 

「・・・了解。最悪、操艦を変わって貰いますからね」

 

「!・・・わかった」

 

彼女の言った言葉に私は一瞬言葉を詰まらせる。今の言葉が深い意味を持たないのであれば私はそれで構わない。しかしそれが私の正体をわかっていて言っているのであればそれは大変まずい状況だと思う

 

「魚雷管開放音探知!方位0-7-7、距離、深度、共に不明」

 

「よし、先手を取るぞ!1番発射管魚雷発射!放出後、20秒航走後自爆させろ」

 

「了解。1番発射管魚雷発射!」

 

艦内に魚雷発射管の作動する音が響く。あとはやつがこの魚雷が捨て弾であるという事に気づかずにこちらの思考通りに動いてくれればいい

 

「魚雷炸裂!」

 

「今の音紋プロットを解析!魚雷の爆音の中に二号艦からのエコーもあるはずだ!」

 

「二号艦エコーを確認!」

 

「魚雷全門装填。半数の終端誘導目標を二号艦スクリュー音にセットして解析位置に全弾バラまけ!」

 

「全発射管魚雷発射!」

 

全ての発射管から魚雷を放ったため艦内が少し揺れる。スクリーンに映し出された魚雷の航路を見ながら私は奴が次にうつであろう手を演算しその裏をかくための演算をする

 

そうしているうちに先ほど放った魚雷が爆発したであろう音とレーダーから魚雷の影が消えるのを確認する

 

「・・・どうだ?」

 

「全弾起爆しましたが、爆発で海水がかき混ぜられ確認できません」

 

「ダメージは与えたはずだ。漏水音には注意しろ」

 

「了解」

 

いくらダメージを与えてさらには海水がかき混ぜられて音響での探知が難しいとはいえ相手には聴音科のエースが乗っているため少しでも動けばこちらの位置が分かってしまうだろう。その事をしっかり分かっているのか副長は海水の流れにのせ海底や岩礁にぶつかったりしないよう動きを最小限に留めていた

 

「艦長、二号艦のエンジン音を探知!動き出しました。かすかに魚雷管注水音捕捉。距離6500」

 

「来たか。思ったより近かったな。漏水音は?」

 

「いえ、聞こえていません」

 

漏水音がしないということは二号艦に損傷を与えていないということか?まさか。あの数の爆発だ。多少の損害は・・・

 

「艦長、二号艦の予測進路ですがこのまま行くと我々の真正面を横切ることになります」

 

「む。ソナー、音響解析グラフを」

 

「生データです。音響バンクに登録されている二号艦のスクリュー音と機関音です。適合しています」

 

「確かに適合してます」

 

「いや、捕捉したデータは高音域にわずかな異音を含んでいる」

 

「しかし、これは海中ノイズなどの誤差では?」

 

「確かにその可能性もあるだろうが他に可能性は?」

 

「それならデコイのスピーカーノイズの可能性がありますね。それに漏水音がしないということはもしかすると注水したのかも知れませんね」

 

「確かにスピーカーノイズに似ているなしかし被害区画に注水とは常識外れも甚だしい」

 

「常識にとらわれない。それが千早群像ですよ。さあ艦長、ご決断を」

 

「・・・よし、こちらも動くぞ。正面進行中の物はデコイだ。エンジン始動、急速右舷回頭!敵は最初に音を探知した地点だ。魚雷全門装填。目標地点への直進射で良い」

 

「魚雷諸元入力完了!」

 

「魚雷発射!前部発射管フルファイヤー!!」

 

 

side end

 

 

 

side 優

 

私は知っている。この試合の結末を。しかしこの流れはどうだろうか。私の知っている結果から少しズレようとしている。これもこの世界の歴史の流れが狂ってしまった影響なのかもしれない。そうとなれば私はそれを正しい歴史に軌道修正するために動くのみだ

 

「常識にとらわれない。それが千早群像ですよ。さあ艦長、ご決断を」

 

転校生である霧乃イオナは多分今回の試験の前に過去のデータなどを調べているのだろう。そこにはきっと私や群像の情報もある。その上私はこれまでの試験で数回、群像と対戦したこともあり何より群像のチームにも入っていたこともある。その点では霧乃イオナは今の言葉を聞き納得したような表情をしていた

 

 

先ほど放った魚雷はそのまま敵艦に向かい連続した爆発音を放つ。ソナーがそれを捉え報告する。大きな炸裂音は7つ、だと。その報告を聞き私は安心したように目を閉じて息を吐き出し、その一方で霧乃イオナは疑問を感じる。軍艦をやったのに炸裂音が少なすぎる、と。実際、軍艦をやった時の爆発というのはすざましいものなのだろう。こちら側が放った砲弾や魚雷の爆発、それに加え相手側の弾薬が誘爆を起こした爆発音。そこを考えると7つは少なすぎるということなのだろう

 

そう思考していると突如、艦内にアラームが鳴り響いた

 

「魚雷航走音!!数不明、9時方向からです!!着弾まであと15秒!!」

 

「そっちが本命か・・・!!機関いっぱい、取り舵!艦尾、デコイ射出!」

 

「間に合いません!!」

 

「・・・やられたね」

 

