崇められても退屈   作:フリードg

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第8話 可愛いし、気に入ったから触る!

 

 

 

 

「はっはは! そんなカッカすんなよ。オレ一応、命の恩人だったりするんだぜ?」

「って!! アンタが急に降りてきたから、私が驚いて逃げられなかっただけでしょっ! 恩着せがましい! 寧ろ、アンタのせいで絡まれたのよ!」

 

 いつの間にか、すっかり打ち解けてる2人。

 男の方は、当初のイメージとは全く違い、気さくで、陽気。良く笑う男だった。……更に言えば、手癖が悪い。先ほどから、何度かチェルシーにセクハラをかましてるから。

 

 すっかりと毒気抜かれたチェルシーだが、会って間もない男に身体を許す程、軽い女ではないつもりだ。

 

 そして、その後は早々に話を進めた。

 

「……で、アンタは、いったい何者? 何でここに……、私に様でもあってきたの? …………私を殺すつもりできたんじゃないの?」

「ん? なんで俺が殺すんだ? お前……えと、名前はなんていうんだ?」

「………」

 

 チェルシーは警戒心はまだまだあった様で、簡単には口に出さない様子だ。

 

「ふ~ん。まぁ、追々でいいけどな。さっきの質問だけど、全部一気に答えんのめんどいから、とりあえず1つ。オレ、上から見てたら、お前が湖で泳いでんの見つけてな? 可愛いし、こりゃもう、一度会って色々として……とと、お話してみたかっただけなんです。はい」

「嘘くさっっ!! って、色々って何っ!? まだ、何かしようっていうの!??」

 

 ばっ! と胸元をガードするチェルシー。可愛い、と言われて 赤く成る程、初心ではないが、それでも易々と身体を触られる訳にはいかない様だ。

 

 男は、ふんふん、と頷きながら。

 

「まだまだ、暗殺者にはなれそうにないなぁ? 暗殺者になるにゃ、まだ女を捨てきれてない様だ。おっぱいちょっと突っつかれたり、揉まれたり、顔でぱふっ! と埋めてみたり、と、それくらいされたくらいで、可愛い乙女な悲鳴あげてちゃ、まだまだ落第点だな? 修行が足らん!」

「っ。よ、よけいなお世話よ! それでも堂々とセクハラなんかする!?」

「まぁまぁ。手ほどきなら、オレが色々と教えてやるから」

「いーや! 大きなお世話よ!!」

 

 子供の様な口喧嘩。

 いや、どちらかと言えば、男がチェルシーをからかって遊んでるだけ、と言う風に見て取れる。好きな子にはいじめてみたい、と言う心理?と同じ感じだ。

 

「はぁ、はぁ……、もう そろそろ戻んないといけないから、用が無いんだったら、私行くわね?」

 

 何度も何度も叫んで叫んで……、息切れを起こしてしまったチェルシー。

 男は、光る様な笑顔でニコリと笑うと。

 

「おう! 俺も行く」

「………はぁ!?」

 

 まさかの答えにチェルシー呆然である。だけど気にせず、男は続けた。

 

「ひっさしぶりに面白そうなコ見つけたし、も、ちょっと 一緒にいたいんだよな。良いだろ?」

「嫌よ!」

「えー、なんか無茶嫌われてるし。そんな悪い事、オレした?」

「もう忘却の彼方!? 女の敵の癖に、何をいまさら言ってんの!?」

「えー、あんなん、スキンシップの範囲内じゃん。それに、あの木のお化け追い払ってあげたんだし、もちょっと好意的な目で見てくれても良いって思うんだが。ほれ、『タスケテクレテ、アリガトー』的な? 別に棒読みでもかまんぜ?」

「アレを、スキンシップの範囲内?? 私、娼婦じゃないんだから、全然アウトよ! 棒読みでおっけー、って言った時点で、棒読みすら言いたくないわよ!」

 

 ぷりぷり、と怒ったチェルシーの唇に、男は人差し指を当てた。

 

「っ!?」

「ちょい 一時ストップ」

 

