崇められても退屈   作:フリードg

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第20話 気に入った子は助ける!

 

 

 戦いはまさに一瞬だったと言えるだろう。

 帝国側の暗殺者は5名、同じく村から飛び出してくる様に出てきた標的が8名。

 

 数では劣るものの、帝国側の闇の暗殺部隊。その任務を確実に遂行する為に血の滲む様な命を削る様な訓練と身体を強化する薬を服用し続けてきた。

 

 その為、その身に宿した力は一般人を遥かに凌駕している。それに加えて外見はただにの子供だ。その外見に油断し 飛び出してきた標的の3名が一瞬で死んだ。

 

 このまま、暗殺者側の圧勝だと言える戦いだったのだが。

 

「いけるいけるよ~~! 私達、全員生き延びられる――――!」

 

 標的側にも曲者、強敵と呼べる者はいたのだ。

 斬られ、死んだであろうと思っていた者はまだ生きていた。敵を殺して完全に油断している少女レムスの背後へと迫り。

 

「え…………」

 

 背中を刻まれた。続けざまに2つの凶刃がレムスを襲った。

 薬の影響なのか、痛みこそはそこまで感じてない様だったが、斬られたと言う事実は実感できていた。

 

「き、斬られ……ちゃった……」

 

 重くなる瞼に抗う事が出来ず、眼を完全に閉じ そのまま地に伏した。まだ完全に殺した、と確証が得られなかったのだろうか、男達はもう一度倒れた少女に刃を突き立てようとしたが。

 

「レムっ!!」

 

 割って入ったもう1人の少女クロメにそれは阻まれた。一瞬の内に相手の喉笛を斬り割き、絶命させていた。

 

 そして 強敵は1人ではない。まだまだいる。

 

「(あと1人です……!)」

 

 1人、また1人と殺してきた勢いのままに、攻撃を仕掛けようとした。

 相手の力量を正確に見極めようとせずに。

 

「ガキ共が! 動きはもう見切ってんだよ!!」

 

 向けられた刃は容易に弾かれた。読まれた軌道、そして元々のパワーの差もあった為か。

 

「攻撃がお行儀良すぎてワンパターン、それに軽すぎなんだよ! 死ねェッ!!」

「っっ!!」

 

 剣で防御をしようとしたのだが、その剣諸共唐竹割りをされ、身体は真っ二つに割かれた。

 

「ウーミン!!」

「馬鹿やろうっ!!」

 

 仲間がまた1人殺られた。それに一番動揺を見せていたのは班のリーダー ナタラ。

 だが、その動揺はこの戦場において最も最悪だっていい愚行だ。その隙を狙ってナタラに攻撃をしようとしている男を阻んだのが ギン。

 

「ボサっとするなボンクラ! お前もああなりたいのか!!」

「っ……! わ、わるい!」

 

 全ては戦い終えてから。仲間を弔うのも、悲しむのも。

 

「ウーミンを殺ったな! お前も真っ二つだ!!」

「返り討ちにしてやる!!」

 

 クロメがウーミンを殺した男に飛び込んだ。

 それを待っていたかの様に、強靭な斧を振り下ろすが 最小限の動きで躱される。残像が見える程の速度で。一撃目も、二撃目も。

 

「!? (こ、このガキ……! オレの、攻撃……を………)」

 

 返しの攻撃で首が飛んだ。

 首が取れても数秒は意識がある。男は首を斬られた実感もあった。

 

「(もう、見切り……やがった……………)」

 

 

 

 そして 全ての戦いがを告げた。

 敵側全て全滅させ、……帝国側の暗殺者は2人死んだ。

 

 

 

 

 

 

『う~……。かっちょよく助けて『きゃー素敵~~』って感じになる予定だったんだが……』

 

 死なすの駄目っ! と思いながら行ったのにも関わらず 結果として死なせてしまった。それは 正直相手側と味方側の力量を……。

 

『見誤っていた!! くっそーーー!!』

 

