周りはエリートでお金持ちのお嬢様ばかりの鎮守府に、ひょんなことから配属されたまるゆ。右も左もわからない状況、すれ違う艦娘たちはちょっと怖い、周りは知らない人たちばかり、いつもまるゆはひとりぼっち……。そんな中、不意に声をかけてきたのは……木曾(改二)!

と考えると、まるゆさんが惚れちゃうのも分かります(?)。
木曾さん、二言目には「不安なのか?」って聞いてきますし、「大丈夫だ、俺を信じろ」とか言いだしますし、ただのかっこいい人ですよね。
惜しむらくは、文字だけだと本当に「ただのイケメン」になってしまって、木曾さんの魅力を引き出せなかったところですかね……。

今回も、オチ、ありません。オチを無くすの、得意なんです。冗談です。精進します。

※Pixivですでに投稿されたものと同じものになります。投稿テストも兼ねておりますので、ご了承ください。

2016/9/27 警告タグ間違えてました。大変失礼しました

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木曾さんとマント

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「はぁ……」

 吐く息は白く浮かんで、すぐ、暗い部屋の中に溶けていきました。

 まるゆは壁を背にして、体育座りでじっとしています。

「まるゆがお願いしていなければ、閉じ込められるなんてことには……」

 まるゆは入渠ドックの脱衣所で落ち込んでいました。

 膝を抱きしめる力が自然と増します。

「仕方ないさ」

 まるゆは一人で落ち込んでいるわけではありません。木曾さんと一緒に、落ち込んでいるのでした。

「でもでも……まるゆ、また木曾さんに迷惑かけちゃって……」

 木曾さんは、まるゆの隣で胡坐をかいています。 

「気にするな。お前の日頃の成果を確認できたんだ。俺は満足だよ。それに、俺にも少なからず非はある」

 まるゆは日頃からドックで潜水の練習をして……いるわけではないのですが、入渠する度に潜水の練習をしていました。まぁ、それが毎日となると「日頃ドックで潜水の練習をしている」と言われても無理は無いんですけれど。

 そして今日。

 まるゆが入渠している時、たまたま木曾さんが入渠してきたんです。

 木曾さんは、「お前、潜れるようになったのか?」なんて言ってきました。かちんときますよね? まるゆはかちんときました。

 これが事の発端になってしまいました。

 まるゆはむきになって潜り、木曾さんはさらにあおってくるような言葉を吐き、まるゆはむきになって、木曾さんはあおってきて……。

 気がつくと消灯時間も過ぎ、ドックも戸締りされてしまいました。まるゆたちは閉じ込められたんです。

 ちなみに、鍵がかかってしまったのは入渠ドック手前の脱衣所で、入渠ドックそのものは鍵が掛かっていませんでした。巡回した方が見落としたのでしょう。おかげでまるゆたちの存在に気付くことなく、鍵をかけてしまったわけですが。

「せっかく木曾さんに付き合ってもらったのに」

 まるゆは溜め息を吐きました。白いもやもやは、すぐに消えていきますが、まるゆの中のもやもやはなかなか消えません。

「今日はここで寝なきゃいけないのかな……」

 それを聞いた木曾さんは、まるゆに笑いかけてから立ち上がり、マントを翻しました。

「もう少し努力してみるか。なぁに、大丈夫だ。俺を信じろ」

 

 

 

 

 

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 現実は悲しいものです。

 脱衣所にある物なんて、衣服を入れておく籠、掃除用ロッカー、掃除用具一式、椅子、ドライヤー、櫛、ティッシュくらいです。艤装は、専用の修復場に持ちこまれていて、この場にはありません。まんま、温泉の脱衣所です。

「くっ……! ……だめ、か」

 ここにあるものでどうにか内側から開けられないかと木曾さんは奮闘しました。それでも鍵はびくともしません。いっそ、壊してしまうのも手かと木曾さんは言いましたが、

「だ、だめですよ。壊すだなんて……だったらここで、一晩我慢した方がいいです」

 まるゆが踏み止めさせました。壊したら大事になってしまいます。事はそんなに大きなものではないはずです。

「……ダメだ。これも無理だな……。チッ、他に手は……」

 木曾さんは膝から崩れ落ちるように、開かない戸の前で座り込みました。

「もういいですよ、木曾さん。一晩ここで過ごしましょう」

「けどお前、そんな格好だと寒いんじゃないのか?」

 今は冬、ここは水回りのすぐ側……というより水回りそのものです。さらに今は――現在の正確な時刻は分からないけれど、夜だというのは分かります。

 こうしている間も脱衣所は冷え込んでいきます。

 分かっています。分かっているのですが、 

「大丈夫ですよ」

 まるゆは、我慢することを選びました。

 木曾さんに、笑顔で伝えます。

「北方遠征とか経験してますから、まるゆは平気ですっ」

「……ならいいんだけどよ」

「木曾さんの方こそ、我慢できるんですか?」

「お前、俺を誰だと思ってんだ?」

「木曾さんは木曾さんですからね、ふふふ」

「それどーいう意味だこら」

 木曾さんはまるゆの隣に座る場所を移しました。

「いざって時は戸をぶっ壊してでも出るぞ」

「だ、ダメですよ、そんなことしたら」

「俺がいるんだ、安心しろよ。後始末も全部俺がやってやるさ」

「でも、だめです。物は大切にしなきゃ」

 その後もまるゆの説教は続きます。

 木曾さんは半分くらいしか聞いていませんでしたけれど。

 

 

 

 

 