 また、何かセクハラをされるのか? とチェルシーは警戒をしたんだけど……、次の瞬間。

 

「よっ、と」

 

 男は、足を上げて、チェルシーの直ぐ横の地面を踏みつけた。

 

 “ずんっ!”と言う衝撃音と、まるで地震でも起きたかの様な振動が周囲に伝わり……、次には地面にヒビが入ってる。それだけでも十分に驚きなのだが、本当に驚くのはこの後だ。

 

 ……後方数m先の地面が盛り上がって、“ずがんっ!”と言う轟音と共に、何かが出てきたのだ。 出てきた――、と言うより、噴火したかの様に、吹き飛んできたのだ。

 

「おー、モグラが釣れたな。なんか、下にいるとは思ったけど、思ったよりも大物だ」

「っっ!?!?」

 

 男の陽気な声、そして チェルシーも直ぐに振り返った。

 土中から、地上へと叩きだされて、仰向けで気絶?(多分) しているのは《土竜(どりゅう)》。

 先ほどの、木獣よりも遥かに危険度の高い、一級危険種である。たったのひとふみで、獰猛な土竜を地上に叩きだすとは、一体どんなトリックを!? とチェルシーが目を丸めていた時。

 

「おー、怖かったか? よしよーし。も、大丈夫、安心しろ。オレがついてるからな?」

「っっ!!!」

 

 ……いつの間にか、男に背中から抱きしめられた。がっつりと、あたってる(・・・・・)。あからさまに 手で揉んだり~ とかはしてない様だけど、イヤラシイ感覚は気のせいではない。そして、この程度で終わるとは到底思えない。

 

 

 その数秒後、予想通り……、いや 予想以上の事をされてしまったチェルシーは「ぎゃー」と言う悲鳴を上げて、またまた、周囲に木霊するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ………」

 

 げっそりとしてるチェルシー。

 

 何度も怒って怒って、でも 全く応えなくって、ビンタの1つや2つ、かましても良いと思って攻撃するんだけど、避けられては触られ、当てれた!? と思えば後ろから抱かれ、蹴りを股間に入れようとすれば、パンツ見られ。←現在ココ  

 

「純白か。うんうん、チェルシーによく似合う。可愛いぜ?」

「うっさいっ!! 名前教えたんだから、いい加減セクハラ止めて!」

「えー? 楽しんでたじゃん? ……ってか、カンじてた? 若しくはそれ以上に……イ「感じてないっっ!! そっから先言うな!」ははは、りょーかい」

 

 反撃しても、男の思うつぼだ、と思うんだけど……、何故だか無視する事が出来ない。と言うより、無視し続けたら、貞操の危機も有りえる。まっとうな生き方は、殺し屋になった以上出来ないとは思ってたが、その辺は やっぱり女の子だから仕方ない。女を完全に捨てれる程、経験を積みに尽くした訳ではないから。

 

 兎も角、追い払うのも無理、逃げるのも無理、と言う事で、チェルシーは仕方なく、仲間達の待つ場所へと戻る事にした。

 

 ……未知数の力量を持つ相手だけど、自分が所属してるオールベルグも異常性と言えば、決して負けてないと思えるから、活路をそこに見出したのである。

 

「それにしてもこんな山道に来て、水浴びとは、色々と大変だな、チェルシー」

「……殺し屋になって、色々と仕事してりゃ、これくらい当然」

 

 何処まで知られているのか判らないが、相手は、自分自身が暗殺者、殺し屋である事はバレてる。何で知っているのか? と訊こうと思ったが、見返りを求められるのが厄介だったから、一先ず口を噤んだ。色香で釣って、その隙に……とは 思ったが、この相手は『殺せない』と判るから、手が出せなかった。

 

「ま、そのおかげでチェルシーと出会えたから、オレとしては幸運だ」

「はぁ、どこまで本気なのやら」

「いーや、オレ 結構本気だぜ? でもなけりゃ、態々降りてこないって、あの木の連中がいるのも判ってたし。群ン中に飛び込むみたいなもんだからよ」

「アンタ程の力があったら、片手間じゃん……。それに、アンタのせいで襲われた様なものよ」

 