そうしているうちに本艦に魚雷が命中、艦内は炸裂音とアラームの鳴り響く音に埋め尽くされた

 

「艦尾及びセイルへ直撃3・・・。本艦に轟沈判定が出ました」

 

「何だと・・・。いったい何が・・・」

 

「判定映像、出ます」

 

「そういうことか・・・。本体の機関音にワザと微弱なノイズを混ぜ直進航行する事でデコイと思わせる」

 

「そしてこちら側が放った魚雷には魚雷を放出して爆発音を形成。その間に急速回頭しつつ接近してドカン、か。群像らしいと言えば群像らしいね」

 

そう言って私は席を立ち、艦長席の方に足を進め霧乃イオナの前で手を差し出す

 

「・・・ん?」

 

彼女は少し不思議そうに私の手を眺めたあとああ、というように私の手を握る

 

「お疲れ様、霧乃さん」

 

握手をしながら彼女にねぎらいの言葉をかける。その時に彼女の名前の霧乃の『霧』の部分を強調する。あなたの正体は知っているというふうに

 

「ああ、そちらもな」

 

それを分かってかは分からないが彼女は少し驚いた顔をしていた

 

side end

 

 

 

side 群像

 

「で、こんな所に呼び出して何のようかな。霧乃さん」

 

「来たか、千早群像。お前に見せたいものがある」

 

俺は今、霧乃さんに呼び出され旧倉庫区画に来ていた

 

「見せたいもの?」

 

「海に出たいか?」

 

「突然なんのことだ?今は霧の封鎖によって人類は海へは・・・」

 

「もう1度聞く。お前は海に出たいか?」

 

「・・・それは・・・出たいさ」

 

「その気持ちはあの水平線の先に、何があっても変わらないか?」

 

「ああ」

 

「そこにお前の父上が待ち構えていても?」

 

「答えてくれ。千早群像、君があの海の果て、世界の果てで見つけたものが、例え絶望でしか無かったとしても、君は君でいられるだろうか?なお、航海が続けられるだろうか?」

 

「・・・」

 

その質問は俺にとってどういう意味なのかは分からない。なぜ彼女は俺にこのような質問をしたのか。今はその答えを見いだせない。だが・・・

 

「君が何を考えて俺にそんな事を質問するのかは分からない。けど俺は、今は自分がどれだけ強いのか、どれだけ強くなるのか想像出来ない。だから不安でいっぱいだ。だけど例え何があろうがそれを見てみたい。自分の世界の結末がどうあるのかを見てみたい。それだけはいつも考えている」

 

「良いだろう。お前を世界の果てに連れて行ってやろう」

 

まくし立てるように答えたそれは彼女によって受け止められそして、俺と彼女に繋がりを与えた

轟音と共に浮上してきたそれは人類を海洋から駆逐した、そして親父が最後に乗った船だった

 

「は、ははっ。ははは。何の冗談だよ・・・」

 

「冗談でもなんでもないさ。これは霧の潜水艦イ401。これからはお前の艦だ。そして」

 

「そして、あなたの正体はそのイ401のメンタルモデル。そうでしょ、霧乃イオナさん」

 

驚きで呆然としている俺に対して彼女、霧乃さんはこの船が俺の物だと言う。そして彼女が続けて何かを言おうとしたその時、倉庫の影から1人の女性が出てきた。暗がりにいて顔の確認出来ないその女性は霧乃さんからセリフを引き継いだように自然な流れで彼女の正体を暴こうとする

 

「ふむ、やっぱり気づいていたのか。いつから?」

 

「そうね、あなたの名前を知ってからよ。霧乃なんて霧のって言ってるようなものよ?まあ、確信を持ったのは今日の試験の時だけど」

 

「流石だな深海優。それで、知ってどうするつもりだ?」

 

そう言って霧乃さんは彼女、優に艦の機銃を向け、照準を合わせる

 

「どうもしない。そして、これが答えよ」

 

優が指パッチンをするとイ401がいる隣の海面が盛り上がる。そこに現れたのはもう1隻の霧の船だった

 

「そんな・・・バカな。クマノだと!?あれは行方不明になっていると」

 

「ええ、あの船はクマノであってるわ。行方不明の原因はあれが私の船だからよ」

 

そう言って優は走り、海へ飛び込んだ。かと思えば六角形のパネルが数枚並んだ半透明の板の上に立ち浮かび上がってきた。そのパネルに乗った状態でクマノと呼ばれた艦に向かって歩を進める

 

「ようこそ、新たなる航路を持つものよ。そして、私は待っている。この海の、世界の果ての入口で」

 

彼女は1度ニヤッと笑いそのまま艦内に入って行く。そして艦は動き出し、潜航。そのまま姿を消した

 





はい、という訳で戦闘詳報掲載のドラマCDの物を改変したお話でした。次回から本編の方に入って行きます

という訳で、あけましておめでとうございます(遅い)
本年もよろしくお願いします

とりあえず今回は珍しく6000字を超えるという多分ですが過去最高の文字数です。まあ、もう少し戦闘描写を細かく書いたりできるようになりたいですね

それでは、また次回お会いしましょう。しーゆー(`・ω・´)ゝ
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