 と言う訳でクロは全速前進。まだ地上にまでは200m程あるから、身の内の闇を解放する。

 背に負うは 今の夜の闇にも負けない暗黒。その闇を周囲に撒き散らしながら接近していった。

 

 

「ウーミン……、レムス……」

 

 仲間の死。

 今まで苦楽を共にしてきた仲間達の死。如何に人間の死を見続けてきた暗殺者であっても 仲間の死だけは慣れるものじゃない。涙は留めなく流れ続ける。 

 だから、だろうか 今までの攻撃も奇襲も全て読む事が出来たのに。

 

「っ! クロメ!!」

 

 頭上から迫る闇に、気付かなかった。

 

 一番先に気付いたのがナタラ。

 それはただの偶然にして幸運だ。皆より少し離れた位置にいた為視界に捉える事が出来たから。気配を感じた、とかそんな事は一切ない。虚無をその闇に感じたから。

 

 ナタラの声に反応して、クロメは2人の亡骸から距離を取った。

 闇は2人の身体を完全に覆い隠した。

 

 

「ふーむ……。オレはアイツ(・・・)みたいに、あんなに戻す(・・)のは得意じゃないけど、数十秒前くらいなら、何とかいけるか」

 

 完全に死んだ少女には 別の術を。

 

「ぁ……ぅ…………」

「ほっ、こっちは生きてたな。よっこいせっと」

 

 レムスの小さな身体を抱き起こした。

 

「あ、あなた……だれ?」

「ん? せーぎの味方! って、違うか……。キミみたいな美少女はほっておけないナイスガイさ」

「ないす、がいって……、じ、じぶんで いう? それに わたし、死なないよ。だって、だって、死なないでって みんなに いったの……わたし、だもん……。しんで、みんなにめいわくや、かなしいおもい、させたくない」

 

 明らかに致命傷だと言うのに、ここまで喋れる所を見ると、見えてくるものがある。

 

「ふーむ……、無理に強化してるってトコ、か。今も昔もエゲツナイ事するのいるんだなぁー…… それ身体壊すだけだってのに」

「えっ……?」

「いやいや 何でもねぇよ? ほれ、目閉じて」

「い、いま眠っちゃったら…… ほんと、しんじゃいそうだから……」

「だーいじょーぶ! 信じて目瞑れって! あ、いや 別にそのままで良いか。んじゃあ、失礼してー」

「え……? ふむっ……!?」

 

 クロはレムスの唇を唇を塞いだ。

 

「(き、きすっ……!? わたし、きすされてるーー!?!? そ、それもいきなり、はじめてなのにっ!?)」

 

 当然混乱する。いや、だが 死にかけてるのに そこまで混乱できるものなのだろうか。

 

「(きゃっ な、なになに? なんだか……え……? きもち、いい? なんだか…… ここち、いい……?)」

 

 だんだん身体が軽くなっていくのを感じる。

 

「んっ ほい! とりあえず これで大丈夫」

 

 ちゅぷんっ と艶やかな音と共に、唇を離した。

 レムスは知る由もないだろう。……その身体の傷が急速に完治して言ってるという事に。

 

「そっちの子は……… うん。とりあえず 範囲は超狭いし、成功したな」

 

 身体が縦に割れていたのにも関わらず、何も無かったかの様に繋がっていた。意識まではまだ戻ってなかった様だけど。

 

 

『レムス!! ウーミンっっ!!』

 

 外から声が聞こえてきた。

 

「っとと、仲間の皆さんか。……んー、でもこの子らそっちにやって大丈夫なんか? タエっちとかみたいな逸材ならまだしも……」

 

 この倒れてる2人の力量をしっかりと見た。確かに薬で大分強化出来ている様だけど、本当にそれだけだ。折角助けたのに、次も助けられるかどうかは判らない。何より、綺麗な笑顔のこの少女は……どうにか欲しかったり? 