 チェルシーは、ため息を1つしてそういう。

 最初の木獣に襲われた時は、確かにチェルシーは気付けなかった。……だが、それは眼前の男に全神経を集中させていたから。木獣は何度か相対した事があるし、肉体派ではないから、楽勝っ! とは 言えないが、回避する事に関しては、楽っ! なのだ。彼女が使う帝具は、逃げ足に関しては、それなりに使えるから。

 

「ん? ああ、成る程。あの辺の木の連中、結構気配絶ちが上手いから、チェルシーは気付かなかったんだな?」

「え?」

「アイツら、最初っからチェルシーを狙ってたんだぞ? チェルシーがあの周辺に来たはじめっから。ほれ、水浴びする時、上だけ脱いで、そっから変身してたけど、服引っ掛けてた場所が変わってたの気付かなかったのか?」

「は……? え、いや、それどころじゃなかったし……」

 

 チェルシーは、言われて、記憶の引き出しをそっと開けた。

 

 覗かれてた事は、この際置いておこう。

 

 服着てても帝具を使用すれば、なんにでも化ける事が出来る。……だけど、裸になるのに抵抗があった。下着だけと言うのも少々嫌だった。だから、帝具を使って化けた。この帝具は、化粧品型故に、水との相性は悪いけど、少しの時間なら大丈夫だった。

 

 と言う訳で、帝具を使って化けた――んだけど、その前 服を脱いで 何処に置いただろう? 

 

「(―――そう、木の枝に引っ掛けて……、急いで逃げた時に 帝具しか回収できなかったけど……、たしか……)」

 

 手を伸ばせば届く範囲の枝に引っ掛けた筈なんだけど、そう 服は見当たらなかった。その後、男が来て、木獣達を追い払ってくれて……、見つかったんだ。

 

「あの辺の連中、何故だかは良く知らんが、騙すの(擬態)が更に得意みたいなんだよ。まぁー、更に特化しねぇと、餌に有りつけなかったから、進化した、そんなとこだと思うな。だから、あのまま、呑気に水浴びしてたら、ばくっ、とイかれてたかもしれないぜ?」

「さ、流石に気付くわよ。そこまで行ったら!」

「ん~、その上 知能も通常のヤツと比べたら、の範囲だが 結構上がってる。だから、無防備な所に集まってきたんだろうぜ。人間が使う道具、《武器》つう、危険性を学習したからこそ、無防備を待ったんだろうぜ? そこで、水にぷかぷか浮いてる時にチェルシー。見た通り、文字通り、無防備。あの長い根やら枝やらで、捕まえられたら、流石にきついんじゃね? 帝具(それ)使えなかったら」

「う……」

 

 確かにごもっともだ、と口を噤んだ。

 戦うにしろ、逃げるにしろ、帝具が無ければ、並の人間と大して変わらないのだから。

 

「ま、チェルシーの貞操はぜーーったいに奪わせたくなかったんだな、これが。と言う訳で、助けてあげたから、オレと仲良くしてくれ。もっと」

「こ、これ以上ナニをするつもり……っ!?」

「……そんなにビビんなくてもええやん。ちょっとしたジョークだし」

 

 自分が危険種の群に襲われてたかもしれなかった事実が、チェルシーの肝を冷やしたのだろう。男の通常通りの軽口にも過剰に反応してしまい、やや意気消沈してしまうのは男の方。

 どうやら、セクハラは連発するものの、ほんとに気に入られたのは間違いなさそうだ、とこの時思った。

 ……決して嬉しい訳ではないけど。

 

 そんな時だ。

 

「チェルシー、見つけた」

「……え?」

 

 前方から声が聞こえてきた。

 聞き覚えのある声……その主がタエコだと言う事は直ぐに判り――。

 

「♪♪♪」

 

 そして次には、何やら、寒気の様なモノがしたチェルシーだった。

 

 


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