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 冗談が言い合えるのは、最初の内だけでした。

 時間が経つにつれ、温度はどんどん下がっていきます。息が白くなる、程度の寒さならまだよかったんですけれど、問題はその先です。息を吸うのが億劫になり始め、身体は震え、動かせる部位が減っていきます。この辺りは北の地域ではありませんが、今夜から明日にかけては特別に冷え込むようです。

「うう……」

「寒くないか?」

「ら、らいじょうぶ、です……」

 あはは。まるゆ、ろれつが回ってませんね。困りました。木曾さんに心配をかけてしまいます。でも、これを治す方法を、今は見つけられません。

 このまま朝まで耐えられるかもしれませんが、翌日以降、体調が崩れるのは確定でしょう。

 ああ、明日からの出撃に支障がでちゃうな、なんてことを考えていると、

「……無理するなよな」

 木曾さんが自分のマントを脱ぎ、まるゆにかけてきました。

「え、あ、あの、これ」

「お前の格好見てるとこっちまで寒くなる。それで隠しておけ」

「あ、ありがとう……」

 木曾さんのマントは防寒も兼ねているのか、包まっていると外気が感じられません。さらに、木曾さんが今まで着ていたからか、ほんのり暖かいです。……木曾さんの匂いも、します。

 ……ふふふ。

 とたんに、この状況が嬉しく思えてきました。

「ありがとうございます、木曾さん」

「気にするな」

 暖かいです。ぬくぬく~。……あ。そうだ。もっと暖かくなる方法を、まるゆは思いついちゃいました。

 

 

 

 

 

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「暖かいですね、木曾さん」

「そ、そうだな……」

 マントが大きくて助かりました。

 まるゆと木曾さんは、二人で一つのマントに包まっています。顔まですっぽりです。まるゆの右側に木曾さん。木曾さんの左側にまるゆ。ぽかぽか、とまでは言えませんが、結構ぬくいです。

 これならマントの防寒と、お互いの体温で寒さを凌げます。

「……お前、まだ身体が冷たいな」

「え? もう本当に大丈夫ですよ?」

「冷たい身体して言っても説得力無いぞ。んー……」

 木曾さんが真剣に考えていますが、まるゆは本当に大丈夫ですよ? もう十分なくらいに。

「……うん。そうだな」

 どうやら分かってくれたみたいです。

「おい」

「はい?」

「お前、ここに来い」

「……え?」

「なにしてるんだ。早く来い」

 木曾さんは、胡坐の中心を、ぽんぽんと叩いています。何かがすっぽり収まるように、空間まで設けていました。

「そ、そこって、ええ?!」

「ったく、もたもたするなよな。ほら。よっ、と」

 木曾さんがまるゆを持ち上げようとしたので、マントがずり落ちてしまいました。

 少し抵抗したのですが、木曾さんは軽々とまるゆを持ち上げ、胡坐の中に下ろしました。

 ちょっと恥ずかしいですが、木曾さんとまるゆは同じ方を向く形で座っているので、幸いにもまるゆの顔は木曾さんに見られずに済んでいます。

 木曾さんは落ちてしまったマントを拾って、まるゆたちを包み直しました。

「よし、これなら暖かいだろ。な?」

「え、あ、は、はい……暖かい……です……」

「んー………………お前、ほんとに小さいな」

「!?!?!!!??!?」

 と、突然、木曾さんが抱きついてきました。

「ちゃんと食ってるのか?」

「た、たたた食べてますよっ!」

「本当か? どれ……がりがりじゃねぇか」

「ひゃっ!?」

 木曾さんがまるゆのお腹を撫でまわしてきます……!

「あっ、あのっ、くすぐったいので……やめ……」

「ああ、悪い悪い」

「も、もう……」

 くすぐりは止みましたが、抱きつきはその後も続きました。

 まるゆは抱きつかれたまま、木曾さんとしばらく話をしました。が、木曾さんの体温と今日の出来事の疲れで、いつの間にか眠ってしまいました……。

 

 

 

 

 

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「――あら? 何かしら、これ」

 眩しくて、まるゆは起きてしまいました。

 昨夜のことを一瞬忘れていましたが、マントを取られた、という事実ですぐに思い出しました。

「んん……赤城、さん?」

 目を擦りながら、まるゆは目の前でぽかんとしている赤城さんに焦点を当てていきます。

「これって一体……」

「おはようございます、赤城さん」

「おはようございます。ええっと、どういうことなのかしら?」

「?」

 赤城さんはどういう意味で言っているのでしょう? まるゆの方が「どういうことなのかしら」です。

 しばらく考えていた赤城さんが何かに気付いて、

「あ、なるほど。ごめんなさいね、まるゆちゃん。邪魔しちゃったかしら?」

 と微笑んでどこかに行ってしまいました。

 何だったのでしょう?

 ……。

 …………。

 ………………あれ? 今、赤城さんがいたんですよね? 赤城さん、どこから来たんですか?

 …………………………!!

「き、木曾さん、木曾さん! 起きてください木曾さん!」

 まるゆは慌てて木曾さんを起こします。

「んん……ま、るゆ? ふぁ……おはよう。どうした?」

「出られますよ! ここから出られます!」

「……本当か?!」

「はい!」

 こうしてまるゆと木曾さんは、無事に脱衣所から出ることができました。

 木曾さんとマントのおかげで、まるゆは風邪をひきませんでした。木曾さんも大丈夫だったみたいです。ただなぜか、しばらくの間、まるゆと木曾さんのうわさが鎮守府内に……。まぁ、それはまた、別のお話で。


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