 

「うし、決めた!」

 

 と、言う訳で 覆っていた闇はそのままで、仲間たちがまつ外へと出た。

 

「っ! 何者っ!!」

「…………」

 

 その姿は同じく闇を纏って。それっぽいオーラを出して。

 帝国の暗殺者からしたら、まるで死神か何かに見えるだろう。身体から噴出されている闇のオーラの演出? が更に際立たせている。

 

「あの娘らは……余が頂いた」

「なんだと! ウーミンとレムスを返せ!! 誰がお前なんかに渡すか!!」

「クロメ!」

 

 クロメが飛びかかって斬りつけるが。

 

「落ち着け娘」

「なっ……!」

 

 剣が身体を通り過ぎた。何の手応えもない。透き通る様に通り過ぎてしまったのだ。

 その上、剣先を握られた。つまり、向こう側は触れてこちら側は触る事が出来ない。

 

「あの娘の命はもう尽きている。……判っているであろう?」

「くっ……、なら どうするって言うんだ! 2人を、2人の身体を弄ぼうと言うのか!」

「ふむ。そう言う趣味は我にはない」

「なら、返せ! 2人は私達の大切な仲間だ! ……私達が、弔うんだ!」

 

 剣を力任せに引っ張り戻そうとするが。

 

「話を最後まで訊くんだ娘よ。……この少女らは死ぬには無垢過ぎる」

 

 そう言い残すと剣を離し宙に浮いた。

 

「ウーミン! レムス!!」

「主はクロメ、というのだな……よし名を覚えた。また 会おう」

「待てぇっ!!」

 

 剣を振るい続けるが、全てが届かなかった。

 2人を包んでいたままの闇と共に、夜の彼方へと消えていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、場面は元に戻る。アカメ達の元へと。

 

「と言う感じで 『また会おうぜ!』って感じで爽やかに別れたんだよー。うーん、クロメっちも可愛かったし また会いたいなぁ……」

「クロメは何よりも、誰よりも可愛い。それは否定しない。……が!」

 

 アカメは、邪な顔をしているクロの顔面に蹴りを1つ。

 

「いてっ!!」

「クロメには二度と近づけさせん!!」

「親父かよ、アカメっちー……。それに クロメっちだけじゃないぜ? アカメっちも可愛いって! 負けてない負けてない! アカメっちも可愛い!」

「む……」

 

 それを訊いてアカメは少し顔を顰めた。

 

「わっ、駄目だよ、アカメちゃん! そんな人の甘言にのっちゃっ!」

「そう言うタイプって女の子だったら誰でも良いのよ」

 

 散々な声が周囲から響くがとりあえず気にした様子はない。

 

「違うぞ、コルネ……っち! コルネっち! オレは可愛い子が好きだ! 誰でもって訳じゃないぜ!? 流石におばちゃんにとかはなぁ……? チューするのはさぁ」

「そんなん訊いてない! って、~っちって呼ぶな!」

「良いじゃん良いじゃん。気に入った子にはそう呼ぶんだーオレ」

「うっさい! それに何なのよアンタ! 変身したら人格とかも変わるって言うの!? 変に口調変えて!」

「んん? ああ、そりゃ そん時の気分だ! 大した意味はねぇよー」

「ほんっと胡散臭いヤツ!!」

 

 

 色々と言い合っているコルネリアとクロ。そんな中で安心感を何処か覚えたのはポニィとツクシだ。2人はまだ ~っち と呼ばれてないから。

 

「んー? 2人の事も好きなんだぜ? ほれほれ~!」

「わきゃっ!!」

「わーーっ も、揉まないでーーっ!」

 

 でも、安心出来たのは一瞬だけ。その後も全員が思いっきりイタズラをされ続けるのだった。

 

 

 

 勿論最後は爽やかにお別れになった。

 

 

 

「んじゃあ またねー! 皆! 楽しかったよー」

「「「二度と来るな!!」」」

「来ないでーーっ!!」

 

 

 


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